2017年12月9日土曜日

教員給与の段階比較

 「新しい経済政策パッケージ」なるものが閣議決定されました。
http://www5.cao.go.jp/keizai1/package/package.html

 目玉は,幼児教育と高等教育の無償化です。前者についていうと,3~5歳の幼稚園・認可保育所の費用は一律無償,3歳未満は非課税世帯に限って無償にするそうです。ここにかなりの財源が投入されるのですが,懸案の保育士の給料はというと,月額3000円上がるだけ…。

 うーん。待機児童問題の原因は保育所不足,保育所不足の原因は保育士不足,保育士不足の原因は生活が成り立たぬほどの超薄給であること。すっかり知れ渡っていることですが,この部分を蔑ろにしていいものか。保育所を無償にしても,入れなければどうしようもないですからね。

 データを出すのも嫌になりますが,2016年の厚労省『賃金構造基本統計』によると,保育士の所定内平均月収は21.6万円で,46.7%,半分近くが月収20万円未満となっています。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chinginkouzou.html

 この手のデータは至る所で提示されますので,「そんなもんだろう」という感覚が定着してしまっていますが,他の段階の教員給与と比較することで,その異常性を改めて浮き彫りにしてみましょう。

 幼稚園から大学までの各段階の教員給与は,文科省『学校教員統計』から知ることができます。最新の2016年度の統計から,平均月収と月収20万未満の者の割合を拾ってみます。ここでいう月収とは,諸手当は含まない本俸額です。高校以下のデータは,下記サイトの表15から拾うことができます。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001094519&cycode=0

 下表は,採取したデータの一覧表です。


 想像通りですが,上の段階ほど給与は高くなります。しかし,就学前と初等・中等教育の段差が大きいですねえ。平均月収は10万円以上,月収20万未満の薄給率に至っては全然違います。

 教員の年齢構成や学歴構成などの違いにもよるでしょうが,この落差はひどい。人格の礎が築かれる時期の教育(保育)には,高い専門性が求められるはず。にもかかわらず,ここまでの給与差があるのはどういうことか。

 上表のデータを二次元グラフにすると,就学前教育段階の外れっぷりがよく分かります。


 最も悲惨なのは,創設されて間もない認定こども園(幼保連携型)。そして,幼稚園と保育所が近い位置にあります。

 保育士の薄給問題に隠れて,あまり取り沙汰されることはないのですが,幼稚園教員の待遇の悪さも際立っています。幼稚園は,3歳から5歳の幼児の教育を行う「学校」ですが,そこで働く教員の大変さもよく言われます。小学校にもまして,モンスター・ペアレンツの出現度が高いとか…。

 それにもかかわらず,上図から分かるように,待遇は劣悪。そのせいかは分かりませんが,幼稚園教員の病気離職率は,小学校以降の段階に比して,各段に高くなっています。以下の表は,6つの段階の病気離職率です。2015年度間の病気離職者数を,同年5月時点の本務教員数で除して算出しました。前者の出所は『学校教員統計』(2016年度),後者は『学校基本調査』(2015年度)に出ています。


 あまり強調されることはないのですが,教員の問題が最も深刻なのは,就学前段階かもしれません。

 ここでご覧に入れたデータから,初等以降の段階に比して,想像以上の薄給であることが分かってしまいました。富裕層を優遇することにもなりかねない一律無償化よりも,保育士や幼稚園教員の待遇を改善し,待機児童問題の解消や「質」の担保に重点を置くべきかと思います。

 日本の高等教育費の対GDP比が低いのはよく知られていますが,就学前教育費の対GDP比も低し。2014年の国際統計によると日本は0.24%で,OECD加盟国では下から4番目です(OECD平均は0.84%)。
http://www.oecd.org/edu/education-at-a-glance-19991487.htm

 消費税アップで得られる財源を教育振興に充てるのは結構ですが,優先順位を誤らないようにしていただきたいと思います。

2017年12月5日火曜日

女子の理系タレントの活用度

 日本は,リケジョが少ない国であることは,もうすっかり知れ渡っています。自然科学・数学専攻の高等教育機関入学者に占める女子比は,2015年でみるとわずか25%,4人に1人です。
http://www.oecd.org/edu/education-at-a-glance-19991487.htm

 国際的にみて,日本は女子の理系学力が高いのに,これはどうしたことか。異国の人からすれば甚だ疑問のようで,OECDのスキル局長は,理系の成績が優秀な「女子生徒が理系を志望しないことが問題」と指摘しています。
http://benesse.jp/kyouiku/201710/20171018-1.html

 そうですねえ。たとえば,理科の成績が優秀な高校生を取り出し,男女の内訳を観察してみると,そんなに大きな偏りはありません。OECD「PISA 2015」において,科学的リテラシーの成績が優秀な15歳生徒(習熟度レベル5・6)の性別内訳は,男子が59%,女子が41%です。
https://nces.ed.gov/surveys/international/ide/

 にもかかわらず,理系専攻の大学入学者の女子比は,冒頭で記したように25%でしかないと。女子の理系タレントがフル活用された場合の期待値(41%)より,だいぶ低くなっています。

 しかし,他国はさにあらず。日本と北欧のノルウェーを対比してみると,下図のようになります。


 理科が得意な生徒の性別構成は,日本もノルウェーも同じです。しかしながら,理系の大学入学者のそれは大きく違っている。日本は「3:1」ですが,ノルウェーはちょうど半々です。ノルウェーでは,期待値を上回ってすらいます。

 なるほど。OECDの局長が言うように,日本では,理系の成績が優秀な女子生徒が「理系を志望しない」というのは,確かなようです。上記は日諾比較ですが,比較の対象を増やすと,日本の特異性が分かってしまいます。

 以下に掲げるのは,横軸に理科が得意な15歳生徒の女子比,縦軸に理系専攻の高等教育機関入学者の女子比をとった座標上に,OECD加盟の26か国を配置したグラフです。米仏は,縦軸のデータが得られないので,分析対象に含めていません。


 ご覧のように,日本は諸国の群れから外れた位置にあります。縦軸の値が極端に低いからです。理科が得意な高校生の女子比は中ほどですが,理系の大学入学者のそれは,他国と大きく水を開けられています。

 図の斜線の数値は,縦軸の値が横軸の何倍かという倍率です。この値が高いほど,女子の理系タレントが活用されていることになります。

 1.0は,女子高生の理系タレントがフル活用された場合の期待値ですが,これを大幅に下回っているのは日本だけです。横軸が41%,縦軸が25%ですので。

 他の国はいずれもこのラインよりも上にあり,ポルトガルなどの4国は1.5倍以上です。ポルトガルは,理科が得意な生徒の女子比は35%ですが,自然科学専攻の大学入学者の女子比は59%にもなります。わが国と全然違いますね。

 女子の理系タレントの活用度を可視化すべく,この倍率が高い順に26か国を並べてみましょう。


 何も言いますまい。日本の活用度は最下位,裏返すと浪費度がダントツでトップです。

 昨日のニューズウィーク日本版に「イスラム圏にリケジョが多い理由」という記事が載っています。答えはズバリ,試験の成績によって専攻が(機械的に)振り分けられるからだそうです。
https://twitter.com/noguchi_y/status/937658966976466944

 極端な話,日本もこうすれば,リケジョが増えることは間違いありません。しかしこれは当人の意向を無視することで,現実の選択肢としてはあり得ないでしょう。

 やはり内発的なアスピレーションそのものを高めないといけないのですが,理系教科ができる女子を特別視しなこと。まずは,これに尽きます。

 それと,進路選択を控えた中高生の女子生徒に,リケジョの役割モデルを見せること。そのための一番の戦略は,中高の理系教員の女性比率を高めることです。日本は,この部分でも弱い。
http://tmaita77.blogspot.jp/2014/06/blog-post_28.html

 理科・数学教員の女性比率と,女子中学生の理系職志望率の間に相関関係がみられるか。『全国学力・学習状況調査』のデータに設問をちょっと潜ませ,学校単位・市区町村単位のデータで分析してみるのもいいと思いますが,どうでしょうか。

2017年11月30日木曜日

2017年11月の教員不祥事報道

 今日で11月もおしまいでした。夕ご飯を食べた後に気づき,慌ててツイログを漁った次第です。

 今月,私がネット上でキャッチした教員不祥事報道は44件です。いつものように,記事名・媒体名と当該教員の属性を記録します。

 赤字は注目事案。59歳,定年寸前の高校校長が盗撮で捕まった件ですが,100%懲戒免職でしょうから,もらう予定だった莫大な退職金がパー。一時の快楽と,それと引き換えに失うものとを天秤にかけることはしないのでしょうか。

 「正式採用ちゃうねんで」と,部下にパワハラをした校長。公立学校の教員は,最初の1年間は条件付きの採用で,この期間をクリアしてから正式採用になります。一般の公務員は半年ですが,教育公務員はその倍の1年間です。専門職ゆえ,適性の見極めに慎重さが求められる故とのこと。

 2015年度の統計によると,公立学校の新規採用教員のうち,この期間をクリアできず正採用に至らなかったのは316人,全体の1.03%と報告されています。脱落率は,およそ100人に1人。
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/jinji/1380718.htm

 明日から師走です。会社勤めの方は,忘年会など,お酒が入る機会が増えると思いますが,酒がらみのトラブルにはご注意を。

 私は,生活に何の変化もありません。今年こそ秋旅行に行きたかったのですが,歯の手術を2回受け,医療費が思ったよりかさんだので,見合わせました。来週,2度目の手術の予後観察に行きますが,「抜歯」という最悪の判断にならないことを祈るばかりです。

