2018年6月17日日曜日

図書館司書の非正規化

 雇用の非正規化が進んでいますが,官の世界,教育の領域もそれを免れてはいません。蓋を開けてみると,民間よりも酷いくらいです。

 教育は学校教育と社会教育に分かれますが,とりわけ後者を担う人材の非正規化は凄まじい。全国のどの自治体にもある,代表的な社会教育施設は図書館ですが,そこには司書という職員が置かれます。図書館法で定められた資格を要する,れっきとした専門職です。

 近年,司書の非正規化はものすごい勢いで進んでいます。ツイッターで,司書の非正規率マップの変化を発信したところ,かなり注目を集めています。肌感覚が数値化された,という思いなのでしょう。

 いろいろリプもついていますが,指定管理図書館の司書も加えたほうが正確だ,というご意見をいただきました。なるほど,そういう図書館が増えていますよね。公共施設の管理・運営を民間業者に委託できる,という制度です。
https://twitter.com/dellganov/status/1007598307806363649

 私は多摩市にいた頃,お隣の府中市の中央図書館によく行きましたが,ここは指定管理図書館のようで,黒いユニフォームを着た業者のスタッフが来館者の対応に当たっていました。おそらくは,ほぼ全てが非正規雇用の人たちだと思われます。上記リンクのリプによると,95%はそうではないかと。

 指定管理図書館の司書も分子に加えたら,司書の非正規率はもっと悲惨なものになります。計算し直しましたので,結果をご報告いたしましょう。資料は,文科省の『社会教育調査』です。図書館司書の数を,雇用形態別に知ることができます。下の表は,1999年と2015年の全国データです。
http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa02/shakai/index.htm


 前世紀の末から最近にかけて,司書の数は9783人から1万9015人に増えています,倍近くの増加です。少子高齢化に伴い,生涯学習の重要性が認識されたこともあるでしょう。

 しかし増分は,直営の非常勤司書(c)と指定管理図書館の司書(d)によるもので,直営の専任司書(a)は減っています。司書の数は増えていますが,雇用形態の組成が大きく変わっている。安上がりの非正規が激増していますので,トータルの人件費はさぞ浮いているのでしょう。

 非正規比率を出すには,cとdを分子にすればいいと思いますが,指定管理図書館の司書の95%を非正規とみなし,以下の式で計算することにします。

 非正規率=( c + 0.95d )/ e

 これによると,1999年の非正規率は23.2%,2015年は69.4%となります。すごい増加ですね。最近では,図書館司書の7割が不安定な非正規雇用であると。

 これは全国の数値ですが,都道府県別にみると大きな地域差があります。1999年では,47都道府県の分布幅は,4.6%~56.1%でした。しかし2015年になると,最も小さい県でも45.8%,半分近くです。では最高値(MAX)は…。両年の都道府県別数値を高い順に配列した表をご覧いただきましょう。


 50%(半分)を超える県にはをつけましたが,2015年では44の県が染まってしまっています。濃い色は8割を超える県で,最高の熊本では83.8%にもなります。図書館職員全体ではなく,司書という専門職でコレです。

 司書の非正規率が半分を超える県に色を付けた地図にすると,地獄絵図ともいえる模様になります。前世紀末からの変化はあまりにも大きい。


 財政難により致し方ない面もあるとはいえ,ここまでナタをふるっていいものか。非正規は給与も低く,社会保障もありません。人間らしい暮らしが担保されるなら,柔軟な働き方ができる非正規も悪くないと思えますが,現状はそれから大きく隔たっています。

 図書館の機能遂行にも影響が及ぶでしょう。図書の賃借業務だけでなく,利用者の学習をサポートする専門力量が求められる司書ですが,非正規の人たちはどういう思いで働いているのか。

 私は前居の図書館で,ちょっと専門的な質問をしたところ,「今日は専任の人が休みなんで…」と尻込みされたことがあります。よく見ると名札に「臨時」と書いてありましたが,「非正規の自分が出しゃばったことをしてはいけない」と,要らぬブレーキをかけているように感じられました。ネームプレートは自我の源泉といいますが,こういう名札は止めたほうがいいと思いましたね。

 正規との給与格差による不満,長期的視野に立った力量形成(研修)機会の不足といった問題もあるでしょう。

 社会の変化がますます速くなり,少子高齢化も進む中,学校教育よりも社会教育の領分が大きくなってきます。その中核となるのが,全国津々浦々に設置された,学習のセンターである公共図書館です。そこで働く職員が,非正規化の先鋒を行ってしまっている。

 司書と並ぶ社会教育の専門職として,博物館の学芸員もありますが,この職業の非正規率もスゴイ。思うに,これらの職業の専門性がよく認識されていないのでしょう。文化国家を名乗るならば,人々の生涯にわたる学習を支える仕事の専門性について議論を突き詰め,待遇についても考え直したいものです。

 諸外国ではどうなっているのか。社会教育職員の国際比較という類の研究があったら,見てみたいと思います。

2018年6月15日金曜日

光文社新書からの経緯書

 『AI時代の新・ベーシックインカム論』(光文社新書,2018年4月刊行)にて,私が作成したグラフを無断使用されました。出典の記載にも不備がありました(掲載誌名の不記載)。

 本件につき,同社新書編集部より経緯説明書(謝罪文)が届きました。無断で使われたのは,『ニューズウィーク日本版』サイトの下記記事の図1です。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/02/20-12.php


 出典記載不備について経緯が書かれていますが,無断使用については一言も言及がありません。法で定められた引用という理解なので,会社の文書で取り立てて謝罪する必要はない,という認識なのでしょう。

 「筆者からの要望で,図表を掲載する決定をしました」と書いてありますが,許諾もなしに,他人の作品を「掲載する決定」を勝手にしてよいのでしょうか。

 記事の一文や二文をカッコ付けで引用するのとはワケが違います。作者の思い入れや労力が多く詰まった写真,イラスト,統計グラフといったコンテンツを使うに際しては,事前に許諾を求めるのが礼儀です。商業出版という営利事業での利用なら,なおのことです。相手の意向によっては,使用料を払うことも求められます。

 光文社さん。そちらが無断で使って下さったのと同じグラフを使用するに際して,別の出版社さんはちゃんと許諾を求めてきましたよ。メールをお見せしましょうか。


 そもそも,『ニューズウィーク日本版』サイトの利用規約には,「コンテンツの無断使用・複写は禁止します」と明記されています。この規定も侵害していることになります。
https://www.newsweekjapan.jp/tos.php

 まあ先方も非は認めているようで,担当編集者のメールに「許諾申請を怠っていました。誠に申し訳ございません」という謝罪の言葉があり,使用料も払うと言ってきました。また,「今後は気を付けます」という文言もありました。もう,同じことはしないでしょうね

 新書の業界も大変で,次から次へと新作を出さないといけないプレッシャーに晒されているのは分かりますが,倫理にもとる行為は慎んでほしいと思います。法に触れるかどうか,ということは関係なくです。

 スタイルアクトという会社が,首都圏の学区別の平均年収を出して注目を集めています。思想や感情の表現ではない,事実としてのデータは著作物ではありません。よって無断で拝借し,商業誌に載せて金儲けしても違法ではありません。でもそんなことをしたら,この会社が黙っていませんし,世間から集中砲火を浴び,業界から追放されることは必至ですよね。

 要は,倫理の問題です。世の中,法で対処できない部分は,人々の「倫理」「良識」で成り立っているのです。

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 この会社の新書の制作過程については,小谷野敦氏も疑問を呈されています。
http://d.hatena.ne.jp/jun-jun1965/20100124
http://d.hatena.ne.jp/jun-jun1965/20100904

2018年6月11日月曜日

研究者への到達チャンス

 私は1976年生まれで,1999年に学部を卒業し,2001年に修士課程,2005年に博士課程を修了しました。博士の最短年数は3年ですが,私は1年多くかかりました。

 私の世代は今年で42歳ですが,研究職の道を歩んでいる人の場合,トントンで行っている人は准教授になっているでしょう。しかしこういう勝ち組はわずかで,数としては,脱落組のほうがはるかに多くいます。

 いやらしい関心ですが,こうした淘汰の過程を数値で可視化できないかと,ふと思いました。文科省の『学校基本調査』で,学部卒業,修士修了,博士修了時点の人数は分かります。また同省の『学校教員統計』で,各年齢時点における,大学本務教員の職階別の人数が分かります。
http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/main_b8.htm

 これらの統計を駆使することで,大学教員へのキャリアルートにおける選抜(淘汰)過程を明らかにできます。私は,自分の世代である1976年生まれと,一回り上の1967年生まれの2世代について,データを試しに作ってみました。

 拾ったのは,①学部卒業,②修士修了,③博士修了,④助教・助手・講師,⑤准教授,の5つのステージにおける人数です。上記の2世代の場合,以下の時点・年齢の数を採取すればいいでしょう。①~③は『学校基本調査』に載っている卒業(修了)者数,④と⑤は『学校教員統計』の大学本務教員数です。


 ストレートだと27歳で博士課程を修了(満期退学)し,30歳前後で助教か講師になり,40歳では准教授になっていると思われます。

 では,2つの世代について,5つの時点における頭数を見ていただきましょう。博士課程修了者には,単位取得満期退学者も含みます。


 何の加工もしていない原数値です。当然ですが,ステージを経るにつれて,人数はぐんぐん萎んできます。私の世代だと,学部卒業者は53万2436人ですが,博士修了者は1万5160人で,40歳時点の准教授数になると1906人にまで減じます。

 このような淘汰は,男子よりも女子で大きいかな,という印象です。また,一回り上の世代よりも厳しくなっているようにも思えます。

 それは後で可視化するとして,まずは,それぞれのステージにおける男女比率を出してみましょうか。簡単な割り算です。


 私の世代を見ると,おおむね女性比は下がってきます。助教・助手・講師の段階ではペコっと上がるのですが,博士課程修了者とは別のリクルート源からの有期採用が多いのでしょうか。准教授のステージになると,男女比は「4:1」になります。

 近年の男女共同参画政策の効果か,上の世代よりは,ちょっとだけ状況は改善されています。しかし絶対水準としてはまだまだで,「男女共同参画」が具現された姿とは到底言えません。

 次に,サバイバル率を出してみましょう。どの時点をベースにするかですが,研究者の卵としての資格を得た,博士課程修了時点の人数を100とした数に換算してみましょうか。こちらも,簡単な割り算です。


