2012年12月14日金曜日

東京都内の地域別・年齢層別の単身率

 前回は,東京都内の地域別の単独世帯率を計算しました。今回は,年齢層別に,独り身の人間がどれほどいるかを明らかにしてみようと思います。

 まずは,東京都全体について,私が属する30代の単身者率を出してみましょう。2010年の総務省『国勢調査』によると,世帯主の年齢が30代の単独世帯数は58.6万世帯です。この数は,同年齢層の単身者の数と同義です。
http://www.stat.go.jp/data/kokusei/2010/index.htm

 同資料から分かる,東京の30代人口は220.2万人。したがって,東京の30代の単身率は26.6%と算出されます。大都市の東京では,30代の4人に1人が,一人暮らしの単身者です。ちなみに,私もこのうちの一人なり。

 同じやり方で,他の年齢層についても単身率を出してみると,下表のようになります。


 単身率は若年層で高く,その後は家庭を持つ者が増えることから,率は下がります。しかるに,50代のボトムにして,単身率は再び増加に転じます。子どもが一人立ちし,配偶者と死に別れることになるためです。

 20代の単身率は,38.1%と高くなっています。東京では,20代の若者の5人に2人が単身者です。でもまあ,地方から上京してきている学生も少なからずいるでしょうから,こんなもんでしょうか。

 ところで,今みたのは都全体の数値です。都内の地域別に率を計算したら,もっとスゴイ値が出てくると思われます。私は,島嶼部を除く53市区町村について,年齢層別の単身率を明らかにしました。前回は結果を地図で表しましたが,今回は資料的意味合いを込めて,ベタな一覧表の形で提示します。ソースは,2010年の『国勢調査』です。


 全地域の最大値には黄色,最小値には青色のマークを付しました。20代の単身率のマックスは,新宿区の56.3%です。ほか,20代の単身率が50%を超えるのは,千代田区,文京区,渋谷区,中野区,そして豊島区なり。これらの区では,20代の住民の半分以上が,一人暮らしの単身者であることが知られます。他の年齢層でみても,単身率は地域によってかなり異なることに注意しましょう。

 一人暮らしは,別に悪いことではありません。ですが,同居者がいないという物理的な条件によって,家庭の重要な機能の一つである,情緒安定機能を享受できない面があるのは確かでしょう。心理的虚無感や視野狭窄の状態に陥り,自らを傷つける,最悪の場合は殺めるというような,内向的な逸脱行動の発生因にもなり得ます。

  前回の記事では,単独世帯率が高い地域ほど,自損行為の発生頻度が高い傾向にあることをみました。さて,上表で明らかにした年齢層別の単身率と自損行為率の相関をとった場合,相関係数が最も高くなるのは,どの年齢層でしょう。この点を吟味することは,孤独と自損行為の関連が強い,要注意の年齢層を知ることにつながります。

 11月24日の記事では,2011年中に,自損行為がもとで救急車で搬送された者が人口のどれほどを占めるかという,自損行為搬送人員率を都内の地域別に出しました。この指標は,自殺未遂の発生頻度を表すものと読んでもよいと思います。

 私は,稲城市と郡部の4町を除く48市区の統計を使って,年齢層別の単身率と自損行為搬送人員率の相関係数を出してみました。結果は,以下のごとし。

 20代の単身率と自損行為率の相関 ・・・ +0.232
 30代の単身率と自損行為率の相関 ・・・ +0.394
 40代の単身率と自損行為率の相関 ・・・ +0.456
 50代の単身率と自損行為率の相関 ・・・ +0.514
 60代の単身率と自損行為率の相関 ・・・ +0.509
 70代の単身率と自損行為率の相関 ・・・ +0.522
 80代以上の単身率と自損行為率の相関 ・・・ +0.328

 大よその傾向でいうと,孤独と自損行為の関連は,年齢を上がるほど強くなります。相関係数が最も高いのは,70代の+0.522です。この年齢層に限定して,両指標の相関図を示しておきましょう。


  高齢層は,多くが職をリタイヤしています。これに単身(一人暮らし)という条件が加わると,家庭と職場という,2つの基本集団が剥奪された状態になります。なるほど。高齢層ほど,単身と自損行為の関連が強いという傾向,さもありなんです。

 これから先,独り身の高齢者はますます増えてくることでしょう。このことは,自殺増加の条件にもなり得ます。地域の高齢層を組織化する,人為的な施策も求められるようになると思われます。

 なお,若年層や中年層においても,独り身と自損行為の間に正の有意な相関があることにも注意が要ります。

 孤族化は,私事化と表裏をなす,不可避の社会変化であるともいえます。こうした状況にあっては,家族や職場のような伝統的集団とは異なる,「第3の集団」を創造することも求められます。現在,天変地異への警戒から,地域単位で防災集団等が結成される機運が高まっていると聞きます。こうした条件を上手く活かしていくことも,重要であるといえましょう。