 今年もあとひと月。がんばりましょう。

<2017年11月の教員不祥事報道>
少女にわいせつの疑い 長浜市の小学校講師を逮捕
 (11/1,琵琶湖放送,滋賀,小,男,27)
女子中学生に裸画像送らせた疑い 高校講師を逮捕 
 (11/1,日刊スポーツ,神奈川,高,男,27)
下着盗んで撮って戻す20回、教諭免職(11/2,京都新聞,奈良,小,男,48)
中学教諭、飲酒後に運転 京都 市教委に報告せず
 (11/3,京都新聞,京都,中,女,20代)
小学教諭、医療機関で20代女性職員に無理やり抱きつく
 (11/7,産経,宮崎,小,男,56)
女子児童のスカート内盗撮か、38歳小学校教諭逮捕
 (11/7,日刊スポーツ,石川,小,男,38)
盗撮:県立高の教諭を容疑で逮捕 富士吉田(11/8,毎日,山梨,高,男,30)
通勤電車で盗撮容疑=高校教諭を逮捕
 (11/8,時事ドットコム,大阪,高,男,25)
校長、穴開きハンドタオルで隠したカメラで女性のスカート内盗撮
 (11/8,産経,兵庫,高,男,59)
男子高生にホテルでわいせつな行為…容疑の府立高講師を逮捕 
 (11/9,サンスポ,京都,高,男,38)
愛知の教諭、小2児童の頭を黒板にぶつける(11/9,朝日,愛知,小,男,40代)
生徒にわいせつ 中学校教諭を懲戒免職処分
 (11/10,琉球朝日放送,沖縄,中,男,20代)
酒気帯びで追突の男性教諭を懲戒免職(11/11,産経,大阪,中,男,35)
教員免許取得未申請のまま勤務 明石商業高の男性職員
 (11/11,産経,兵庫,高,男,25)
小学校教諭が酒気帯び運転、容疑否認(11/11,日テレ,茨城,小,男,50)
児童ポルノ、児童買春…。名誉毀損の男性教諭(11/11,産経,滋賀,高,男,25)
小学校教諭 強制わいせつか逮捕(11/12,NHK,埼玉,小,男,29)
女子生徒と性行為・水着窃盗… 教諭ら4人処分
 (11/14,朝日,愛知,性行為:中男28,水着窃盗:小男38,手紙で好意伝達:高男52,わいせつ:高男39)
同僚女性教諭に暴行、男性講師を停職処分(11/15,朝日,岐阜,特,男,26)
小学校教師が児童の口に"ティッシュ"詰め込む 
 (11/15,北海道ニュース,北海道,小)
勤務先高校で同僚の現金や財布窃盗容疑(11/16,産経,福岡,高,男,43)
女子生徒肩車し「意外と重い」、セクハラで教諭処分 
 (11/17,産経,宮崎,高,男)
遠征費不正受給や不適切メッセージ 群馬県立高教諭を停職
 (11/18,産経,群馬,高,男,41)
教諭 小1の口にテープ貼る(11/18,読売,大分,小,女,50代)
九九の暗唱させながら…長崎の小学教諭、教室で児童盗撮
 (11/18,朝日,長崎,小,男,61)
下着窃盗で教諭逮捕「買うのが恥ずかしくて盗んだ」
 (11/19,日刊スポーツ,大阪,高,男,30)
教え子の女子児童6人にわいせつ行為 60代教諭を懲戒免職
 (11/20,佐賀新聞,佐賀,小,男,62)
体罰の中学男性教諭を戒告処分(11/20,岩手放送,岩手,中,男,53)
万引きで女性教諭を懲戒処分 名古屋市教委(11/21,CBCテレビ,愛知,小,女)
歩道で転倒の62歳、中学教諭の車にひかれ重体
 (11/21,読売,北海道,中,男,30)
上田の中学教諭2人が女生徒の身体的特徴記したLINEを交換
 (11/21,信越放送,長野,中,男,20代,40代)
「正式採用ちゃうねんで」 部下にパラハラ、セクハラ発言の男性校長を懲戒
 (11/21,神戸新聞,兵庫,高,男,59)
女子中学生に「キスしてやろうか」、肩や髪触るなどのセクハラ
 (11/22,サンスポ,北海道,中,男,59)
教頭の上履き隠すなど嫌がらせ、高校教諭を減給
 (11/23,朝日,北海道,高,男,51)
酒気帯び運転で逮捕の小学校教諭を懲戒処分(11/23,毎日,兵庫,小,男,25)
酒気帯び容疑逮捕 小学教諭を懲戒免(11/23,茨城新聞,茨城,小,男,50)
バレー部員6人に常習的体罰 講師を懲戒処分
 (11/24,毎日,大阪,中,男,29)
校内で女子生徒と“行為” 中学教師、卒業後も関係
 (11/24,テレビ朝日,神奈川,中,男,35)
酒気帯び運転、中学校長懲戒免職処分(11/25,静岡新聞,静岡,中,男,57)
埼玉のふじみ野で市立中学教諭が全校生徒の身体測定データ紛失
 (11/25,産経,埼玉,中,女)
スカートの下にスマホ、盗撮の疑い 中学校教諭逮捕
 (11/28,朝日,大阪,中,男,23)
修学旅行中生徒に体罰 能代工高の男性教諭(11/28,河北新報,秋田,高,男)
同僚の女性教諭にわいせつ行為、30代男性教諭を懲戒免職
 (11/28,産経,北海道,小,男,30代)
トイレ侵入などで2教諭を懲戒免職 速度違反で1人戒告
 (11/29,産経,新潟,トイレ侵入:中男47,わいせつ:高男35)

2017年11月29日水曜日

「**子」という名前

 2017年に生まれた子どもの名前で最も多いのは,男子は「悠真」,女子は「結菜」だそうです。
http://www.asahi.com/articles/ASKCX446SKCXUTFK00H.html

 元資料は,明治安田生命の「生まれ年別・名前ランキング」です。スゴイことに,戦前期から毎年,男女の名前のベスト10を知ることができます。
http://www.meijiyasuda.co.jp/enjoy/ranking/index.html

 戦前から戦後,そして現在にかけて社会は大きく変わりましたが,親が子どもにつけるな名前にも変化が見られます。よく言われるのは,女の子に「**子」という名前をつける親が減っていることです。

 私の母(故)が生まれた1940年,私が生まれた1976年,そして2016年について,女の赤ちゃんにつけられた名前のベスト10を整理すると,以下のようになります。


 「**子」という名前には,ピンクのマークをしています。1940年では,上位10は軒並み「**子」です。

 2位に「和子」があがっていますが,戦争中のデータをみると,ほとんどの年で首位は「和子」となっています。庶民の心の内では,平和への希求があったのでしょうか。

 しかし高度経済成長を経た76年になると,「**子」は上位10の中で半分以下に減ります。2016年現在では,5位の「莉子」だけです。

 これはラフな3時点のピンポイント推移ですが,変化を仔細に跡付けてみましょうか。1920~2016年の各年について,女子の上位10の名前のうち「**子」にマークをつけた図を作ってみました。ヒマ人っすね…。


 1950年代までは,ピンクのマークで染まっています(1920年の9位は「キヨ」)。しかし60年代からぼちぼち「真由美」などの名前がランクインし,60年代後半から「**美」といった名前の比重が増してきます。

 80年代後半以降は,「**子」はほとんどなくなります。最近において点在しているマークは,「莉子」です。

 1年刻みで丁寧に変化を辿ると,変化の過渡期は60年代後半から80年代前半であったことが知られます。私は,こうした過渡期のど真ん中の時期(76年)に生まれたのだなあ。

 もちろん今でも,「**子」という名をつける親はいます。2年前に電車で小学生の遠足集団と乗り合わせたとき,「和子」や「智子」といった(古風な)ネームをちらほら見かけました。

 そうそう。「**子」という名の女子は頭がいい,という調査結果があるそうですが,まあこれは,良家(高学歴)の親に古風な考えの人が多いからかな…。

 興味本位でしょーもない作業をしましたが,名前という切り口でも,社会の変化を見て取れるのは面白いですね。ちなみに男子は,今は多くが漢字2字ですが,1950年代までは,上位10は軒並み漢字1字です(「清」「茂」「博」など)。

 1文字の名前の出現度など,観点を変えれば,また違った変化の様を取り出せるでしょう。学生さんなら,どういう作品を作るかな。半ば「お遊び」ですが,調査統計法の作業課題としていいんじゃないかと思います。

2017年11月27日月曜日

男性の稼ぎ寄与度の国際比較

 今からちょうど20年前の1997年,山一証券が倒産しました。私が学部3年の頃です。

 そのニュースが流れた翌日,経済学の授業でつい居眠りをしていたところ,教授から「おい,そこのお前。気持ちよさそうに寝ているけど,大企業もつぶれる時代なんだぞ」と,たしなめられたのを覚えています。

 それからわが国の経済状況は急激に悪化。翌年の98年には,年間の自殺者が3万人を超えました。増分の多くは,無慈悲なリストラに遭った中高年男性です。50代男性の自殺者は,97年は3875人だったのが,98年には5973人に急増しました(厚労省『人口動態統計』)。たった1年間で,2千人以上も自殺者が増えたわけです。

 悲しいかな。男性の自殺率は,社会の経済状況を鋭敏に反映する傾向を持っています。たとえば,失業率と自殺率の時系列カーブを描くと,驚くほど近似しています。下図は,1960年から2016年までの長期推移です。

 失業率は,各年の12か月の平均値です。15歳以上の労働力人口に占める,完全失業者の割合です。自殺率は,人口10万人あたりの年間自殺者数です。前者は総務省『労働力調査』,後者は厚労省『人口動態統計』に,計算済の数値が出ています。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000000110009&cycode=0
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001191145


 明瞭な共変関係ですねえ。この46年間のデータで相関係数を出すと,+0.938にもなります。失業率が分かれば,自殺率をほぼ正確に言い当てられるレベルです。これが因果関係を意味するとは限りませんが,「失業→生活苦→自殺」という経路を想定するのは容易いでしょう。

 昨日,このグラフをツイッターで発信したところ,ある方が「なぜ,男性は女性に経済的に頼ることを考えないのか?」という疑問を呈されました。
https://twitter.com/lalahearttwit/status/934614998319554561

