2018年8月15日水曜日

生まれ月による学力差

 盆休みも今日でおしまいですが,休暇はいかがでしたでしょうか。私は普段と全く変わらず,午前中は食い扶持仕事(ライスワーク)をし,午後からは好きなこと(ライフワーク)をしています。ブログ書きは,その一つです。

 昨日の東洋経済オンラインにて,「4月生まれ有利,3月生まれ不利は本当か-生まれ月格差に注意」という記事が出ています。筆者は,教育経済学者の中室牧子氏です。
https://toyokeizai.net/articles/-/233182

 日本の学校は,生まれた年度で区切る学年制ですが,教室の中には,4月生まれから翌年の3月生まれの子が混在しています。両端では1年の差があるのですが,これは結構デカイ。小さい子の場合は,なおさらです。

 同時期に同基準のテストをした場合,心身の発育量による差が出てもおかしくありません。実際そうであることは,多くの人が経験で知っています。

 上記の記事で中室氏は,国際学力調査の「TIMSS」を引き合いに出しています。IEAが4年間隔で実施している数学・理科の学力調査で,対象の児童・生徒(小4,中2)に対し,生まれた月も訊いています。

 このデータを使えば,生まれ月別の学力平均点を出すことができます。下記サイトのリモート集計を使って,小4の算数・理科,中2の数学・理科の平均点を,生まれ月別に呼出てみました。また,高得点層(625点以上)の比率も出してみました。
https://nces.ed.gov/surveys/international/ide/

 あいにく粗い整数値しか出せませんが,結果の一覧表を示すと以下のようになります。黄色は1~12月生まれの中の最高値,青色は最低値です。


 小4をみると,平均点・高得点率とも,4月生まれがマックスです。最も低いのは,2~3月の早生まれの群となっています。中2でみても,青色は早生まれのゾーンにあります。

 早生まれは不利というのは,データでも言えそうですね。発達段階が低い小4児童では,それがよりクリアーで,中室氏の記事タイトルにある「4月生まれ有利,3月生まれ不利」という傾向がみられます。

 関連する他の要因を統制しないといけませんが,4月生まれに富裕層,3月生まれに貧困層が多い,というのは考えにくいですので,社会階層のファクターは除かれているとみていいでしょう。

 同じ教室で机を並べていても,生まれ月の差(最大1年)の影響はあるようですね。上記は学力テストの結果ですが,体力では生まれ月効果がもっと出るのではないでしょうか。小さい子の場合,身体の発育量に1年もの差があるのは大きい。スポーツ選手に,4~5月生まれが多いというのも,よく耳にする話。

 しかし小学生ならいざ知らず,中学生まで,早生まれの不利が引きずられるのですね。思うに,「自分はダメだ」という否定的な自我が作られるからではないでしょうか。自分ではがんばっているつもりでも,(生まれ月という如何ともし難い要因で)人並みの結果を出せない。こういうことが積み重なると,「できないもん」が口癖になるでしょう。

 教師,とりわけ低学年の担当教師は,教室の中に,身体の条件が大きく異なる子どもが混在していることに思いを馳せるべきでしょう。親の側は,「生まれが遅いのだから仕方がない面もある」ということを,意図的に当人に伝えるのもいいかもしれません。それをいいことに,怠け癖が付かない程度にです。「なぜできないのだ」と,叱るばかりというのは論外です。

 4年生くらいまで,毎年度の初めに誕生日を記録するという先生がおられますが,すばらしいことだと思います。