 1976年生まれ世代だと,27歳の博士修了者数を100とした場合,31歳時の助教・助手・講師は18.4,准教授は12.6となります。准教授への到達率,およそ1割です。性別にみると男子は13.2,女子は10.7で,男子のほうがやや高くなっています。

 上の世代と比較すると,状況は悪くなっていますね。准教授(=パーマネントポスト)への到達率は,1967年生まれ世代では4分の1だったのが,10分の1になってしまっています。ジェンダー差もちょっと拡大しています。

 90年代以降の大学院重点化の影響が大きいでしょう。最初の原数表に戻ると,博士課程修了者数は67年生まれでは8019人だったのが,76年生まれでは1万5160人に膨れ上がっています。このように競争の母体が増えたにもかかわらず,パーマネントポストは減ってしまっている。

 後続の世代では,このサバイバル率はもっと低くなると見込まれます。私の世代は1割ですが,最近博士号をとった世代が40歳になる頃(2030年前後)の准教授数は,いったいどうなっていることか。18歳人口の減少により,少なからぬ大学が潰れているでしょうし。

 まあ学生も,市場の閉塞状況はよく知っているようで,博士課程への進学者は2003年をピークに減少の傾向にあります。競争の母体が減るので,1割という数値は維持されるかな。『ニューズウィーク日本版』で,大学教員市場の開放係数という指標を計算してみましたので,興味ある方はご覧ください。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/01/post-9390.php

2018年6月7日木曜日

「不詳」は分母から除こう

 人間の頭数を数えた官庁統計は,最も信頼できる資料です。データは公表されており,それを加工することで,地域別の失業率や大卒率といった指標を独自に出すことができます。

 最近はデータがエクセルでアップされているので,必要な数字をコピペして割り算するだけ。入力の手間もかかりません。便利になったものです。

 しかるに,最近の統計表を見ていて気になることがあります。「不詳」というカテゴリーの人数が少なくないことです。基幹統計の『国勢調査』でもです。とくに最終学歴などは「不詳」が多く,都市部では全数の中でもかなりの比率になります。

 下表は,都内23区のアラフォー年代の最終学歴構成です。学歴は,西暦の下一桁が「0」の年に調査されますので,2010年のデータとなっています。統計表「01020」より作成しました。
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/database?page=1&toukei=00200521&tstat=000001039448&result_page=1&second=1


 どの区でも,不詳が結構な数になります。港区,新宿区,渋谷区,豊島区では,最終学歴不詳者が全体の4割を超えます。最も高いのは港区で,アラフォーの学校卒業人口4万3066人のうち,1万9770人(45.9%)が学歴不詳です。学歴不詳率,半分近くなり。

 都内23区は外国人人口が多いからではないか,と言われるかもしれませんが,外国人がこんなに多いはずないですよね。学歴はデリケートな項目ですので,回答拒否が多いのだと思われます。

 ここまで不詳者が多いとなると,統計の信憑性が揺らいできます。たとえば大卒率を出す場合,不詳を含む総数(左端の数値)を分母にすると,おかしなことになります。不詳は,分母から除かないといけません

 この措置をするかしないかで,値は全然違ったものになります。港区について,2通りのやり方で大学・大学院卒率を計算すると,以下のようになります。

①分母に不詳者を含む場合
 14,066/43,066 = 32.7%

②分母に不詳者は含まない場合
 14,066/(43,066-19,770)= 60.4%

 2010年の35~44歳といえば私の世代ですが,同世代ベースの大学進学率は4割は超えているはずです。東京の都心では,これよりもうんと高いはず。東京の港区で,アラフォーの大卒率がたった3割なんて,ちょっと考えられません。①よりも②の数値をとるべきでしょう。

 都内23区について,①と②のやり方で,アラフォーの高学歴人口率を算出すると,以下の表のようになります。


 はじき出された値はかなり異なります。黄色マークは20ポイント以上違う区ですが,学歴不詳者が多いことによる,統計上の歪みが大きい区です(最初の表)。

 2020年の『国勢調査』では学歴が調査されますが,こうした歪みはもっと大きくなるのではないかと思われます。「不詳」のカテゴリーの者が増えることでしょう。『国勢調査』をはじめとした官庁調査への回答は,統計法で義務づけられており,罰則もあるのですが,現実には機能していないようです。

 ネット回答が普及し,全項目に回答しないと送信できないようになれば,この弊は幾分かは緩和されるかもしれませんが。

 とはいえ現状はこんなですので,『国勢調査』等の官庁統計を使って,地域別の「**」率のような指標を計算するときは,「不詳」というカテゴリーの人数は,分母から除くべきかと思います

 ここで示したのは学歴という極端な例ですが,労働力状態や配偶関係等でも,不詳者は結構います。失業率や未婚率といった指標を出す際は,要注意です。

 プレジデント・オンラインの記事で,都内23区のワーママ率と主婦率を出した表があるのですが,これらの指標の定義は何か,という問い合わせをしました。
http://president.jp/articles/-/25139

 ワーママ率=6歳未満の子がいる女性のうち,労働力状態が「主に仕事」の者の比率
 主婦率=6歳未満の子がいる女性のうち,労働力状態が「非労働力」の者の比率

 こういう回答でしたが,表の数値を見る限り,分母から労働力状態不詳を除いていないのではないか,という懸念が持たれます。それを咎める気はないですが,今後は注意した方がいい,という進言をしておきました。

2018年6月4日月曜日

年齢別の在学者数

 昨日の朝日新聞にビックリ仰天の記事が出ています。福岡県那珂川町に,93歳の小学生がいるそうです。
https://www.asahi.com/articles/ASL5P5VTKL5PTIPE020.html

 90歳の高校生,大学生といった記事は目にしたことがありますが,小学校で学んでいるというケースは初耳です。現在93歳ということは,1925年生まれと推測されますが,戦前期,尋常小学校への就学の機会も逃したのでしょう。

 それを今から取り戻そうと,曾孫世代の児童らと学んでおられます。いくつになっても学ぼうという姿勢は,子どもたちにとっても刺激になると,校長先生も喜び顔です。

 この那珂川町という自治体は,町民聴講制度なるものを設け,地域の学校を住民に開放しているそうです。学校を生涯学習の場にしようという試み,それは未来形の学校を先取りしています。これから子どもは減りますが,大人(高齢者)は増えてきますからね。その中には,向学心を持っている人も少なくありません。上記の記事で紹介されている,93歳の小学生はその典型です。

 これは福岡県の田舎町のケースですが,統計でみて,このような人はどれほどいるのでしょう。基幹統計の『国勢調査』では,西暦の下一桁が「0」の年(大調査の年)に,国民の在学状況を調べています。設けられているカテゴリーは,以下の4つです。
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/database?page=1&toukei=00200521&result_page=1

 1.小・中学校
 2.高校
 3.短大・高専
 4.大学・大学院

 やや区分が粗いですが,これらの学校に在学している人の数を年齢別に知ることができます。以下の表は,小・中学校と高校の在学者の年齢分布です。最新の2010年に加え,時代変化を見るため,20年遡った1990年のデータを見てみます。


 黄色マークは伝統的な在学年齢で,小・中学校は6~15歳,高校は15~18歳です。当然ですがこのゾーンの在学者が大半を占めます。しかし少子化により,この伝統的な年齢層の児童・生徒は大幅に減じています。

 代わって増えているのは,それとは別の「非伝統的」な年齢層の在学者です。赤字はこの20年間で増えている数字ですが,小・中学校では18~22歳,25~27歳,そして30歳以上の児童・生徒が増えています。夜間中学校の生徒が多いと思われますが,上記のお爺さんのように,小学校で学ぶ大人もいるでしょう。

 高校を見ると,13~14歳の生徒が出てきています(10人)。飛び入学を果たした生徒さんでしょうか。しかし法規上,飛び入学が認められるのは大学だけだったような気が…。

 それはさておき,高校でも伝統的な年齢層の生徒は減り,大人の生徒が増えています。子どもの頃,義務教育は終えたものの,高校進学は叶わなかったという大人は,一定より上の世代では数多くいます。1950年代の半ばまで,高校進学率は半分にも達していませんでしたから。今から高校生活を謳歌しようと,高校の門をくぐる高齢者のニュースはよく耳にします。

 次に,短大・高専と大学・大学院の在学者の年齢統計を見てみましょう。これらの高等教育機関では,成人学生はより多くなっています。


 短大・高専は90年代以降,学生数が大きく減じています。伝統的な年齢層の学生(15~20歳)は,122万人から58万人へと半減以下です。短大が苦境に立たされているためでしょう。しかし,それ以外の非伝統的な年齢層の学生は増えています(16万人→17万人)。学生全体に占める比率も,11.7%から22.7%へと倍増です。
 
 短大は,4年制大学よりも地理的分散の度合いが高い利点を生かし,今後は地域の生涯学習のセンターとしての機能を前面に出すべきでしょう。非伝統的年齢層の学生数の伸び率は,大学・大学院よりも,短大・高専のほうが大きくなっています。

 最後に大学・大学院ですが,90年では皆無だった,15~17歳のうら若き学生が出てきています。高校から大学への飛び入学は法でも認められています。
http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shikaku/07111318.htm

 18歳人口ベースの大学進学率が上がっているので,大学・大学院は,伝統的な年齢層の学生も増えています。それよりも上の学生も増えており,30歳以上の学生はこの20年間で3倍の伸びです。社会人に門戸を開く大学も増え,仕事と教育の間を往来する「リカレント教育」も,以前に比したら普及してきました。ただし,欧米に比べたらまだまだですけど…。

 以上,在学者の年齢統計をラフに見てきましたが,たまに新聞で目にする「90歳の高校生!」という類の記事が,ごく一部のマイノリティをつまんだものではない,ということが伺われます。学校は子どもや若者の占有物ではなく,そこで学ぶ大人(高齢者)は増え,その傾向は止まることはないでしょう。いろいろな世代の人間が学校に出入りし,机を並べて学ぶのはいいことです。

 今回見た統計では,マックスの年齢階級が「30歳以上」と括られてしまっていますが,2020年の『国勢調査』で同じ統計表を出す際は,改めてほしいと願います。中高年,高齢層といった多様なステージの学生数を把握できないからです。

