2021年6月16日水曜日

男性の育児休業

  育児・介護休業法が改正され,男性の育休取得が後押しされることになりました。制度の細かい変更事項については,厚労省のホームページに譲りましょう。

 こういう法改正は,世の中の声(世論)に押されてのことであるのは,疑いようがありません。それほどまでに,日本のパパの育休取得状況は酷い。育休取得を申し出た男性社員に対し,「男が育休だと?ふざけんな」という怒号が全国の会社で飛び交っています。

 いわゆる会社(上司)の無理解ですが,これを正さない限り,法を変えても,男性の育休取得促進は難しいのでは,という懸念も出ています。私もそう思いますが,男性の育休取得を阻んでいる要因としては,もっと大きなものがあります。

 それは後述するとして,まずは男性の育休取得の実態をデータで可視化しましょう。ここでお出しするデータの特徴は,他国と比較することです。

 内閣府の『少子化社会に関する国際意識調査』(2020年度)では,20~40代の子持ちの有配偶男性に対し「直近の子が生まれた時,出産・育児に関する休暇をとったか」,同じ条件の女性に対し「直近の子が生まれた時,あなたの配偶者は出産・育児に関する休暇をとったか」と問うています。「とった」と答えた人に対しては,その期間も尋ねています。

 日本のデータをみると,「とった」と答えた人の割合は17.9%で,取得した休暇の期間は「2週間未満」が82.3%と大半で,「6か月以上」という長期は6.2%しかいません。

 育休とりましたか? とった人はその期間を答えてください。二段階(枝分かれ)設問ですが,上記の結果をグラフでどう表現したものでしょう。できれば一つで視覚化したい。対象者全体を正方形に見立て,横軸で育休の取得の有無(とった,とらなかった),縦軸で育休期間を示しましょう。

 以下は,調査対象の4国の結果を,この方式で図示したものです。


 どうでしょう。横軸をみると,日本のパパの育休取得率が低いことが知られます。上述のように日本は17.9%ですが,フランスは58.6%,ドイツは63.0%,スウェーデンに至っては86.7%です。すごい違いですね。

 次に縦軸を見ると,日本の育休期間は2週間未満が多くを占めますが,他国はもっと長く,スウェーデンでは半分近くが半年以上の長期です。これも「!」ですね。グラフで見ると,日本の情けなさが露わになります。「こんなだから,日本は少子化が進むんでねえの」という声が聞こえてきそうです。

 はて,どうしてこんな状況になっているのか。育休をとらなかった男性,夫が育休をとらなかった女性にその理由を複数回答で訊いた結果をみると,日本では,1位が「業務が繁忙で休めなかった」(39.4%),2位が「出産・育児の休暇制度がなかった」(37.4%),3位が「休むことによる減収が怖かった」(26.2%)です。上司の無理解より,こうした理由が大きくなっています。

 2番目は何なんでしょう。「育休の制度がない」って,法律では規定されていることなんですが。おそらく自分の勤務先の会社にない,就業規則に書いてない,ないしは育休取得を申し出たところ「そんな制度はウチにはない」「法律の育児休業は大企業に適用されるもので,ウチみたいな零細企業にはない」とか言われたのでしょうか。

 こんな思い込みを持たされているとしたら恐ろしい。法で定められている育児休業は,全ての労働者に適用されるものです。人が属する集団(社会)にはレベルがありますが,全体社会のきまり(法律)よりも,自分が属する小社会(会社)の決まりが優先されると思っているのでしょうか。

 所属集団の流動性が低い日本では,こういう思い込みが蔓延っています。ウチ社会とソト社会の敷居が高いことに由来する,と言ってもいいでしょう。たとえば学校での教師の暴力(体罰)は等閑視されますが,一般社会の刑法に即せば立派な暴行罪(傷害罪)です。学校の外で子どもを叩いたら即110番。しかし学校という部分社会の内部では,全体社会のきまり(法)は適用されない。こういう治外法権の小社会では,世間一般の感覚では理解しがたい「ブラック校則」も幅を利かせています。

 ウチの会社には育休制度なんてない。こういう思い込み(刷り込み)は,子どもの頃より,世間ずれした学校での決まり(校則)を絶対視するよう強いられてきたことによるかもしれませんね。

 しかし状況は変わってきていて,文科省がブラック校則を見直すよう通知を出しましたし,学校での教師の体罰も警察沙汰になるようになってきました。ウチ社会とソト社会の敷居も崩れつつあります。これが進み,労働者が冷静・適正な判断ができるよう願ってやみません。

