2018年8月10日金曜日

大学別の医学部医学科入学者の女子比

 台風がきてちょっと涼しくなったかと思いきや,暑さがぶり返しています。いかがお過ごしでしょうか。今週もおしまい,来週は盆休みで,帰省される方も多いかと思います。くれぐれもお気をつけて。

 さて,東京医大の入試不正を受け,文科省は,全国の81大学の医学部医学科の調査に乗り出すそうです。同じような不正をしている大学がないとも限らない,膿を出し切ろう,という意図なのでしょう。男子より女子の合格率(合格者/受験者)が低い場合,説明を求めるとのこと。
https://www.asahi.com/articles/ASL8B3DQWL8BUTIL00R.html

 結構なことですが,既存の資料をもとに,「?」がつく大学を割り出すこともできます。医学部医学科入学者の女子比率を,大学別に出すことによってです。

 私の手元に,旺文社の『大学の真の実力・2018年度用』という資料があります。2017年春の入学者の詳細データが,各大学の学部別に載っているスグレモノです。私はこれを使って,医学部医学科の入学者の女子比を,大学別に計算してみました。
https://www.obunsha.co.jp/product/detail/051009

 郷里・鹿児島の鹿児島大学でいうと,昨年春の医学部医学科入学者は107人で,そのうち女子は36人となっています。比率にすると33.6%,ちょうど3人に1人です。

 他の大学はどうでしょう。81大学の医学部医学科の女子入学性比率を出してみました。以下に,一覧表を掲げます。国立42,公立8,私立31大学のデータです。東大と慶大は,女子入学者数が非公表のようですので,女子比率の欄はペンディングにしています。


 どうでしょう。79大学の医学医学科の女子入学者比率の平均値は,35.3%です。お医者さんの卵の3人に1人が女子,というのがアベレージです。

 しかるに,個々の大学ごとにみると幅があります。最低は東北大学の16.4%で,50%(半分)を超えるのは弘前大学と東京女子医科大学です。後者は女子大だから当然ですが,弘前大学はスゴイですね。

 上記の原表のデータを,5%階級の度数分布の形に整理すると,以下のようになります。


 30%台前半に山があるノーマル分布ですが,上もあれば下もあり。気になるのは後者で,女子比率が25%に満たない大学が11校,20%に満たない大学が5校あります。20%未満の大学は,すべて国立大学です(北から東北大,金沢大,山梨大,京都大,九州大)。

 はて,どういう理由によるのか。そもそも女子の受験者が少ないといった,自然の摂理によるのか。しからば,受験者と入学者の性別構成が近似しないといけない,言い換えれば合格率の性差がないはずですが,現実はどうでしょう。

 上記の一覧表の赤字は,入学者の女子比率が25%未満の大学ですが,一番上の北海道大学は,入試の詳細データをHPで公開しています。男女の受験者が何人,合格者が何人かです。2014年度から2018年度入試の時系列データも出ています。
https://www.hokudai.ac.jp/admission/exam/post.html

 私は受験者数と合格者数を採取し,後者を前者で割った合格率を男女別に出してみました。下表は,その結果です。


 過去5年間の入試の記録ですが,どの年度でも女子の合格率は男子より低くなっています。今年春の入試では,男子35%,女子20%と,15ポイントも差が開いています。

 女子は理系教科が得意でないといった,能力の差によるのか。この点について,文科省から説明を求められることになるでしょう。男女の点数一覧表を見せればいいだけのことですが,問題の東京医大では,女子の二次試験の点数に排除係数(0.8)をかけるという,操作が行われていました。

 これは北大のデータですが,入学者の女子比が最も低い東北大学では,合格率は女子のほうが高くなっています。よって,女子の志願者そのものが少ない,というファクターが濃厚です(過去の年次では不明)。
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/profile/about/06/about0602/

 最初の表は,資料としてご覧いただければと存じます。「?」と思った大学については,HPに当たって,男女別の合格率を出してみてください(女子の数は非公表の大学も多いですが)。