 非伝統的な学生が学校に求めるものは,ステージによって異なります。学校がそれに応える準備をするためにも,細かい年齢統計が必要になるのは言うまでもありません。

2018年6月3日日曜日

晩産化の進行

 私の母(故)は1940年生まれ,私は76年生まれですので,私は母が36歳で産んだ子どもということになります。当時では,立派な「晩産」の部類です。

 40年以上の時を経た現在では,40歳を超してからの出産も珍しくありません。40歳以上の母から生まれる子は増えていますし,全出生児に占める割合も然り。厚労省の『人口動態統計』から,ラフな変化を跡付けてみると,以下のようになります。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/81-1.html

 ネットでは1980年の資料から見れるようですので,この年次からの5年間隔の推移を作ってみました。


 少子化で,生まれる子どもの数は減っています。1980年では158万人でしたが,2016年では100万人を切っています。しかるに,40歳以上の母から生まれた晩産児は増えています。1980年に比して8倍近くの増加です。

 その結果,晩産児の割合はぐんぐん増えており,1980年では0.45%でしたが,2016年では5.62%なり。最近では,生まれてくる子どもの18人に1人は,晩産児です。

 遅い年齢で結婚する晩婚が増えているためでしょう。またある方がツイッターで言うには,出産可能なレベルの経済力が備わる年齢が上がっているのでは,とのこと。なるほど,今の40代の世帯年収は一昔前の30代。あり得るかもしれませんね。
https://twitter.com/amareviewer/status/1003140865622065153

 40歳以上の出産といえば,第2子や第3子がほとんどだろうと思われるかもしれませんが,2016年では第1子が最も多くなっています。体力の低下する時期に,要領をなかなか得ない「初の育児」を迫られることになる。

 それだけならまだしも,年老いた親の介護ものしかかってきます。晩産に伴う問題として,しばしば指摘されるのは「ダブルケア」です。40歳で出産した場合,子が高校に入る時に親は55歳,大学に入る時に58歳,大学卒業時(自立時)には62歳になっています。45歳出産の場合は,プラス5歳です。親はとうに80歳を超え,「育児+介護」のダブルの負担が課されることになります。

 言わずもがな,その大半を担うのは女性です。それは統計にも表れており,近年,中高年女性の睡眠時間が殊に短くなっています。平均の睡眠時間では事の重みが伝わりにくいので,1日6時間未満しか寝てない人の割合をとってみましょう。

 下図は,働いている有業男女のうち,平日の睡眠時間が6時間に満たない人の割合の年齢カーブです。青色は1991年,オレンジ色は2016年の曲線なり。『社会生活基本調査』の行動時間階級の統計から作成しました。
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/database?page=1&toukei=00200533&result_page=1


 左側が男性,右側が女性のグラフですが,男女とも50代の伸び幅が大きくなっています。女性は,1991年では7.7%でしたが,2016年では23.9%にも達しています。今では,働く50代女性の4人に1人は,1日の睡眠が6時間未満です。

 50代になっても,高校生くらいの子がおり,弁当づくりで早起きしないといけない。加えて親の介護…。心身ともに疲弊している,この年代の女性の姿が目に浮かびます。
https://twitter.com/ulala_go/status/1002790783349641216

 なお晩産化の度合いには,地域差もあります。生まれてきた子ども全体のうち,晩産児が何%かを都道府県別に計算することができます。時代変化も知りたく,1995年と2016年の地域別数値を出し,高い順に配列したランキングにしてみました。90年以前のデータはPDFでの公表で,データを打ち込むのが面倒なので,95年との比較にしたことをご容赦ください。


 20年前の1995年では,0.6%~2.7%の分布幅でしたが,2016年では3.9%~7.9%のレンジになっています。全国的に晩産は進んでおり,最近では半数の県で晩産児率が5%(20人に1人)を超えています。マックスの東京は7.89%,13人に1人です。

 都市的な地域で晩産率は高くなっていますが,親との同居率(近居率)が低い,地域の人間関係も薄いなどの条件も相まって,ダブルケアの負担は想像以上に重い事態が予測されます。

 最近ではこの問題への関心が高まり,2016年の内閣府調査では,ダブルケア人口の推計値がはじき出されています。保育所への入所審査に,ダブルケアをしていることも考慮する自治体もあり(横浜市)。ダブルケアの当事者の互助会なども生まれているそうです。インターネットの普及により,こうした「つながり」の創出は以前より容易になっています。

 こうした取り組みと並行してなすべきは,家事の省力化です。諸外国を倣って弁当など手抜きでいい。さすがに運動会の弁当は手抜きはしづらいですが,午前中に終わらせちゃう「時短」運動会が父母に好評のようです。

 今後50代は,「育児+介護」のダブルケアのステージになります。これまでの通念は通用しません。完璧を求めるべからず。それを追求し,3代共倒れになっては,元も子もありません。求められるのは,3代の存続を可能ならしめる「手抜き」です。家庭科の教科書では,まあ手のかかる調理法ばかりが指南されていますが,これも変えないといけないと思います。時短メニューを推奨・紹介すべきだと思います。

2018年6月1日金曜日

スキーの実施率

 『ニューズウィーク』の連載も,一昨日公開の記事で80回目になりました。2015年の夏から,原則2週間に1回のペースで記事を載せていただいています。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/05/post-10274.php

 一昨日の記事は,若者の趣味の変化をデータで明らかにしたもので,注目を集めているようです。大雑把に言って,アウトドア系が減りインドア系が増えているのですが,ツイッター上での反応をみると,「スキー・スノボがこんなに減っているのか」という声が多し。

 博報堂生活総研の『生活定点1992-2016』のデータによると,スキー・スノボをよくする20代の割合は,1992年では39.2%でしたが,2016年では11.9%に減じています。四半世紀にかけて,3分の1以下に減っているわけです。

 松任谷由実さんの「恋人はサンタクロース」が流れる,1987年の映画「私をスキーに連れて行って」の時代とは,隔世の感がありますねえ。バブルの頃と比して,カネもヒマもない今の若者の状況が投影されているのは,間違いないでしょう。

 道具費や交通費等,おカネがかかるスキー・スノボの実施率によって,よく言われる「おカネの若者離れ」現象を可視化できるような気がします。官庁統計の『社会生活基本調査』に該当データがありますので,ちょっとばかり深めてみましょう。
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/database?page=1&toukei=00200533&result_page=1

 まずは,実施率の年齢曲線です。上記のNW記事では,20代の若者だけを取り上げましたが,他の年齢層はどうでしょう。1991年と2016年について,スキー・スノボの実施率の年齢カーブを描くと,以下のようになります。過去1年間に,スキー・スノボをしたという者の比率です。学校の授業や職場研修等によるものは除く,自発的な実施に限ります。


 40代以降ではさして変化はないですが,それより下の年齢層では,実施率が下がっています。とくに20代は下落が顕著で,1991年の38.6%から2016年に13.7%に減じています。奇しくも,博報堂調査の「よくする」率の数字と近似しているではありませんか。

 大学進学率の上昇により,今の20代は,自由時間が多い学生が増えているはずなんですが,現実はかくのごとし。そうはいっても,今の学生は学費稼ぎのバイトをしたり,最近は大学の締め付けも厳しくなっているので,いろいろ勉強をしたりと,一昔前と比して忙しくなっているのかもしれません。親世代も苦しく,仕送りも90年代の頃に比して大きく減っていますので,カネもないと。

 学生だけでなく,働いている若者も苦しい。やや古いですが,2012年の『就業構造基本調査』から,20代前半の正社員の年収中央値を出すと245万円です。
http://tmaita77.blogspot.com/2017/05/20.html

 むろん今の若者は,たとえカネがあってもスキー板をかついで遠出するような,かったるいことはしない。自宅でネットをする。こういうメンタルの要因もあるかと思います。

 さて当然ながら,スキー・スノボの実施率には地域差があります。上記のグラフは全国のデータで,雪が多い北国では事情は違うだろう,という疑問があるかもしれません。しかし,スキーの実施率は地域を問わず,全国的に減っているのです。

 『社会生活基本調査』では,都道府県別のデータも計算できます。このレベルだと年齢は10歳間隔ですので,15~24歳の年齢層の実施率を取ることにしましょう。1991年と2016年について,この層のスキー・スノボ実施率を県別に出し,高い順に並べたランキングにしました。


 どうでしょう。1991年では15%以上が34県(30%以上が20県)でしたが,四半世紀を経た2016年ではわずか4県です。

 雪が多い県といえど,スキーの実施率は下がっており,北海道,秋田,群馬,神奈川,新潟,富山,石川,山梨,長野,そして愛知では,この四半世紀で25ポイント以上落ちています。上記の表の3色で,47都道府県を塗り分けた地図にすると,変化の様相が実にクリアーです。


 実施率が大きく低下しているの加え,ベースの人口も減っていますので,スキー人口はかなり少なくなっていることになります。「スキーはオワコンか?」「スキー場の閉鎖相次ぐ」といったニュースが耳目に入るのは,必然のこと。

 聞けば,日本の良質な雪の上を滑りたいと,スキー板をかついでやってくる外国人が多いそうです。日本語より中国語や韓国語が多く飛び交っているスキー場もあるとのこと。目下,多くのスキー場が「インバウンド消費」を狙った活路を模索しています。

 スキー板やウェアのレンタルも考えられていいでしょう。カネがなく,面倒なことを忌み嫌う若者の需要喚起に,いささかでも寄与すると思います。

 時代の変化ゆえなので,どうこう言うことではないかもしれませんが,総じて,若者のアウトドアライフの頻度は減ってきています。釣りやキャンプなども同じ傾向です。災害が起きた時の「生きる力」の源泉は,アウトドアライフの経験といいます。若者の視野や経験が広がるよう,意図的に仕向ける必要もあるかもしれません。学校の特別活動は,この面で主要な役割を果たすことを求められるでしょう。

2018年5月31日木曜日

2018年5月の教員不祥事報道

 今日は上京し,お付き合いしている出版社の編集者さんとお会いしてきました。場所は,目黒駅前のセントラルスクエアビル。あいにく曇天でしたが,晴天日はさぞ眺めがいいだろうなあ,という所でした。

