教員採用試験が始まりましたが,気になるのは競争率。受験者はそれが低いことを願い,採用側はその逆を望んでいます。
文科省の資料により,小学校の試験の競争率を跡付けてみると,下表のようになります。90年代以降の25年間の推移です。受験者(a),採用者(b),そして競争率(a/b)の変化を掲げています。
民間の就職が好調だったバブル末期は競争率が低かったようです。91年度試験では,3倍を切っていました。しかし,不況の深刻化に伴い競争率はぐんぐん上昇し,2000年度には12.5倍とピークになります。
いみじくも,私の世代(76年生まれ)が新卒で試験にトライした年です。確かに,当時の試験が激戦だったことは,私も肌身で知っています。「まさかあの人が・・・」というような人が,試験でバンバン落とされていました。われわれの世代が,ついてない「ロスジェネ」であることは,こういう統計からも知られますね。
しかし今世紀になってから,競争率は低下の傾向にあります。景気回復もあるでしょうが,団塊世代の大量退職により,採用が大幅に増やされたことが大きいでしょう。2015年度試験の競争率は3.9倍となっています。4人に1人が通ると。
さて,上表のデータをグラフにしようと思いますが,みなさんならどうしますか。競争率は受験者数と採用者数の2要素で決まりますので,これらの変化も表現したいもの。オーソドックスに,3本の折れ線グラフにしますか。
それもいいですが,私は違った図法にしてみました。横軸に受験者数,縦軸に採用者数をとった座標上に各年のドットをプロットし,その位置によって競争率を知るというグラフです。
どうでしょう。90年代以降,少子化を見越して,採用の抑制が図られます。どんどん下にシフトしていますね。90年代後半は不況の深刻化により,民間の就職が厳しくなったので,受験者も多くなります。
この2つのトレンドが頂点に達した2000年度において,競争率は12.5倍とピークになったわけです。グラフでは,まさに「どん底」ですね。
しかしその後は,団塊世代の大量退職をにらんでいか,採用が増えましたので,競争率は下がっていきます。試験の受験者も増えましたが,採用増のスピードはそれ以上でしたので,競争率は下がってきたということです。ご覧のように,最新の2015年度試験のドットは,4.0倍を下回るゾーンに位置しています。
試験の競争率にしろ,大学進学率にしろ,「**率」という指標は「分子/分母」の割り算で出されます。よって当該の指標値(割り算の結果)と同時に,元となった2つの要素の動向も把握したいものです。その場合,上記のような図法もありだと思います。
昨日ツイッターで,産業別の有給休暇取得率のグラフを発信しましたが,それも上記と同じ形式です。有給付与日数と取得日数のマトリクスに,各産業のドットを配置し,各々の位置から取得率を把握しています。
https://twitter.com/tmaita77/status/753576205190737921
グラフ技法の提案として,記録しておきます。
2016年7月15日金曜日
2016年7月13日水曜日
職業別の推定年収(40代前半男性)
前に日経デュアルにて,189職業の推定年収を出した記事を寄稿しました。
http://dual.nikkei.co.jp/article.aspx?id=7060
この記事はよく読まれているみたいですが,老若男女を一緒くたにした,労働者全体の推定年収です。年収は性や年齢によって大きく違うので,これらの基本属性は揃えた比較にする必要があるのではないか。こういう声が多く寄せられています。
そこで今回は,40代男性に絞った比較をしてみようと思います。バリバリの働き盛りの男性に限定した比較です。私自身,昨日40歳になったので,この年齢層のデータに興味を持ちます。
資料は,2015年の厚労省『賃金構造基本統計』です。この資料には,5人以上の事業所に勤務している一般労働者の月収と年間賞与額が,性・年齢・職業別に掲載されています。2015年6月の月収(諸手当込)と2014年の年間賞与額です。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chinginkouzou.html
今朝,電車運転手の給料が結構高い,というネット記事を見かけました。40代前半男性の電車運転手でみると,月収が46.42万円(①),年間賞与額が185.78万円(②)となっています。よって年収は,①の12倍に②を足して,742.8万円となる次第です。ほう,稼げますね。高校教員と同じくらいです。
同じやり方で,118職業の年収を,40代男性の一般労働者(短時間労働者除く)について計算してみました。原資料に掲載されている,118職業のデータです。対象の労働者数が著しく少ない職業は除外されています。
下表は,高い順に並べたランキング表です。目ぼしい職業には,黄色マークをしています。
トップは弁護士で1928万円! スゴイですねえ。全労働者では1036万円ですが,40代男性に絞ると2000万円近くになります。弁護士は自営みたいなもので,収入は仕事量の関数なので,働き盛りの男性の収入が多いのでしょう。
2位はパイロット,3位は医師です。これも,さもありなん。
40代前半の男性に限ると,保育士とトラック運転手が意外と高い。しかし,介護職員とタクシー運転手は,働き盛りの層に限っても劣勢。
性別と年齢を統制した,職業別の年収のランキング表です。参考資料として,ここに掲げておきます。