 81の大学を対象とした文科省の調査で,どういう結果が出るか見ものです。

2018年8月8日水曜日

専門職・指導者層の女性比

 ブロゴスにて,「東京医科大の女性差別入試 主要国最悪の女性差別オンパレードの日本 VS 男女平等が成長の原動力の北欧」という記事が目にとまりました。筆者は,国家公務員一般労働組合の井上伸さんです。
http://blogos.com/article/315924/

 「女性差別オンパレード」という強烈な文言が含まれていますが,そのデータを「これでもか」というくらい提示しています。専門職・指導者層の女性比率の国別ランキングで,その数10個なり。(  )内は,最高と最低の国です。

 ・医師の女性比率(ラトビア74.2% ~ 日本21.0%)★
 ・研究者の女性比率(アイスランド45.6% ~ 日本15.3%)★
 ・高等教育の女性在学率(アメリカ99.6% ~ 日本60.9%)
 ・高等教育教員の女性比率(リトアニア56.1% ~ 日本26.8%)★
 ・国会議員の女性比率(アイスランド47.6% ~ 日本9.3%)★
 ・国家公務員の女性比率(ポーランド69.3% ~ 日本17.6%)★
 ・国家公務員・上級管理職の女性比率(ラトビア54.0% ~ 日本3.1%)
 ・国家公務員・中間管理職の女性比率(ラトビア65.8% ~ 日本3.0%)
 ・上場企業の取締役の女性比率(アイスランド44.0% ~ 韓国2.1%)★
 ・裁判官の女性比率(スロベニア78.0% ~ 日本20.0%)★

 私は,この手のデータをいじりまくっているので驚きもしませんが,初めての人はぐうの音も出ないでしょう。

 これをもって,男女の意志や能力の違いによると解釈する人は,頭がお花畑の人です。女子の入試点数を意図的に減点していた,東京医大の不正からも明らかなこと。

 上記のグラフは,井上氏がOECDの原資料から取ってこられたもので,どれもインパクトがあります。これを10連発ですので,説得力抜群です。紙幅に制限のないブログは,こういうこともできていいですよね。

 ただ紙幅に制限がある場合,それは難しい。依頼原稿の場合,「図表は*個まで」という制限が付されるのもしばしばです。また,結果を一つのグラフの中で一望したい,という欲求もあるでしょう。

 私なら,タテの目盛り上に各国のドットを配置したグラフにします。上記で★をつけた7項目の国別データを,この方式でグラフ化すると,以下のようになります。


 どうでしょう。複数の指標からみた,日本のお寒い状況が一望できます。一つ一つの細かい国名は分かりませんが,自分が注目したい国の位置を俯瞰するには,この図法がいいと思います。

 図には50%のラインを引きましたが,医師の女性比率がこの線を超える国は結構あるじゃありませんか。32か国のうち10か国では,男性より女性の医師が多くなっています。

 家庭の負担が大きい女性が,医師の職務を全うするのは困難。こういう諦めから,東京医大の点数操作を容認する声もあるようですが,現状を甘受していいものか。家庭の負担が大きいなら,それを取り除く(サポートする),ないしは男性も分担すればいいだけのこと。医師の女性比率の国際差は,その度合いの差に他なりません。

 国際比較から,社会を変える余地は多分にあることが知られます。

2018年8月6日月曜日

学テの結果を教員給与に反映するなかれ

 今年度の『全国学力・学習状況調査』の結果が公表されました。関係者は,自分の自治体の順位に一喜一憂していますが,過剰な反応をしている首長もいます。
http://www.nier.go.jp/18chousakekkahoukoku/index.html

 大阪市の市長は,政令市の中で結果が最下位だったことを受け,学力テストの結果を教員給与に反映させることを検討する,と発表しました。

 一言でいうと,一番やってはいけない使い方です。こういうことを言い出す人がいるから,当局も地域別の結果を出すのを渋り,教育社会学者の研究が阻害されるのだよなあと,ため息が出ます。

 学テの結果は教員の力量を測る指標とみなされ,「学力=教師力」と発言した知事もいますが,現実はそう単純ではありません。教育社会学で繰り返し明らかにされているように,子どもの学力は,学校外の社会経済要因に強く規定されます。