 なるほど。「男性は,妻子を養って当たり前」という,わが国のジェンダー呪縛を逆照射する指摘ですね。97年から98年にかけて,リストラに遭った中高年男性の自殺者が急増したのですが,「家族に保険金を」という動機もあったことでしょう。

 女性にあっては,失業率と自殺率の間に明白な共変関係は見られません。男性に限っても,上図のようなトレンドが出てくるのは,日本くらいではないでしょうか。「一家を養うべし」というジェンダー呪縛,「仕事=生活」という価値観が最も浸透した社会ですので。

 わが国では,男性が女性に「経済的に頼ること」は稀ですが,諸外国ではどうなのでしょう。私はこの点を可視化すべく,共働き夫婦の稼ぎ分担を数値で出してみました。夫の稼ぎが,夫婦の稼ぎの何%に相当するかです。

 ISSPが2015年に実施した「労働環境の意識調査」では,就業者に対し,自分の年収と世帯の年収を尋ねています。日本の25~54歳の共働き男性(自分も妻も働いている男性)を取り出し,双方の分布をとると,以下のようになります。無回答は除く,有効回答の分布です。
http://www.issp.org/data-download/by-year/


 年収の階級は,階級値で示されています。250万円とは,年収200万円台の者です。この分布から平均値を出すと,個人年収は526万円,世帯年収は692万円となります。前者が後者に占める割合は,76.0%です。

 日本の25~54歳の共働き男性を取り出すと,世帯年収(夫婦の稼ぎ)の4分の3を当人が稼いでいると。

 他国はどうでしょう。同じやり方で,共働き夫婦の男性の稼ぎ割合を試算してみました。下表は,日本と欧米の6か国のデータです。お隣の韓国は,上記調査の対象になっていません。


 日本は76.0%ですが,欧米では6割くらいですね。イギリスやスウェーデンでは,夫婦の稼ぎが半々近くになっています。

 むろん三世代同居の世帯もあり,分母に自分(配偶者)の親の稼ぎも含まれている可能性はありますが,欧米では三世代同居はほとんどないので,夫婦の稼ぎに占める,夫の稼ぎの比重とみて間違いないでしょう。

 日本では三世代同居が結構いるかもしれませんが,核家族世帯に絞ったら,夫の稼ぎ比率は8割に達するかもしれませんね。

 このような簡単な検討からも,日本では,男性に重いジェンダー呪縛が課せられていることが知られます。最初の図でみたように,失業率と自殺率が気持ち悪いくらい同調するわけです。オトコが「女性に経済的に頼ること」を知っている社会では,こうはなりますまい。

 世界を見渡せば,少なからぬ女性が「主たる家計支持者」という国もあります。南国のタイでは,30~40代の有配偶女性の6割近くが,「自分が主たる家計支持者だ」と答えています。スゴイですねえ。男性が怠け者なんでしょうか。
http://tmaita77.blogspot.jp/2014/05/blog-post_11.html

 日本では,男女の双方にジェンダー呪縛が課されています。男性の稼ぎ分担率が主要国で首位なら,女性の家事・育児分担率は世界でトップです。
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/03/post-4607.php

 収入源を絶たれたら即座に自殺する男性,家事・育児のワンオペで潰れる女性……。まったくもって,残念なことです。両性が,伝統的な相互の役割にもっと乗り入れるようになったら,事態は大きく変わることでしょう。

2017年11月23日木曜日

『スーパー過去問ゼミ5 教育学・心理学』

 ちょっと早いですが,新刊のご案内です。国家公務員試験対策用の問題集『スーパー過去問ゼミ5 教育学・心理学』の出来本が,実務教育出版より届きました。発売は,12月1日の予定です。
https://jitsumu.hondana.jp/book/b310521.html


 2014年刊行の旧版を,近年の出題傾向をもとに改訂しました。教育学のパートは,私が執筆しています。

 教育学は,国家総合職・国家一般職・法務省専門職員試験の選択科目として設けられています。受験者が多い一般職では,毎年5問が出題されますが,傾向は完全に固定されています。毎年,以下の5分野からの出題です。

 ・教育史
 ・教育社会学
 ・教育法規
 ・生涯学習
 ・教育方法学

 教育社会学は,教員採用試験の教職教養では「アウト・オブ・眼中」なのですが,国家公務員試験では大変重視されています。いいことです。

 生涯学習も必出。少子高齢化の進行により,生涯学習の重要性が増しているためでしょう。この点も,教員採用試験とは違っています。

 本書には,試験での出題頻度が高く,かつ広範な知識を吸収できる88の過去問を盛り込んでいます。解説も,懇切丁寧にしたつもりです(関連知識の紹介など)。これらを繰り返し解いてモノにすることで,試験を突破する実践力が確実に培われることと思います。

 参考書の機能も持たせるため,「POINT」というページを設け,必ず押さえておくべき最重要の知識を盛っていますが,如何せんページ不足のため,これだけでは不足です。そこで,『教職教養らくらくマスター』も併用されることをお勧めします。教員採用向けの本ですが,国家公務員試験対策にも使える作りになっています。
https://jitsumu.hondana.jp/book/b297721.html

 出題頻度の高い西洋教育史は,本書の136~143ページの思想家一覧表を使った学習が効果的でしょう。ルソーなら主著として『エミール』,思想上のキーワードは「子どもの発見」「消極教育」。これだけ押さえておけばOKです。

 ある人物の名前を提示されたら,即座に主著とキーワードを答えられるようにすること。これだけで,問題の大半は解けます。教育学の問題は,著名人物の学説の正誤判定がほとんどですので。

 教育法規については,上記の要点整理集の「教育法規」のチャプターで紹介されている,重要法規の条文を押さえるといいでしょう。教育基本法,学校教育法,教育公務員特例法,教育職員免許法,地方教育行政法など。

 そうそう。教育社会学は,専門用語の理解を試す問題も多し。「隠れたカリキュラム」「文化的再生産」「感情労働」など。現存の教育社会学の用語集としては,岩井・近藤編『現代教育社会学』(有斐閣)の巻末用語集がベストだと思います。過去問をみても,この部分からの出題が数回あり。本書は2010年刊行ですが,版を重ねた最新版を手元に置かれたし。巻末用語集だけでなく,本文の内容もためになります。
http://www.yuhikaku.co.jp/books/detail/9784641183827

 これらの参考書も併用して,『スーパー過去問ゼミ5 教育学・心理学に繰り返し取り組めば鬼に金棒。

 上述のように,教育学は出題傾向が固定されており,問題の難易度もさほど高くありません。それに,教育は誰もが実際に経験してきていることなので,現実感をもって,楽しく学習することができるでしょう。「ああ,こういうことだったのか」と,自分の体験との往復運動も面白い。ぜひとも,教育学の選択をお勧めしたいと思います。

 マイナーな科目ゆえ,教育学・心理学の過去問集は,本書しかないと聞いています。唯一の過去問集です。需要があったのか,2014年刊行の旧版は3刷まで行きました。
https://twitter.com/p_xs3/status/526903103837061121

 長くなりましたが,新刊『スーパー過去問ゼミ5 教育学・心理学のアナウンスでした。来週の末に,書店に並ぶ予定です。「国家公務員試験を教育学で受けようかな」という皆さん,お手にとっていただけますと幸いです。

2017年11月21日火曜日

年齢・性差別の国際比較

 差別(discrimination)は,いつの時代,どの社会でも,重要な社会問題の根幹をなしています。性・年齢・人種など,当人では如何ともしがたい外的属性によって,社会的な処遇や富の配分に傾斜をつけることです。

 差別は,生活のあらゆる領域で起こり得ますが,最も頻度が高いのは,仕事の場(職域)ではないでしょうか。昔の社会病理学のテキストを開くと,「職域の病理」というチャプターの中で,必ずといっていいほど,差別の問題に触れられています。

 ISSPの「職場環境に関する調査」(2015年)では,就業者(就業経験者)に対し,過去5年間で,仕事上の差別を受けたことがあるか,と問うています。回答は,「イエス」or「ノー」。
http://www.issp.org/data-download/by-year/

 日本の労働者の回答は,「はい」が133人,「いいえ」が1011人となっています(無効回答は除く)。被差別の経験率は,133/(133+1011)=11.6% となります。仕事に関わる差別を受けたことがある労働者の割合は,全体のおよそ1割。

 「はい」と答えた者には,差別の主な理由を答えてもらっています。11の選択肢から1つを選ぶ形式です。それを整理すると,下表のようになります。


 被差別経験者133人の回答によると,主な差別理由として「年齢」を選んだ者が49人と,最も多くなっています。わが国の(悪しき)年齢主義が出ていますねえ。その次は,「その他」の45人です。分かりやすい外的属性以外の差別もあるのでしょう。

 3番目は障害。日本の職場はまだまだ,障害者にとって働きやすいとはいえますまい。その次は性別です。サンプルが少ないので分析できませんが,女性に限ったらこの理由の比重は高くなるでしょう。

 上の表は,日本の職場における差別理由ですが,様相は国によって違っています。多民族国家のインドでは,差別理由で最も多いのは「人種」です。南米のベネズエラでは,「政治的信念」が最も多くなっています。

 しかし大観すると,年齢・性別という,人間を分かつ基本属性に由来する差別が多くなっています。

 この2つの理由が,差別理由全体の中で何%を占めるか。調査対象の37か国の国際比較をしてみましょうか。

 「どれでもない」と「無回答」を除く9つの理由全体に占める,年齢・性別の比重を計算してみました。日本の場合,年齢は,49/124=39.5%です。性別は,8/124=6.5%なり(上記の表参照)。

 横軸に年齢,縦軸に性別の比重をとった座標上に,37の国を配置すると,以下の図のようになります。点線は,37か国の平均値を表します。


 横軸の年齢差別の比重は,日本はオーストラリアに次いで高くなっています。性差別は,国際平均より下。近くに,メキシコやフィリピンといった発展途上国がありますが,女性差別にセンシティヴでない,という見方もできます。

