7月14日の記事では,40代前半男性の所得が,90年代初頭に比してどう変わったのかを明らかにしました。所得分布から出した中央値は,1992年では524万円だったのが,2017年では472万円です。この四半世紀で50万円以上の減少。「失われた25年」にかけて,アラフォー男性の所得は大きく失われました。
あまりに衝撃的な事実のためか,当該記事では本ブログで最も読まれています。今の40代前半といったら,世紀の変わり目に大学を出たロスジェネですが,この世代の関心をひいたのでしょう。76年生まれの私も,この世代に属します。
今回は,両年の所得分布表を加工して,別の事実を浮き彫りにしようと思います。アラフォー年代内部での所得格差がどう変わったかです。所得が減っていることに加え,同世代内部での格差も広がっているのではないか。こういう仮説です。
格差の指標といえばジニ係数で,これまで何度も計算したことがあります。ちょっとややこしい指標ですが,これよりもシンプルな尺度もあることを知りました。相対的所得ギャップというものです。
https://resemom.jp/article/2016/04/14/30905.html
所得の下位10%値が中央値に占める割合です。下から10番目の人(プア)の稼ぎが,ちょうど真ん中の人(普通)の何%に当たるかです。
両方とも,所得の度数分布表から割り出せます。2017年の40代前半男性の所得分布表から出してみましょう。出所は,同年の『就業構造基本調査』です。
所得が分かる439万人の分布です。左端は人数,真ん中は全体を100とした相対度数,右端はそれを積み上げた累積相対度数です。
累積相対度数から,下位10%値が200万円台前半,中央値は400万円台の階級に含まれることが分かります。按分比例を使って,それを推し量りましょう。もう慣れっこですよね。
下位10%値:
按分比=(10.0-7.9)/(14.4-7.9)=0.3243
下位10%値=200万円+(50万円×0.3243)=216.2万円
中央値:
按分比=(50.0-37.4)/(55.0-37.4)=0.7169
中央値=400万円+(100万円×0.7169)=471.7万円
下位10%値は216.2万円,中央値は471.7万円と出ました。よって,上記の意味の相対的所得ギャップは,前者を後者で割って45.8%と算出されます。アラフォー男性でみると,プアの稼ぎは普通の人の半分弱というところです。
1992年の所得分布では,下位10%値は253.4万円,中央値は524.1万円なので,所得ギャップは48.3%となります。プアが普通に占める割合は,この四半世紀でちょっと下がってますね。すなわち,所得格差が拡大している,ということです。
これは全国値ですが,地域別の数値も出せます。47都道府県別にみると,相対的所得ギャップ値には幅があります。下の表は,高い順に並べたランキングです。
1992年では31の県で50%(半分)を超えてましたが,2017年ではそういう県は10県しかありません。3分の1に減っています。逆に,プアの所得が普通の4割にも満たない県が出てきています(沖縄,奈良,和歌山)。奈良は,陥落が大きくなっています(51.3%→37.1%)。
1992年では,分布の幅は「60.4%~42.8%」でしたが,2017年では「55.4%~36.6%」とやや広がっています。格差の大きい県と,そうでない県の分化が進んでいます。
上表のデータを地図にすると,この四半世紀の変化が分かりやすいでしょう。50%を超える県(上表の緑色)に,色をつけたマップにしてみます。なるべく簡素なほうがいいです。
プアの所得が普通の人の半分に達している県が,この四半世紀で減っている様が明らかです。アラフォー男子の所得格差の拡大。「失われた25年」は,働き盛り・子育て年代の所得を低下させるのみならず,内部での格差も開かせています。
所得の低下と格差の拡大が同時進行するという,最もよくない動きです。
上述のように,今の40代前半といえば,学校卒業が超氷河期と重なったロスジェネです。上手く正規就職できた人もいれば,それが叶わず非正規雇用に滞留し,キャリアや昇給が順調にいってない人も,他世代に比して多くいます。首尾よくいっている人と,そうでない人の格差が大きい世代であるのは,肌感覚でも分かります。
この世代は子育ての最中で,あと数年で子どもは高校・大学に進みますが,親世代のこうした分化が影を落とすこともあり得るでしょう。教育格差です。
当該世代の今後も心配です。今は40代前半ですが,40代後半,50代,60代というように,年齢を重ねていくにつれどうなっていくか。日本は,新卒時点での遅れが尾を引く社会ですので,ろくに年金も納めていない困窮層が多く出てくるでしょう。私も,たまにくる「ねんきん特別びん」で,将来の受給予定額を見ると笑っちゃいます。自分で稼ぐしかないなと。
私は,いくつかのWebメディアで売文仕事をやっていますが,ちょっとばかり嫌気がさしてきました。別に編集者を介する必要はないのだし,自分でやるのもいいかなと。実は今,一つの所ともめていまして…。この性分,死ぬまで直りません(笑)。
来年から,有料「note」を始めようかな…。「舞田さんなら楽に月5万はいきますよ」と言われますが,それだけもらえれば,今の頼まれ仕事の合算よりも多くなります。
今に安住してはいけない。今の殻を破らないといけない。もしかしたら来年は,そういう節目の年になるかもしれません。私にとって。