2021年5月31日月曜日

じょうごグラフ

 知られざること,ないしは誰もが肌で感じていることをデータで可視化して示すのが,私の商売です。同時に可視化の方法,データの表現技法にも気を配るようにしています。

 エクセルに「じょうごグラフ」というツールがあります。横方向の棒(バー)で量を表現するのですが,通常の棒グラフと違うのは,バーがセンタリングされていることです。グラフの様が,大きい口から小さい口へと液体を流し込む「漏斗」に似ていることから,じょうごグラフと言われます。

 今や広く知られているデータも,このグラフで表現してみると結構インパクトがあります。たとえば,人口の年齢構成です。


 左は『国勢調査』の初年の1920(大正9)年,右は将来推計がとれる最も遠い年次の2065年のデータです。140年の隔たりがありますが,人口の年齢構成の変化はあまりにも大きい。1920年では0~4歳が最多でしたが,2065年では一番上の85歳以上が最も多くなっています。双方とも13%ほどで,人口ピラミッドの型がひっくり返っていることが知られます。

 その人口ピラミッドを,じょうごグラフで表現してみます。2つの年次の年齢%をじょうごグラフにして,重ね合わせます


 下が厚く上が細いピラミッド型から,その反対の逆ピラミッド型に変わります。グラフをセパレートではなく,重ねてみるとインパクトありますねえ。

 2065年といったら,今から44年後,私は90歳近くになっています(そんなに生きてないでしょうが)。人口の4人に1人が,今でいう75歳以上の後期高齢者。ドローンが空を飛び,AIロボットが闊歩し,外国人も街に溢れ返っていることでしょう。

 あと一つ,労働者の年間所得分布を同じ図法で表してみると面白い。1000人以上の大企業に勤務している従業員のデータです。男性と女性に分けると,分布にものすごい差があります。男性にあっては23%が所得800万以上ですが,女性はたった1.7%です。その代わり女性では,所得200万未満が53%と半分以上を占めます。同じ大企業なのに,とてつもない差です。

 男女の所得分布(%値換算)を,上記と同じ「じょうごグラフ」で表現し,重ねてみると以下のようになります。


 何も言いますまい。「搾取」という語が真っ先に浮かびます。大企業の利潤は,女性の安い労働力に支えられていると。

 人口の年齢ピラミッド,労働者の所得ピラミッド…。普通は,ヨコの棒グラフでヒストグラム形式で表すのですが,じょうごグラフというニュータイプのグラフを使うと,インパクトあるものに仕上がりますね。

 今後もいろいろ試行錯誤を重ね,表現技法のバリエーションを増やしていこうと思います。

2021年5月23日日曜日

大卒者の出身県定着率

  大学進学率は時代と共に高まり,今では同世代を半分(50%)を超えます。地域格差は大きいものの,地方でも進学率は高まってきています。47都道府県の大学進学率は本ブログで毎年出しています。2020年版は,コチラの記事をご覧ください。

 さて,地方の親の関心事は,都会の大学に出したわが子が帰ってきてくれるかです。行政にしても,東京や大阪の有力大学に進学した生徒が,将来地元に帰ってきて,地域の発展に尽くしてくれるかは,大いに関心があるところでしょう。

 私は鹿児島県の出身で,高3のクラスの半分以上が県外の大学に進学したと記憶してますが,どれくらい戻ってきているのでしょう。私みたいに帰ってない者もいれば,今や県庁の管理職になって,郷土にバリバリ尽くしている人もいます。たとえば,バスケ部のキャプテンだったUくん・・・。

 2017年の総務省『就業構造基本調査』によると,同年10月時点において,鹿児島県に住んでいる大学・大学院卒の40代前半男性は1万5700人です(★コチラの統計表)。

 2017年の40~44歳というと,私の世代ですが,1992~96年に大学に進学にした世代です。鹿児島県の高校出身の大学入学者(男子)は,1992年春が4270人,93年春が4519人,94年春が4219人,95年春が4375人,96年春が4467人となっています。(文科省『学校基本調査』)。5年間の合算は2万1850人ですね。上の世代の入学者(浪人経由者)も含んでますが,当該世代からも同数の浪人経由者が出ると仮定しましょう。

