2019年7月13日土曜日

都道府県別の空き家率の推計

 鹿児島の奄美地方では,梅雨明けが発表されたそうです。関東はいつになるのやら。曇天の日が続き,気が滅入ります。

 昨日,「2043年の都道府県別の空き家率の推計」という表をツイッターで流したところ,「実感ある数値だ,計算方法を教えて欲しい」という質問がきました。メールでです。

 別に,込み入ったことをしているのではありません。中学生でも思いつくような,単純な外挿法です。今のトレンドが続くと仮定した場合,未来はどうなるかを推し量っただけです。使用したのは,2013年と2018年の都道府県別の住宅数,空き家数です。総務省『住宅土地統計』に載っています。

 私の郷里の鹿児島県を例に,説明いたしましょう。


 2013年から18年にかけて,住宅数は1.017倍,空き家数は1.130倍に増えました。この倍率を18年の戸数にかけて,23年の住宅数・空き家数を出します。同じ倍率を23年の戸数にかけ,5年後の28年の戸数を出す…。この繰り返しです。

 分母と分子が今のペースで変化し続けると仮定した場合,どうなるかです。直線的な変化を仮定した乱暴な試算ですが,これによると,20年後の2038年の鹿児島県の住宅数は94万2883戸で,うち空き家が27万991戸と見込まれます。空き家率は28.7%です。さらに20年経った2058年には43.7%になると。

 県内の住宅の4割が空き家…。にわかには信じがたいですが,実際はもっと高くなるのではないでしょうか。人口減少の中,さすがに新住居の建設は控えられるでしょうから,分母の増加は緩やかになる,いや減少に転じる可能性があります。対して分子の空き家数は,増加のスピードが高まるとみられます。これから,死ぬ人が増えてきますので。

 今から40年後,鹿児島県の空き家率は50%,半分を越えているかもしれません。しかるに,同じやり方で全県の空き家率を予測してみると,このラインを超える県も出てきます。2018年の実測値,2038年と2058年の予測値を高い順に並べたランキング表を掲げます。20年スパンの未来展望です。


 全国値はほとんど変わりません。住宅数と空き家数の増加スピードがほぼ同じだからです。しかし前者より後者が大きい県では,空き家率はどんどん上がります。先ほど例示した鹿児島県は,その典型です(18.9% → 28.7% → 43.7%)。

 20%を超える県は薄い色,30%を超える県は濃い色をつけました。時代と共に,不穏なゾーンが広がってきます。空き家が今のペースで増え続けるとしたら場合,2058年には,空き家率20%超の県が19県,30%超が11県になると見込まれます。

 被災3県(宮城,福島,岩手)は,信じがたい数値になっています。計算に使った,2013~18年の空き家の増加倍率が高いためです。2011年の東日本大震災の影響であるのは明白で,これら3県の数値は割り引いて考える必要があります。

 しかし,それとは無関係な西の諸県の空き家率も高く出ています。和歌山県は52%,鹿児島県は44%,徳島県は43%です。少産多死が進む中,分子の空き家数の増加速度は高まるでしょうから,実際はもっと高くなる可能性もあり。

 全住宅の2割,3割,4割が空き家…。こういう地域が出てくるわけです。放置しておいたら,ゴーストタウン化するのは必至。堀江貴文さんが予言している通り,「家賃は要らないから,ハウスキーパーとして空き家に住んでください」と懇願される時代になるかもしれません。

 前回も書きましたが,先行き不透明な中,長期のローンを組んで新居を建てるのはどうか,という気になってきますね。

 空き家は,放置しておくだけなら,朽ち果てたり,犯罪の温床になったりと,社会の安全を脅かす危険因子になります。しかし適切に活用されるなら,全く逆です。若者の「住」支援に使われてもいいでしょう。若者の離家を促し,未婚化・少子化の歯止めになるかもしれません。

 私が住んでいる地域にも,空き家と思しき建物がゴロゴロあります。夕刻のウォーキングで,「この平屋いいなあ。あと10年後には,『ハウスキーパー募集,家賃不要』なんていう張り紙が貼られるのかなあ」と,物色を楽しんでいます。