2018年8月4日土曜日

医師の女性比率の国際比較

 東京医大の入試で不正が発覚し,問題になっています。女子受験生の点数を減点していたとのこと。結婚・出産で辞める確率が高いので,女子が多くなっては困る。こういう意図だそうです。

 うーん。1960年代初頭に「女子学生亡国論」という議論がありましたが,それを彷彿させます。女性は家庭に入るので,多額の税金を費やして高等教育を受けさせるのは国の滅亡につながる。未だに,こういう時代錯誤の考えに囚われているのでしょうか。

 この理由付けとて怪しいことは後述しますが,日本の医師の女性比率が低いのは,公正な自由競争の結果ではないことが分かりました。

 OECDの「Health at a Glance 2017」という資料に,医師の女性比率の国際データが載っています。下記サイトにて,全文をPDFでダウンロード可能です。

 153ページの図6-2にて,34か国の医師の女性比率がグラフ化されています。元データをエクセルで呼出し,2015年の数値をランキングにすると,以下のようになります。


 ヨーロッパでは医師の女性比率が高く,西欧では4割,北欧・東欧では5割を超える国が多くなっています。対して東洋の日本は20.3%で,34か国の中で最下位です。

 このデータは前から知っていましたが,男女の医師志望率の違いや,公正な自由競争の結果ではなく,人為的に「作られた」ものであることがうかがわれます。

 「結婚・出産で辞めるから」という理由付けですが,他の職業も男性中心になっているかといえば,そうではありません。同じ医療・福祉産業の看護師や介護職員は,女性が圧倒的に多くなっています。以下の図は,2015年の『国勢調査』の職業小分類統計から作成したものです。


 しらゆきさんという方がこの点を鋭く突いておられ,多くの人の賛同を集めています。「女をのさばらせてたまるか,という思惑があるのでは」というリプがついていますが,こういう勘ぐりもしたくなります。

 医師のみならず,研究者,法曹,大学教員といった高度専門職の女性比率が低いことは,誰もが知っています。だいたい2割くらいです。


 上表は2015年10月時点の断面ですが,これがフェアな競争の結果であるのか疑ってみる必要がありそうです。医師については,人為的な不正があることが露呈してしまいました。

 女子受験者の点数を改竄する。この不正に対し,海外からも厳しい反応が寄せられています。「大学病院の運営のためには,男性がもっと必要だとの理屈だが,日本社会の時代錯誤的な女性観を表している」。まさにその通りです。

 東京医大の入試データを見ると,受験者では女子が4割です。操作される前の受験者でみると,欧州の医師の女性比率とほぼ同じというのも象徴的です。「不正がないならば…」。こう思う人も少なくないでしょう。
https://twitter.com/robo7c7c_2/status/1025836493070188544