2021年7月9日金曜日

洋服への支出減少

  コロナが渦巻いて久しいですが,それが社会にどういう影響を与えたか,可視化できるデータが溜まってきています。

 私はこれまで,社会病理学を専攻する立場から自殺者数に注目してきました。コロナ前の2019年と2020年を比較すると自殺者は増えています。性別にみると,男性では微減ですが,女性では増加です。さらに年齢も加えると,若い女性で増加率が高くなってます。女子高生では1.8倍です。データと背景の考察はコチラの記事で。

 なお,総務省の『家計調査』も使えます。お金をどれほど使っているか,どういう品目に使っているかです。コロナになってから外出自粛が要請されるようになり,経済停止により家計も厳しくなっているとみられます。こういう条件が出てくると,家計はどう変わるか。

 まずは使うお金の額です。上記の資料によると,2人以上世帯の消費支出額(年間平均)は,2019年は352万547円,2020年は333万5114円となっています。コロナ禍になってから減ってますね。しかし観察のスパンをもっと広げると,今世紀初頭の2000年では380万7937円です。平成不況で収入が減っているためか,消費に使うお金も長いスパンでみて減ってきています。世帯の高齢化の要因もあるでしょうが。

 中学の社会科で習うレベルですが,生活が苦しくなると必須度の高い品目への支出は維持ないしは増える一方で,そうではない品目(奢侈品)への支出は減ります。前者の代表格は食費で,後者としては,たとえば洋服なんかはどうでしょう。

 トータルの消費支出額,食費,および洋服の支出額の変化をグラフにしてみます。2人以上世帯の年額平均で,始点の2000年を100とした指数にしています。コチラの統計表からデータを作成しました。

 今世紀になって,新自由主義政策の影響もあってか国民の生活は苦しくなり,それゆえ消費支出額は減っています。2019年から2020年の減り幅が大きく,コロナの影響も出ています。具体的な額は上述の通りです。

 食費はというと,こちらは増えていますね。消費支出全体に占める割合(エンゲル係数)もアップしており,消費が必須品に偏るようになっている,すなわち生活が苦しくなっていることが,この点からも汲み取れます。

 さてあと一つの洋服への支出額ですが,こちらは消費支出全体よりも速いスピードで減少しており,コロナの影響もよりハッキリ出ています。2000年では8万243円でしたが,2019年は5万9473円,2020年は4万3886円です。

 洋服は,外界の温度変化(暑さ,寒さ)への適応という機能もありますが,おしゃれや見栄のツールとしての機能もあり,時代につれてこちらが強くなってきています。収入が減り,かつコロナで人と会えなくなっているとなったら,この財への支出が減るというのは道理です。

 生活が苦しくなったらどうなるか? この20年間の変化ですが,教科書セオリーがはっきり可視化されるものですね。中学の社会科の資料集にでも載せていただきたいグラフです。

 洋服への支出額ですが,47都道府県別の変化も見ておきましょう。県別のデータは2007年からとれます。2007年と2020年の県別データを高い順に並べ,左右に並べてみます。県別のデータも,上記リンク先の統計表で得られます。


 若者が多い都市部で高い傾向かなと思いますが,最低値は両年とも沖縄ですね。年中暖かく,軽装だからでしょうか。

 ご自分の県の値をみていただければと思いますが,注目いただきたいのは表の色つき範囲です(薄い色は5万円台,濃い色は6万円以上)。2007年ではほとんどの県が5万円以上で,36の県で6万円を超えていました。それが2020年では,5万以上が11県,6万以上は3県しかありません。

 上記のデータは地図化してツイッターにあげています。コメントにもありますが,こういうマップも,国全体が貧しくなっていることの可視化です。洋服を買う量が減っているのか,それとも安いやつで済ませているのか,そこまでは判別できません。

 あと一つのデータを示しましょう。洋服といってもいろいろありますが,中でも減り幅が大きいのは,スーツ関連です。背広,ワイシャツ,ネクタイへの年間支出額はどう変わったか。最初のグラフと同じく,2000年の値を100とした指数のグラフにします。


 すごい減りっぷりですね。ネクタイに至っては,この20年間で8割の減少です(1595円→307円)。クールビズとやらで,夏場,ネクタイをする頻度が減っているのもあるでしょう。

