2016年1月2日土曜日

三世代同居の国際比較

 年末は,表記のデータ使用許可をめぐってプチ・バトルをしたのですが,今眺めてみると,ブログにも載せるべきかなと思い,公開することとします。
http://tmaita77.blogspot.jp/2015/12/blog-post_29.html

 子どもがいる30~40代の父母のうち,自分の親と同居している者は何%かです。いわゆる,三世代同居の量を測る指標になるでしょう。

 資料は,2010~14年にかけて,各国の研究者が共同で実施した『世界価値観調査』です。私は,この調査のローデータ(個票データ)を使って,上記の率を国別に計算しました。エクセルのピボットテーブル機能で,「年齢×子どもの有無×国×親との同居状況」の多重クロスをしました。
http://www.worldvaluessurvey.org/wvs.jsp

 手始めに,主要国の数値をみていただきましょう。サンプルサイズについてイメージいただくため,分母と分子も示します。英仏は,この調査の対象とはなっていないようです。


 日本の子持ちの30~40代サンプルは565人ですが,このうち親と同居しているのは135人となっています。比率にすると23.9%,およそ4人に1人です。米独は5%ほど,北欧のスウェーデンに至っては1%もいません。欧米では,成人したら親元を離れるのがフツーですからね。

 比較の対象を増やし,世界全体での日本の位置を明らかにしてみましょう。上記のWVS調査の対象となった59か国について,同じ値を計算し,高い順に並べたランキング表にしてみました。


 子育て年代の親同居率は,アジア諸国で高くなっています。インドが60%でダントツのトップ。人口がべらぼうに多い国ですが,それだけに住宅事情が厳しいのでしょうか。日本は,59か国の中で8位です。

 わが国の三世代同居の量は,世界的にみても多いことがうかがわれます。公的な保育や介護サービスが十分に供給できないので,三世代同居を促し,家族間でそれをまかなってもらおう,という方針が出されています。わが国の,こうした「私」依存体質は相変わらずです。

 三世代同居をしたければすればいいですが,それを強いられるのはまっぴらごめん。この正月に帰省して,その思いを改めて強くしたママさん・パパさんも少なくないと思います。

 日本では,家族に絶対的な信頼が置かれがちですが,最近は負担が限界に達しつつあるのか,家庭が危険な空間となりつつあります。介護殺人や虐待死が頻発していることからも,それがうかがえます。2012年中に認知された殺人事件884件のうち,446件(50.4%)は家族間殺人です(警察庁『犯罪統計書』)。


 家族に信頼を寄せすぎない,「私」依存体質を改める。社会保障政策,教育政策の根底に,こういうテイストが流れる年になってほしいと思います。