 南アフリカやスリナムでは,両方の比重が低くなっていますが,これらの社会では,「人種」という理由を選ぶ人が圧倒的に多くなっています。南アの人種隔離政策(アパルトヘイト)の歴史は,よく知られていること。その伝統が,見えざる形で残存しているのでしょう。

 右上は,年齢や性差別の申告度が高い社会ですが,フィンランドはセンシティヴですねえ。アイスランド,ノルウェー,そしてスウェーデン(瑞)といった北欧諸国では,性差別の比重が高し。女性の就業率が高いので,こういう結果になるのでしょうが,ジェンダーの問題に真摯に向き合っていることの表れともとれます。

 性差別にどれほどセンシティヴか? この点を計測する尺度とか,どこかの研究者が考案していないものか。いくつかの行為を提示し,「差別と思うか」と答えさせ,点数化するなど。おそらく,左上と右下の社会では,かなり違った結果が出るでしょう。

 ただ日本でも年齢差別の問題は認識されているようです,現実にもありますしね。年齢え求職者を門前払いしたり,若いという理由で,才能ある人材を指導的なポジションに就かせなかったり…。校長の若年比率の国際比較をすると,よく分かります。

 16日公開のニューズウィーク記事にも書きましたが,こういう悪しき年齢主義を打破するには,履歴書の年齢欄を撤廃することから始めるといいかもしれません。年齢を記した履歴書を求めること,求人票に「*歳まで」と書くことなどは,諸外国では年齢差別以外の何物でもありません。

 20代のフリーターの7割が月収20万未満で,8割が正社員を希望しているというデータが報じられています。超売り手市場で,学生がこないと企業は嘆いていますが,新卒だけでなく,こういう既卒層,さらにはわれわれのようなロスジェネにも目を向けるべきでしょう。同じ人間,何も違うところはありません。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171120-00000065-zdn_mkt-bus_all

 少子高齢化で労働力が減っていく時代にあって,年齢主義や新卒至上主義のような慣行は,まずもって撤廃しないといけません。

2017年11月14日火曜日

労働時間と知的好奇心

 OECDの国際成人力調査「PIAAC 2012」のローデータ分析にのめり込んでいます。

 パソコンのメモリを16GBに増やしたのを機に,全対象国(31か国)のデータを接合した,コンプリート版のデータベースを作りました。エクセルに落とすと260MBにもなります。
http://www.oecd.org/skills/piaac/publicdataandanalysis/

 この調査は成人の学力調査ですが,各国の成人の生活状況や学びについても調べています。明らかにできることはいろいろありますが,そうですねえ。「働き方改革」がいわれる,昨今のわが国の状況にかんがみ,労働時間の国際比較をやってみましょうか。

 高齢者やパートも含めた全就業者ではなく,働き盛りのフルタイム就業者に絞った比較をしましょう。上記調査はサンプルが多いので,こういう統制も十分可能です。*WVS(世界価値観調査)やISSPでも,この手のデータは作れますが,サンプルが少なく,傾向が安定しないのが難点でした。

 上記調査のローデータをもとに,25か国について,30~40代のフルタイム就業者の週間就業時間分布を明らかにしました。下図は,日本とノルウェーの比較です。大雑把な4カテゴリーの内訳(%)にしています。


 同じ働き盛りのフルタイム労働者ですが,違うものですねえ。わが国の法定の週間就業時間は40時間(8時間×5日)ですが,ノルウェーでは,半分以上がこれを下回っています。

 予想通り,長時間労働は日本のほうがずっと多くなっています。4割が週50時間以上,6人に1人が週60時間(1日12時間)以上働いています。ノルウェーでは,こんな働き方をしている労働者はごくわずかです。ICTの先進国ですが,こういう技術を活用して,生産性を高めているのでしょう。

 平均をとると,日本の1405人の週間平均就業時間は46.7時間,ノルウェーは40.4時間となります。6.3時間の差です。

 他国はどうでしょう。下図は,25か国を高い順に並べたランキングです。アメリカとドイツは年齢を訊いていないので,分析対象に含めていないことを申し添えます。


 トップはトルコで,その次は韓国,日本は3位です。4位にギリシャがきていますが,これはちょっと意外。まあ偏見は持たず,客観的な数値として受け入れましょう。

 下の方をみると,働き盛りの労働時間が最も短いのは,先ほど比べたノルウェー。その次はデンマークで,その上はフランスです。分かるような気がしますね。

 ここにて,25か国について,働き盛りのフルタイム労働者の仕事時間を出したのですが,これを,前回取り上げた知的好奇心と関連づけてみると,興味深い事実が浮かび上がります。

 知的好奇心のレベルは,「新しいことを学ぶのが好きだ」という項目に対し,「非常によく当てはまる」ないしは「よく当てはまる」と答えた人の割合で測ります。

 横軸に週間の平均就業時間,縦軸に知的好奇心をとった座標上に,25か国を配置すると,以下のような布置図になります。両軸とも,30~40代のフルタイム就業者のデータです。


 働き盛りの労働時間と知的好奇心の相関図ですが,いかがでしょう。右下がりの配置で,仕事時間が長い国ほど,知的好奇心が低いという,負の相関関係が見受けられます。相関係数は,-0.7064です。

 うーん,長時間労働は知的好奇心を枯らす,ということでしょうか。あまりの長時間労働だと,新しいことへの興味,未知のことを吸収しようという意欲も萎える。十分,あり得ることです。

 そもそも,学びを可能ならしめる一番の資本は「ヒマ」です。学校(スクール)の語源が,閑暇(スコレー)であることは,よく知られています。長時間労働は,学びを時間的に不可能ならしめると同時に,その意欲も奪ってしまうでしょう。

 前回述べたように,変動社会では,知的好奇心を枯らすことなく,絶えず学び続けることが不可欠。そのことで,斬新なイノベーションも生まれてきます。上記の傾向が因果関係の面を含んでいるとしたら,長時間労働は早急に是正すべしという,強い提言につながりますね。

 しかし,上図の傾向が相関関係の表現と断定はできません。2つの変数には,共通の背因(根)があるかもしれません。もしかすると,双方とも,子ども期の学校教育の影響によるかもしれませんね。

 わが国の学校教育では,長時間労働を厭わない精神が子どもに植え付けられるでしょう(教師がそのモデルになっている!)。また,受験主義の詰め込み教育ですので,学びとは苦痛だ,勉強は楽しくない,という思い込みも刻みこまれるでしょう。お隣の韓国も然り。しかるに,対極の北欧諸国では,その度合いが薄いと。

 だとしたら,学校教育の在り方の問題になります。折しも,今年春に公示された新学習指導要領では,こうした弊を克服する方向が示されています。子どもの能動的な学びを重視する「アクティブ・ラーニング」がキーワードです。

 ともあれ,知的好奇心という変数を切り口に据えると,わが国の職業社会や学校の病理が浮かび上がってくるようで,興味深い思いがします。

2017年11月12日日曜日

成人の知的好奇心と学生比率

 歯の再手術で入院したこともあり,ブログの更新が滞ってしまいました。

 入院の前日にデスクトップパソコンを秋葉原に送り,メモリを8GBから16GBに増やしてもらいました。依頼したのは,パソコン工房秋葉原サポートセンターです。「安い・早い・誠実」の3拍子がそろった,おススメのお店です。
https://pc-support.unitcom.co.jp/contents/shop/akihabara_support.php

 私は,国際調査のローデータをよく分析しますが,容量がべらぼうに大きいファイルもあります。「PISA 2015」などは,73か国52万人のデータが入ってますので,エクセルに落とすと240MBにもなります。

 8Gでも何とかなりますが,動作が不安定化します。「エクセルは応答していません」というフリーズ状態になるのもしばしば。ユーチューブの動画を並行してかけるのは,まずNGです。しかし16Gに増やしてからは,こういう弊はなくなりました。

 昨日は,OECDの国際成人力調査「PIAAC 2012」について,各国のローデータを一つのファイルに集約する作業に没頭しました。データの容量があまりに大きいため,当局のダウンロードサイトでは,ファイルが国ごとに分割されているのですが,それらを接合したわけです。31か国分で260MBにもなりましたが,パワーアップしたパソコンでは,こういう超大規模ファイルのデータも快適に処理できます。

 これで,「PIAAC 2012」のローデータも存分にしゃぶり尽くすことができます。手始めに以下の2つの作品をつくり,ツイッターで発信したところ,見てくださる方が多いようですので,ブログにも載せましょう。

 1)30~40代の知的好奇心と学生比率
 2)年齢別の知的好奇心の日瑞比較

 1)は,働き盛りの年齢層に限定した国際比較です。「PIAAC 2012」の対象は16~65歳ですが,この幅広い層(成人全体)をひっくるめるのではなく,働き盛りの層に絞ってみました。

 知的好奇心とは,「新しいことを学ぶのは好きだ」という項目に,自分は「非常によく当てはまる」ないしは「よく当てはまる」と答えた者の比率です。学生比率は,分析対象の30~40代のうち,学生である者が占める割合です。こちらは,千人あたりの比率()にしています。

 横軸に知的好奇心,縦軸に学生比率をとった座標上に,データが得られる25か国を配置すると以下のようになります。


 変動が激しい社会では,学校を終えたら勉強は終わりではありません。社会に出てからも知的好奇心を枯らすことなく,絶えず新しいことを摂取し続けないといけません。

 また大学等にもう一度戻って学び直す「リカレント教育」の普及も望まれます。わが国では,閉じた企業内訓練が支配的なのですが,自分の会社だけでなく,どこでも通じる「汎用性」のあるスキルを身に付けるのは,外部の機関における学びも必要になります。職務から離れる「Off-JT」は,斬新なイノベーションを得るきっかけにもなるでしょう。

 しかるに上のグラフによると,日本はどちらも芳しくないようです。働き盛りの知的好奇心は他国と比して低く,学校で学び直している者も少ない。お隣の韓国も似た位置ですが,受験競争が激しいこれらの社会では,子ども期にかけて「勉強は苦行」という刷り込みがなされるのでしょうか。

