さて,東京医大の入試不正を受け,文科省は,全国の81大学の医学部医学科の調査に乗り出すそうです。同じような不正をしている大学がないとも限らない,膿を出し切ろう,という意図なのでしょう。男子より女子の合格率(合格者/受験者)が低い場合,説明を求めるとのこと。
https://www.asahi.com/articles/ASL8B3DQWL8BUTIL00R.html
結構なことですが,既存の資料をもとに,「?」がつく大学を割り出すこともできます。医学部医学科入学者の女子比率を,大学別に出すことによってです。
私の手元に,旺文社の『大学の真の実力・2018年度用』という資料があります。2017年春の入学者の詳細データが,各大学の学部別に載っているスグレモノです。私はこれを使って,医学部医学科の入学者の女子比を,大学別に計算してみました。
https://www.obunsha.co.jp/product/detail/051009
郷里・鹿児島の鹿児島大学でいうと,昨年春の医学部医学科入学者は107人で,そのうち女子は36人となっています。比率にすると33.6%,ちょうど3人に1人です。
他の大学はどうでしょう。81大学の医学部医学科の女子入学性比率を出してみました。以下に,一覧表を掲げます。国立42,公立8,私立31大学のデータです。東大と慶大は,女子入学者数が非公表のようですので,女子比率の欄はペンディングにしています。
どうでしょう。79大学の医学医学科の女子入学者比率の平均値は,35.3%です。お医者さんの卵の3人に1人が女子,というのがアベレージです。
しかるに,個々の大学ごとにみると幅があります。最低は東北大学の16.4%で,50%(半分)を超えるのは弘前大学と東京女子医科大学です。後者は女子大だから当然ですが,弘前大学はスゴイですね。
上記の原表のデータを,5%階級の度数分布の形に整理すると,以下のようになります。
30%台前半に山があるノーマル分布ですが,上もあれば下もあり。気になるのは後者で,女子比率が25%に満たない大学が11校,20%に満たない大学が5校あります。20%未満の大学は,すべて国立大学です(北から東北大,金沢大,山梨大,京都大,九州大)。
はて,どういう理由によるのか。そもそも女子の受験者が少ないといった,自然の摂理によるのか。しからば,受験者と入学者の性別構成が近似しないといけない,言い換えれば合格率の性差がないはずですが,現実はどうでしょう。
上記の一覧表の赤字は,入学者の女子比率が25%未満の大学ですが,一番上の北海道大学は,入試の詳細データをHPで公開しています。男女の受験者が何人,合格者が何人かです。2014年度から2018年度入試の時系列データも出ています。
https://www.hokudai.ac.jp/admission/exam/post.html
私は受験者数と合格者数を採取し,後者を前者で割った合格率を男女別に出してみました。下表は,その結果です。
過去5年間の入試の記録ですが,どの年度でも女子の合格率は男子より低くなっています。今年春の入試では,男子35%,女子20%と,15ポイントも差が開いています。
女子は理系教科が得意でないといった,能力の差によるのか。この点について,文科省から説明を求められることになるでしょう。男女の点数一覧表を見せればいいだけのことですが,問題の東京医大では,女子の二次試験の点数に排除係数(0.8)をかけるという,操作が行われていました。
これは北大のデータですが,入学者の女子比が最も低い東北大学では,合格率は女子のほうが高くなっています。よって,女子の志願者そのものが少ない,というファクターが濃厚です(過去の年次では不明)。
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/profile/about/06/about0602/
最初の表は,資料としてご覧いただければと存じます。「?」と思った大学については,HPに当たって,男女別の合格率を出してみてください(女子の数は非公表の大学も多いですが)。
81の大学を対象とした文科省の調査で,どういう結果が出るか見ものです。