 昨年度の『全国学力・学習状況調査』では,2013年度に続き,保護者の調査も実施されましたが,家庭の社会経済背景(SES)と学力の間に相関関係が見出されています。SESが高い子どもほど学力が高い,という傾向です。
http://www.nier.go.jp/17chousakekkahoukoku/kannren_chousa/hogosya_chousa.html

 逆をとると,家庭背景に恵まれない層は結果が芳しくない,ということですが,大阪市にはこういう子どもが他地域に比して多くいます。それは,就学援助率の高さで知られます。2018年度の学テの学校調査をもとに,全国と大阪市の公立小の就学援助率の分布をグラフにすると,以下のようになります。全国は1万9378校,大阪市は289校のデータです。


 大阪市では,就学援助を受けている児童の割合が高い学校が多くなっています。就学援助率が2割(5人に1人)を超える学校が半分以上です。市長は,政令市で結果が最下位だったことにキレているようですが,就学援助率は政令市の中でマックスではないでしょうか。

 こういう条件があることからして,現場の教員だけを責めるというのは筋違いでしょう。

 各地域の学テの結果が,地域の社会経済指標と非常に強く相関することを実証した,一葉のグラフをお見せしましょう。東京都は独自の学力調査を実施していますが,私は都教委に情報公開申請をし,都内の49区市の平均正答率を入手したことがあります。2013年度のデータです。これを,2010年の『国勢調査』から出した高学歴人口率と絡めてみました。高学歴人口率とは,15歳以上の学校卒業人口のうち,大学・大学院卒が何%かです。

 横軸に高学歴率,縦軸に5年生の算数の平均正答率をとった座標上に,49区市を配置した相関図は以下です。日経DUALの記事で公表したものですが,ここに再掲します。
https://dual.nikkei.co.jp/article/092/99/


 住民の大卒率が高い地域ほど,算数学力が高い傾向が明瞭です。相関係数は+0.9を超え,前者から後者をほぼ正確に予測できるレベルです。

 私のこれまでの作品の中で,学力の社会的規定性を最もよく示すグラフだと思っています。これを見たら,「学テの結果を教員給与に反映する」などとやすやす言えまいと思うのですが,いかがでしょうか。

 注目していただきたいのは,足立区の位置です。当区はSESが低い子どもが多いのですが,そういう条件から期待される水準よりは高い結果を出しています(回帰直線より上)。足立区では,結果が振るわない学校の人員や予算を増やすなど,全体の底上げが図られているためでしょう。行政の力で,社会的不平等が克服されていることの好例です。
https://twitter.com/mushioda/status/1025582796302036992

 また学力調査の結果というのも,当該地域の社会経済特性を考慮した読み方をしたいものです。この基準からすれば,上記の足立区は「がんばっている」と評されるわけです。この点については,10年前に『教育社会学研究』という学会誌に載せた論文で主張しました。
https://ci.nii.ac.jp/naid/130006906303

 教員採用試験の教職教養では,教育社会学は出題されません。完全に「アウト・オブ・眼中」です。亡き恩師は,「現場の先生が『階層』なんていう言葉を使うようになったら困るからだろ」と言われていましたが,だとしたら悲しい。身も蓋もない言い方ですが,「階層」という変数を入れないと解けない問題もあります。

 まあ,今回の大阪市長の表明に批判が噴出しているのは,近年の教育社会学の研究成果にスポットが当たっていることの証左でもあるとは思いますが。

2018年8月4日土曜日

医師の女性比率の国際比較

 東京医大の入試で不正が発覚し,問題になっています。女子受験生の点数を減点していたとのこと。結婚・出産で辞める確率が高いので,女子が多くなっては困る。こういう意図だそうです。

 うーん。1960年代初頭に「女子学生亡国論」という議論がありましたが,それを彷彿させます。女性は家庭に入るので,多額の税金を費やして高等教育を受けさせるのは国の滅亡につながる。未だに,こういう時代錯誤の考えに囚われているのでしょうか。

