2018年9月10日月曜日

高校生の体重と肥満意識

 週の初めですが,どんよりとした曇り空で,つまらない揉め事もあり,気分がすぐれず,今日は仕事をしていません。何も生産しないというのは虚しいので,ブログを書きましょう。

 肥満の子どもが増えているといいますが,その逆の痩身も増えています。「そうしん」と読みます。やせ過ぎ,という意味です。思春期女子でそれは顕著で,12歳女子の痩身率をみると,1980年では2.4%だったのが,2017年現在では4.4%に増えています(文科省『学校保健統計』)

 今の日本では「やせ」を美とする風潮がつよく,それを鋭敏に察知するのが,多感な思春期の女子です。痩せたいばかりに減食をする,果ては食事を抜くなど。当局も危機意識を持ち,文科省『食に関する指導の手引き』(2010年)では,無理な減食(欠食)は身体に異変をきたし,女子は初経が遅れ,無月経にもつながり得ると警告し,家庭でバランスよい食事をとらせるよう,呼び掛けています。

 お腹がすくと集中力が途切れるので,勉学にも支障をきたします。ついでにいうと,朝食を抜くのは太る素です。昼食時にカロリーが過剰に貯蔵されることになり,かえって肥満になりやすいと言われます。

 しかるに,わが国のうら若き女子は体型に非常にセンシティブです。今年春に公表された,国立青少年教育振興機構の調査結果によると,日本の女子高生の45.3%が自分は肥満と思うと回答しています(「少し太っているほうだ」+「太っているほうだ」)。しかしながら,客観的な体重を尋ねてみると,51.9%が体重50キロ未満です。
http://www.niye.go.jp/kenkyu_houkoku/contents/detail/i/126/

 痩せているにもかかわらず,自分を肥満と思い込んでいる子が多いんじゃないですかねえ。横軸に体重50キロ未満,縦軸に「自分は太っていると思う」の割合をとった座標上に,4か国の高校生男女を配置したグラフは以下です。


 日本の女子生徒(Jf)は,右上の極にあります。痩せている子の割合が最も高いにもかかわらず,自分を肥満と思っている子の割合も最高となっています。同じ女子でも,アメリカとは大違いですね。

 日本の女子は,客観的な状況と認識のズレが大きくなっています。痩せているにもかかわらず,自分を肥満と思い込む。日本は,ジェンダーの差(mとfの距離)も大きくなっています。「やせは美」という風潮に過剰適応している(させられている)女子の姿は痛々しい。

 上記の文科省文書でいわれているように,無理なダイエットは身体に異常をきたす,という啓発が求められます。また思い込みを解くには,上記のようなグラフを保健の授業等で見せるのもいいでしょう。日本では,痩せているにもかかわらず肥満と思い込んでいる子が多いのだと。それを分からせるのは,国際比較のデータが一番です。

 ちなみに,痩身を美とする風潮は普遍的でも何でもありません。世界を見渡せば,「ぽっちゃり」がモテる社会はいくらでもあります。多くが発展途上国です。日本も,近世の時代まではそうでした。当時の絵画には,ふくよかな女性が多く描かれてますよね。

 太ろうにも太れない国(昔)では「ぽっちゃり」が美とされ,飽食の国(今)では「やせ」が美とされる。大雑把にいって,こういう傾向が見受けられます。実現し難いことが「美」とされるのでしょうか。

 こういう「相対性」の知識を持っていると,今・ここの風潮に振り回されにくくなります。社会学を学ぶことの効用の一つです。