 収入の減少で,以前は老舗で高級品を買っていたのが,最近は安いやつで済ませるようになっているのもあるでしょうが,働き方の変化も大きいでしょう。今はオフィスでもカジュアル化が進んでますし,雇用労働自体が減ってきています。

 お金の使い方の変化にも,時代の変化がハッキリ表れるものです。

2021年7月6日火曜日

非正規公務員の悲惨

 今年は梅雨入りが遅く,7月になっても雨の日が続いています。蒸しますが,いかがお過ごしでしょうか。

 昨日,「非正規公務員の過半数が年収200万未満」という記事(NHKサイト)を見かけました。ある団体による大規模調査の結果です(1252人が回答)。それによると,661人(52.8%)が年収200万未満と回答したとのこと。働く貧困層,それも「官」の世界で働く,いわゆる官製ワーキングプアです。

 今や「官」の世界も非正規化が進んでおり,非正規の比重は小さくありません。生活苦や正規との格差への不満を訴える声が看過できなくなり,大規模調査に踏み切った,ということでしょうか。改革を促す貴重なデータであると思います。

 なお公務員の収入は,官庁統計でも分かります。毎度使っている『就業構造基本調査』です。有業者の年間所得分布を,産業分類別に知ることができます。コチラの統計表です(2017年)。

 「公務」というカテゴリーの有業者を取り出し,正規雇用と非正規雇用に分けて,年間所得の分布をとってみます。ジェンダー差もみるため,性別も入れましょう。母数は男性正規が154万人,女性正規が42万人,男性非正規が11万人,女性非正規が27万人です。


 左は正規,右は非正規ですが,分布の違いが明瞭です。正規では所得200万未満はほんのわずかですが,非正規では大半です。男性では56.0%,女性では76.7%です。上記の団体の調査で男女込みで52.8%とのことですが,官庁統計の数値はそれよりも高くなっています。

 上表の公務員とは産業分類が「公務」の人で,教員,警察官,図書館司書,児童福祉士などは入っていません。多くが役所の職員かと思いますが,こういうフツーの公務員に限ると,非正規のプア化の状況がハッキリと出ます。

 上記の分布から中央値(median)を計算すると,男性正規が588万円,女性正規が467万円,男性非正規が186万円,女性非正規が137万円となります。ちょうど真ん中の人たちですが,非正規は男女とも200万円に届きません。

 地域別にみると,もっと悲惨な値も出てきます。上記でリンクをはった統計表では,「地域」という変数もあります。これを入れれば,47都道府県別に,非正規公務員の所得分布を呼び出せます。それをもとに,各県の非正規公務員の所得中央値を算出してみました。

 県別にバラすと人数が少なくなるので,男女込みにしています。まあ非正規公務員では女性が多いので,ほぼ女性の傾向を反映していると読んでいいかと思います。下表は,高い順に並べたものです。


 どの県も200万円に及びません。それどころか,150万円にも届かない県が多数です(色付き)。全国値は149万円。濃い色は140万円未満で,最下位の鹿児島では114.8万円です。私の郷里ですが,生活が成り立つレベルではないですね。

 上の表から,全国どこにおいても,非正規公務員はプアであることが分かります。

 非正規公務員は女性が多く,夫の扶養内で就業調整してる人がたくさんいるんじゃないの,という疑問もあるでしょうか。別の統計表にて,公務員の週間就業時間の分布をとってみると,そうでもないようです。


 就業時間が分かる公務員のデータですが,正規も非正規も,最頻階級は35~42時間ですね。非正規も,フルタイム就業の人が最も多くなっています。35時間以上のフルタイム就業の割合は全体の35.6%,3人に1人です。

 お店のパートとは違い,公務員となると,非正規もそこそこ労働時間が長いことが知られます。専門的な業務も多く,無給の残業をしている非正規の人もいるのではないでしょうか。にもかかわらず,年間所得は先ほどみたように200万,地域によっては150万にも達しません。ブラック労働撲滅の旗振りをする「官」の世界でこうであるとは,開いた口がふさがりません。

 冒頭のNHK記事によると,役所の非正規職員は,今では会計年度任用職員というみたいです。ボーナスも支給されるなど待遇改善もされているようですが,まだまだ不十分であることは政府も認めています。

 フレキシブルな働き方が求められる中,非正規雇用者の待遇改善は急務。いや,そもそも「正規・非正規」なんていう区分が他国に例を見ないおかしなものであって,職務内容や労働時間に依拠して給与が決まる,素直なシステムに変革すべきです。それと最も隔たってるのが「官」の世界であるとは,何とも皮肉なこと。