 この理由付けとて怪しいことは後述しますが,日本の医師の女性比率が低いのは,公正な自由競争の結果ではないことが分かりました。

 OECDの「Health at a Glance 2017」という資料に,医師の女性比率の国際データが載っています。下記サイトにて,全文をPDFでダウンロード可能です。

 153ページの図6-2にて,34か国の医師の女性比率がグラフ化されています。元データをエクセルで呼出し,2015年の数値をランキングにすると,以下のようになります。


 ヨーロッパでは医師の女性比率が高く,西欧では4割,北欧・東欧では5割を超える国が多くなっています。対して東洋の日本は20.3%で,34か国の中で最下位です。

 このデータは前から知っていましたが,男女の医師志望率の違いや,公正な自由競争の結果ではなく,人為的に「作られた」ものであることがうかがわれます。

 「結婚・出産で辞めるから」という理由付けですが,他の職業も男性中心になっているかといえば,そうではありません。同じ医療・福祉産業の看護師や介護職員は,女性が圧倒的に多くなっています。以下の図は,2015年の『国勢調査』の職業小分類統計から作成したものです。


 しらゆきさんという方がこの点を鋭く突いておられ,多くの人の賛同を集めています。「女をのさばらせてたまるか,という思惑があるのでは」というリプがついていますが,こういう勘ぐりもしたくなります。

 医師のみならず,研究者,法曹,大学教員といった高度専門職の女性比率が低いことは,誰もが知っています。だいたい2割くらいです。


 上表は2015年10月時点の断面ですが,これがフェアな競争の結果であるのか疑ってみる必要がありそうです。医師については,人為的な不正があることが露呈してしまいました。

 女子受験者の点数を改竄する。この不正に対し,海外からも厳しい反応が寄せられています。「大学病院の運営のためには,男性がもっと必要だとの理屈だが,日本社会の時代錯誤的な女性観を表している」。まさにその通りです。

 東京医大の入試データを見ると,受験者では女子が4割です。操作される前の受験者でみると,欧州の医師の女性比率とほぼ同じというのも象徴的です。「不正がないならば…」。こう思う人も少なくないでしょう。
https://twitter.com/robo7c7c_2/status/1025836493070188544

2018年8月3日金曜日

都道府県別の大学進学率(2018年春)

 昨日,2018年度の文科省『学校基本調査』の速報結果が公表されました。
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00400001&tstat=000001011528

 学校数,生徒数,教員数といった基本データが載っている資料で,大学生の女子比率が過去最高になったなど,いろいろ報じられています。私はというと,この資料のデータが公表されたらまず,都道府県別の大学進学率を計算することにしています。毎年のことですので,本ブログを長くご覧いただいている方は「またか」とお思いでしょう。

 わが国の4年制大学進学率(以下,大学進学率)は,2009年に50%を超え,同世代の半分が大学に行く時代になって久しくなっています。昨日公表のデータによると,2018年春の大学進学率は53.3%だそうです。

 大学進学率とは,その年の大学入学者数を,推定18歳人口で割った値です。後者は,3年前の中学校・中等教育学校前期課程卒業者数が宛てられます。今年春の大学入学者は62万8821人で,3年前の2015年春の中学校・中等教育学校前期課程卒業者は117万9808人。よって大学進学率は,前者を後者で割って53.3%となる次第です。

 分子には上の世代(浪人)も含まれますが,今年春の18歳世代からも浪人経由で大学に入る者が同数出ると仮定し,両者が相殺するとみなします。毎度書きますが,これは私が独断で考えたやり方ではなく,公的に採用されている計算方法です。

 18歳人口ベースの浪人込みの大学進学率は53.3%。同世代の2人に1人が大学に行くことの,数値的な表現です。

 しかるにこれは全国の数値で,地域別にみるとべらぼうに大きい格差があります。上記と同じやり方で47都道府県の大学進学率を計算しましたので,それをご覧いただきましょう。県別に出す場合,分子は,当該県の高校出身の大学入学者数となります。