 この世代の鹿児島出身男子からは,高卒時に2万1850人(a)の大学進学者が出ているのですが,40代前半になった2017年時点で,同県に住んでいる大卒男性は1万5700人(b)です。2つの数値に隔たりがあるのは,都会の大学に進学したが戻っていない,ないしは地元の大学(鹿児島大など)を出た後,他県に就職したという人がいるためです。

 大卒者のどれほどが地元に定着しているか? この度合いは,上記のbをaで割って出すことができます。%にすると71.9%ですね。当該世代の大卒者の自県定着率と呼んでおきましょう。鹿児島県の私の世代の男子だと,こんな感じです。

 東京だと,92~96年の都内高校出身の男子大学入学者は19万4655人,2017年の都内在住の40~44歳男性の大学・大学院卒者は29万9400人です。他県から都内の大学に進学してくること,他県からの大卒者が就職時にどっと流れ込んでくることから,大卒者の量はうんと膨れ上がります。

 私は同じやり方で,各県出身の大卒者の自県定着率を計算してみました。47都道府県について,私の世代の男子と女子の数値をはじき出しました。結果の一覧は以下です。


 2017年の40~44歳,すなわち私の世代の試算値です。高卒時(1992~96年)の各県出身の大学進学者数と対比して出した結果です。

 都市部では膨らんで,地方では萎むというのが道理です。しかしその程度は,県によってまちまちです。大卒者の自県定着率が60%未満の数値に,青色のマークをしました。定着率が最も低いのは,男性は長崎の50.8%,女性は秋田で49.9%ですね。

 都会の大学に行った人が戻ってこない,自県の大卒者が県外就職してしまう。このどっちが大きいのかは分かりませぬが,自県出身の大卒者の半分ほどしか県内にとどまっていないというのは,才能の流出が大きいのだなと思わされます。大卒者の受け皿がない,という事情があってもです。

 性差をみると,「男性<女性」の県が多くなっています。女性の場合,自県大学進学率,自県内就職率が高いためでしょう。しかしその反対の県もあり,私の郷里の鹿児島をみると,男性が71.9%,女性が55.2%と,「男性>女性」の度合いが最も大きくなっています。大卒者の自県定着率,男性と女性の差が大きいのですねえ。

 都会の大学を出た女子は帰ってきづらいのか,県内の大学を出た女子が出て行ってしまうのか。大卒の女性への眼差しについて,ニューズウィーク日本版に試論を載せましたので,リンクをはっておきましょう。

 各県出身の大卒者のどれほどが,40代になって自県に住んでいるか。試算値の提示です。

2021年5月16日日曜日

政令市格差

  前に何かの記事で,「ヨコハマ格差」という言葉を目にしたことがあります。横浜市内の区別の平均年収を提示してです。

 横浜市は国内最大の政令市で,面積も三浦半島全体より広し。この大都市を一括りにして論じるのは,いかにもおかしい。横浜市内には18の区がありますが,世帯の年収を区ごとに出してみるとかなりの差があります。

 県よりも下った細かい地域レベルの世帯年収は,総務省の『住宅土地統計』で知れます。★コチラの統計表では,9区分による世帯年収分布が明らかにできます(2018年)。私は横浜市内の普通世帯(主世帯)の年収分布中央値を区別に計算し,昨日,ツイッターで発信しました。

 大都市内部の格差は興味深いということで,多くの方が見てくださり,「他に見てみたい政令市はあるか?」と問うたところ,名古屋市,仙台市,大阪市など,多くのリクエストが寄せられました。この記事にて,まとめてお答えいたしましょう。

 私は国内の21の政令市について,普通世帯の年収分布の中央値を区別に計算しました。元の資料は,上記リンク先の統計表です。度数分布から中央値を出すやり方については,本ブログで何度も説明していますので,ここでは触れません。

 まずは,全体の構造を俯瞰できる図をご覧いただきましょう。各政令市の区別の世帯年収中央値を,縦軸の目盛りに沿って位置付けたグラフです。


 最も高いのは,横浜市の都筑区で622万円となっています。都内のマックスの千代田区をも上回るのですね。横浜市の区別の世帯年収中央値は,最高の622万円から最低の374万円までの開きがあります。これぞ「ヨコハマ格差」,この大都市の住民を一概に論じられそうにはありません。

 では,具体的な数値を見ていただきましょう。まずは札幌市から浜松市までです。各政令市の区別の中央値を,高い順に並べています


 札幌市は,中央区の年収が高いかと思いましたが,単身学生とかが多いため,全世帯でみると中ほどなのでしょうか。今回の分析では,世帯主の年齢まで統制できないのがネックです。