さて,私が注目したいのは,大工の年収です。40代前半男性の大工の年収は551万円。5年前(2010年)の335万円よりも,大幅にアップしています。昨今の建築需要により,引っ張りだこになっているためでしょう。
大工の推定年収の年齢曲線を描くと,下図のようになります。2010年と2015年の比較です。
20代では変化なしですが,働き盛りの年齢層では,年収が大幅に上昇していますね。40代後半では,397万円から579万円へと,200万近くの増です。スゴイ。
このグラフをみて,前に持ったゼミの某学生を思い出します。大工になりたいと工業高校を希望したが,親に大反対され,無理やり普通高校に入れられ,大学も仕方なくきたという男子です。授業中,いつも窓の外を見ている子でしたが,私はこれをみて「おしん」を想起しちゃいました。
今,どうしているのか不明ですが,大工の棟梁の塾にでも入って,自分に正直な道を歩んでいるのでしょうか。まあ,やり直しなんて何歳からでもできますが,もっと早くから自分の望む道に進ませてもらっていれば,現在の状況もさぞ変わっていたでしょう。個性を押しつぶすとは,このことです。
http://dual.nikkei.co.jp/article.aspx?id=7060
この記事はよく読まれているみたいですが,老若男女を一緒くたにした,労働者全体の推定年収です。年収は性や年齢によって大きく違うので,これらの基本属性は揃えた比較にする必要があるのではないか。こういう声が多く寄せられています。
そこで今回は,40代男性に絞った比較をしてみようと思います。バリバリの働き盛りの男性に限定した比較です。私自身,昨日40歳になったので,この年齢層のデータに興味を持ちます。
資料は,2015年の厚労省『賃金構造基本統計』です。この資料には,5人以上の事業所に勤務している一般労働者の月収と年間賞与額が,性・年齢・職業別に掲載されています。2015年6月の月収(諸手当込)と2014年の年間賞与額です。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chinginkouzou.html
今朝,電車運転手の給料が結構高い,というネット記事を見かけました。40代前半男性の電車運転手でみると,月収が46.42万円(①),年間賞与額が185.78万円(②)となっています。よって年収は,①の12倍に②を足して,742.8万円となる次第です。ほう,稼げますね。高校教員と同じくらいです。
同じやり方で,118職業の年収を,40代男性の一般労働者(短時間労働者除く)について計算してみました。原資料に掲載されている,118職業のデータです。対象の労働者数が著しく少ない職業は除外されています。
下表は,高い順に並べたランキング表です。目ぼしい職業には,黄色マークをしています。
トップは弁護士で1928万円! スゴイですねえ。全労働者では1036万円ですが,40代男性に絞ると2000万円近くになります。弁護士は自営みたいなもので,収入は仕事量の関数なので,働き盛りの男性の収入が多いのでしょう。
2位はパイロット,3位は医師です。これも,さもありなん。
40代前半の男性に限ると,保育士とトラック運転手が意外と高い。しかし,介護職員とタクシー運転手は,働き盛りの層に限っても劣勢。
性別と年齢を統制した,職業別の年収のランキング表です。参考資料として,ここに掲げておきます。
さて,私が注目したいのは,大工の年収です。40代前半男性の大工の年収は551万円。5年前(2010年)の335万円よりも,大幅にアップしています。昨今の建築需要により,引っ張りだこになっているためでしょう。
大工の推定年収の年齢曲線を描くと,下図のようになります。2010年と2015年の比較です。
20代では変化なしですが,働き盛りの年齢層では,年収が大幅に上昇していますね。40代後半では,397万円から579万円へと,200万近くの増です。スゴイ。
このグラフをみて,前に持ったゼミの某学生を思い出します。大工になりたいと工業高校を希望したが,親に大反対され,無理やり普通高校に入れられ,大学も仕方なくきたという男子です。授業中,いつも窓の外を見ている子でしたが,私はこれをみて「おしん」を想起しちゃいました。
今,どうしているのか不明ですが,大工の棟梁の塾にでも入って,自分に正直な道を歩んでいるのでしょうか。まあ,やり直しなんて何歳からでもできますが,もっと早くから自分の望む道に進ませてもらっていれば,現在の状況もさぞ変わっていたでしょう。個性を押しつぶすとは,このことです。
2016年7月12日火曜日
40歳の日に
本日(7/12),40歳になりました。さらば30代,こんにちは40代です。
細かいコメントは控えますが,ポイントを列挙すると,以下のようになるでしょう。
①:私たちも,ゆとり世代だったこと。高度経済成長期の能力主義を反省した,ゆとり・精選の学習指導要領が77年に公布,80年に施行されました。われわれは,この指導要領の下で育ってきたことになります。
人生80年とすると,ちょうど折り返し地点にさしかかっているわけですが,自分が生きた軌跡(40年間)を振り返ってみたくなりました。まあ私の個人史など面白くも何ともないので,1976(昭和51)年生まれ世代が生きた時代を跡付けてみようと思います。
この作業は,前に日経デュアル記事でやったことがありますが,ジェネレーション・グラムの形式でしたので,世相や出来事の記載が粗かったきらいがあります。今回は,ベタな年表を作ってみました。1976~2016年の40年間の年表を,年齢(発達段階)と照応させています。