 改革が必要なのは,データでも明らかです。

2021年6月16日水曜日

男性の育児休業

  育児・介護休業法が改正され,男性の育休取得が後押しされることになりました。制度の細かい変更事項については,厚労省のホームページに譲りましょう。

 こういう法改正は,世の中の声(世論)に押されてのことであるのは,疑いようがありません。それほどまでに,日本のパパの育休取得状況は酷い。育休取得を申し出た男性社員に対し,「男が育休だと?ふざけんな」という怒号が全国の会社で飛び交っています。

 いわゆる会社(上司)の無理解ですが,これを正さない限り,法を変えても,男性の育休取得促進は難しいのでは,という懸念も出ています。私もそう思いますが,男性の育休取得を阻んでいる要因としては,もっと大きなものがあります。

 それは後述するとして,まずは男性の育休取得の実態をデータで可視化しましょう。ここでお出しするデータの特徴は,他国と比較することです。

 内閣府の『少子化社会に関する国際意識調査』(2020年度)では,20~40代の子持ちの有配偶男性に対し「直近の子が生まれた時,出産・育児に関する休暇をとったか」,同じ条件の女性に対し「直近の子が生まれた時,あなたの配偶者は出産・育児に関する休暇をとったか」と問うています。「とった」と答えた人に対しては,その期間も尋ねています。

 日本のデータをみると,「とった」と答えた人の割合は17.9%で,取得した休暇の期間は「2週間未満」が82.3%と大半で,「6か月以上」という長期は6.2%しかいません。

 育休とりましたか? とった人はその期間を答えてください。二段階(枝分かれ)設問ですが,上記の結果をグラフでどう表現したものでしょう。できれば一つで視覚化したい。対象者全体を正方形に見立て,横軸で育休の取得の有無(とった,とらなかった),縦軸で育休期間を示しましょう。

 以下は,調査対象の4国の結果を,この方式で図示したものです。


 どうでしょう。横軸をみると,日本のパパの育休取得率が低いことが知られます。上述のように日本は17.9%ですが,フランスは58.6%,ドイツは63.0%,スウェーデンに至っては86.7%です。すごい違いですね。

 次に縦軸を見ると,日本の育休期間は2週間未満が多くを占めますが,他国はもっと長く,スウェーデンでは半分近くが半年以上の長期です。これも「!」ですね。グラフで見ると,日本の情けなさが露わになります。「こんなだから,日本は少子化が進むんでねえの」という声が聞こえてきそうです。

 はて,どうしてこんな状況になっているのか。育休をとらなかった男性,夫が育休をとらなかった女性にその理由を複数回答で訊いた結果をみると,日本では,1位が「業務が繁忙で休めなかった」(39.4%),2位が「出産・育児の休暇制度がなかった」(37.4%),3位が「休むことによる減収が怖かった」(26.2%)です。上司の無理解より,こうした理由が大きくなっています。

 2番目は何なんでしょう。「育休の制度がない」って,法律では規定されていることなんですが。おそらく自分の勤務先の会社にない,就業規則に書いてない,ないしは育休取得を申し出たところ「そんな制度はウチにはない」「法律の育児休業は大企業に適用されるもので,ウチみたいな零細企業にはない」とか言われたのでしょうか。

 こんな思い込みを持たされているとしたら恐ろしい。法で定められている育児休業は,全ての労働者に適用されるものです。人が属する集団(社会)にはレベルがありますが,全体社会のきまり(法律)よりも,自分が属する小社会(会社)の決まりが優先されると思っているのでしょうか。

 所属集団の流動性が低い日本では,こういう思い込みが蔓延っています。ウチ社会とソト社会の敷居が高いことに由来する,と言ってもいいでしょう。たとえば学校での教師の暴力(体罰)は等閑視されますが,一般社会の刑法に即せば立派な暴行罪(傷害罪)です。学校の外で子どもを叩いたら即110番。しかし学校という部分社会の内部では,全体社会のきまり(法)は適用されない。こういう治外法権の小社会では,世間一般の感覚では理解しがたい「ブラック校則」も幅を利かせています。