 東京23区はさもありなんですね。川崎市は,麻生区が2位ですか。私は多摩市に住んでいた頃,この区を通る小田急多摩線を使っていましたが,車窓をみると,小奇麗な家が碁盤の目のように並んでいました。

 次に,名古屋市から熊本市までです。


 どうでしょう。各区の経済力は,住民の健康指標や子どもの学力などと強く相関していると思われます。前にやったところ,大阪市内24区の経済力と寿命なんかは,とても強く相関していましたね。
https://tmaita77.blogspot.com/2018/04/2015.html

 今回のデータは,世帯の年齢層を統制できていない,ラフな全世帯の年収中央値ですが,経済力を媒介にした不平等の可視化に,いくぶんかは使えるかもしれません。あまり明らかにされていない政令市内部の格差として,データをみていただければと思います。

2021年5月14日金曜日

所得と貯蓄のクロス

 気温が上がってきました。今日の横須賀のマックスは25度,半袖を着て,久里浜の床屋に行ってきました。

 さて生活のゆとり(富裕度)の指標としての所得については,いろいろな角度から分布や中央値を明らかにしてきました。しかし入ってくるおカネ,収入面をみるだけというのでは不十分です。いざという時への備え,湯浅誠さんの言葉でいうと「溜め」がどれほどあるかも,合わせて見ないといけません。

 2019年の厚労省『国民生活基礎調査』にて,年間所得階級と貯蓄額階級のクロス表の形で,世帯数を呼び出すことができます。★こちらのページの表160です。


 私は原資料の表を,「所得階級13 × 貯蓄階級12」の形に整理し,各セルに該当する世帯数をグラフで可視化してみました。最近ツイッターでよく出している,ドットグラフです。ドットの大きさを使って,2変数のクロス表のデータを表現します。

 ツイッターでも出しましたが,ブツを見ていただきましょう。


 横軸は所得,縦軸は貯蓄額の階級で,この2つの組み合わせの各セルに該当する世帯数が,ドットの大きさで表されています。

 ぱっと見,所得が少なく貯蓄も少ない困窮世帯(左下)が多いことが分かります。所得300未満,貯蓄200万未満の世帯(緑の枠囲い)は全体の15.1%に該当します。7世帯に1世帯です。その一方で,右上の富裕世帯(所得たっぷり,貯蓄ガッツリ)も結構あります。社会の富の格差も見取れますね。

 所得が少なくが貯蓄はたくさんある世帯は,リタイアしている高齢世帯でしょう。

 赤マルは,所得・貯蓄とも100万未満の世帯で,生活困窮のレベルが甚だしく,生活保護の対象のレベルです。全体の3.2%に相当し,2019年1月時点の全世帯数(5853万世帯)にかけると,実数で187万世帯ほどと見積もられます。

 現実の生活保護受給世帯数はどうかというと,2019年の1か月平均でみて約164万世帯です(厚労省『被保護者調査』)。うーん,やっぱり日本の生活保護は困窮世帯を十分に掬えて(救えて)いないようです。日本の生活保護の捕捉率の低さは,よく指摘されること。

 あと一つ特記すべきこと。「日本で一番多い世帯は?」という問いへの答えです。上記のグラフのドットサイズから,答えは「所得100万円台,貯蓄ゼロの世帯」ということになります。単身非正規の若者,ないしはカツカツの暮らしをしている高齢者世帯でしょう。強烈な現実です。

 これでは経済も回らないというもの。これでいて企業の内部留保が過去最高というのですから,開いた口がふさがりません。モノが売れなくなり,必ずや自分たちにも跳ね返ってきます。

 所得と貯蓄のクロスで,日本の世帯数分布を可視化してみると,怖い現実が露わになりますね。できれば年齢層別に出して,若年層,中年層,高齢層でドットの色分けもしたいところです。

2021年4月29日木曜日

夫婦の所得組み合わせ

 共稼ぎの夫婦が増えていますが,夫と妻がどれほど収入を得ているかは多様です。私くらいの年代だと,正社員の夫が400~500万ほど稼いで,妻はパートで就業調整してマックスで100万ちょっと。こんな夫婦が多数でしょうか。

