暴走族。一般道を傍若無人に走り回り,集団非行もしでかす厄介者ですが,私が子どもの頃に比べて,メンバーの数は大きく減ってきています。
警察庁の統計によると,ピークは1982年で4万2000人ほどだったのが,2017年では6220人となっています。ピーク時の7分の1です。
減った理由については,警察の締め付けが厳しくなったことに加え,バイクに費やす時間もカネもなくなっていること,別の娯楽(ネットなど)も出てきたこと,などが指摘されています。
3番目に関わることですが,今日の沖縄タイムスに興味深い記事が出ていました。「沖縄の暴走族が激減したワケとは? 単車よりスマホ?」というものです。曰く,「スマホがあるから,昔と違ってすぐ人とつながれる。検挙されるリスクが高い暴走より他の遊びをしようと,少年たちの意識が大きく変わったからではないか」とのこと。
http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/318570
少年がなぜ暴走族を結成して暴れ回るかについては,自己顕示欲の発現とか,社会への不満をぶつけるためとか言われますが,やっぱり仲間との「つながり」を求めるためなんですよね。通常の生活の場(家庭,学校…)に居場所を見いだせない,寂しい子たちなわけです。
しかし今では,こんな派手なことをせずとも,スマホを介して他者とつながることができます。若者の「ウチ化」をもたらしているといわれるスマホですが,よからぬことから手を引かせている効用もあるのだな,と思いました。
ここ数年のスマホ普及率と,暴走族人員数の推移をデータで固めてみると,以下のようになります。
スマホは2010年頃から普及し始め,2017年の世帯普及率は75.1%に達しています。高齢世帯以外は,ほぼ全ての世帯に1台はあるとみてよいでしょう。これとパラレルに暴走族のメンバーも減少傾向。
これは単なる共変傾向で,前者が後者をもたらしている因果関係とは言い切れませんが,変化が最も大きい時期が重なっているのですよね。これは,グラフにしたほうが分かりやすいでしょう。
横軸にスマホ普及率,縦軸に暴走族人員数をとった座標上に,2010~17年のドットを落とし線でつないでみます。
ドットは右下にシフトしますが,2011年と2012年の距離が最も大きいのですよね。スマホの普及率上昇と,暴走族人員の減少が共に最も顕著だった時期です。まあ,これだけをもって因果を推測するのは乱暴ですので,一応の事実として適示しておきます。
社会が適当なオプションを与えることで,青少年がエネルギーを向ける方向というのはガラッと変わるものです。
成長するにつれて,子どもにとって居心地のよい居場所,自身の思考や行為の拠り所となる準拠集団は,家族から仲間集団にシフトします。この仲間集団にはよいものと悪いものがあり,暴走族や非行集団は後者の極地です。
今では仲間集団の形態は多様化しており,ネットでのコミュニティも大きな位置を占めるようになっています。これを健全な方向に上手く育てることができれば,非行防止の上でも大きく寄与するでしょう。
T.ハーシのボンド理論で言われているように,社会との絆(ボンド)がある少年は悪さをしません。そのボンドは時代と共に多様化しており,現在ではネット上でのつながりが台頭してきています。あと10年後には,また違う形のものが出てくるでしょう。
それを異質なもの,受け入れがたいものと頭から排除しないで,「こういうつながり方もある」と青少年に提示してあげるのは,上の世代のなすべきことです。