2012年6月19日火曜日

都道府県別のワーキングプア出現率

総務省『就業構造基本調査』から,就労している者の年間所得分布を知ることができます。年間所得とは,「本業から通常得ている年間所得(税込)」だそうです(用語解説参照)。最新の2007年調査から,15歳以上の有業者(パート,バイト等含む)の所得分布を明らかにすると,下図のようです。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/NewList.do?tid=000001017285


 この年の15歳以上の有業者数は,およそ6,600万人です。その年収分布を出すと,300万円台が12.9%と最も多くなっています。平均値も,この階級に含まれるとみてよいでしょう。有業者の平均年収が300万円台・・・。「低い」という印象を受けます。

 これは,パートやバイトを含めているからだろう,といわれるかもしれません。しかし,雇用の非正規化が進んでいる現在,こうした就業形態は無視できるものではありません。パートやバイトは,以前は「家計の補助」的な意味合いを持っていましたが,今日では,それをメインにして生計を立てている(立てざるを得ない)者も多いと思います。

 さて,ここで注目したいのは,年収が200万円に満たない層です。レッテル貼りはよくないですが,この層は,いわゆる「ワーキングプア」であると解されます。就労しているにもかかわらず,最低限の生活を維持するだけに足りる収入しか得られない者のことです。

 上図をみると,こうしたワープアが,有業者全体の33.7%を占めていることが知られます。実数にすると,およそ2,200万人。現代日本では,働く人間の3人に1人がワープアです。

 このことはメディアでもよく報じられているので,ご存知の方も多いでしょう。しかるに,地域別にみるとどうでしょう。たとえば,東京と私の出身の鹿児島では,ワープア率にかなりの差があると思われます。

 ざっと調べたところ,この点はあまり明らかにされていないようです。上記の『就業構造基本調査』の県別データにあたって,都道府県別のワープア率を計算してみました。15歳以上の有業者全体と,私が属する30代の有業者について,比率を出しています。


 まず有業者全体をみると,ワープア率の全国値は33.7%ですが,県別ではかなりの開きがあります。最も高いのは沖縄の49.9%,最も低いのは東京の26.5%なり。何と何と,沖縄では働く人間の半分がワープアです。

 ワープア率が40%を超えるのは,青森,岩手,秋田,佐賀,長崎,宮崎,鹿児島,そして沖縄の8県です。いずれも,地方の周辺県となっています。地方は所得水準が低いので,予想されることではありますが,東京とこれほどまでに違うとは。

 次に,私と同年齢の30代についてみると,まあ働き盛りの年齢層ですから,ワープア率は全体と比したら低くなっています。しかるに沖縄では,30代の有業者でも,5人に2人がワープアです。東京の15.7%の倍以上です。

 最後に,有業者全体の県別ワープア率を地図化しておきましょう。私は「視覚人間」ですので,こういうオマケをつけたくなります。


 5%刻みで塗り分けてみました。3割未満(白色)は,東京と神奈川のみ。4割を超える黒色は,北東北や南九州に固まっています。全体的にみて,都市よりも地方で高い傾向です。

 最近,生活保護へのバッシングが強まっていると聞きます。「働いている俺たちよりも,保護受給者のほうが高い金をもらっている」・・・。こういう声は,とりわけ上図の黒色の地域で強いのではないかしらん。

 昨年の12月11日の記事では,生活保護受給者の自殺率を出したのですが,この値の県別数値は,今回のデータとリンクするのではないかなあ。私には検討する手筈はありませんが,内部データをお持ちの厚労省の担当者さま,よろしければご検討のほど。