 対極には,北欧の諸国がありますね。社会福祉のみならず,生涯学習も進んでいるようです。スウェーデン(瑞)では,学生の3分の1は社会人といいますし。

 上記の図は,働き盛りの生活条件(長時間労働)の問題と同時に,子ども期の教育の有様を問うているともいえるでしょう。

 次に,2番目のグラフです。知的好奇心ですが,加齢とともにだんだん萎んできます。これはある意味,生理現象ともいえますが,その傾斜は社会によって違いますし,Aという社会の老人のほうが,Bという社会の若者よりギラギラした好奇心を持っているケースもある。

 先ほどの散布図で対極の位置関係にある日本とスウェーデンについて,年齢別(1歳刻み)の知的好奇心のグラフをつくり,左右に並べると恐ろしい事実が判明します。


 「新しいことを学ぶのは好きだ」という項目に対する反応分布のグラフですが,日本の若者の好奇心は,スウェーデンの老人とほぼ同じであることが知られます。両国のグラフはつながっているように見えます。

 日本人は,スウェーデン人の老後を生きているような感じですねえ。

 子ども期において,知識をがむしゃらに詰め込むのではなく,学ぶのは楽しいことを分からせ,生涯にわたって自発的に学ぶ態度を養わねばなりますまい。これが,21世紀の学校のあるべき姿です。

 私は教育学を勉強する学徒ですが,子どもの教育学(ペダゴジー)よりも,大人の教育学(アンドラゴジー)に関心を持ちます。「PIAAC 2012」は,わが国の成人教育の問題点を浮き彫りにできるデータの宝庫です。

 全対象国をまとめたローデータのファイルができましたので,これを徹底的に分析し,問題提起をしていこうと思います。

2017年11月5日日曜日

年齢別の在籍学校

 年齢が分かったら,その人がどのライフステージ(教育期,仕事期,引退期…)にいるか見当がついてしまう。「エイジ」と「ステージ」が硬直的に結びついた社会。

 変動が速く,かつ人生100年の時代にあっては,こういう社会の仕組みは変えないといけない。リンダ・グラットン教授の名著『ライフ・シフト』で言われていることですが,その典型は日本でしょう。

 学校に通っている子ども・若者をとっても,年齢から当人の在籍学校は容易に言い当てることができます。7歳なら小学校,14歳なら中学校,17歳なら高校,21歳なら大学というように。

 その様は統計でも分かります。2010年の『国勢調査』では,何らかの学校に通っている通学者の在籍学校を,年齢別に集計しています。0~22歳の内訳を帯グラフにすると,以下のようになります。数値の出所は,下記リンク先の表13-1です。


 6歳,15歳,18歳といった節目の年齢を除くと,各年齢の在籍学校はほぼ一様に決まっています。7~14際の子どもは,ほぼ100%が小・中学生です。

 学校教育法で,この年齢の子ども(学齢児童・生徒)は,小・中学校への就学を義務付けられていますので,当然といえばそうなのですが。

 しかるに,諸外国ではそうではありません。内閣府の『我が国と諸外国の若者の意識に関する調査』(2013年)では,13~29歳の生徒・学生の在籍学校を調べています。いま,13~15歳の生徒を取り出し,在籍学校の内訳を国ごとに比べてみると,下図のようになります。ローデータを加工して,独自に作成したグラフです。


 日本ではほぼ100%が中学ないしは高校ですが,諸外国はさにあらず。韓国では7.813人に1人),アメリカでは4.1%(24人に1人)が大学・大学院に籍を置いています。優れた才能を持つ者は,年齢に関係なく大学に入学できる「飛び級」の制度が普及しているのでしょう。

 日本でも飛び級の制度はありまが,「高校に一定年数以上在籍したこと」という条件なので(学校教育法90条),10代前半の青少年が大学に入ることはできません。義務教育段階では,落第もなければ飛び級もない「年齢主義」になっています。*落第の国際比較は下記記事。
http://tmaita77.blogspot.jp/2015/12/2012.html

 しかるに,14歳で数学検定1級をとったとか,小学校低学年で優れた文芸作品を発表したとか,幼くして才能を発揮する子どももいます。それを伸ばすことも求められるでしょう。
 
 教育,とりわけ義務教育の目的は「調和のとれた人間形成」ですが,金太郎飴のごとく,均質な「バランスのとれた」人間を育てる必要はありますまい。斬新なイノベーションが重要となる21世紀では,バランスに欠けていても,特定分野の才能がずば抜けた逸材がもっと出てきてもいい。

 堀江貴文さんが「バランスのとれた人間はつまらない」と言われていますが,言い得て妙だと思います。皆が同じ時間に出社し,同じ服を着て,同じやり方でモノを大量生産する「20世紀型」の工業社会は終わっています。

 日本の労働生産性の低さは,年齢による役割規範が強すぎること,年齢によって才能を抑えつける風潮があることとも関連しているでしょう。

 何かにつけて,わが国では年齢が問われるのですが,悪しき年齢主義を打破するには,履歴書の年齢記入欄を撤廃することから始めるのもいいかもしれませんね。履歴書に年齢記入欄を設けること,求人票に「*歳まで」と書き込むなどは,諸外国では差別以外の何物でもありません。

 少子高齢化社会,イノベーション社会では,年齢主義は排除されるべきものです。

2017年11月1日水曜日

2017年10月の教員不祥事報道

 昨日で10月は終わりでした。教員不祥事報道の整理を忘れてましたので,今日やります。先月,私がネット上で把握した不祥事報道は35件です。

 わいせつが多いのは毎月のことですが,酔って書類をなくした,他人の家に上がり込んだなど,酒がらみの事案が目立ちます。これからお酒が入る機会が多くなりますが,飲酒運転も含め,酒がらみの不祥事を起こさぬよう,注意していただきたいものです。

 今年も11月。本当に早いですね。私は来週,また立川病院に入院し,歯根端切除の再手術を受けます。ちょうどいい機会ですので,入院前日にデスクトップパソコンを秋葉原に送り,メモリを現在の8GBから16GBに増やしてもらいましょう。

 これで,PISAのローデータの超大規模ファイル(200MB!)を開いても,動作が不安定化しなくなります。私は,データ分析が生業ですので,こういう部分の投資は惜しみません。

 寒さが本格化してきました。かといって,昼になると気温が上がる。朝夕と昼の寒暖差が大きく,まいっています。体調管理には留意くださいますよう。

<2017年10月の教員不祥事報道>
中学校長 酒気帯び運転疑い 富士宮署逮捕
 (10/1,静岡新聞,静岡,中,男,57)
無免許疑い教諭逮捕 高岡で衝突、女性重体
 (10/3,北日本新聞,富山,小,男,28)
中学教諭、教え子の男子生徒に淫行疑い 部活動の遠征先で
 (10/5,沖縄タイムス,沖縄,中,男,40代)
「小学5、6年生が好き」 女児盗撮容疑で中学教諭逮捕
 (10/8,朝日,神奈川,中,男,40)
酒気帯び運転、教諭逮捕=車に追突―大阪府警
 (10/8,時事通信,大阪,中,男,35)
10代女性に乱暴疑いで教諭逮捕(10/10,NHK,北海道,高,男,34)
臨時講師 スクールセクハラで減給処分
 (10/10,大分テレビ,大分,高,男,40)
SNSで知り合った女子高生とのわいせつ動画撮影
 (10/10,産経,京都,特,男,23)
酒気帯び運転疑いで50代男性教諭摘発
 (10/11,福島民友新聞,福島,小,男,50代)
大津市で免許不更新の養護教諭採用が発覚、無効に
 (10/12,毎日,滋賀,中,女,30代)
スーパーで万引き、養護教諭に懲戒処分 愛知県教委
 (10/12,朝日,愛知,小,女,30)
「ナンパ断られ、むらむら…」強制わいせつ容疑でさいたま市立小教諭を逮捕
 (10/12,産経,埼玉,小,男,23)
横浜市立中学教諭を逮捕、路上で強制わいせつの疑い 
 (10/12,日刊スポーツ,神奈川,中,男,55)
少女の下半身をスマホで盗撮、小学教諭を懲戒処分 
 (10/13,日刊スポーツ,富山,小,男,29)
生徒の氏名入りテスト解答用紙が盗難 川口工業高の教諭が買い物中
 (10/14,埼玉新聞,埼玉,高,男,50代)
「お金もったいなかった」万引疑いで小学校教頭逮捕
 (10/16,サンスポ,北海道,小,男,48)
千円払って女子生徒に授業させる 定時制の61歳男性教諭を戒告
 (10/17,産経,東京,高,男,61)
女性スカートの中盗撮で30代教諭を懲戒免職
 (10/17,日刊スポーツ,山口,中,男,30代)
生徒にキス、高校教諭免職 教員わいせつ6人目 5年で最多
 (10/19,千葉日報,千葉,高,男,50)
酔って帰宅、あれウチじゃない? 住居侵入の校長停職
 (10/20,朝日,宮崎,中,男,59)
パチンコに負け、店の消火器壊す 沖縄県教委、中学教諭減給
 (10/20,琉球新報,沖縄,中,男,40代)
女子生徒にキスした教諭らを懲戒免職処分
 (10/20,神奈川新聞,神奈川,わいせつ:高男59,大麻所持:中男29)
万引で53歳小学教諭免職 島根県教委(10/20,産経,島根,小,男,53)
車にはねられ男性死亡 容疑の私立高校教諭を逮捕
 (10/22,埼玉新聞,埼玉,高,男,23)
教諭が盗撮した動画を削除・隠蔽容疑 校長ら書類送検
 (10/23,朝日,中,男,59,54)
運転代行で帰ったはずが飲酒運転 中学校の男性教諭を懲戒免職
 (10/24,岩手放送,岩手,中,男,53)
大分の特別支援学校で教諭が生徒に不適切指導(10/24,TBS,大分,特,女)
女子高生にわいせつ行為 臨時講師を懲戒免職
 (10/24,神戸新聞,兵庫,特,男,23)
スカート内にスマホ差し入れ 山梨、容疑の教諭逮捕
 (10/24,日経,山梨,高,男,30)
帰省先でスカート内盗撮を繰り返した小学校教諭を懲戒免職
 (10/27,産経,大阪,小,男,32)
千葉の教諭2人、うっかり失職 免許更新手続き行わず
 (10/28,産経,千葉,特女50代,中男40代)
水泳の授業中「溺れればいい」と暴言 新潟の中学教諭を減給処分
 (10/28,産経,新潟,中,男,40代)
教諭が酒酔い、テストなど紛失(10/30,神戸新聞,兵庫,小,男,53)
補習指導でスカート内にスマホ 滋賀、高校教諭を免職
 (10/31,京都新聞,滋賀,高,男,28)
懲戒処分:泥酔し暴行の男性教諭停職 横浜市教委
 (10/31,毎日,神奈川,中,男,57)