 黄色マークは最高値,青色マークは最低値です。上位5位の数値は赤字にしました。

 左端の男女計をみると,全国値は53.3%ですが,最高の72.7%から最低の37.6%までの開きがあります。東京の進学率は,沖縄の倍近くです。同じ国内とは思えぬほどの格差です。

 性別にみると,女子の大学進学率が最も低いのは,わが郷里の鹿児島ですか…。鹿児島は男子が43.4%,女子が34.1%とジェンダー差が大きくなっています(9.3ポイント)。数年前,本県の知事が「女子に三角関数を教えて何になる」と発言したのが思い出されます。最も性差が大きいのは山梨で,男女で15.7ポイントも違っています。

 逆に「男子<女子」の県もあり,四国の徳島は毎年そうです。自宅から通える女子大でもあるのか,大学以外の魅力的な中等後教育機関があり,男子の大学進学志向が相対的に小さいからなのか…。今年になって,首都の東京もこのタイプになっています(男子72.2%,女子73.2%)。自宅から通える大学がたくさんあるのが大きいでしょうね。

 表をざっとみると,大学進学率は都市部で高く,地方で低い傾向がみられます。当然といえばそうですが,地図にするとクリアーです。下図は,男女計の大学進学率で塗り分けたマップです。


 濃い色は50%を超える県ですが,その数は多くありません。同世代の半分が大学に行く,大学教育のユニバーサル化というのは,都市部に限った話です。

 この事実(fact)をどう見るかですが,皆が皆,大学に行かねばならないというのではありません。奨学金という借金だけを負わされ,後々人生を狂わされるようなFラン大に行くくらいなら,別の進路に進んだほうがいい,という考えもあります。

 県によって大学進学率が異なることは,各県の生徒の意向を反映した「差」であり,是正を要すべき「格差」ではないのかもしれません。「大学進学率の地域差なんてあって当たり前,何が悪いのか?」。こう言いたくなる人もおられるでしょう。

 しかしながら,各県の大学進学率は,社会経済指標ととても強く相関しているのも事実です。たとえば,県民所得が高い県ほど大学進学率は高い傾向にあります。地域移動も含め,進学にはコストがかかるのですから当然ですよね。

 これは経済的要因ですが,親世代の高学歴率とはもっと強く相関しています。親や地域の人が大学をどういうものと考えるか,子の大学進学に価値を置くかです。2017年の『就業構造基本調査』から,各県の45~54歳人口の大学・大学院卒比率を出し,上表の男女計の大学進学率との相関をとると,以下のようになります。


 右上がりの傾向が明瞭です。親世代に大学を出た人が多い県ほど,子世代の大学進学率が高い傾向にあります。相関係数は+0.8237にもなります。スゴイですねえ。

 他にも,地域に大学(定員)がどれほどあるかという大学収容力の要因も効いています。自宅から通えない場合,コストがかかる地域移動を強いられるのですから,進学率は低くなりますね。

 ざっと考えて,所得,親の学歴,大学収容力というファクターがあるのですが,これらを同時に取り込んだ重回帰分析によると,各県の大学進学率への影響が最も強いのは,2番目の親学歴のようです。ブルデューを引くまでもなく,文化資本の影響が大きいようです。

 なお,男子よりも女子の大学進学率のほうが,これらの社会経済指標の影響を強く被っています。さもありなんです。1人しか行かせられないならば男子優先,女子は自宅からでないとダメ,という家庭も多いでしょうし。郷里の鹿児島では,進学率のジェンダー差が大きいのですが,こういう風潮が強いのではないか。実体験に照らしても,分からないではありません。

 上記の相関図をみると,子どもの学力首位の秋田の大学進学率は低くなっています。福井の進学率も,さほど高くはありません。グラフは示しませんが,各県の子どもの学力テストの成績と大学進学率の間には,相関関係はナシです。地方には,埋もれた才能も多そうですね。

 各県の大学進学率は,子どもの能力よりも,社会経済指標と強く相関している。どうやら,大学進学率の地域差は,子どもの自発的な意志を反映した単なる「差」と片付けることは難しいようです。地方には,能力があり希望するにもかかわらず進学できない子が多い。こういう不平等の要素も含んでいると考えるべきでしょう。私は,今回のデータを,大学進学率の都道府県格差と呼ぶべきだと考えています。