 帰宅して気付きましたが,今日は月末でしたね。今月,私がネット上でキャッチした教員不祥事報道は41です。今月は,公金横領や同僚の財布を盗むといった財産犯が多い印象です。動機として生活苦や借金返済を挙げるケースもありますが,教員は信用度100%で融資も一発,つい借り過ぎて散財しまい返済に首が回らなくなる,という話をよく聞きます。気を付けてほしいものです。

 中学生にわいせつ動画をおくらせ,御用となった中学校教員(赤字)。東京都では条例改正により,わいせつ画像を要求する行為そのものが罰せられることになりました。受け取ったか否かに関係なくです。

 日本では,教員と生徒がメールやSNS等で接触するのを禁じられていますが,海外ではそうではないようです。この文明のツールを,よからぬことではなく,教育的に利用できないものか…。
https://twitter.com/tmaita77/status/993092013724655616

 明日から6月です。昨日・今日と曇天(小雨)が続き,,梅雨入りを感じさせられましたが,明日は晴れるそうです(横須賀市)。人生は天気。晴れの日もあれば,雨の日もある。嫌なことが続いても,それと同じくらい,いいことが必ずめぐってきます。自殺に走る生徒の心理として,今の苦しみが永遠に続くと思い込む「心理的視野狭窄」があるそうですが,そんなことで若い命を散らすのは実に悲しい。
https://twitter.com/badassceo/status/1000663252500541446

 背景を,あじさい色にチェンジします。

<2018年5月の教員不祥事報道>
生徒に暴行で罰金 千葉市の中学教諭に簡裁 (5/2,NHK,千葉,中,男,31)
20代の女性教諭が女子生徒に「不適切指導」岐阜県の県立高校
 (5/3,読売,岐阜,高,女,20代)
重傷ひき逃げ疑いで小学校教諭逮捕(5/5,サンスポ,徳島,小,男,58)
京都市立小の元教諭、児童ポルノで4回目逮捕
 (5/8,産経,京都,小,男,46)
大麻栽培:容疑で小学校教諭逮捕、外国籍の夫も
 (5/9,毎日,愛媛,小,女,41)
「元箱根駅伝ランナー」の高校教諭を酒気帯び運転で逮捕
 (5/9,産経,奈良,高,男,59)
同僚にセクハラ 教諭を停職処分(5/9,NHK,青森,特,男,40)
横領で熊本県立高教諭免職 教材費234万円被害
 (5/9,産経,熊本,高,男,33)
姫路市:教頭を横領容疑で告訴 領収書偽造などで73万円
 (5/9,毎日,兵庫,小,男,53)
無断で願書書き換え 中学教師に停職1ヵ月
 (5/10,ABCテレビ,兵庫,中,男,39)
内科検診の盗撮ねらう? 中学校保健室にカメラ、男性教諭逮捕
 (5/11,神戸新聞,兵庫,中,男,31)
教え子にわいせつ行為を複数回‥愛知県立瑞陵高の教諭を懲戒免職処分
 (5/11,CBCテレビ,愛知,高,男,45)
「だんだん罪の意識が薄れ…」万引を繰り返した小学校教諭を懲戒免職
 (5/11,瀬戸内海放送,岡山,小,男,30)
不適切指導:野球部員に 監督の教諭、謹慎処分 金沢龍谷高
 (5/12,毎日,石川,高,男,40)
<盗撮>容疑で県立高教諭を逮捕 バッグ内のデジカメで
 (5/15,毎日,愛知,高,男,25)
全裸で女性に抱きつき体触る 強制わいせつ容疑で中学教諭再逮捕
 (5/16,京都新聞,大阪,中,男,39)
49歳教諭、女子高校生を買春した疑いで逮捕(5/17,朝日,埼玉,中,男,49)
みだらな行為 教諭を懲戒免職(5/18,NHK,福島,中,男,23)
大阪府教委:29歳教諭を減給処分 生徒に不適切LINE
 (5/18,毎日,大阪,高,男,29)
足蹴る体罰で懲戒処分 大阪府立高教諭、暴言も(5/18,日経,大阪,高,男,28)
福島の高校柔道部で体罰 顧問減給、校長も戒告処分
 (5/18,産経,福島,高,男,40)
県立高校教諭 酒気帯び運転で現行犯逮捕
 (5/20,テレビ新広島,広島,高,男,57)
非常勤講師を傷害容疑で逮捕(5/20,NHK,広島,中,男,62)
トイレ盗撮疑い中学教諭を再逮捕(5/21,NHK,兵庫,中,男,31)
中学校教諭を逮捕、同僚の机から部費盗んだ疑い
 (5/22,TBS,神奈川,中,男,34)
分校保健室で盗撮、高校教諭を免職 京都、校内3カ所にカメラ
 (5/23,京都新聞,京都,高,男,20代)
元交際相手の教え子を脅迫した疑い、元教諭の男逮捕
 (5/23,TBS,東京,高,男,31)
20代小学校教諭、万引で処分へ(5/24,産経,東京,小,女,20代)
教諭が首つかみ中2転倒、一時気絶 傷害容疑で書類送検
 (5/24,朝日,大分,中,男,50代)
盗撮スマホを新品とすり替え提出 トイレ侵入容疑で中学教諭逮捕
 (5/25,産経,埼玉,中,男,27)
京都府警:覚醒剤使用容疑で小学校教諭を逮捕(5/25,毎日,京都,小,男,36)
強制わいせつ容疑 元教諭逮捕(5/28,NHK,宮城,高,男,41)
「先生のこと好き?」「普通」 女子生徒に尋ねた中学教諭を懲戒処分 
 (5/29,神戸新聞,兵庫,中,男,30代)
近所宅前に繰り返し生ゴミ置いた疑い 小学校講師ら逮捕
 (5/29,朝日,福岡,小,男,56)
宿泊先で女子部員に不適切行為、男性教諭懲戒免
 (5/30,読売,兵庫,中,男,30代)
中学生にわいせつ動画送らせた疑い 中学教諭逮捕
 (5/30,朝日,神奈川,中,男,45)
女子生徒セクハラ教諭を懲戒免職(5/30,NHK,富山,中,男,20代)
香川の公立小教諭 児童の頭を叩いて10日のけが 別の教諭は同僚にセクハラも
 (5/31,瀬戸内海放送,香川,体罰:小男,セクハラ:小男)
男子生徒の裸の写真送らせる 中学教師逮捕(5/31,日テレ,栃木,中,男,26)
覚せい剤取締法違反:安田小教諭、免職処分 使用容疑で逮捕
 (5/31,毎日,高知,小,男,36)
宅配ボックスの靴盗みネット出品の疑い 小学校講師逮捕
 (5/31,朝日,京都,小,女,58)

2018年5月29日火曜日

引用と転載の違い

 前回記事の後半で書きましたが,某新書にグラフを無断転載されました。先方は「引用なんで許諾は不要と思っていた」と弁明しています。

 引用=必要最低限,ちょっとだけ使わせてもらう(許諾不要)
 転載=丸ごと載せちゃう(要許諾)

 この概念規定に従うと,「写真・イラスト・グラフの引用」という言い回しは成り立つでしょうか? これらの場合,一部を切り取って使うことはできず,全部複写せざるを得ません。よって「転載」と表現せざるを得ないのではないかと思います。

 だからこそ,これらのコンテンツの使用に際しては,事前に許諾を求めることが必要になるのではないか。今朝,布団の中でこんなことを考えました。

2018年5月27日日曜日

貯蓄できないロスジェネ・無断転載について

 いろいろと出費がかさむ親世代ですが,今ではわれわれがそうです。他とは異なる特徴をもった世代で,世紀の変わり目の就職氷河期に大学を出た「ロストジェネレーション」として知られています。

 新卒時に正規就職が叶わず,非正規や無職に滞留している人,キャリアを積んで昇給できていない人が,他世代に比して少なくなっています。これまで何度も示したように収入が減っているのですが,貯蓄も然り。今日の昼,年齢層別の貯蓄ゼロ世帯率のグラフを作ったら,恐ろしいことが分かりました。

 厚労省『国民生活基礎調査』では,世帯主の年齢層別に,貯蓄階級別も世帯数が集計されています。「貯蓄がない」というカテゴリーの世帯数の割合を計算してみました(不詳の世帯は分母から除く)。

 貯蓄が調査され始めた2007年と,最新の2016年の年齢カーブを対比すると,以下のようになります。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/20-21.html


 2007年では,若年層で高く,脂がのった働き盛りの層でボトムになり,引退した高齢層で再び高くなる「U字型」でした。分かりやすい構造です。

 10年を経た2016年では,どの層でも貯蓄ゼロ率が上がっていますが,40代で上昇幅が大きく,2007年では最も低かったのが,2016年では最高になっています。当年の40代といえば,われわれの世代です。ロスジェネ効果がはっきりと表れています。

 これは貯蓄ゼロ率ですが,平均貯蓄額でみても,最近10年間の減少幅は40代で最も大きくなっています。これから子どもが高校や大学の進学期になり,おカネが必要になりますが,辛いですね。明るいことをいえば,私費依存型(家計押し付け型)の日本の教育費構造を変えてくれる,最初の世代になってくれるかもしれません。

 時代遅れになった制度慣行を打ち壊すという点で,「黒船世代」というネーミングもいいのではないかと,私は勝手に考えています。

********************

 ツイッターでつぶやいていますが,某新書でグラフを無断転載されました。金曜の朝,ツイッターで情報提供があり,出版社に確認した所,その旨を認めました。

 無断で使われたのは,『ニューズウィーク日本版』サイトの記事に載せたグラフです。

 先方曰く,「許諾申請を怠っていました。事後の承諾をいただきたく,使用料等の条件がありましたらお知らせください」とのこと。同時に,「引用なので,許諾申請は不要と思っていた」とも言いました。

 なるほど,一定の要件を満たした「引用」の形での使用は法で認められており,許諾は要しません。しかし,記事の一文や二文をカッコ付けで引用するのとはワケが違います。作者の思い入れや労力が多く詰まっている写真,イラスト,統計グラフといったコンテンツの使用に際しては,事前に許諾を求めるのが礼儀です。相手の意向によっては使用料を払うことも求められます。一般向けの新書という営利性の高い媒体なら,なおのことです。
https://twitter.com/n_en_u/status/1000354116390993921