 ウチの会社には育休制度なんてない。こういう思い込み(刷り込み)は,子どもの頃より,世間ずれした学校での決まり(校則)を絶対視するよう強いられてきたことによるかもしれませんね。

 しかし状況は変わってきていて,文科省がブラック校則を見直すよう通知を出しましたし,学校での教師の体罰も警察沙汰になるようになってきました。ウチ社会とソト社会の敷居も崩れつつあります。これが進み,労働者が冷静・適正な判断ができるよう願ってやみません。

2021年5月31日月曜日

じょうごグラフ

 知られざること,ないしは誰もが肌で感じていることをデータで可視化して示すのが,私の商売です。同時に可視化の方法,データの表現技法にも気を配るようにしています。

 エクセルに「じょうごグラフ」というツールがあります。横方向の棒(バー)で量を表現するのですが,通常の棒グラフと違うのは,バーがセンタリングされていることです。グラフの様が,大きい口から小さい口へと液体を流し込む「漏斗」に似ていることから,じょうごグラフと言われます。

 今や広く知られているデータも,このグラフで表現してみると結構インパクトがあります。たとえば,人口の年齢構成です。


 左は『国勢調査』の初年の1920(大正9)年,右は将来推計がとれる最も遠い年次の2065年のデータです。140年の隔たりがありますが,人口の年齢構成の変化はあまりにも大きい。1920年では0~4歳が最多でしたが,2065年では一番上の85歳以上が最も多くなっています。双方とも13%ほどで,人口ピラミッドの型がひっくり返っていることが知られます。

 その人口ピラミッドを,じょうごグラフで表現してみます。2つの年次の年齢%をじょうごグラフにして,重ね合わせます


 下が厚く上が細いピラミッド型から,その反対の逆ピラミッド型に変わります。グラフをセパレートではなく,重ねてみるとインパクトありますねえ。

 2065年といったら,今から44年後,私は90歳近くになっています(そんなに生きてないでしょうが)。人口の4人に1人が,今でいう75歳以上の後期高齢者。ドローンが空を飛び,AIロボットが闊歩し,外国人も街に溢れ返っていることでしょう。

 あと一つ,労働者の年間所得分布を同じ図法で表してみると面白い。1000人以上の大企業に勤務している従業員のデータです。男性と女性に分けると,分布にものすごい差があります。男性にあっては23%が所得800万以上ですが,女性はたった1.7%です。その代わり女性では,所得200万未満が53%と半分以上を占めます。同じ大企業なのに,とてつもない差です。

 男女の所得分布(%値換算)を,上記と同じ「じょうごグラフ」で表現し,重ねてみると以下のようになります。


 何も言いますまい。「搾取」という語が真っ先に浮かびます。大企業の利潤は,女性の安い労働力に支えられていると。

 人口の年齢ピラミッド,労働者の所得ピラミッド…。普通は,ヨコの棒グラフでヒストグラム形式で表すのですが,じょうごグラフというニュータイプのグラフを使うと,インパクトあるものに仕上がりますね。

 今後もいろいろ試行錯誤を重ね,表現技法のバリエーションを増やしていこうと思います。

2021年5月23日日曜日

大卒者の出身県定着率

  大学進学率は時代と共に高まり,今では同世代を半分(50%)を超えます。地域格差は大きいものの,地方でも進学率は高まってきています。47都道府県の大学進学率は本ブログで毎年出しています。2020年版は,コチラの記事をご覧ください。

 さて,地方の親の関心事は,都会の大学に出したわが子が帰ってきてくれるかです。行政にしても,東京や大阪の有力大学に進学した生徒が,将来地元に帰ってきて,地域の発展に尽くしてくれるかは,大いに関心があるところでしょう。

 私は鹿児島県の出身で,高3のクラスの半分以上が県外の大学に進学したと記憶してますが,どれくらい戻ってきているのでしょう。私みたいに帰ってない者もいれば,今や県庁の管理職になって,郷土にバリバリ尽くしている人もいます。たとえば,バスケ部のキャプテンだったUくん・・・。

 2017年の総務省『就業構造基本調査』によると,同年10月時点において,鹿児島県に住んでいる大学・大学院卒の40代前半男性は1万5700人です(★コチラの統計表)。