 わが国の大学進学率は年々上昇し,50%を超えてから久しいですが,著しい地域格差を内包していることを忘れてはなりますまい。

2018年8月2日木曜日

新聞と学力

 2018年度の文科省『全国学力・学習状況調査』の結果が公表されました。例年より早い公表ですが,夏休み中に結果を分析してもらい,指導の改善に役立ててほしいとの意図だそうです。
http://www.nier.go.jp/18chousakekkahoukoku/index.html

 目ぼしい結果が各紙で報じられていますが,新聞を読まない子が小6で6割,中3で7割という報道が目にとまりました。今年は,新聞をどれほど読んでいるかという設問が設けられたようですね(児童・生徒質問紙の問25)。

 公立小学校6年生の回答分布をみると,ほぼ毎日が7.4%,週に1~3回が12.5%,月に1~3回が19.0%,ほとんど・全く読まないが60.9%,となっています。なるほど,小6児童では6割が新聞を読んでないようです。

 「ネットニュースを見るか」という設問が別にありますので,上記でいう新聞とは,紙の新聞に限られると思われます。今となっては,紙の新聞をとってない家庭も少なくないので,こういう結果になるでしょうか。私の頃も,新聞に目通しする子どもはそんなにいなかったように思います(私は結構読んでいましたが)。

 しかるに,上記の問いへの回答には地域差があります。注目されている,新聞を読まない小6児童の割合を都道府県別に採取し,高い順に並べてみました。全国値は上述のように60.9%ですが,47都道府県でみると幅があります。


 最高は大阪の70.6%,最低は福井の44.8%です。同じ6年生ですが,新聞を読まない子のパーセンテージには大きな地域差があります。

 上位と下位の顔ぶれをみると,新聞を読まない子の率は都市部で高く,地方で低い傾向がみられます。下位をみると日本海沿岸の県が多いですが,三世代同居率が高いので,新聞をとっている家庭が多い,ということかもしれません。

 ただ,下位の2県が学力上位常連の福井・秋田であるのは示唆的ですね。新聞を読むに越したことはないですが,活字を読む,世間の動きに触れることで,好ましい影響がもたらされているのでしょうか。あるいは学校にて,新聞を使った授業(NIE=Newspaper in Education)が盛んなのか。

 上表のデータを,各県の教科の正答率と関連づけてみると,有意なマイナスの相関関係が観察されます。個人単位でみても,新聞をよく読む群ほど学力が高い傾向にあります。読解力に限られません。

 最も分散の大きい,算数の応用科目(算数B)の正答率と絡めてみると,以下のようになります。新聞を読む頻度で小6児童を4群に分け,算数Bの正答率の四分位階層とクロスさせたものです。横幅を使って,4群の相対量も表現しています。上述のとおり,新聞を読まない子が6割でマジョリティです。


 ご覧の通り,きれいな右下がりです。新聞を読まない群ほど成績良好のA層が少なく,不良のD層が多くなっています。A層の率は,新聞を毎日読む群では52.9%ですが,ほとんど・全く読まない群では30.2%です。

 目下,新聞を読まない子が多数を占め,毎日読むという子は全体の1割もいません。ちょっと触れさせるだけで他を抜きんでられるチャンスと読めるかもしれません。

 しかるに,上図の相関が「新聞→学力アップ」という因果とは限りません。学力が高い児童は好奇心旺盛で新聞を読むという逆の経路もあり得ますし,新聞を読む子の家庭は裕福である可能性が高く,上記の相関は,出身階層と学力の関連が背後にある見かけのものかもしれません。

 家庭環境を統制しても,上記のような模様になるのであれば,新聞パワーをある程度認めてもいいと思いますが,それはなかなか難しい。

 ただ,OECDの国際学力調査「PISA 2009」のデータにて,それに近い分析をすることができます。私は日経DUALの記事にて,父親の学歴が大卒以上の生徒だけを取り出して,新聞を読む頻度と学力の相関を出したことがあります。
https://dual.nikkei.co.jp/article/094/45/