 無断で使われたグラフは,既存の公表数値を単純な棒グラフや折れ線グラフに起こしただけのものではありません。国際調査の個票データを独自の観点で集計し,表現方法にも工夫を凝らしているものです。当該グラフが載った記事は,『ニューズウィーク日本版』の中でも高いPVを得ていると聞いています。

 多くのメディアさんは「礼儀」を心得ているようで,私の所にはグラフの使用願いが数多く寄せられます。学術書や教育関係の資料集など,公共性の高い出版物の場合は無料で使用を認め,雑誌や新書といった営利性が高いものについては,使用料を頂くことにしています(断ることも多し)。

 ちなみに,『ニューズウィーク日本版』サイトの利用規約では,「掲載の記事・写真・イラスト等すべてのコンテンツの無断複写・転載を禁じます」と明記されています。要件を満たした「引用」でも,グラフをそのまんま載せるというのは「複写」ですので,アウトと解すべきでしょう。
https://www.newsweekjapan.jp/tos.php

 100歩譲って「引用なんで許諾は不要」という先方の言い分を認めるにしても,糾弾を止めるわけにはいきません。なぜなら,私の名前と記事名はちゃんと書かれていたものの,『ニューズウィーク日本版』という掲載誌名が記されていないからです。出典明記という,引用の要件を満たしていません。担当編集者の資質を疑います。

 先方は過ちを認め,使用料を払うと言ってきていますが,私がおカネをもらって済む問題ではありません。出典記載不備で,版元のCCCメディアハウス社も迷惑を被っているのですから。

 倫理にもとる無断転載,加えて出典記載不備…。現在,版元さんと対応を協議しています。相手の出版社名を公開してもいいと思いますが,現段階では伏せておくことにします。

2018年5月22日火曜日

バブルとロスジェネの稼ぎ比較

 私は現在41歳で,あと2か月弱で42歳になります。40代になると体力低下を自覚するといいますが,まさにその通りです。低下より「落下」という比喩がふさわしいと思うくらいです。
https://twitter.com/maedax_x/status/876413840795123714

 「40過ぎたくらいの若造が何をぬかすか」と言われそうですが,正直,こういう思いですね。まあしかし,経済資本も社会関係資本も持ち合わせていない私ですが,何とかここまで生きてこられています。

 ロスジェネといわれる私の世代ですが,大学を出てから40歳前後まで生きてきています。後ろを振り返れば,社会人としての20年近くの軌跡(データ)が溜まっています。それを総決算してみるのも面白いでしょう。観点はいろいろありますが,就職してからトータルでいくら稼いできたかという,カネ勘定をしてみようと思います。

 私の世代(1976年生まれ)は,ストレートの場合,1999年春に大学を卒業し就職しました(就職率はどん底!)。23歳の年ですが,1999年の厚労省『賃金構造基本統計』によると,同年6月の大卒男性標準労働者の所定内月収は21.35万円(A)で,前年の年間賞与額は28.52万円(B)となっています。この2つをもとにすると,年収は12A+B=284.7万円と見積もられます。ロスジェネ世代の社会人1年目の推定年収です。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chinginkouzou.html

 この要領で24歳,25歳,26歳……の時点の年収を出していき,40歳までを累積すれば,23~40歳までの稼ぎ総額が出てきます。

 はて,ロスジェネ世代の大卒男性のこれまでの稼ぎ総額はナンボくらいでしょう。われわれが「ツイテない」世代であるのに対し,一回り上のバブル世代は「ツイテいる」世代。1990年春に大学を出た,1967年生まれとの対比もしましょうか。

 下の表は,両世代の各年齢時点の年収とその合算です。前後しますが,ここで観察対象とする標準労働者とは,「学校卒業後直ちに企業に就職し,同一企業に継続勤務しているとみなされる労働者」をいいます(用語解説)。


 23~24歳を除いて,どの年齢時点の年収もバブル世代のほうが高くなっています。おおむね加齢と共に差が広がり,37歳時の年収はバブルが686万円,ロスジェネが591万円と,95万円も開いています。

 一番下の赤字が大学を出てから40歳までの稼ぎ総額ですが,バブルが9736万円,ロスジェネが9006万円なり。同じステージの稼ぎ総額ですが,両世代では730万円も違っています。生まれる時代が一回り違ったことによる差です。

 こういう不運もあり,ロスジェネ世代では,離家・結婚・出産といったイベントが首尾よくいかなかった者も数多し。山田昌弘教授の『パラサイト・シングルの時代』(ちくま新書)が大ヒットしたのは,私の世代が社会に出た1999年だったことは特記されるべきことです。
http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480058188/

 ちなみにここで見ているのは,大学卒業と同時に就職し,ずっと同じ会社で勤めている標準労働者,言ってみれば「勝ち組」のデータです。私の世代では,新卒時の正規就職が叶わず非正規のまま滞留している人も多く,この層も含めた全労働者でみれば,バブル世代との差はもっと大きいと思われます。

 当然ですが,稼ぎの額は企業規模によっても異なります。「就社」慣行の強い日本ではとくにそう。厚労省の『賃金構造基本統計』では,従業員1000人以上,100~999人,10~99人,という3段階に分けて,所定内月収と年間所与額が計上されています。

 このデータを使って,バブルとロスジェネの23~40歳の稼ぎ総額を,企業規模別に出してみました。やり方は,上記で説明した通りです。はじき出された結果だけを見ていただきましょう。


 全体の総額は,最初の表でみた通り,バブルが9736万円,ロスジェネが9006万円です。企業規模別にみると,バブルの大企就職組は40歳時点にして1億円超えですか。スゴイですね。

 赤字で示しましたが,ロスジェネの中企業は,バブルの小企業よりも低くなっています。

 2世代の差(右端)をみると,大企業は459万円,中企業は469万円ですが,小企業では805万円も開いています。小企業ほど落ち込みが大きいようです。ロスジェネでは,大企業と小企業の格差も広がっています。私の世代はどの層も割を食っているのですが,それは(弱い)小企業で顕著のようです。不況期には,下請いじめが横行するといいますからね。

 以上,40歳までの稼ぎ総額を試算してみました。65歳定年とすると,社会人生活はあと四半世紀ほど残っていますが,定年までの稼ぎ総額,すなわち生涯賃金でみたら世代格差はもっと広がることは間違いありません。40歳の時点で700万円ほど差が出ているのですから(最初の表),2000万円くらいの差にはなるでしょう。

 生まれる家庭や地域は選べませんが,時代も選択できません。階層格差,地域格差と同時に,世代格差という視点も落とせません。私は,この3つのいずれにも関心を持ちます。どの視点で見ても「下」の部類に属しますので。

2018年5月20日日曜日

若者の趣味の変化

 博報堂生活総研が,『生活定点1992-2016』という資料を出しています。ネットで閲覧可能です。
http://seikatsusoken.jp/teiten/

 内容はタイトルの通りで,同じ設問(定点)を設けて,1992~2016年の四半世紀における意識変化を跡付けています。データを呼び出しやすいのもミソで,左端の「ダウンロード」という箇所から,全てのデータが詰まったエクセルファイルを入手できます。性別・年齢層別の推移データを抽出するのも,ワンクリックです。実にありがたい。

 暇をみては,このエクセルファイルを開き,いろいろな項目の推移データを作っているのですが,「よくする趣味・スポーツ」の時代変化が面白い。昨日,20代の若者の変化表をツイッターで発信したところ,多くの方の関心を引いています。

 そこでは,両端(1992年,2016年)のデータを対比させたのですが,始点の年次をもうちょっと下げると比較できる項目が増えますので,ここでは1996年と2016年の比較をしてみようと思います。20年間という,ちょうどいいスパンになりますしね。

 博報堂調査では,複数の趣味・スポーツについて,「よくする」と答えた人の割合を計上しています。この20年間の変化はドラスティックです。情報化を反映して,パソコンをよくする20代の率は,1996年では9.8%でしたが,2016年では26.5%に増えています。一方,パチンコ・スロットは,19.0%から8.1%に減じています。

 以下の表は,この20年間の増加ポイントが大きい順に45項目を配列したものです。


 この20年間で大きく減っているのは,ドライブ,スキー,パチンコ,釣り,ゴルフですか。アクティブでおカネがかかるものですが,今の若者はカネもヒマのないですからねえ。

 対して増分が大きいのは,パソコン,映画,食べ歩き,ジョギング,サッカー・フットサル,となっています。カネがかからない簡素なものといいますか…。この20年間で率が増えているもの(細線より上)をみると,若者の趣味が健全化しているような印象も持ちます。ゲーセンや競馬とかは減ってますしね。

 同時に,若者の生活世界が狭くなっているようにも思えます。釣り道具やスキー板を車に積んで遠出するのではなく,自宅でパソコンしたり,そこら辺をジョギングしたりと。青年期は,アイデンティティ確立のための試行錯誤を許された「モラトリアム」の時期で,いろいろなことをするのを期待されるのですが,それが貧相になっていると言ったら,言い過ぎでしょうか。

 この変化をもって,若者の内向化とか言うのは容易いですが,その基底には,若者の所得の減少があるのを見落としてはいけないでしょう。よく言われる「若者の**離れ」をもたらしているのは,「おカネの若者離れ」である可能性があります。

 さて表によると,自動車・ドライブを「よくする」という20代の率は,この20年間で42.9%から17.5%に減っています。1996年の20代人口は1913万人,2016年の1254万人に,この比率を乗じると,ドライブを愛好する20代の絶対数は,1996年は821万人,2016年は219万人と見積もられます。4分の1近くにまで減っています。自動車業界にとっては,大打撃ですね。

 量的に多い上の年齢層(30代,40代,50代,60代)も加味するとどうでしょうか。下の表は,5つの年齢層(10歳刻み)のドライブ愛好者数の絶対数を推し量り合算してみたものです。


 ドライブ愛好者は若年層では減っていますが,60代では242万人から302万人に増えています。団塊世代の影響で,2016年ではベースの人口量が膨れ上がっているためです。

 しかるに5つの年齢層を合算した愛好者数のトータルは,2497万人から1421万人に減じています。4割以上の減。自動車業界にとってダメージが大きいのは否定できないようです。現に,クルマの売り上げは落ちているといいますし。

 同じ方式で,他の趣味・スポーツについても,20~60代の愛好者数の変化を明らかにしてきました。下表は,この20年間で何倍になったかという倍率が高い順に,45の項目を並べたものです。