2017年10月31日火曜日

教員の教育職以外の経験年数

 OECDの国際教員調査「TALIS 2013」では,各国の中学校教員に対し,教育職以外の経験年収を尋ねています。
http://www.oecd.org/edu/school/talis.htm

 この問いに対し「0年」と答えた教員の割合は,教育職以外の経験がない教員の出現率と読むことができます。この数値を国別に出し,高い順に並べたグラフをツイッターで発信したところ,多くの方に見ていただけました。日本は79.2%で,対象国の中ではトップです。
https://twitter.com/tmaita77/status/924223243887640578

 しかるに,回答の分布にも関心が持たれるでしょう。アメリカでは,0年という教員(17.6%)よりも,10年以上という教員が33.6%と,ずっと多くなっています。この大国では,中学校教員の3人に1人が,教育職以外の仕事を10年以上経験してきているのですね。

 上記調査のローデータを加工して,ラフな4区分の分布を国ごとに出してみました。0年,1~4年,5~9年,10年以上,の4カテゴリーです。下表をご覧ください。赤字は,最頻値(Mode)です。無回答・無効回答は除いた有効回答の分布です。


 日本と同様,0年(≒経験なし)という教員が最多である国が多いですが,そうではない国もあります。メキシコとアメリカでは,10年以上という教員が最も多し。メキシコでは,4割近くにもなります。

 上表のデータをグラフにしましょう。そうですねえ。「0年」の比率と「5年以上」の比率を拾って,帯グラフにしましょうか。朝日新聞流に,中抜きのグラフにしてみました。国の配列は,0年の比率が高い順によります。


 かつてジョン・デューイは,「学校は陸の孤島である」と述べ,地域社会と学校の間に橋をかける必要があると提言しました。その中に人事交流が含まれていたか,記憶が定かでないですが,日本はそれが最も活発でない社会であるようです。

 22歳まで学生をやり,その後もずっと学校に奉職し続ける。学校の外の世界を知らない…。こういう教員が,全体の8割も占めるというのは,少しばかり怖い気がします。近年重視されているキャリア教育は,民間経験のある教員のほうが高いパフォーマンスを発揮するという説をどこかで聞いたことがありますが,そういう面もあるでしょう。

 現行の採用試験では,社会人採用の枠もありますが,これをもっと広げてもいいのではないか。もっと思い切ったことを言えば,一定年数の就業経験をもって,採用試験の受験資格にしてもいい。「学生しか経験してない私に何が教えられるのだろう?」。大学を卒業してすぐに教壇に立たされることに,戸惑いを覚えている学生もいるのでは。
https://twitter.com/kanas_office/status/924588992133083139

 ただ,現行の制度でも,民間人が教員になれる道は開かれています。にもかかわらず,現状は上記のデータのごとしというのは,教員は「ブラック」であることが知れ渡り,敬遠されているからかもしれません。待遇を改善しなければ,優秀な人材(社会人経験者)は集まらない。これは道理です。

 タイムカードや残業代という概念がない。民間の感覚からすれば驚愕するようなことが,学校ではまかり通っています。学校と外部社会の間に「橋」をかけるには,採用試験の制度改革だけでは足りないでしょう。

2017年10月28日土曜日

学用品に恵まれない子ども

 日本は,学用品に恵まれない子どもが多いそうです。
http://www.from-estonia-with-love.net/entry/pc-in-jp

 この記事によると,8つの学用品(机,パソコン,辞書,教科書…)のうち4つ未満しか家にない生徒の割合は,日本は5.6%であり,OECD加盟国の中で4位となっています。

 日本は経済大国であると同時に,子どもの貧困大国でもあるといいますが,それを象徴するデータですね。上記記事のデータソースは,OECDの「PISA 2006」です。今から10年以上前のデータですが,最近ではどうなのか。最新の「PISA 2015」のデータで追試をしてみようと思います。

 「PISA 2015」の生徒質問紙調査では,13の学用品を提示し,それぞれが家にあるかを尋ねています(Q11)。調査票の質問のスクショを掲げましょう。調査対象は,15歳の生徒です。
http://www.oecd.org/pisa/data/2015database/


 全部持っている子もいれば,2・3個しかないという子もいるでしょう。学用品に恵まれない子どもを取り出すためのラインをどこに引くべきか。「PISA 2006」では4個未満としていますが,尋ねている品目の数も違うので,この基準を流用するわけにはいきません。

 個票データを加工して,家にある個数の分布を観察することから始めましょう。13の品目全てに有効回答を寄せたのは,64か国の40万584人です(小地域は除く)。家にある学用品の個数の分布は,下表のようになっています。


 中央に山があるノーマル分布ではなく,上方に偏っています。最も多いのは10個です(13.86%)。右端の累積相対度数から,ちょうど真ん中の生徒(中央値)も10個であることが知られます。

 どうやら,10個というのがフツーの生徒であるようです。しからばその半分の5個に満たない生徒をもって,学用品に恵まれない子としましょう。上表の分布でいうと,その割合は5.37%です。

 当然,この割合は国によって大きく違っています。たとえば,メキシコでは20.30%(5人に1人)にもなります。一方,北欧のデンマークでは0.85%しかいません。

 この国際基準(13個中5個未満)を適用して,64か国の15歳生徒のうち,学用品に恵まれない子どもが何%いるかを計算してみました。下表は,高い順に並べたランキングです。


 トップはアルジェリア,2位はインドネシアです。この2国では,15歳の4人に1人が学用品剥奪状態にあるとみられます。当然ですが,上位には発展途上国が多くなっています。

 しかし,表をちょっと下がると日本が出てきます。学用品に恵まれない子どもの割合は5.23%で,64か国中17位。主要国の中では,アメリカを抜いてトップです。

 下位のほうをみると,ロシア,ラトビア,ポーランドなどがありますが,共産主義の名残りでしょうか。

 しかし,日本とアメリカが主要国の中でトップだとは…。両国はGDPが世界トップレベルの経済大国で,多くの富を有しているのですが,それが子どもの生活には届いていないと。

 上表から,OECD加盟の34か国を取り出し,各々の名目GDP額(2015年)と絡めてみると,下図のようになります。アメリカはGDPがぶっ飛んで高いので,横軸は端折っています。GDPの出所は,総務省『世界の統計2017』です。
http://www.stat.go.jp/data/sekai/index.htm


 単純に考えれば,多くの富を持っている(GDPが高い)国ほど,学用品剥奪状態の子どもは少なくなるように思えますが,さにあらず。メキシコとトルコを除くと,プラスの相関関係すら見受けられます。

 為政者は,富が増えると使い方を誤る性を持っているのか。GDPが低くとも,原点付近の社会のほうが,子どもにとって「生きやすい」という見方ができなくもありません。

 学用品という所持の点でも,日本の子どもの「貧しい」状態が露わになりました。冒頭の品目表のうち,日本の子どもの所持率が際立って低いのは,パソコンと勉強用のソフトウェアです。これは,教育のICT化の遅れの表れですが,それが進んだ国では,こういうアイテムも必需品とみなされるのでしょう(生活保護世帯にも支給される)。

 日本も,状況は変わっていくでしょう。社会の変化に伴い,何を必需品(奢侈品)をみなすかのラインは,絶えず変えていかないといけません。

 現状でいえるのは,日本は,豊かな富と子どもの貧困を併せ持った,何とも奇妙な社会である,ということです。

2017年10月25日水曜日

労働量ベースの労働生産性

 一国の経済活動のパフォーマンスを測る指標として,労働生産性というものがあります。頻繁に聞く言葉ですが,概念を知っている人はどれほどいるでしょうか。

 労働生産性とは,就業者1人あたりのGDP額のことです。日本は,GDPの額は世界でもトップレベルですが,それを就業者数で割った労働生産性は,さほど高くありません。2014年の数値は7.3万ドルで,統計が分かる34か国中21位です(総務省統計局『世界の統計2017』)。

 しかるに,GDPを就業者数で除すだけというのは,いささか不十分な気がします。生産の費やされた労働量は,就業者数と就業時間の掛け算で決まります。厳密には,後者の要素も考慮する必要があるでしょう。私は,以下の式を適用して,各国の労働生産性を計算し直してみました。

 労働生産性 = 名目GDP額/(就業者数 × 就業時間)

 タイトルのごとく,生産に費やされた労働量ベースでみた労働生産性です。計算に必要な3つの要素は,総務省統計局『世界の統計2017』で知ることができます。

 まずは,主要国の試算結果をご覧いただきましょう。お隣の韓国は就業時間のデータが載っていないので,対象から外しました。


 日本の15歳以上の就業者は6億3770万人,週間の平均就業時間は39.3時間,2015年の名目GDP額は4兆3835億8400ドルなり。就業時間が思ったより少ないのは,女性や高齢者も含めた,全就業者のものだからです。

 上記の式に当てはめると,日本の労働量ベースの労働生産性は,1.75と算出されます(単位は度外視)。お決まりですが,欧米諸国と比して低いですね。

 ノルウェーは4.29で,日本の2.5倍近くです。費やされた労働量あたりの生産性は日本よりもずっと高し。就業者数のみを考慮した場合よりも,差が大きくなっています。それもそのはず,就業時間も違いますからね。