なお,それぞれの年がどれほどヤバかったかをみるため,自殺率の水準で色分けをしてみました。人口10万人あたりの自殺者数(自殺率)が18未満を白,18以上20未満を薄い灰色,20以上22未満を濃い灰色,22以上をブラックにしています。社会がどれほどヤバいかを測るには,自殺率が一番。
では,ブツをご覧いただきましょう。年表の記載事項のうち,目ぼしいものは赤字にしています。
細かいコメントは控えますが,ポイントを列挙すると,以下のようになるでしょう。
①:私たちも,ゆとり世代だったこと。高度経済成長期の能力主義を反省した,ゆとり・精選の学習指導要領が77年に公布,80年に施行されました。われわれは,この指導要領の下で育ってきたことになります。
②:ファミコンにどっぷり浸かった児童期。83年にテレビゲームのファミコンが発売され,80年代にかけて大ブームになりました。真正のテレビゲーム第一世代です。
③:いじめ第一世代であること。86年の東京中野いじめ自殺事件(いきジゴク,葬式ごっこ)を機に,いじめが社会問題化しました。われわれが10歳だった時です。学齢期の只中に,いじめの社会問題化を経験した,いじめのファースト・ジェネレーションです。それ以前にも手ひどいいじめはあったでしょうが,社会問題として構築されたという点がポイント。
④:育ちざかりの児童期・思春期を,バブル期で過ごしたこと。親の財布のヒモも緩んだのか,あれ買ったりこれ買ったりと,子どもながらに派手な消費をした世代だったかも・・・。
⑤:バブル崩壊とともに青年期がスタート。華やかな時期も長くは続かず,一気に経済情勢が悪化。95年に大学に進学しましたが,経済的理由で進学を断念した生徒も多し。この年には,阪神大震災やオウム事件も起き,不吉な兆候を感じさせた。
⑥:22歳の1998年,未曽有の不況(98年問題)。自殺者が3万人を突破! 正規就職が叶わず非正規に流れる者多し(教員採用試験の競争率は過去最高)。就職,結婚,出産といったイベントが立て込む20~30代前半を,暗黒の時代で過ごしました。
⑦:まさに,ついていないロスジェネ。学校卒業時に正規就職ができず,非正規として滞留している者が数多し。
こんな感じでしょうか。この世代も今年で40歳になります。上述のように,不利な生活状況に留め置かれている層が多い世代ですが,より年を重ねていったとき,社会を揺るがす危険因子になりはしないか。
中小企業が人手不足により,ニートを活用する動きが出ているそうですが,われわれの世代にも目を向けてもらいたいもの。新卒だろうが,既卒だろうが,私たちのようなロスジェネだろうが同じ人間。何も違うところはありません。
さて私は40歳になったのですが,40代をどう生きようか,目標は何かなど,一切考えていません。適当に食い扶持を稼ぎながら,これまで通り,好きなことをしていくだけです。ただ,これまで書いたものを本にまとめることは,そろそろしたいなと思っています。
2016年7月9日土曜日
ケータイ・スマホのつながりはウザい?
今の青少年にとってSNSは欠かせないツールです。LINEやツイッターなどですが,高校生は平均して,3つのツイッターアカウントを使い分けるそうです。
一つは「本アカ」,二つは「裏アカ」,そして三つは「趣味アカ」とのこと。裏アカは,言いにくいことをつぶやく。趣味アカは,友人に知られたら恥ずかしいような趣味のネタをつぶやくと・・・。
どのアカウントにログインしているかで,当人の人格はさぞ変わっていると思われますが,こんな使い分けにどっぷり浸かっていると人格分裂が起きややしないかと,いささか不安になります。ツイッターの利用頻度別に,中高生の人格測定をした研究とかないかしら。
それはさておき,SNSは彼らにとって交友の重要なツールです。思春期以降になると,心地よい居場所は家族から仲間集団にシフトしてきます。そこでの交わりが,当人の思想や行動にも影響します。この時期に「重要な他者」は,親ではなく仲間です。
それだけに交友は重要なのですが,現在では,ケータイやスマホといった小型の情報機器を介したやり取りが主流です。これがないと,つまはじきにされることもあるでしょう。
データでみても,中高生のケータイ・スマホ非所有群と所有群を比較すると,後者のほうが友人の数は多くなっています(内閣府『我が国と諸外国の若者の意識に関する調査』2013年)。
しかるに,友人関係の質をみると,違った側面が出てきます。中高生男女のケータイ・スマホ所持状況と友人関係の満足度をクロスすると,以下のようになります。
男子では差はありませんが,女子では,非所有群よりも所有群において,友人関係に不満を感じる者の割合が有意に高くなっています(p < 0.05)。
女子にあっては,所有群のほうが友人数は格段に多いのですが,その質はよろしくないと。友人に嫌われまいと,四六時中スマホを眺めている子が多いと聞きますが,そういうことに疲れ切っていることもあろうかと思います。
女子ではケータイ・スマホの所有率が高いだけに,こういう病理がはびこっているとみられます。
スマホはいつでもどこでも情報を受信・発信できる便利な機器ですが,使い方を誤ると,自分を苦しめる凶器になり得る。大人が,適切な使い方を指導する必要があります。
フランスでは,終業以降の仕事関係のメールは無視してよいという,「つながらない権利」が認められているそうですが,こういう敷居を設けることも考えられてよいでしょう。ネットのつながりは,時間的にも空間的にもエンドレスですから。
あと一点,使い分けているアカウントの数が多い子ほど,友人関係の不満度は高いのでは。表と裏の顔(人格)の落差が大きくなるわけですし。この点について,実証データがあればなと思います。所有・非所有の2区分ではなく,使用のレベルとのクロスも取りたい。