 市場が膨らんでいるのは,パソコン,サッカー・フットサル,カメラ,オートバイ,楽器ですか。カメラ・ビデオ撮影は,スマホで撮影しインスタにアップする,というものでしょうね。

 囲碁・将棋,書道,麻雀,お茶といった古風な趣味は,愛好者がこの20年間で3割ほどに激減しています。カラオケやボーリングの愛好者も減ってますねえ。私の頃は,学生の定番娯楽でしたが,今の学生さんの実施率は下がっているのだろうなあ。国分寺のスターレーン,まだあるかしら。

 読書人口も,2814万人から2327万人への減少。イタイ変化です。何度もデータを出したことがありますが,街の本屋さんはかなり淘汰されています。

 上表の数値は,それぞれの趣味の推計愛好者数ですが,各業界の躍進(衰退)可能性を示すバロメーターとしても読めるでしょう。数としては,顧客を減らしてしまっている業界の方が多いようです(細線より下)。人口減少・高齢化により,モノが売れない,サービスの需要が発生しない社会になるといいますが,その現実の一端が表れています。

 まあ,上記の表に掲げられているものの多くは「伝統的」なもので,新たなものがこれから出てくるでしょう。サービスだってそうです。時代の変化に即した,新たなサービスへの需要が増してきます。それを見越して,柔軟に変身を遂げていくことが,企業にとっての「生き残り」の条件となるのは間違いありません。

2018年5月18日金曜日

未婚のシングルマザー

 子どもの貧困が社会問題化していますが,とりわけ一人親世帯の状況は酷くなっています。日本の一人親世帯の相対的貧困率は半分を超え,世界でトップです。二人親世帯を前提に諸制度が組み立てられており,そうではない少数の一人親世帯に困難が凝縮する構造になっています。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/07/post-8063.php

 しかるに,一人親世帯といっても一枚岩ではありません。夫と離婚した母と子からなる母子世帯が大半ですが,母子世帯のお母さんの中には,結婚せずにずっと子どもを一人で育て続けている人もいます。いわゆる,未婚のシングルマザーです。

 基幹統計の『国勢調査』から,母子世帯の数が分かります。定義は,母親と未成年・未婚の子からなる世帯です。2015年調査によると,この意味の母子世帯は75万4724世帯で,他の世帯員がいる世帯も含む母子世帯は106万2702世帯となっています。後者は,親と同居している世帯も含む,広義の数ですね。
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/database?page=1&toukei=00200521&result_page=1

 時代別・地域別のデータは,後者のものしか得られませんので,この広義の母子世帯数を使うことにしましょう。しかし上記の数値から分かるように,その多く(7割)は母子だけで暮らしている世帯です。

 母子世帯の母親の配偶関係はどうなっているか。下表は,1995年,2005年,2015年の3時点のデータです。


 少子化傾向とは裏腹に,母子世帯は増えてきています。1995年では73.6世帯でしたが,2015年では106.3万世帯です。

 母親の配偶関係別にみると,増加幅が大きいのは未婚者です。母が未婚の母子世帯は,この20年間で4.8万世帯から17.7万世帯と,4倍近くに膨れ上がっています。全体に占める割合も,6.5%から16.6%へと大幅増です(下段)。最近では,母子世帯の6分の1が,未婚のシングルマザー世帯であると。メディアでよく報じられていることですが,統計でも確認されます。

 これは全国の数値ですが,母子世帯の母親の未婚者比率には地域差があります。都市と地方では,かなり違っています。上記の3つの年次について,この値を都道府県別に計算し,高い順に並べたランキングにしてみました。


 10%台はピンク,20%以上は濃いピンクにしましたが,全国的に未婚の母子世帯比率が高まっていることが知られます。1割を超える県は,1995年では1県でしたが,2005年では9県になり,2015年では全県が色で染まってしまっています。

 東京・沖縄・大阪は,2割超です。東京と沖縄では,母子世帯の4分の1が,未婚シングルマザーとなっています。上位には都市的な県が多く,下位は農村県がほとんどです。県民の意識差なども大きいでしょうね。

 未婚のシングルマザーというと,相手の男性に逃げられたとか,否定的なイメージが持たれがちですが,現実は多様です。ここで分析対象にしている母子世帯(他の世帯員がいる世帯も含む)には,もしかすると,婚姻届けを出さないでパートナーの男性と同棲している世帯も含まれるかもしれません。こういう世帯の母親は,統計上は未婚者と計上されます。

 いろいろと縛りが生まれる法律婚を回避し,こういう事実婚を選ぶカップルが増えているといいますしね。

 2015年調査のデータでは,都内23区別の未婚シングルマザー比率も出すことができます。「おや?」というデータですので,ご覧に入れましょう。


 さすがは東京23区。全ての区の率が2割を超え,3割超の区も少なくありません(黄色マーク)。上位3位は,港・中央・千代田です。港区では,シングルマザーの半数以上が未婚者です。

 富裕層が多い区ですが,女性の稼得能力が高く,かつ親も裕福なので,結婚せずに一人でやっているママさんが多いのでしょうか。あるいは,事実婚を選択しているキャリアウーマンが多いのか。
https://twitter.com/meimei881/status/997068132580651008

 未婚のシングルマザーの増加は,いろいろな角度から眺めないといけませんが,法律婚をせずとも子育てできるようになるのは,望ましいことだと思います。「旦那はいらんが,子どもは欲しい」。こういう考えの若い女性は結構いるようで,これらの女性が出産に踏み切った場合,出生数は一気に団塊ジュニアの頃に回復するという試算もあります。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/07/post-7974.php

 よく知られているように,フランスやスウェーデンとかでは,生まれてくる子どもの半数以上が婚外子で,何の不利益も課せられていません。

 ただ現段階で一番問題なのは,未婚のシングルマザーは,母子世帯が受けられる各種の支援の対象から外されていることです。理由は,法律で定める「寡婦」の定義に含まれないから。6月から法改正が始まり,保育料の軽減などは受けられるようになるそうですが,税控除の適用などは「寡婦」の定義を変えないといけないので見送り。

 寡婦の定義変更について,政府関係者は「寡婦に未婚を対象に加えると,結婚してから出産するという伝統的な家族観に影響を与えかねない」と言っていますが(2/4,東京新聞),そんな伝統にしがみつく必要はどこにもありますまい。

 先ほど,未婚のシングルマザーの華やかな側面の可能性を指摘しましたが,現時点では,そういう人は少数派でしょう。母子世帯の母親の年収は,夫との離別者や死別者と比して,格段に低くなっています。同じような生活条件なのに,寡婦とみなされないだけでこんなに差が出ているのは,異国の人の目からすれば「差別」としか映じないでしょう。
https://financial-field.com/tax/2018/03/15/entry-13835

 お役人が言うようなつまらぬ「伝統」を払拭し,どういうライフスタイルを選ぼうが子を産み育てられる社会になればいいな,と願います。

2018年5月16日水曜日

21世紀の読書離れ

 暑くなってきましたが,いかがお過ごしでしょうか。一昨日,ツイッターで読書実施率地図の時代変化を発信したところ,多くの方の関心をひいていますので,ブログにも載せようと思います。

 読書実施率とは,過去1年間に「趣味としての読書」をしたという人の割合です。「趣味としての読書」とは何ぞやですが,『社会生活基本調査』の用語解説をみても詳しい解説がありません。趣味ですので,学校の「朝の10分間読書」や会社での研修等で,強制的にやらされるものは含まない,自発的な読書に限られると思われます。
http://www.stat.go.jp/data/shakai/2016/index.html

 老弱男女をひっくるめた10歳以上の国民の読書実施率は,2001年では45.5%でしたが,2016年では38.7%に下がっています。言わずもがな,スマホが普及したことの影響が大きいでしょう。

 この数値は都道府県別に出すこともできます。下表は,高い順から並べたランキングを,2001年と2016年で対比したものです。


 1~6位までの都府県の顔ぶれは不動ですね。首都圏の1都3県と,京都・奈良です。都市部で高いようですが,大きな書店が多いためでしょう。あと一つ,考えられる要因については後述。

 全国的に,読書実施率は下がっています。2001年では50%を超える県が4つありましたが,2016年ではそれは皆無になり,代わって40%未満の県が大幅に増えています。

 この3つの階級で,47都道府県を塗り分けたマップにすると,以下のようになります。ツイッターで発信したのはコレです。


 強烈な変化ですねえ。2001年では色付きの県(4割以上)は29でしたが,2016年では7都府県しかありません。「列島・読書離れ」が明瞭に可視化されています。

 以上は,10歳以上の読書実施率の変化ですが,減っているのはどの層なんでしょうか。スマホの普及の影響で,書を手に取る頻度が大きく減っているのは若年層かと思いますが,データでみるとどうでしょう。

 年齢別の傾向を知るには,年齢曲線を描くのが一番。下図は,読書実施率の年齢カーブを,2001年と2016年で比べたものです。


 50歳以上は変化なしですが,40代まででは,読書実施率が下がっています。減少幅が大きいのは,30~40代の働き盛りですね。空前の人手不足の時代で労働時間も伸びているのですが,その影響でしょうか。

 しかるに,書を手に取り「知」を摂取し考える習慣をつけないと,雇い主に搾取されるだけの存在に堕してしまいます。30~40代といえば,子育ての最中の親世代ですが,子どもにもよからぬ影響が及ぶでしょう。子どもに「本を読め」とうるさく言ったところで,自分がそれをしないならば,説得力はゼロです。

 わずかな時間でもいいから,毎日欠かさず本を手に取りたいもの。何かのビジネス誌で「通勤時間はいい読書時間」という記事を読んだ記憶がありますが,上記の読書率の都道府県差と関連があるような気がします。

 最初の表のとおり,読書実施率は都市部で高いのですが,通勤時間が長いこととも関連しているのではないか。働き盛りの35~44歳の男性有業者を取り出し,平日の通勤時間と読書実施率の相関図を描くと,下図のようになります。


 ほう。プラスの相関関係ですね。通勤時間が最も長い神奈川は,中年男性の読書率も最も高くなっています。都心までの1時間や2時間の通勤時間を,何もしないでボーっとしているのはもったいないですからね。