 該当の表のデータを,ここに再掲いたしましょう。


 父が大卒の生徒ですので,新聞を読む生徒が多くなっています(カッコ内の構成比)。また2009年のデータなので,当時はまだ,ネットよりも紙の新聞を読む子が多かったのかもしれません。

 さて,グループごとの平均点をみると,どの側面の学力も,新聞を読む頻度が多い群ほど高い傾向がみられます。きれいな傾向です。家庭の所得ではなく,親の学歴を統制した比較による結果ですが,いかがでしょう。

 2018年の今では,紙の新聞を読む子は少なく,代わりにネットニュースをスマホ等で見る子が多くなっています。「ネットニュースをどれほど見るか」という問いに対し,公立小6児童の57.3%が「よく見る」と答えています(2018年度,文科省『全国学力・学習状況調査』)。

 世の中の動きをキャッチするという点ではいいのですが,ヤフーニュースとかに上がってくる記事は,当人の嗜好に合わせてセレクトされたものなんですよね。食事にたとえると,知の栄養バランスが偏します。記事の量や配置によって,当該ニュースの重要性を推し量ることもできません。

 紙の新聞に触れることで,バランスよく知を摂取できる,活字力が鍛えられる,新聞独自の簡素・明瞭なグラフ表現等も学べる…。子どもの場合,こういう効用もあるでしょう。

 NIEは,わが国では80年代半ばから始まった実践で,今でも学校現場で推奨されています。教育と新聞の結びつきというのは,時代が変わっても強いものなのです。

2018年8月1日水曜日

猿島に行く

 今日も暑かったですね。こんな日は外に出まいと決めているのですが,昼過ぎに横須賀市役所に出向き,市民税・県民税の口座引き落としの手続きをしてきました。こういうことは早くやってしまわないと,気が済まない性分でして。

 手続きを終え,市役所地下の食堂「開国亭」でカツカレーを食した後,せっかく出てきたのだからどこかに寄りたいと思ったところ,行くべき場所が即座に浮かびました。猿島です。そう,東京湾に浮かぶ唯一の無人島で,横須賀のシンボルとも言われています。私の郷里の鹿児島でいう,桜島のような位置づけでしょうか。

 下の写真は,高台にある横須賀中央公園から撮ったものです。海にちょこんと浮かんでいるのが猿島です。


 猿島行きの船が出る桟橋まで,市役所から徒歩10分ほどです。横須賀中央駅からは15分くらいかな。軍艦で有名な三笠公園のすぐ隣です。桟橋で船の往復チケット(1300円)を買って乗船です。船は,1時間に1本出ています。


 海風に吹かれながら船に乗ること約10分,猿島に到着します。無人島とはいえ,安全網を張った海水浴場や売店もあります。酷暑ということもあってか,海水浴をする人たちで賑わってました。平日だというのに子どもが多いなと思ったのですが,もう夏休みに入っているのですよね。


 私は,売店で「猿島ビール」とフライドポテトを買い,対岸の横須賀市街を望みながら一杯やりました。ちと高かったですが,なかなか美味かった。

 島内には戦中の遺跡や洞窟などもあり,散策をする人向けの「猿島仙人杖」も貸し出されていますが,酷暑の中歩きまわるのはキツイと思い,今回は見合わせました。

 3時45分発の帰りの船に乗船。遠ざかる猿島を見ながら,「ようやく来れた」という感慨にひたりました。島での滞在時間は1時間ほどでしたが,よかった。


 機会あれば猿島に行きたいと思ったのは,日経DUALにて猿島の体験レポートを見かけたからです。筆者は,安田美香さん。近くにこんな名所があったのか,地元民として行かねばと思った次第です。
https://dual.nikkei.co.jp/atcl/column/17/1111118/071200014/

 私は一人で行きましたが,家族連れで行くと楽しさはもっと膨らむでしょう。上記の安田氏も,お子さん2人を連れていかれたみたいです。

 東京から日帰りOKです。品川から横須賀中央まで,京急の快特で50分ほどですので。この夏ぜひ,ヨコスカに来られたし。