上記のデータは,昨年10月5日の日本教育新聞コラムで紹介したものですが,某地方県の高校の先生から「非常に興味深い」という感想をいただきました。冒頭の東洋経済オンライン記事をみて,思い出した次第です。ブログにも掲載し,関係者の皆さんの議論に供したいと思います。
2016年7月5日火曜日
投票意欲の分布
7/10に参院選が実施されますが,投票率はどれくらいになるやら。選挙年齢が18歳まで引き下げられた初の国政選挙ですが,若者の投票率が上がることを願うばかりです。
その投票率ですが,若者より高齢者が大きいという年齢差と同時に,階層による差も見逃せません。6月9日の記事では,世帯年収と投票行動をクロスさせ,富裕層ほど投票の頻度が高いというデータを示しました。
若者の投票率が低いことは知られていますが,その若者の中でみても,階層差が見受けられます。ひとまず,階層の指標を最終学歴でみることにしましょう。『世界価値観調査』(2010~14年)のデータにて,「国政選挙ではいつも投票する」という者の比率をとると,日本の20~30代では,義務教育卒業で21.6%,中等教育卒業で36.5%,高等教育卒業で51.1%となっています。
同じ若者でも,義務教育しか終えていない群では2割ほどであるのに対し,高等教育卒業群では半分を超えると。
20歳以上の成人を「年齢×学歴」で群分けし,「国政選挙ではいつも投票する」者の比率を出すと,下表のようになります。年齢,学歴,投票頻度とも,有効回答を寄せた2354人のデータです。
表の見方はお分かりでしょうか。20~30代の高等教育卒業者数は235人。そのうち,国政選挙でいつも投票する者は120人,後者を前者で除した出現率にすると51.1%ということです。
下段の出現率をみると,高齢層ほど,高学歴層ほど投票意欲が高いことが知られます。ヨコの年齢差のほうが顕著ですが,同じ年齢層の内部において,少なからぬ学歴差(社会階層差)があることにも要注意です。
上表のデータを図解しておきましょう。2354人の正方形を9つの群の比重で区分けし,各群のセルを,国政選挙でいつも投票する者の比率の水準で塗り分けてみました。色が濃いほど,それが高いことを示唆します。
右上の「高齢・高学歴層」では投票意欲が高く,左下の「若年・低学歴層」ではその逆であると。
この2つの層では,政治に対する要望は大きく異なるでしょう。前者は年金等の高齢社会対策を強く求めるが,後者が欲するのは,雇用機会の充実や所得格差の是正などでしょう。しかるに,上記の図をみるに,量の上で大きな差があるのに加え,いつも投票する者の率がこうも違っては,政治の比重は前者に傾くのは明らかです。
支配層による支配層の政治になり,既存の体制が再生産されやすくなります。
右下の群は,不利な生活条件に置かれた人たちでしょうが,それだけに,社会問題への鋭い関心を持っていると思われます。それが政治的関心に昇華されることで社会変革の道が開けるのですが,現状はそうなっていない。むしろ,左下の群の志向が,暴動やテロのような「よからぬ」方向に向く危険すら感じられます。
同じ図を発展途上国について作ると,どうなりますかねえ。社会に不満を抱いている左下の群の投票意欲が高く,日本とは図柄が逆になるかもしれません。
社会への不満(怒り)のエネルギーを逃避ではなく,打開の方向に仕向けて行きたいものです。人格が形成される青年期の政治教育において,それが重要な位置を占めることは言うまでもないことです。
同じ主張を,本日公開のニューズウィーク日本版の記事でもしています。どうぞ,ご覧ください。
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/07/post-5425.php
その投票率ですが,若者より高齢者が大きいという年齢差と同時に,階層による差も見逃せません。6月9日の記事では,世帯年収と投票行動をクロスさせ,富裕層ほど投票の頻度が高いというデータを示しました。
若者の投票率が低いことは知られていますが,その若者の中でみても,階層差が見受けられます。ひとまず,階層の指標を最終学歴でみることにしましょう。『世界価値観調査』(2010~14年)のデータにて,「国政選挙ではいつも投票する」という者の比率をとると,日本の20~30代では,義務教育卒業で21.6%,中等教育卒業で36.5%,高等教育卒業で51.1%となっています。
同じ若者でも,義務教育しか終えていない群では2割ほどであるのに対し,高等教育卒業群では半分を超えると。
20歳以上の成人を「年齢×学歴」で群分けし,「国政選挙ではいつも投票する」者の比率を出すと,下表のようになります。年齢,学歴,投票頻度とも,有効回答を寄せた2354人のデータです。
表の見方はお分かりでしょうか。20~30代の高等教育卒業者数は235人。そのうち,国政選挙でいつも投票する者は120人,後者を前者で除した出現率にすると51.1%ということです。
下段の出現率をみると,高齢層ほど,高学歴層ほど投票意欲が高いことが知られます。ヨコの年齢差のほうが顕著ですが,同じ年齢層の内部において,少なからぬ学歴差(社会階層差)があることにも要注意です。
上表のデータを図解しておきましょう。2354人の正方形を9つの群の比重で区分けし,各群のセルを,国政選挙でいつも投票する者の比率の水準で塗り分けてみました。色が濃いほど,それが高いことを示唆します。
右上の「高齢・高学歴層」では投票意欲が高く,左下の「若年・低学歴層」ではその逆であると。