 では,他国はどうでしょう。a~cの3要素を知ることができた38か国について,同じやり方で,労働量ベースの労働生産性を出してみました。下図は,高い順に並べたグラフです。


 日本は,ちょうど真ん中あたりです。38か国の平均値(1.78)には及びません。うーん,就業時間も加味した労働生産性では,お気楽な働き方をするブラジルやスペインにも劣るのですねえ。

 トップは北欧のノルウェー,下位には発展途上国の諸国があります。まあ,納得がいく順位構造です。

 労働生産性が高いノルウェーについては,いろいろ言われています。ネットで検索してみると,フレックスタイム制やリモート労働制が進んでいることを強調する記事がたくさん出てきます。

 それもあるでしょうが,社会の基底的な特性に注目すると,次の3つが進んでいることが大きいと思います。1)女性の社会進出,2)ICT化,3)生涯学習化,です。女性のタレントを活かす,業務を効率ならしめるICT機器を活用する,労働者が絶えず(外部機関で)学び続ける…。いずれも,労働生産性を高めるための必須の条件でしょう。

 上記の3つの度合いを,簡単な指標で数値化し,日本とノルウェーで比べてみましょう。下表をご覧ください。BとCは,国際ランキングをツイッターで発信したところ,多くの方に興味を持っていただけました。
https://twitter.com/tmaita77/status/922404634471284737
https://twitter.com/tmaita77/status/922362605791875073


 働き盛りの女性の労働参加率は,ノルウェーのほうが高し。これは分かり切ったことですが,ICT教育の進み具合(B)は,両国では比較にならぬほど違っています。

 この指標のランキングを見た人が,「日本は未だに人海戦術依存型」とつぶやいておられましたが,少子高齢化が進む中,これがいつまでも持たないことは明らかです。

 Cは生涯学習化の指標ですが,大学等の入学者の平均年齢は,日本は18歳,ノルウェーは23歳。これは初めて入学した人に限ったもので,何回も入り直している人(リカレント学生)も含めたら,ノルウェーの平均年齢はもっと高くなるでしょう。

 変動社会では,人生の初期に学校で学んだ知識や技術などすぐに陳腐化します。絶えず学んで,最新の知識・技術を摂取しないといけません。それは企業内教育だけでは不十分で,どこでも通用する汎用性あるスキルを身に付けるには,職場を離れた外部機関(大学等)で学ぶことも必要になります。

 こうした「Off-JT」は,職業訓練とは別の効用も持っています。職場を離れた別の世界の空気を吸うことで,イノベーションのきっかけが得られる,ということです。わが国では,「閉じた」職場内訓練が支配的ですので,こういう機会が決定的に不足しています。これなども,労働生産性向上の阻害要因になっているのではないでしょうか。

 投入できるインプット(労働力量)は,ますます制限されるようになってきます。移民受け入れについて議論されていますが,インプットをひたすら増やす「人海戦術型」ではなく,労働の質を向上させる。随所で言われていることですが,できることはあるでしょう。上記の3つは,その切り口の一端です。

2017年10月21日土曜日

学部と修士の正社員就職率

 「頭のいい女子はいらないのか:ある女子国立大院生の就活リアル」と題する記事が目に止まりました。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171020-00010000-binsider-bus_all

 内容は,タイトルから推して知るべし。シューカツに臨んだ院生が,「大学院ねえ。そんなに勉強してどうするの」「あなたの学歴ではもったいない」などと,嫌味を言われるケースです。

 女子の場合,男子にもまして,こういう風当たりは強いでしょう。私が修士課程で一緒だった女子院生も上記のようなことを言われたことがあるそうで,「逆学歴差別だ」と憤っていました。

 大学院まで行くと,かえって就職がなくなる。だいぶ前からこういうことが言われていますが,データでみるとどうなのでしょう。今年春の卒業生の正規職員就職率を,大学学部と修士課程で比べてみましょう。分子と分母は以下です。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/NewList.do?tid=000001011528

 分子=正規職員就職者数+臨床研修医数
 分母=卒業生数-大学院等進学者数-専修学校等入学者数

 分子ですが,医学部の場合,キャリアが臨床研修医からスタートすることが多いですので,この数も含ませます。分母は,就職の意思がない大学院等進学者と専修学校等入学者は除外します。

 このやり方で,学部卒業者と修士課程修了生の正規職員就職率を計算してみました。下図は,結果をグラフにしたものです。ジェンダー差をみるため,性別で分けています。


 男子は,学部から修士にかけて,正社員就職率がちょっと上がります。しかし女子は,学部では85.4%だったのが,修士になると69.5%と大きく陥落します。学部では「男子<女子」だったのが,修士卒では大逆転です。

 ただこれは,専攻の違いによるかもしれません。理系では,学部卒より院卒が有利といいますが,理系の院生の大半は男子です。対して,女子院生の多くは文系の専攻であると。

 そこで,学部・修士の正社員就職率を専攻別に出してみました。下表は,結果の一覧です。上段は学部,下段は修士の専攻別の正社員就職率です。


 女子でも,理学専攻は,学部から修士にかけて正社員就職率がアップします(87.4%→90.6%)。

 予想通りといいますが,下落が大きいのは文系の専攻です。人文科学の女子では,学部の83.3%から修士の45.0%へと,40ポイント近くも落ちています。社会科学も,88.7%から59.1%と大下落です。

 文系の院に行くと悲惨であるのは男子も同じですが,女子はそれが顕著であると。ちなみに冒頭の記事で紹介されているのは,国立大の社会学の女子院生のケースです。

 男女の専攻別の正規職員就職率が,学部から修士にかけてどう変化するか。この点を視覚的に見て取れるグラフを作ってみましょう。横軸に学部卒,縦軸に修士卒の正社員就職率をとった座標上に,男女の10専攻のドットをプロットしてみました。

 青色は男子,オレンジ色は女子です。専攻名は,頭文字で略記しています(人=人文科学,社=社会科学…)。


 斜線は均等線です。このラインより上にあるのは,学部より修士の正社員就職率が高い専攻です。下にあるのは,その反対です。

 修士に行くメリットがあるのは,男子の理系専攻ですね。男子の理学専攻は,学部の78.6%から修士の89.3%へと,10ポイント以上の増。この専攻に限っては,女子も院進学の利点があるようです。

 しかるに女子にあっては,理学を除く全ての専攻で,大学院に進学すると正社員就職チャンスが狭まります。その度合いは,均等線からの垂直距離で見て取れますが,悲惨を極めているのが,人文・社会系です(緑枠)。

 最近は大学院修士課程への進学率が上がっているといいますが,正社員就職率という点でみると,メリットがあるのは男子の理系専攻に限られるようです。

 素朴な人的資本論に従えば,学部卒より院卒のほうが生産性に優れているので重宝されるはずなのですが,わが国の現実はさにあらず。ある方がツイッターでつぶやいていましたが,「欲しいのは学力・能力ではなく,ただの奴隷」なんだなと。
https://twitter.com/WadaJP/status/921264218728361984

 確かにそうかもしれませんねえ。採用面接で,学校で何を学んだかなんて聞かれないし…。先方が知りたいのは,性格にクセがないか,言われたことを従順にやってくれるか,これだけです。知識や技術は入社後に訓練すると。

 中には,学生の有している資質・能力に関心を持つ会社もあるでしょう。「大学院でプラス2年間学んだそうだが,それで得られたものは何か」と。学生の側は,それを分かりやすく伝える術を身に付けないといけません。
https://twitter.com/vc66AaZmbH5oZbE/status/921313998938578944
 
 ただ,同じ専攻にもかかわらず,大学院に進むと一般社会に出るチャンスが明瞭に「男子>女子」となるのは,「学のある女は要らぬ」という,旧態依然としたジェンダー観念が未だに蔓延っていることの証左といえるでしょう。

 国際比較をやったら,日本固有の傾向なのかもしれません。

2017年10月12日木曜日

18歳と19歳の投票率

 今月22日は衆院選の投票日ですが,昨年より選挙権の付与年齢が18歳に引き下げられ,高校生も投票できるようになっています。それに伴い,各地の高校で主権者教育が行われています。

 関心が持たれるのは,若きティーン(18・19歳)の投票率ですが,昨日の神戸新聞の記事によると,18歳から19歳にかけて投票率がガクンと下がる傾向があるそうです。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171011-00000016-kobenext-soci

 「ホンマかいな」と,昨年の参院選の年齢別投票率をグラフにすると,下図のようになります。昨日,ツイッターで発信した図です。


 ほう。18歳では51.2%と半分を超えていたのが,19歳では39.7%に急落し,22歳まで低下を続けます。大学在学中にかけて投票率は下がるのですねえ。

 上記の神戸新聞でも言われていますが,18歳の高校生は,学校で密な主権者教育(啓発)がされますが,教師と学生の距離が大きい大学はさにあらず。要するに,野放しの大学生は投票所に足を運ばないのでしょう。

 あと考えられるのは,住民票を移していない学生が多いということ。これでは,自分が住んでいるアパートに投票案内は届きません。実家に戻って投票するなんて,億劫なことはしたくない。よって,投票率が低くなると。

 それをうかがわせるデータもあります。問題の19歳の投票率が,都道府県でどう違うかです。昨年の参院選でいうと,19歳の投票率の全国値は39.7%ですが(上図),都道府県別にみると,最高の53.8%から26.6%までの開きがあります。倍の格差です。

 各県の19歳の投票率を地図にすると,以下のようになります。


 値が相対的に高いのは,都市部ですね。実家から大学等に通っている学生が多いためでしょう。

 対して西日本のエリアでは,投票率が35%に満たない県(白色)が多くなっています。私の郷里の鹿児島も然り(34.3%)。住民票を移さないまま都会に出ている学生が多いので,投票率が低くなってしまうのでしょう。