 京急では,座って通勤できる「ウィング号」を運行していますが,「車中で仕事ができる,本が読める」と好評のようです。

 カバンにいつも何らかの本を忍ばせ,わずかな時間でもいいからそれを開く。あるいは,就寝前の30分は読書タイムにする。私は,後者をやっています。22時30分くらいに布団に入り,1時間ほど本を読んでから灯を消します。今,枕元に置いているのは,ビジネス小説の『バルス』です。
https://twitter.com/tmaita77/status/994478297466658817

 今はネットでいろんな情報収集ができますが,検索エンジンに上がるのは,自分の嗜好に合わせてピックアップされた記事ばかりです。これでは栄養が偏ります。リアル書店に定期的に出向く,紙の新聞を手に取るなど,自分の興味のない分野の「知」のバイキングにも触れないといけません。

 私は三浦半島の南西に住んでいますが,週に1度は上京し,紀伊国屋本店などの大きな書店をぶらつくことにしています。また,夕刻のウォーキングでコミュニティセンターを通るので,ちょっと立ち入って,備え付けの紙新聞(読売,神奈川)にざっと目通しすることを始めました。

 これは私なりのささやかな実践ですが,1日わずかな時間でもいいので,書を手に取ろうではありませんか。スマホ上で指をそそくさと動かす姿なかりでなく,重厚な本を開いている姿も,子どもに見せたいものです。

2018年5月10日木曜日

学校のウェブサイト利用の国際比較

 昨年の夏に出た「学校における働き方改革に係る緊急提言」では,校務のICT化の推進が提言されています。児童生徒の管理や庶務連絡をネット経由で行うだけでも,教員の業務負担は緩和されるでしょう。
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/079/sonota/1395249.htm

 特段難しいことではなく,学校のウェブサイトを使えばいいだけのことです。残念なことに,この文明の恩恵を使えていないのが日本の学校の現状。

 OECDの「PISA 2015」のICT調査では,「学校外で,学校のウェブサイトで教材等をダウンロード・アップロードすることがどれほどあるか」と問うています。この問いに対する,日本の15歳生徒の回答分布は以下のようです。
http://www.oecd.org/pisa/data/2015database/

 全く・ほとんどしない … 89.1%
 月に1・2回する … 6.2%
 週に1・2回する … 2.9%
 ほぼ毎日する … 0.9%
 毎日する … 0.8%

 全く・ほとんどしない生徒が9割で,週1回以上する生徒(後3者の合算)は5%弱しかいません。われわれの感覚からすれば「そんなものだろう」ですが,この結果は,国際標準から外れています。

 横軸に「全く or ほとんどしない」生徒,縦軸に「週1回以上する」生徒の比率をとった座標上に,ICT調査の対象の46か国を配置すると,下図のようになります。アメリカは,調査対象外です。


 日本は,一番右下にあります。横軸の値が最も高く,縦軸は最も低い。すなわち,学校のサイトで教材等をDL・アップする生徒が最も少ない,ということです。

 斜線は均等線で,このラインより上にある国は「横軸 < 縦軸」です。タイはスゴイですね。ICT先進国のエストニアやデンマークも,さもありなん。他の先進国はこのラインを下回っていますが,日本よりはマシです。

 もう一つ,学校のウェブサイト利用に関する設問がありますので,この問いへの回答も加味してみましょうか。「学校外で,学校のウェブサイトで庶務連絡等をチェックすることがどれほどあるか」です。

 以下に掲げるのは,双方の問いに「週1回以上する」という生徒の割合の国際比較図です。ツイッターでも発信しましたが,かなり注目を集めています。


 ぐうの音も出ません。本当に先進国なのかと,目を疑います。右上の諸国では,教員が教材プリントを刷って生徒の配るなんてことはしません。行事への出欠の伝達も,ウェブサイト上でワンクリックです。

 教育内容の増加で「重すぎるランドセル」が問題になっていますが,教科書を電子化すれば,薄いタブレット1台で済むこと。

 日本でも,民間企業はここまで酷くはないでしょう。学校だけが,社会のICT化から取り残されているのかもしれません。こうした「陸の孤島」で育った生徒は,実社会に出た時に戸惑うことになります。学校のICT化は,教員の業務の適正化だけではなく,情報化社会に即した教育を行うためにも必要なことです。

 国際学力調査ではいつも世界トップレベルなのですが,情報化社会を生き抜く資質能力が身についているのか,ちょっとばかり心配になってきます。生徒のパソコン所持率も低いですし…。
http://tmaita77.blogspot.jp/2015/02/blog-post_25.html

 それは,コンピュータを必須ならしめる環境に生徒を置いていないためです。求められるのは,生徒をしてパソコンに触れざるを得ないような環境を作ること。「教育の情報化」が目指されていますが,それは,ICT機器を使った教授・学習活動(授業)だけではなく,学校生活全体のICT化をも含むのです。

 今回のデータは,後者の側面が著しく立ち遅れていることを可視化しています。

2018年5月4日金曜日

通勤時間による損失

 日本は労働時間が長いと同時に,通勤時間も長い国です。

 往復1時間,2時間の通勤なんて,無駄の最たるもの。このことが日本人の労働生産性を下げている。こういう主張をよく聞きますが,確かに頷けます。

 はて,おカネにしてどれくらいの無駄が生じているのでしょうかねえ。総務省『社会生活基本調査』(2016年)から,40代前半の男性有業者の通勤時間分布を取り出すと,以下のようになります。平日1日あたりの通勤時間(往復)の分布です。
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/database?page=1&toukei=00200533&result_page=1


 通勤時間が分かる380万4000人のうち,最も多いのは,30分以上1時間未満となっています。2時間以上の遠距離通勤者は115万8000人で,およそ3人に1人です。首都圏の埼玉・千葉・神奈川だと,もっと多いでしょう。もしかしたら半分いったりして。

 この分布をもとに,380万人あまりの通勤時間の総計を出してみましょう。各階級の通勤時間は,一律中間の値とみなします。②は45分(0.75時間),③は1時間15分(1.25時間)…というふうにです。

 勤務時間のトータルは,15の階級の「階級値×人数」を合算することで出せます。結果は,623万5000時間なり(右下)。平日1日でみた,40代前半男性の通勤時間のトータルです。

 これに,1時間あたりの労働生産額を乗じれば,通勤による損失額の近似値が出てきます。1時間で生み出せる財やサービスの金額を知るのは難しいですが,ここでは,時間給を充てることにしましょう。1時間の労働に支払われる対価ですので,的外れではありますまい。

 2016年の厚労省『賃金構造基本統計』によると,40代前半の男性一般労働者の年収推定値は599.5万円(A)。月あたりの残業込みの労働時間は183時間(B)。よって時間給は,A/12B=2730円となります。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chinginkouzou.html

 40代前半男性の平日1日の総通勤時間623万5000時間に,時間給2730円をかけると,170億2000万円となります。スゴイですねえ。働き盛りのアラフォー男性でみた,通勤による1日の損失額です。

 言わずもがな,働いている人は40代前半の男性だけではありません。生産年齢の5歳刻みの年齢階層を男女で分けた,16の群について,同じやり方で通勤による損失額を試算してみました。


 女性より男性の方が,通勤時間相当の損失額は大きくなっています。通勤時間・給与とも,女性より高いですので。損失の年齢ピークは,男女とも40代後半です。生産性に満ちた働き盛りで,損失は大きいようです。

 男女の全年齢層の損失を合算すると,1423.9億円となります。平日1日でです。これが毎日積み重なるとなると,天文学的な数値になります。

 雇用労働化が進んだ現在では,自宅からオフィスへの通勤はやむを得ないことであり,上記の数値の全てが損失と決めつけることはできませんが,日本の場合,他国と比してそれは大きいでしょう。通勤時間が長いだけでなく,オフィスの偏在により,殺人的な満員電車に揉まれる「痛勤」地獄も加わりますので。会社に着いて,「さあ仕事だ」という時点にして,かなりのエネルギーを消耗してしまっています。こういうことが労働生産性に響いているのは,間違いありません。

 OECDのジェンダー・ポータルの統計で,通勤時間の国別統計がありましたので,これを労働生産性と絡めたグラフを掲げておきましょうか。後者は,就業者1人あたりのGDP額で,『世界の統計2017』より2015年の数値を採取しました。


 横軸は,1日あたりの男性(15~64歳)の平均通勤・通学時間ですが,これが長いほど労働生産性が低いという,うっすらとした傾向がみられます。27か国のデータから算出される相関係数は,-0.403です。

 労働生産性の要因としては,職場のICT化の度合いなどもあるでしょうが,通勤時間の長さも寄与していると思います。オフィスが偏在しており,郊外から都心という一方通行の「痛勤」が支配的な日本では,大きなマイナス要因となっていることでしょう。今回の試算によると,その額は平日1日で1424億円なり。

 長時間の「痛勤」がなくなれば,どれほど事態は変わることか。IT化の進行により,一つの空間に集まって仕事をする必然性は薄れており,在宅仕事(テレワーク)も少しずつ広がってきています。並行して,オフィスの分散化も図りたいもの。師匠のご子息は,満員電車に乗るのは御免と,都心とは逆方向にある会社に就職したそうですが,こういう若者も増えてくるかもしれませんね。

 早朝の集中通勤を無くすべく,時差通勤も導入も求められます。役所はともかく,「9~5時」という定型に全ての事業所が拘る必要はないでしょう。

 ブラック労働のメルクマールとして,長時間勤務や薄給などがありますが,長時間の満員電車「痛勤」は,それらに勝るとも劣らないマイナス要因です。給与が安くてもいいから,最後のものはご免こうむりたい。私は,こういう考えです。
https://twitter.com/sateco/status/991973090547531781

 個人の健康阻害だけでなく,社会全体にとっても大きなマイナスであることは,今回のラフな試算からもうかがえます。

2018年5月1日火曜日

喫煙と寿命の相関

 全国一の短命の青森県ですが,塩分の摂り過ぎが原因ではないかということで,「スープは残してください」と張り紙をするラーメン屋さんも多いそうです。ラーメン好きには辛いですね…。

 しかし,本県の塩分摂取量は全国一ではありません。2016年の『国民健康・栄養調査』によると,本県の成人男性の塩分摂取量は46県中8位です(熊本県は除く)。各県の塩分摂取量は,平均寿命と有意な相関関係にはありません。