この2つの層では,政治に対する要望は大きく異なるでしょう。前者は年金等の高齢社会対策を強く求めるが,後者が欲するのは,雇用機会の充実や所得格差の是正などでしょう。しかるに,上記の図をみるに,量の上で大きな差があるのに加え,いつも投票する者の率がこうも違っては,政治の比重は前者に傾くのは明らかです。
支配層による支配層の政治になり,既存の体制が再生産されやすくなります。
右下の群は,不利な生活条件に置かれた人たちでしょうが,それだけに,社会問題への鋭い関心を持っていると思われます。それが政治的関心に昇華されることで社会変革の道が開けるのですが,現状はそうなっていない。むしろ,左下の群の志向が,暴動やテロのような「よからぬ」方向に向く危険すら感じられます。
同じ図を発展途上国について作ると,どうなりますかねえ。社会に不満を抱いている左下の群の投票意欲が高く,日本とは図柄が逆になるかもしれません。
社会への不満(怒り)のエネルギーを逃避ではなく,打開の方向に仕向けて行きたいものです。人格が形成される青年期の政治教育において,それが重要な位置を占めることは言うまでもないことです。
同じ主張を,本日公開のニューズウィーク日本版の記事でもしています。どうぞ,ご覧ください。
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/07/post-5425.php
2016年7月2日土曜日
成人のリカレント教育希望の実現率
6月14日の電子ジャーナル『αシノドス』誌に,「成人にも開かれた教育機会を-求められるリカレント教育とは」という小論を寄稿しました。
http://ch.nicovideo.jp/synodos/blomaga/ar1049772
日本は教育大国といわれますが,それは子ども期に限った話で,成人についてはそうではない。成人の通学率は,国際的にみて著しく低い。生涯学習社会のなか,成人にももっと教育の機会が開かれないといけない。こんな主張です。社会の変化が非常に速く,子ども期に学校で学んだ知識や技術など,すぐに陳腐化してしまうのですから。
そのための重要な戦略として位置づくのは,副題にある「リカレント教育」です。リカレント(recurrent)とは「還流」という意味です。教育期と仕事期(引退期)の間を還流する,往来する。つまり,学校を終えて社会に出た後,もう再びそこに戻って学び直す,ということです。
北欧では,リカレント教育のシステムがしっかりしており,大学生の4分の1は社会人であると聞きます。企業は教育有給休暇制度を設け,大学の側も,一定期間の職業経験を入学資格とするなど,社会人が入りやすい条件を整えているからです。
しかし,東洋の日本はさにあらず。社会に出た成人が学校に戻って学び直すのは,なかなか難しい。職業訓練が企業内で閉じているため,使用者は,従業員に外部の機関で教育(訓練)を受けさせようとしません。教育有給休暇なんてもっての他,仕事を終えて夜間に学校に行くといっても,雇い主は嫌な顔をします。
これは現実ですが,人々が抱いている希望はどうなのでしょう。現実がこうだからといって,リカレント教育の普及を怠っていい理由にはなりますまい。日本の成人の通学率は低いのですが,学校で学び直したいという意欲はどうなのか。表面化していない部分を可視化してみましょう。
内閣府が2015年12月に実施した『教育・生涯学習に関する世論調査』では,「どういう形式の生涯学習をしたいか」と尋ねています。複数の選択肢を提示し選んでもらう形式ですが,そのうちの一つに「学校の正規課程で学ぶ」があります。学校に籍をおいて学ぶ,通学する,ということです。
http://survey.gov-online.go.jp/h27/h27-kyouiku/
これを選んだ者の比率をみると,30代の男性では6.7%となっています。40代は13.6%,50代は9.1%,60代は3.4%,70以上は2.1%です。女性は順に,8.6%,10.7%,5.6%,1.6%,1.0%となっています。
結構いるじゃないですか。40代男性では,およそ6人に1人。バリバリの働き盛りですが,今勤めている会社以外でも通用する,汎用性のある知識やスキルへの希求かもしれません。あるいは,そういう機能的な理由ではなく,職務から離れた人文科学などを学びたい,という欲求もあろうかと思います。一流の人の学びは,職務から隔たっていることがしばしばです。
これらの比率を使って,学校で学び直したいという,30歳以上の成人の実数を推し量ってみましょう。伝統的就学年齢を過ぎた成人層のうち,通学を希望する者は何人いるか?
やり方は簡単で,各層の通学希望率を,それぞれのベース人口に乗じるだけです。先日公表された,2015年の『国勢調査』の速報結果によると,30代の男性人口は781万7400人(10月時点)。この層の通学希望率は6.7%ですから,30代男性の通学希望者数は,52万3766人と見積もられます。
同様にして,各層の通学希望者数を割り出し合算することで,目的の数値は出てきます。下表は,計算の結果です。
算出された,30歳以上の成人の通学希望者数は532万ほどです。2015年5月時点の大学生数(院生含む)は286万人ですが,それよりもだいぶ多いですね。この潜在的通学希望者を取り込めたら,大学の経営難がどれほど改善されることか・・・。
上記は成人の学びの希望量ですが,これを現実量と照らし合わせてみましょう。現実量とは,実際に学校に通っている成人の数です。これは,『国勢調査』から知ることができます。労働力統計の「通学の傍らで仕事」ないしは「通学」のカテゴリーに該当する者です。