 2017年の40~44歳というと,私の世代ですが,1992~96年に大学に進学にした世代です。鹿児島県の高校出身の大学入学者(男子)は,1992年春が4270人,93年春が4519人,94年春が4219人,95年春が4375人,96年春が4467人となっています。(文科省『学校基本調査』)。5年間の合算は2万1850人ですね。上の世代の入学者(浪人経由者)も含んでますが,当該世代からも同数の浪人経由者が出ると仮定しましょう。

 この世代の鹿児島出身男子からは,高卒時に2万1850人(a)の大学進学者が出ているのですが,40代前半になった2017年時点で,同県に住んでいる大卒男性は1万5700人(b)です。2つの数値に隔たりがあるのは,都会の大学に進学したが戻っていない,ないしは地元の大学(鹿児島大など)を出た後,他県に就職したという人がいるためです。

 大卒者のどれほどが地元に定着しているか? この度合いは,上記のbをaで割って出すことができます。%にすると71.9%ですね。当該世代の大卒者の自県定着率と呼んでおきましょう。鹿児島県の私の世代の男子だと,こんな感じです。

 東京だと,92~96年の都内高校出身の男子大学入学者は19万4655人,2017年の都内在住の40~44歳男性の大学・大学院卒者は29万9400人です。他県から都内の大学に進学してくること,他県からの大卒者が就職時にどっと流れ込んでくることから,大卒者の量はうんと膨れ上がります。

 私は同じやり方で,各県出身の大卒者の自県定着率を計算してみました。47都道府県について,私の世代の男子と女子の数値をはじき出しました。結果の一覧は以下です。


 2017年の40~44歳,すなわち私の世代の試算値です。高卒時(1992~96年)の各県出身の大学進学者数と対比して出した結果です。

 都市部では膨らんで,地方では萎むというのが道理です。しかしその程度は,県によってまちまちです。大卒者の自県定着率が60%未満の数値に,青色のマークをしました。定着率が最も低いのは,男性は長崎の50.8%,女性は秋田で49.9%ですね。

 都会の大学に行った人が戻ってこない,自県の大卒者が県外就職してしまう。このどっちが大きいのかは分かりませぬが,自県出身の大卒者の半分ほどしか県内にとどまっていないというのは,才能の流出が大きいのだなと思わされます。大卒者の受け皿がない,という事情があってもです。

 性差をみると,「男性<女性」の県が多くなっています。女性の場合,自県大学進学率,自県内就職率が高いためでしょう。しかしその反対の県もあり,私の郷里の鹿児島をみると,男性が71.9%,女性が55.2%と,「男性>女性」の度合いが最も大きくなっています。大卒者の自県定着率,男性と女性の差が大きいのですねえ。

 都会の大学を出た女子は帰ってきづらいのか,県内の大学を出た女子が出て行ってしまうのか。大卒の女性への眼差しについて,ニューズウィーク日本版に試論を載せましたので,リンクをはっておきましょう。

 各県出身の大卒者のどれほどが,40代になって自県に住んでいるか。試算値の提示です。

2021年5月16日日曜日

政令市格差

  前に何かの記事で,「ヨコハマ格差」という言葉を目にしたことがあります。横浜市内の区別の平均年収を提示してです。

 横浜市は国内最大の政令市で,面積も三浦半島全体より広し。この大都市を一括りにして論じるのは,いかにもおかしい。横浜市内には18の区がありますが,世帯の年収を区ごとに出してみるとかなりの差があります。

 県よりも下った細かい地域レベルの世帯年収は,総務省の『住宅土地統計』で知れます。★コチラの統計表では,9区分による世帯年収分布が明らかにできます(2018年)。私は横浜市内の普通世帯(主世帯)の年収分布中央値を区別に計算し,昨日,ツイッターで発信しました。

 大都市内部の格差は興味深いということで,多くの方が見てくださり,「他に見てみたい政令市はあるか?」と問うたところ,名古屋市,仙台市,大阪市など,多くのリクエストが寄せられました。この記事にて,まとめてお答えいたしましょう。

 私は国内の21の政令市について,普通世帯の年収分布の中央値を区別に計算しました。元の資料は,上記リンク先の統計表です。度数分布から中央値を出すやり方については,本ブログで何度も説明していますので,ここでは触れません。

 まずは,全体の構造を俯瞰できる図をご覧いただきましょう。各政令市の区別の世帯年収中央値を,縦軸の目盛りに沿って位置付けたグラフです。


 最も高いのは,横浜市の都筑区で622万円となっています。都内のマックスの千代田区をも上回るのですね。横浜市の区別の世帯年収中央値は,最高の622万円から最低の374万円までの開きがあります。これぞ「ヨコハマ格差」,この大都市の住民を一概に論じられそうにはありません。

