2012年6月4日月曜日

国別の幸福度カルテ①

各国の幸福度を測る指標として,OECDの"Better Life Index"があります。5月25日から28日の記事では,最新のBLIを使って,日本を含む10か国の幸福度カルテをつくってみました。
http://www.oecdbetterlifeindex.org/

 しかるに,BLIの対象国は全部で36か国です。残りの国のカルテはどうか,という関心もあろうかと思います。今回から3回かけて,全対象国の幸福度カルテを出してみようと存じます。幸福度カルテとは,収入,住居,ワーク・ライフ・バランスなど,多様な側面から各国の幸福度を捉えることのできるレーダーチャート図です。

 いきなり図を出しても??でしょうから,製作工程をご説明します。OECDのBLIでは,11の項目を設け,それぞれの面の幸福度を測る統計指標を取り上げています。合計24指標。たとえば収入(Income)の項目は,世帯収入と世帯金融資産の2指標で測るとされています。下表は,日本の各指標の値を整理したものです。


 収入の指標は,世帯の平均年収が23,458ドル,平均金融資産が71,717ドルです。教育の指標は,生産年齢人口の高卒以上比率が92%,平均在学年数が18.2年,PISA平均点が529点なり。ほか,云々・・・。

 この原資料を加工して,11の項目ごとの幸福度が分かる統計をつくります。やり方としては,各項目の指標を合成することになります。収入なら2指標,仕事なら4指標の数値を合成するわけです。

 ですが,水準や単位を異にする指標を合成することはできません。そこで,それぞれの指標の値を,0.0~1.0までの範囲の標準スコアに換算します。OECDの資料(上記サイト)では,次のような計算式が提示されています。

(当該国の指標値-全対象国の最小値)/(全対象国の最大値-全対象国の最小値)

 たとえばPISA平均点でいうと,36か国中の最大値はフィンランドの543点,最小値はブラジルの401点です。よって,日本のスコアは,(529-401)/(543-401)=0.901となります。フィンランドは1.00,ブラジルは0.00となります。このスコアは,全対象国の中における当該国の位置を示す相対的なものといえます。

 なお,▼印のついたネガティヴ指標は,上記式で出した値を1.00から差し引く処置をします。ひっくり返すわけです。こうすることで,ネガティヴ指標についても,スコア値が高いほど好ましいという意味合いを持たせることができます。

 日本の24指標の実値をスコア化したものが,上表の右欄の数値です。このスコアは,値が高いほど(1.0に近いほど)好ましいことを意味します。収入の面の幸福度は,世帯収入と金融資産のスコアを平均した値(0.608)とします。仕事は4指標のスコア平均,住居は3指標のスコア平均,・・・以下同じです。

 さあ,これでカルテの元データができました。項目ごとのスコア平均値をレーダーチャート図にしたのが,幸福度カルテなのです。日本の場合,以下のような図形になります。5月25日の記事でも出した図ですが,再掲します。


 わが国の場合,教育や安全面の幸福度が高いことが特徴です。一方,WLバランスや生活満足の面は凹んでいます。この部分を是正し,もっと円満な型にしたいものです。

 それでは,36か国のうち,12か国のカルテをみていただきましょう。アルファベット順の国名配列の最初の12か国です。国名の隣の数値は,24指標のスコアの平均値です。各国の総合的な幸福度の尺度とお考えください。この値が0.7を超える場合は,図形の色をピンク色にしています。


 まずは前半の6か国。南米の2国と他の4国の差が際立っています。ブラジルとチリは,収入が極端に凹んでいます。ブラジルは安全面も。総合的な幸福度も0.4台と低いのですが,その割には,人々の主観的な生活満足度が高いのが注目されます。他の4国は,おおむね円満な型です。

 次に,後半の6か国を。仏独と東欧・北欧の国です。


 チェコとエストニアは,図形の面積がやや小さくなっています。社会主義の伝統が濃い国ですが,投票率や協議による政策決定のような,社会参画の面の凹みが目立ちます。革命の国フランスも然り。ドイツも。ちょっと不思議な感じがします。

 北欧の2国は,収入面を別にすれば円満型です。デンマークは生活満足度が1.00でマックス,36か国中最高です。WLバランスもバッチリ。わが国も見習いたいものですね。

 次回は,これに続く12か国のカルテを展示します。中東のイスラエル,中米のメキシコなど。ではでは。