下表は,上記の通学希望者数と,現実の学生数を照合したものです。後者を前者で除した,希望実現率も出しています(右端)。
最下段をみると,30歳以上の成人の通学希望者数は532万人ですが,実際にそれを叶えているのはたった11万人。希望実現率は2.1%,50人に1人でしかありません。学びたいのに,学べない。外的条件によって,成人の教育を受ける権利が阻害されていることの,数値的な表現でしかありません。
層別にみると,働き盛りの男性は低いですねえ。最初の表でみたように,高い通学希望率を持っているにも関わらず,仕事が忙しいなどの条件で,それができない。欲求と現実のギャップに苛まれていることと思います。
高齢期になると,退職した時間的に余裕ができるためか,数値はちょっと上がりますが,それでもすこぶる低い。
日本のリカレント教育の貧相な現実は,「需要がないから」などという理由で,放置してよい性質ものではないことが分かります。需要はあります。それが満たされていない度合いは,子どもよりも,成人層において高いといえます。
5月29日の記事でみたように,近未来の日本は,逆ピラミッド型の人口構造になります。大学は,やせ細る子ども人口を必死に奪い合っていますが,持てる資源を成人層に仕向けないとなりません。青年の教育機関から,地域の生涯学習のセンターへ。市川昭午教授の『未来形の大学』で,こういう変化の必要が説かれていましたが,今となっては,待ったなしです。
企業は教育有給休暇制度を設け,国は,そういう取組をしている企業に報奨金を出すなど,人為的なテコ入れも求められるでしょう。
人々の人生を直線型(教育期→仕事期→引退期)から,リカレント型(教育期⇔仕事期・引退期)に変えることは,「生きやすい」社会にすることと同義です。後からやり直しができる社会では,18歳の時点において,万人が無目的に大学に押し寄せることはないでしょう。家庭の経済的理由で進学できなかった者には,後からそのチャンスが得られ,公正の機能も担保されます。
企業で働く労働者にしても,「外」に出る機会を持つことは重要です。それがないと,今いる会社でしか通用しない,そこを切られたらおしまいの人間になってしまいます。先行きが不透明な時代にあって,そのリスクは果てしなく大きい。わが国でも,汎用性のあるスキルを武器に,労働者が複数の組織を渡り歩く時代もくることと思います。
話がそれましたが,成人の教育機会が開かれていない現状は,「需要がないから」などという口実で,放置しておいてよいものではない。今回の統計から言いたいのは,このことです。
http://ch.nicovideo.jp/synodos/blomaga/ar1049772
日本は教育大国といわれますが,それは子ども期に限った話で,成人についてはそうではない。成人の通学率は,国際的にみて著しく低い。生涯学習社会のなか,成人にももっと教育の機会が開かれないといけない。こんな主張です。社会の変化が非常に速く,子ども期に学校で学んだ知識や技術など,すぐに陳腐化してしまうのですから。
そのための重要な戦略として位置づくのは,副題にある「リカレント教育」です。リカレント(recurrent)とは「還流」という意味です。教育期と仕事期(引退期)の間を還流する,往来する。つまり,学校を終えて社会に出た後,もう再びそこに戻って学び直す,ということです。
北欧では,リカレント教育のシステムがしっかりしており,大学生の4分の1は社会人であると聞きます。企業は教育有給休暇制度を設け,大学の側も,一定期間の職業経験を入学資格とするなど,社会人が入りやすい条件を整えているからです。
しかし,東洋の日本はさにあらず。社会に出た成人が学校に戻って学び直すのは,なかなか難しい。職業訓練が企業内で閉じているため,使用者は,従業員に外部の機関で教育(訓練)を受けさせようとしません。教育有給休暇なんてもっての他,仕事を終えて夜間に学校に行くといっても,雇い主は嫌な顔をします。
これは現実ですが,人々が抱いている希望はどうなのでしょう。現実がこうだからといって,リカレント教育の普及を怠っていい理由にはなりますまい。日本の成人の通学率は低いのですが,学校で学び直したいという意欲はどうなのか。表面化していない部分を可視化してみましょう。
内閣府が2015年12月に実施した『教育・生涯学習に関する世論調査』では,「どういう形式の生涯学習をしたいか」と尋ねています。複数の選択肢を提示し選んでもらう形式ですが,そのうちの一つに「学校の正規課程で学ぶ」があります。学校に籍をおいて学ぶ,通学する,ということです。
http://survey.gov-online.go.jp/h27/h27-kyouiku/
これを選んだ者の比率をみると,30代の男性では6.7%となっています。40代は13.6%,50代は9.1%,60代は3.4%,70以上は2.1%です。女性は順に,8.6%,10.7%,5.6%,1.6%,1.0%となっています。
結構いるじゃないですか。40代男性では,およそ6人に1人。バリバリの働き盛りですが,今勤めている会社以外でも通用する,汎用性のある知識やスキルへの希求かもしれません。あるいは,そういう機能的な理由ではなく,職務から離れた人文科学などを学びたい,という欲求もあろうかと思います。一流の人の学びは,職務から隔たっていることがしばしばです。
これらの比率を使って,学校で学び直したいという,30歳以上の成人の実数を推し量ってみましょう。伝統的就学年齢を過ぎた成人層のうち,通学を希望する者は何人いるか?