 このマップの白色の県は,大学進学の際,住民票をきちんと移すよう,指導を強化する必要があるのではないでしょうか。

 住民票を移してない学生さんも,帰省せずして投票できる「不在者投票制度」なるものもあるようですが,結構手続きが煩瑣です。また,利用できない自治体もあるとのこと。住民票を移すのがベストであるのは,言うまでもありません。
https://www.buzzfeed.com/jp/sumirenakazono/senkyo-hitorigurasi-touhyo?utm_term=.ile5gOdVDM#.xuEPnaZv6J

 私は,事情あって18歳から独立生計でしたので,役所関係の諸手続きはきちんとする習性が身についています。そうでないと,病院すらいけないですからね。

 学生さんもやがては親の扶養を離れ,独立生計者となりますが,各種の行政手続きを「親任せ」ばかりにしていると,後々痛い目をみるでしょう。大学入学に伴い転居したら,まずはその地の役所に足を運び,ちゃんと住民登録をしましょう。

 さて,今月の衆院選は,ティーンに選挙権が与えられた2度目の国政選挙ですが,投票率はどうなるでしょう。今年の19歳は,昨年(18歳時)の経験があるので,最初のグラフのような大幅な陥落傾向は消えているかもしれませんね。

 ここ数日,10月とは思えぬ暑さが続きましたが,明日は気温が一気に下がり,肌寒くなるそうです。今日のマックスが28度に対し,明日は17度(横浜)。10度以上の落差です。ちゃんと,布団を被って寝ましょう。

 今日は立川病院に行き,先日受けた歯根端切除手術の予後観察を受けましたが,「予後不良,再手術の必要あり」という判断。確定ではありませんが,来月にまた入院し,手術を受ける可能性が高くなってしまいました。やれやれです。(-_-;)

2017年10月9日月曜日

首都圏の大学学部別の公務員・教員就職率

 前回は,母校・東京学芸大学と文教大学教育学部について,卒業生の教員就職率を出してみました。資料は,旺文社の『大学の真の実力 2018年度用』です。
https://www.obunsha.co.jp/product/detail/051009

 各大学の学部別に,公務員就職者数と教員就職者数が分かる,スグレモノです。私はこれを使って,公務員就職率と教員就職率の分布を明らかにしたいと考えました。また上位の20位を拾い,「公務員(教員)になるならココ」という情報も出したいと思いました。

 ひとまず首都圏(埼玉・千葉・東京・神奈川)の分だけ,データベースを作りました。それぞれの学部について,就職率の算出に必要なデータを入力した次第です。その数,720学部なり。



 公務員(教員)就職率を出すに当たっては,就職の意思のない大学院等進学者を,卒業生全体から除いた数をベースにしました。東京学芸大学教育学部でいうと,今年春の卒業生は1131人,進学者は213人,教員就職者は317人ですので,教員就職率=317/(1131-213)=34.5% となります。これは,前回の記事で明らかにしたことです。

 公務員(教員)就職者が非公表であるなど,率の計算ができない学部,分母(卒業生から進学者を除いた数)が50人に満たない学部は,分析対象から外します。

 私はこのやり方で,首都圏の664学部の公務員就職率,649学部の教員就職率を明らかにしました。下表は,その分布です。

 なお,本資料に計上されている就職者数は,フルタイムの雇用形態のようですので,臨時職員や時間講師の類は含まれないと思われます。フルタイムの公務員(教員)就職率です。


 公務員や教員になる学生は多くないので,就職率が5%ないしは10%未満という学部がほとんどです。

 私の母校・東京学芸大学教育学部は,公務員就職率が5.1%,教員就職率が34.5%ですので,表の黄色マークの階級に属します。

 しかし,率が高い学部もありますね。公務員就職率のマックスは48.9%,教員就職率のそれは79.5%です(いずれも私立)。教員就職率およそ8割。前回みた文教大学教育学部の74.8%をも凌駕していますが,どこかしら。

 では,首都圏の大学の学部のうち,公務員就職率ないしは教員就職率が高い学部の顔ぶれをみていただきましょう。まずは,前者の上位20位です。表の「母数」は,パーセンテージの分母となった数(=卒業生数-進学者数)です。


 トップは,日本文化大学ですか。公務員就職率48.9%,およそ半分。公務員に強い大学として定評があり,公務員志望者向けの「公共コース」,警察官・消防官向けの「法心理コース」といった課程を設けているようです。
http://www.nihonbunka-u.ac.jp/about/feature/

 その次は,同じ八王子市にある創価大学看護学部。そして3位は,東京大学・法学部です。多くが国家公務員でしょう。

 上位20学部の内訳は,国立が10,私立が9で,公立は首都大学東京の都市環境学部がランクインしています。

 次に,教員就職率です。わが母校・東京学芸大学は,首都圏の上位20位にランクインするか。50%以上,進学者を除く卒業生の半分以上が教員になる学部は赤字にしました。


 トップは,千葉の秀明大学です。文教を上回るって,ここですか。「学校教師学部」と名にふさわしく,強いですねえ。全寮制で,1年次から学校現場で研修をしているそうです。
http://www.shumei-u.ac.jp/faculties/edu/index.html

 3位は鎌倉女子大学の教育学部で,4・5位が千葉大と埼玉大の教育学部となっています。私が出入りしていた武蔵野大学の教育学部は48.1%で9位。割と頑張っているんだな。

 母校・東京学芸大学(34.5%)は,首都圏の649学部の中では17位となっています。横国は19位。前回も書きましたが,ゼロ免課程の学生が結構おり,この部分を除けば率はもっと上がるでしょう(それは千葉大や埼玉大の教育学部も同じですが)。

 14位の聖徳大学児童学部は,亡き恩師・陣内靖彦先生が,学大を定年後に行かれたところです。

 上記の2つの表は,「公務員(教員)になるならココ」という情報にもなるかと思います。これは首都圏(1都3県)のデータです。射程を全国に広げれば,顔ぶれはガラリと変わるでしょう。過激な広告で知られる,関西の雄・近畿大学は強そうだな。

 どなたか時間のある方,関西版をぜひやってみてください。旺文社の『大学の真の実力 2018年度用』は,2300円です。

2017年10月8日日曜日

旺文社『大学の真の実力』

 3連休の2日目ですが,いかがお過ごしでしょうか。秋晴れの空が広がっていますね。近くのソレイユの丘は,家族連れで賑わっていることでしょう。私は変わらず,自宅仕事ですが。

 さて,毎年この時期になると,各社の大学調査の結果をまとめた冊子が公刊されます。翌年度の受験生の参考に供するためです。私は毎年,読売新聞社の『大学の実力』を購入していますが,旺文社も独自に調査をやっているようです。

 受験雑誌『蛍雪時代』で知られる会社ですが,その特別号として,大学調査のデータをまとめた冊子が出るようです。その名は『大学の真の実力』。今年(2017年)の調査には,全国の751大学全てが回答しているとのこと。
https://www.obunsha.co.jp/product/detail/051009

 今年の調査結果の冊子を,アマゾンで取り寄せました。


 全大学が回答しているのは,大学(学部)別の退学率のようなデータは出さない,という編集方針の故でしょう。

 しからば,読者の目を引く「きわどい」データが載ってないかというと,そんなことはありません。入学者の地元出身率・現役率,卒業者のうちの公務員就職者・教員就職者など,読売新聞調査にはないデータも載っています。

 公務員就職者・教員就職者数を,全国の大学の学部別に知れるのはスゴイ。私は,東京学芸大学という教員養成大学の出身ですので,教員就職率という指標に関心を持ちます。

 この資料が集計している教員就職者とは,無期雇用,ないしは雇用期間1年以上で週の労働時間が30~40時間程度の者,ということですので,フルタイムの雇用形態の者とみてよいでしょう。時間講師の類は含まれないと思われます。

 はて,今の学大はどれくらい頑張っているか。300ページに,今年春の学大の卒業生(1131人)の進路が出ています。私の頃からのライバル,埼玉の私大・文教大学教育学部との優劣も,気になりますねえ。以下のシンプルな比較表を作ってみました。


 教員就職者数は,学大が317人,文教大が347人です。卒業者は学大の方が多いのに,教員就職者は文教のほうが多し。就職の意思のない大学院等進学者を除く卒業生(学大の場合,1131-213=918人)に占める,教員就職者の割合は,学大が34.5%,文教が74.8%です。

 ぐうう,倍以上の差です。だいぶ水を開けられていますねえ。まあ学大の場合,ゼロ免課程が結構ありますので,この部分を除いたら教員就職率はもっとアップするでしょうが,それでも文教の74.8%には及ばないだろうなあ。

 上表のデータをグラフにしましょう。進学者を除く卒業生ベースの教員就職率がイメージしやすいようにします。この場合,横幅も使えるモザイク図が一番。横幅を使って,進学者とそれ以外に分かち,後者の中での教員就職者の比重を可視化します。


 違いがよく分かりますね。進学先も就職先も決まってない進路未定者は,教員養成大学の場合は,多くが教員採用試験の浪人組でしょう。

 これは2つの大学の結果ですが,他にも教員養成大学(学部)はたくさんあります。学大の教員就職率は34.5%ですが,全体の中の位置はどうなのかなあ。国立と私立の分布の差も知りたいところ。国立の教員養成大学は,未だに研究志向が強く,社会のニーズに応えていない,という社説を新聞で読んだことがありますが,国立と私立ではどっちに軍配が上がるか。

 目下,首都圏(1都3県)の分のデータベースを作っているところです。おカネのある研究者なら,バイトを雇って全国の大学(学部)の卒業生の進路DBを作るのも容易でしょうが,私はそうはいきません。
https://twitter.com/tmaita77/status/916614544906117120

 しかるに,限られた労力(資源)から有意義なアウトプットを引き出すのも,研究者の腕の見せ所。首都圏のデータをもとに,教員就職率の分布と,「教員ないしは公務員を目指すなら,**大学の**学部!」ということが分かるデータを作ってみようと思います。