 しかし両者の稼ぎが対等,ないしは妻が夫を上回るという夫婦も存在するでしょう。夫婦の稼ぎの組み合わせというのも,多くの人が興味をもっている所です。

 毎度使っている『就業構造基本調査』に,この点を知れる統計表があります。最新の2017年調査だと,★コチラの統計表です。共稼ぎ世帯の数を,夫と妻の所得階級別に知ることができます。この2つをクロスすることで,目的のデータが得られます。


 年代は子育て年代に絞ることとし,妻が35~44歳の世帯を分析対象としましょう。この年代の世帯で,夫と妻の所得の双方が分かる共稼ぎ世帯は約360万5200世帯です。

 「9×9」の81のセルに該当する世帯(夫婦)の数を,視覚的なグラフで表してみます。以下のグラフです。横軸は夫,縦軸は妻の所得階級で,双方をクロスした各セルに該当する夫婦の数を,円のドットの大きさで表しています。


 真ん中の下あたりが多くなっています。一番ドットが大きい,すなわち該当の夫婦が多いのは,夫が所得400万未満,妻が100万未満という組み合わせです(23万1300世帯)。

 私くらいの年代だと,男性正社員の所得中央値は500万円弱で,妻はパートで就業調整しているでしょうから,納得の結果です。子育ての最中ですが,夫婦の合算で大よそ600万円弱。子を2人,私学に通わせるとなったらキツイでしょうね。教育費を理由に,出産をためらう夫婦が多いのはよく知られていること。「安い」ニッポンは,少子化にも影を落としています。

 右上,黄色囲いは夫婦とも700万円以上「パワーカップル」です。その数は3万3400世帯で,全体の0.9%に相当します。

 ドットの色分けですが,青色は「夫>妻」,緑色は「夫≒妻」,赤色は「夫<妻」という夫婦です。夫の稼ぎが多い青色が全体の84.3%とマジョリティを占めます。対等は9.3%で,夫より妻が稼ぐ夫婦(赤色)は6.5%となっています。

 しかし何と言いますか,妻の稼ぎの寄与度は小さいですね。上述しましたが,最も多いのは「夫400万円台,妻100万未満」の夫婦です。ツイッターで流しましたが,地方では,夫婦二馬力の稼ぎが東京の一馬力に及ばない県が大半です。東京の一馬力の方がいいと,地元へのUターンをためらう家庭もあるとのこと。

 妻は,夫の扶養の範囲内で就業調整するためですが,配偶者控除制度ってのは,女性の労働力を押さえ込んでいるなと思います。人手不足の時代だというのに。この制度は,妻の稼ぎが少ない世帯を救済しようという意図のものですが,今では女性の稼ぎを押さえ込むことに貢献しています。いつまでも残しておいていいものかどうか…。

 最近では,妻の正社員として働いている世帯も増えています。上記のデータを,妻が35~44歳の正規職員という夫婦に絞るとどうなるでしょう。このグループだと,夫と妻の双方の所得が分かる共稼ぎ世帯は130万8900世帯です。先ほどの全体の3分の1ほどですね。このグループのデータで,上記の同じグラフをつくってみました。


 妻が正社員の夫婦ですので,先ほどの全体図と比して,分布がタテの上方にシフトしています。最も多いのは,「夫400万円台,妻200万円台」です。うーん,正社員でも妻の稼ぎの最頻階級は200万円台。家事・育児が足かせになるのでしょうか。

 右上のパワーカップルの率は2.1%です。青色の「夫>妻」は65.0%,緑色の「夫≒妻」は19.6%,赤色の「夫<妻」は15.4%となります。妻の稼ぎが夫と対等以上の夫婦は,全体の3分の1ですね。

 お見せした2つのグラフですが,どういう印象を持たれるでしょうか。女性の能力がフェアに活用されている事態を想定すると,左上の赤色のドットがもっと大きくなっているはずかと思うのですが。

 フルタイムで働いている有配偶女性に,自分の稼ぎと夫の稼ぎを比べてもらうと,「対等」ないしは「自分の方が多い」という回答が多くなっています。以下の表は,25~54歳の既婚フルタイム就業女性のうち,夫と対等以上の収入がある人の率です。2012年のISSP調査の個票から作成しました。


 何もいいますまい。日本の状況が普遍的でも何でもない,むしろ特異なんだということを見取ってほしいと思います。中高生にもこういうデータを見せて,自分が日頃目にしている光景が万国共通ではないことを,しっかりと分からせてほしいです。

2021年4月22日木曜日

有業者の所得ピラミッド

 4月も下旬,気温が上がってきました。今日の東京のマックスは27度で,熱中症への注意を呼び掛けるニュースも出ています。GW前にして,「熱中症」という言葉が出てくるようになったかという思いです。