やり方は簡単で,各層の通学希望率を,それぞれのベース人口に乗じるだけです。先日公表された,2015年の『国勢調査』の速報結果によると,30代の男性人口は781万7400人(10月時点)。この層の通学希望率は6.7%ですから,30代男性の通学希望者数は,52万3766人と見積もられます。
同様にして,各層の通学希望者数を割り出し合算することで,目的の数値は出てきます。下表は,計算の結果です。
算出された,30歳以上の成人の通学希望者数は532万ほどです。2015年5月時点の大学生数(院生含む)は286万人ですが,それよりもだいぶ多いですね。この潜在的通学希望者を取り込めたら,大学の経営難がどれほど改善されることか・・・。
上記は成人の学びの希望量ですが,これを現実量と照らし合わせてみましょう。現実量とは,実際に学校に通っている成人の数です。これは,『国勢調査』から知ることができます。労働力統計の「通学の傍らで仕事」ないしは「通学」のカテゴリーに該当する者です。
下表は,上記の通学希望者数と,現実の学生数を照合したものです。後者を前者で除した,希望実現率も出しています(右端)。
最下段をみると,30歳以上の成人の通学希望者数は532万人ですが,実際にそれを叶えているのはたった11万人。希望実現率は2.1%,50人に1人でしかありません。学びたいのに,学べない。外的条件によって,成人の教育を受ける権利が阻害されていることの,数値的な表現でしかありません。
層別にみると,働き盛りの男性は低いですねえ。最初の表でみたように,高い通学希望率を持っているにも関わらず,仕事が忙しいなどの条件で,それができない。欲求と現実のギャップに苛まれていることと思います。
高齢期になると,退職した時間的に余裕ができるためか,数値はちょっと上がりますが,それでもすこぶる低い。
日本のリカレント教育の貧相な現実は,「需要がないから」などという理由で,放置してよい性質ものではないことが分かります。需要はあります。それが満たされていない度合いは,子どもよりも,成人層において高いといえます。
5月29日の記事でみたように,近未来の日本は,逆ピラミッド型の人口構造になります。大学は,やせ細る子ども人口を必死に奪い合っていますが,持てる資源を成人層に仕向けないとなりません。青年の教育機関から,地域の生涯学習のセンターへ。市川昭午教授の『未来形の大学』で,こういう変化の必要が説かれていましたが,今となっては,待ったなしです。
企業は教育有給休暇制度を設け,国は,そういう取組をしている企業に報奨金を出すなど,人為的なテコ入れも求められるでしょう。
人々の人生を直線型(教育期→仕事期→引退期)から,リカレント型(教育期⇔仕事期・引退期)に変えることは,「生きやすい」社会にすることと同義です。後からやり直しができる社会では,18歳の時点において,万人が無目的に大学に押し寄せることはないでしょう。家庭の経済的理由で進学できなかった者には,後からそのチャンスが得られ,公正の機能も担保されます。
企業で働く労働者にしても,「外」に出る機会を持つことは重要です。それがないと,今いる会社でしか通用しない,そこを切られたらおしまいの人間になってしまいます。先行きが不透明な時代にあって,そのリスクは果てしなく大きい。わが国でも,汎用性のあるスキルを武器に,労働者が複数の組織を渡り歩く時代もくることと思います。
話がそれましたが,成人の教育機会が開かれていない現状は,「需要がないから」などという口実で,放置しておいてよいものではない。今回の統計から言いたいのは,このことです。
2016年7月1日金曜日
男性の家事実施度の国際比較
本ブログを長くご覧いただいている方は,タイトルを見て「またかよ」という感じでしょうが,ここでの分析には,これまでにない特色を持たせています。
まずは,女性(妻)による評定であること。男性本人に対し,「あなたは家事をしていますか,それくらいの時間やっていますか」と尋ねたデータではありません。男性がしているつもりであっても,パートナーの女性の目には,そうは映らないことがしばしばです。傲りめいた男性当人ではなく,女性の声に耳を傾けることにしましょう。
あと一つは,数種類の家事の実施度を総合することです。一口に家事といっても,いろいろあります。「あなたの夫は,家事をどれくらいやっていますか」と女性に問うても,具体的なイメージができず,回答に歪みが出ることもあるでしょう。そこで,具体的な6種類の家事の実施度を合成して,トータルな家事実施度スコアを出してみようと思います。
依拠する資料は,ISSPが2012年に実施した「家族と性役割に関する意識調査」です。この調査では,パートナー(事実婚含む)のいる対象者に対し,「あなたの家庭では,以下の家事を誰がしていますか(分担をどのようにしていますか)」と尋ねています。Q19の設問で,「自分と夫以外の第三者がしている」と「分からない」は除外します。
http://www.issp.org/page.php?pageId=4
ここでは,パートナーのいる,25~54歳の女性の回答に注目しましょう。上記の6つに対する回答を合成して,回答を寄せた女性の夫の家事実施度スコアを作ってみます。
やり方は,いたって簡単です。回答された数字を合計するだけです。6つとも全部「いつも自分がしている」と答えた(不幸な)女性は,1点×6=6点となります。逆に,6つとも「いつも夫がしている」という(超ハッピーな)女性は,5点×6=30点となります。*こんな人は,ほぼ皆無でしょうが・・・。
これによると,回答を寄せた女性の夫の家事実施度は,6~30点の範囲のスコアで計測されることになります。私はこの方法で,各国の男性(夫)の家事実施度スコアの分布を出してみました。以下に掲げるのは,36か国の男性7723人のスコア分布です。上記の6つの全てに有効回答をした,女性7723人の回答をもとにしています。
これが,世界の男性のトータルな家事実施度の分布です。パートナーの女性による客観評定によります。
これに基づいて,男性7723人を,家事実施度「低群」,「中群」,「高群」の3つに区分しましょう。3つの群の量がなるべく等しくなるようにすると,12点未満を「低群」,12~15点を「中群」,16点以上を「高群」とするのがよいかと思います。こうすると,低が28.0%,中が41.1%,高が30.9%と,バランスのよい配分になります。
この基準によると,日本の男性(195人)の分布は,低が57.4%,中が31.8%,高が10.8%となります。低いほうに偏っていますねえ。25~54歳の有配偶女性の夫の6割は,家事実施スコアが12点未満であると。
同じ基準による群分けを,目ぼしい国々と比べると,下図のようになります。
日本は低群が最も多く,逆に高群は最も少なくなっています。言葉でいうと,先進国の中で,オトコが最も家事をしない国です。パートナーの女性の評定だけに,リアリティが出ていますねえ。