 では,具体的な数値を見ていただきましょう。まずは札幌市から浜松市までです。各政令市の区別の中央値を,高い順に並べています


 札幌市は,中央区の年収が高いかと思いましたが,単身学生とかが多いため,全世帯でみると中ほどなのでしょうか。今回の分析では,世帯主の年齢まで統制できないのがネックです。

 東京23区はさもありなんですね。川崎市は,麻生区が2位ですか。私は多摩市に住んでいた頃,この区を通る小田急多摩線を使っていましたが,車窓をみると,小奇麗な家が碁盤の目のように並んでいました。

 次に,名古屋市から熊本市までです。


 どうでしょう。各区の経済力は,住民の健康指標や子どもの学力などと強く相関していると思われます。前にやったところ,大阪市内24区の経済力と寿命なんかは,とても強く相関していましたね。
https://tmaita77.blogspot.com/2018/04/2015.html

 今回のデータは,世帯の年齢層を統制できていない,ラフな全世帯の年収中央値ですが,経済力を媒介にした不平等の可視化に,いくぶんかは使えるかもしれません。あまり明らかにされていない政令市内部の格差として,データをみていただければと思います。

2021年5月14日金曜日

所得と貯蓄のクロス

 気温が上がってきました。今日の横須賀のマックスは25度,半袖を着て,久里浜の床屋に行ってきました。

 さて生活のゆとり(富裕度)の指標としての所得については,いろいろな角度から分布や中央値を明らかにしてきました。しかし入ってくるおカネ,収入面をみるだけというのでは不十分です。いざという時への備え,湯浅誠さんの言葉でいうと「溜め」がどれほどあるかも,合わせて見ないといけません。

 2019年の厚労省『国民生活基礎調査』にて,年間所得階級と貯蓄額階級のクロス表の形で,世帯数を呼び出すことができます。★こちらのページの表160です。


 私は原資料の表を,「所得階級13 × 貯蓄階級12」の形に整理し,各セルに該当する世帯数をグラフで可視化してみました。最近ツイッターでよく出している,ドットグラフです。ドットの大きさを使って,2変数のクロス表のデータを表現します。

 ツイッターでも出しましたが,ブツを見ていただきましょう。


 横軸は所得,縦軸は貯蓄額の階級で,この2つの組み合わせの各セルに該当する世帯数が,ドットの大きさで表されています。

 ぱっと見,所得が少なく貯蓄も少ない困窮世帯(左下)が多いことが分かります。所得300未満,貯蓄200万未満の世帯(緑の枠囲い)は全体の15.1%に該当します。7世帯に1世帯です。その一方で,右上の富裕世帯(所得たっぷり,貯蓄ガッツリ)も結構あります。社会の富の格差も見取れますね。

 所得が少なくが貯蓄はたくさんある世帯は,リタイアしている高齢世帯でしょう。

 赤マルは,所得・貯蓄とも100万未満の世帯で,生活困窮のレベルが甚だしく,生活保護の対象のレベルです。全体の3.2%に相当し,2019年1月時点の全世帯数(5853万世帯)にかけると,実数で187万世帯ほどと見積もられます。

 現実の生活保護受給世帯数はどうかというと,2019年の1か月平均でみて約164万世帯です(厚労省『被保護者調査』)。うーん,やっぱり日本の生活保護は困窮世帯を十分に掬えて(救えて)いないようです。日本の生活保護の捕捉率の低さは,よく指摘されること。

 あと一つ特記すべきこと。「日本で一番多い世帯は?」という問いへの答えです。上記のグラフのドットサイズから,答えは「所得100万円台,貯蓄ゼロの世帯」ということになります。単身非正規の若者,ないしはカツカツの暮らしをしている高齢者世帯でしょう。強烈な現実です。

 これでは経済も回らないというもの。これでいて企業の内部留保が過去最高というのですから,開いた口がふさがりません。モノが売れなくなり,必ずや自分たちにも跳ね返ってきます。

 所得と貯蓄のクロスで,日本の世帯数分布を可視化してみると,怖い現実が露わになりますね。できれば年齢層別に出して,若年層,中年層,高齢層でドットの色分けもしたいところです。