 さて,ツイッターで発信したグラフが注目を集めています。凝ったものではありません,日本で働いている人の年間所得の分布図です。100万ごとに区切った階級に該当する人の数を,ヨコの棒グラフでピラミッド状で表したグラフです。男性と女性で分け,従業地位の3区分(自営,非正規雇用,正規雇用)でバーを塗り分けています。

 元データは,2017年の『就業構造基本調査』から得たものです。★コチラの統計表にて,「性別×所得×従業地位」の3重クロスをしました。ネット上で,こういうオリジナルの集計もできるようになり,便利になったものです。


 所得の階級を100万円刻みにし,男性と女性に分けてグラフを作ります。左に男性,右に女性のグラフを置いた対称にすると,ジェンダーの差が見やすくなります。ブツをご覧いただきましょう。


 どうでしょう。私の第一印象は,全体的に「安い」んだなあです。男性でも,最頻階級は200万円台です。

 女性にあっては,下が厚く上が細い,見事なピラミッド型になっています。全体の6割近くが200万未満です。扶養の範囲内で調整している既婚女性が多いのでしょうが,それにしても安い。販売やサービス(介護など)といった職業の給料が安いのもあります。これらのエッセンシャルワークは,安い女性非正規で支えられている現実があります。ある方がツイッターで,「女性活躍=コスト削減」と言われてますが,言い得て妙です。

 社会は,右下の安い女性労働力に支えられている。大企業従業員に絞ったグラフでみると,「左上=男性,右下=女性」というコントラストがより際立ちます。

 繰り返しますが,日本の労働者は「安い」。こうしたコストカットが効いてか,企業の内部留保は過去最高だそうですが,国民の購買力が下がり,モノが売れなくなり,結局は自分たちに返ってきます。アイリスオーヤマの社長さんも言われてますが,大変な今こそ,企業は内部留保をはき出し,従業員を守るべきなのです。

 さて,上のグラフをみて,自分の稼ぎは全労働者の中のどの辺だろう,という関心もおありでしょう。その目安を出しておきましょう。出てきた結果には,結構驚かされます。以下の表は,男女,自営・非正規・正規をひっくるめた全有業者(6408万人)の所得分布です。


 一番の関心は,ど真ん中の中央値(median)がナンボかです。累積%が50ジャストの値ですが,黄色の「250~299万円」の階級に含まれることが分かります。上位20%値(累積%=80)は赤色,上位10%値(累積%=90)は青色の階級に属します。

 按分比例を使って,3つの値を推し量りましょう。本ブログを長くご覧の方は,もう慣れっこですよね。

中央値:
 按分比=(50.0-45.9)/(53.9-45.9)≒0.5110
 中央値=250+(50×0.5110)≒276万円

上位20%値:
 按分比=(80.0-77.8)/(84.8-77.8)≒0.3183
 上位20%値=500+(100×0.3183)≒532万円

上位10%値:
 按分比=(90.0-89.5)/(93.0-89.5)≒0.1354
 上位10%値=700+(100×0.1354)≒714万円

 日本の全有業者の所得の中央値は276万円,上位20%値は532万円,上位10%値は714万円と出ました。この3本のポールを立てた場合,あなたはどのゾーンに属しますか。715万円以上の稼ぎがある人は,上位1ケタのトップ層に属することになります。

 これは男女ひっくるめた場合の数値ですが,男性と女性では条件が違うので,両性で分けたほうが診断の目安としてはいいでしょう。私は全有業者,男性有業者,女性有業者の所得分布をもとに,下位10%値,下位20%値,…中央値,…上位20%,上位10%値を計算しました。結果をまとめると以下のようになります。


 9本のポールを立てましたが,あなたはどのポールの間にありますか,中央値は超えてますか…。私は,男性の中央値(379万円)に及びません。

 女性の中央値は174万円で,上位20%値(339万円)は,男性の中央値にも及ばず。女性にあっては,460万以上の稼ぎがあれば「スター」の部類です。

 上記の表は,ご自身の立ち位置を知る「診断表」としてお使いくださればと思います。自分と同年代の正社員のデータが見たいという方は,冒頭でリンクをはった統計表(★)に飛んでいただき,同年代の「正規職員」の所得分布表を呼び出し,表を作ってみてください。ツイッターをされているなら,私のアカウントにメッセージください。拡散させていただきます。