一番下のスウェーデンとの差は,すさまじいものがあります。スウェーデンでは,男性の6割が,国際標準でいう高群に属しています(日本はたった1割)。主要欧米国は,この両端の中間にあります。アジアの2国と欧米の間に断層がありますね。
では,他国はどうでしょう。36か国の帯グラフをベタに描くのは芸がないので,各国の位置が分かる布置図を作ってみます。下の図は,横軸に低群,縦軸に高群の割合をとった座標上に,36か国を配置したものです。
右下は,低群が多く高群が少ない,男性が家事をしない社会です。左上は,その逆。斜線は均等線で,このラインより下にある国は,「低群>高群」ということになります。
なんとまあ,明瞭なクラスターに分かれることか。男性が家事をする北欧諸国と,そうでないアジア・アフリカ・中南米諸国。日本は後者の中でも,最も芳しくない位置にあります。
週あたりの時間統計でみて,日本の夫の家事分担率は世界最低であることをみましたが,パートナーの女性による,複数の家事の総合評価でも,同じ結果が出てしまいました。
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/03/post-4607.php
これがなぜかについては,今年の『プレジデントウーマン』誌の5月号にて,私なりの意見は申しました(140~141頁)。ただ最近は,家事のハードルの高さが,社会によって違うこともあるかな,と感じています。日本では,料理にしても,あまりに凝ったものを求められる。これを下げることで,少しは事態が変わるのではないか,という気もしています。
https://twitter.com/haru5t_/status/747415520119402497
まずは,女性(妻)による評定であること。男性本人に対し,「あなたは家事をしていますか,それくらいの時間やっていますか」と尋ねたデータではありません。男性がしているつもりであっても,パートナーの女性の目には,そうは映らないことがしばしばです。傲りめいた男性当人ではなく,女性の声に耳を傾けることにしましょう。
あと一つは,数種類の家事の実施度を総合することです。一口に家事といっても,いろいろあります。「あなたの夫は,家事をどれくらいやっていますか」と女性に問うても,具体的なイメージができず,回答に歪みが出ることもあるでしょう。そこで,具体的な6種類の家事の実施度を合成して,トータルな家事実施度スコアを出してみようと思います。
依拠する資料は,ISSPが2012年に実施した「家族と性役割に関する意識調査」です。この調査では,パートナー(事実婚含む)のいる対象者に対し,「あなたの家庭では,以下の家事を誰がしていますか(分担をどのようにしていますか)」と尋ねています。Q19の設問で,「自分と夫以外の第三者がしている」と「分からない」は除外します。
http://www.issp.org/page.php?pageId=4
ここでは,パートナーのいる,25~54歳の女性の回答に注目しましょう。上記の6つに対する回答を合成して,回答を寄せた女性の夫の家事実施度スコアを作ってみます。
やり方は,いたって簡単です。回答された数字を合計するだけです。6つとも全部「いつも自分がしている」と答えた(不幸な)女性は,1点×6=6点となります。逆に,6つとも「いつも夫がしている」という(超ハッピーな)女性は,5点×6=30点となります。*こんな人は,ほぼ皆無でしょうが・・・。
これによると,回答を寄せた女性の夫の家事実施度は,6~30点の範囲のスコアで計測されることになります。私はこの方法で,各国の男性(夫)の家事実施度スコアの分布を出してみました。以下に掲げるのは,36か国の男性7723人のスコア分布です。上記の6つの全てに有効回答をした,女性7723人の回答をもとにしています。
これが,世界の男性のトータルな家事実施度の分布です。パートナーの女性による客観評定によります。
これに基づいて,男性7723人を,家事実施度「低群」,「中群」,「高群」の3つに区分しましょう。3つの群の量がなるべく等しくなるようにすると,12点未満を「低群」,12~15点を「中群」,16点以上を「高群」とするのがよいかと思います。こうすると,低が28.0%,中が41.1%,高が30.9%と,バランスのよい配分になります。
この基準によると,日本の男性(195人)の分布は,低が57.4%,中が31.8%,高が10.8%となります。低いほうに偏っていますねえ。25~54歳の有配偶女性の夫の6割は,家事実施スコアが12点未満であると。
同じ基準による群分けを,目ぼしい国々と比べると,下図のようになります。
日本は低群が最も多く,逆に高群は最も少なくなっています。言葉でいうと,先進国の中で,オトコが最も家事をしない国です。パートナーの女性の評定だけに,リアリティが出ていますねえ。
一番下のスウェーデンとの差は,すさまじいものがあります。スウェーデンでは,男性の6割が,国際標準でいう高群に属しています(日本はたった1割)。主要欧米国は,この両端の中間にあります。アジアの2国と欧米の間に断層がありますね。
では,他国はどうでしょう。36か国の帯グラフをベタに描くのは芸がないので,各国の位置が分かる布置図を作ってみます。下の図は,横軸に低群,縦軸に高群の割合をとった座標上に,36か国を配置したものです。
右下は,低群が多く高群が少ない,男性が家事をしない社会です。左上は,その逆。斜線は均等線で,このラインより下にある国は,「低群>高群」ということになります。
なんとまあ,明瞭なクラスターに分かれることか。男性が家事をする北欧諸国と,そうでないアジア・アフリカ・中南米諸国。日本は後者の中でも,最も芳しくない位置にあります。
週あたりの時間統計でみて,日本の夫の家事分担率は世界最低であることをみましたが,パートナーの女性による,複数の家事の総合評価でも,同じ結果が出てしまいました。
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/03/post-4607.php
これがなぜかについては,今年の『プレジデントウーマン』誌の5月号にて,私なりの意見は申しました(140~141頁)。ただ最近は,家事のハードルの高さが,社会によって違うこともあるかな,と感じています。日本では,料理にしても,あまりに凝ったものを求められる。これを下げることで,少しは事態が変わるのではないか,という気もしています。
https://twitter.com/haru5t_/status/747415520119402497
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