 飲酒率も然り。厚労省『国民生活基礎調査』(2016年)から,毎日飲酒する成人の率を出し,平均寿命との相関をとると,マイナスではありますが有意とは認められません。

 あと思いつく不健康因子は喫煙ですが,こちらは飲酒にもまして地域差が大きくなっています。下図は,「毎日喫煙する」と答えた人の率の年齢カーブを,全国と青森県で比べたものです。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/20-21.html


 毎日喫煙率は40代以降は下がり,60歳を超えた高齢期では地域差がほとんどなくなります。健康を意識し,タバコを控える人が増えてくるのでしょう。

 しかるに,30~40代の働き盛りでは差が大きくなっています。禁煙は早いほどいい,若い頃の喫煙は,取り去ることのできないダメージをもたらすと言いますが,この年齢層の喫煙率の差が,平均寿命とリンクしてはいないか。

 私は,30~40代の毎日喫煙率と,男性の平均寿命のデータを都道府県別に揃えました。前者は,2016年の『国民生活基礎調査』から計算した者です。後者は,先日公表された2015年の『都道府県別生命表』から得ました。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/tdfk15/index.html

 下表は,都道府県別のデータの一覧です。熊本県は震災の影響で,2016年の喫煙率は出せませんでした。


 30~40代の喫煙率は20.5%~35.2%,男性の平均寿命は78.7歳~81.8歳までの開きがあります。

 どうでしょう。喫煙率が高い北東北の3県(青森,岩手,秋田)は,平均寿命が80歳を下回っています。逆に喫煙率が低い東京や京都は,寿命が比較的長いような…。

 傾向がどうであるかは,相関図を描けば一目瞭然。横軸に喫煙率,縦軸に寿命をとった座標上に,熊本県を除く46県を配置してみます。


 ほう,右下がりですね(相関係数は-0.5965)。30~40代の喫煙率が高い県ほど寿命が短いという,有意なマイナスの相関関係です。

 地域単位の相関関係から,個人の行動レベルの因果関係を引き出すことは慎むべきですが,こういう事実もあるんですね。

 寿命の規定要因については,個人レベルのアンケート調査をもとに,いろんな因子を取り込んだ重回帰分析がされているのでしょうが,上記のグラフを試しにツイッターで流した所,多くの方が見てくださいました。喫煙と寿命の相関のデータって,あまり出されていないのかしら。喫煙の害がいろいろ叫ばれている割には。そこで,ここにも載せておこうと思いました。

 タバコへの風当たりが強く,今は大学の建物は全面禁煙で,吸う人は外に出ないといけない。吸った後は一定時間経たないと,エレベータに乗っちゃダメ。厳しくなったもんです。

 亡き恩師はヘビースモーカーでしたが,今の時期に大学に勤められていたら発狂されたかもしれません。

 論文の個別指導の時も,遠慮なくスパスパされる先生でしたが,研究室の密室なんで,私もうんと煙を吸わされました。今なら大問題になるでしょうが,不思議と嫌な気持ちはしませんでした。「長生きなんてしてもしょうがない」。こういう思いを,師弟で共有していたからかな…。

 考えは人それぞれ。タバコだけをやり玉に挙げる,今の風潮にはちょっとばかり違和感を持ってはいます。

2018年4月30日月曜日

2018年4月の教員不祥事報道

 GWの前半は今日でおしまい。私はどこにも行きませんでしたし,後半(3~6日)もそうなのですが,皆さんはいかがでしょうか。

 月末恒例,教員不祥事報道の整理です。今月,私がネット上でキャッチした報道は34件です。年度始めのためか,ちょっと少な目。いつもにもまして,わいせつが多いなという印象です。財務省高官のセクハラ事件がありましたが,被害者の側も声を上げようという機運が高まっているのでしょうか。

 セクハラやパワハラの場合,音声の証拠がないと立証が非常に難しいそうです。こういうよからぬことが行われている場合,証拠を得るため会話を内緒で録音することは違法でも何でもありません。今は高性能の小型ICレコーダーも出ていますので,どんどん活用したいものです。
https://twitter.com/kambara7/status/986771058605764611

 注目事案は,保護者と4年にわたって性行為を行い懲戒免職になった校長先生。自由恋愛なんだからいいだろうという言い分もあるでしょうが,教師と保護者はれっきとした利害関係者ですので,それは通じません。

 盗撮で捕まった,埼玉県の小学校の校長。定年まであとちょっとの58歳。100%懲戒免職でしょうから,もらうはずだった莫大な退職金がパー。「今まで築いた大切なものを失いたくない」。人をして犯罪を思いとどまらせるボンドとして,T.ハーシは「投資」の観念を挙げていますが,それが働かないのでしょうか…。

 明日から5月です。昼間は暑いですね。今日,今年初の冷房を入れました。4月にスイッチを入れたのは初めてだと思います。GWで,近くのソレイユの丘は賑わっています。楽しい連休をお過ごしください。背景を新緑模様にチェンジします。

<2018年4月の教員不祥事報道>
・盗撮と窃盗の2教諭を免職処分 川崎市
 (4/2,産経,神奈川,盗撮:中41,窃盗:高61)
・公立小学校の教諭がコンビ二で万引き容疑で逮捕
 (4/4,瀬戸内海放送,岡山,小,男,30代)
・強制わいせつ:少女に抱きつく 容疑で中学教諭を逮捕
 (4/5,毎日,大阪,中,男,39)
・歓迎会の帰りに物損事故 小学校講師 酒気帯び運転の疑いで逮捕
 (4/5,チューリップテレビ,富山,小,女,40)
・夜の車内"10代少女の下半身触る 27歳中学教師を逮捕
 (4/6,北海道ニュース,北海道,中,男,27)
・中学教頭 住居侵入の疑いで逮捕(4/7,NHK,福島,中,男,45)
・ストーカー疑いで教諭逮捕(4/8,日刊スポーツ,宮崎,高,男,45)
・大阪市教委、市立中校長を停職処分 支援員の臨時職員を雑用に従事 
 (4/9,産経,大阪,中,男,63)
・酒酔い運転容疑で中学教諭逮捕(4/11,佐賀新聞,佐賀,中,男,29)
保護者と性行為 校長を懲戒免職(4/11,NHK,東京,小,男,54)
小学校校長を盗撮容疑で逮捕 靴に仕込んだカメラで
 (4/11,フジテレビ,埼玉,小,男,58)
・元教え子にわいせつ中学教諭逮捕(4/12,NHK,岐阜,中,男,51)
・女性教諭がわいせつで懲戒免職(4/12,NHK,長野,特,女,30代)
・小学校教諭の車にひかれ女性死亡(4/13,京都新聞,滋賀,小,女,24)
・小学校教頭が飲酒運転 千葉県教委「厳正対処」
 (4/15,千葉日報,千葉,小,男,50代)
・水泳授業中、水着のまま国語の課題…複数児童に(4/15,読売,香川,小,男)
・水泳の授業中に大けが、飛び込み指示の教諭を懲戒処分
 (4/16,朝日,東京,高,男,45)
・16歳女子高生を買春容疑で教諭逮捕(4/18,日刊スポーツ,東京,高,男,47)
・私語続ける男子2人の口に教諭がテープ(4/19,朝日,宮城,中,男)
・高校講師10代女性にわいせつ疑い LINEで連絡 
 (4/19,日刊スポーツ,岐阜,高,男,28)
・女子高生のスカート内のぞき見=容疑で小学校教諭逮捕
 (4/20,時事通信,大阪,小,男,39)
・センター試験中に四合瓶2本、高校教諭大騒ぎ
 (4/20,読売,福島,高,男,57)
・生徒抱き締めた教諭を停職処分 教諭、生徒ともに「互いに好意」
 (4/21,河北新報,福島,高,男,50代)
・大分市教委:男性教諭が中2男子にけがさせる
 (4/23,毎日,大分,中,男,50代)
・児童押し倒し尻を蹴る 30代教諭を懲戒処分
 (4/24,神戸新聞,兵庫,小,男,30代)
・小学校元校長、4800万円横領容疑「遊興費に使った」
 (4/24,朝日,高知,小,男,60)
・タクシー相乗りで強制わいせつ致傷容疑 教諭逮捕 
 (4/26,日刊スポーツ,神奈川,小,男,25)
・「虚偽休暇届」を裁判所に提出した女性教諭を減給処分
 (4/26,産経,愛知,中,女,38)
・女子中学生への“わいせつ行為”で愛知県の教師を懲戒免職処分
 (4/26,名古屋テレビ,愛知,中,男,50代)
・福岡県教委:中3女子を買春 男性教諭を免職処分
 (4/27,毎日,福岡,高,男,36)
・発達障害生徒に「合った学校考えたら」 発言教諭を告訴
 (4/28,朝日,長崎,高,女,56)
・懲戒処分:北九州市教委が教員3人 わいせつ、盗撮、体罰で
 (4/28,毎日,福岡,わいせつ:中男,盗撮:小男20代,体罰:小男26 教諭)
10代少女にわいせつ容疑、市立中の教諭逮捕
 (4/30,産経,福島,中,男,23)
保健室にカメラ設置容疑、「盗撮目的」高校教諭を逮捕
 (4/30,サンスポ,京都,高,男,25)

2018年4月28日土曜日

若者の自殺変化の国際比較

 昨日,ツイッターで風変わりなグラフを発信しました。
https://twitter.com/tmaita77/status/989732252262187010

 「何だこりゃ」「意味するところを説明してほしい」というリプがありましたので,それをいたしましょう。

 タイトルにあるように,15~24歳の自殺がこの四半世紀にかけてどう変わったかを,国ごとに比べたものです。生きづらさの指標としては,自殺率が一番。90年代以降の日本の状況変化を,国際比較で相対視してみようという試みです。

 人口あたりの自殺者数(自殺率)ならオーソドックスな折れ線グラフで事足りますが,欲張りな私は,死因全体の中での自殺の割合(自殺比)も加味した2軸のマトリクスにおいて,日本を含む主要7か国がどう動いたかを可視化してみました。

 この2つの指標を計算するには,(a)人口,(b)死亡者数,(c)自殺者数,の3つの要素が必要になります。WHOの死因統計データベースに当たって,1990年と2013年の2つの年次について,これらの数値を揃えました。もっと最近までの変化を見たいところですが,7か国全てのデータが揃うのは2013年までですので,ここまでの変化を観察することにします。
http://apps.who.int/healthinfo/statistics/mortality/whodpms/

 下の表は,上記の3要素をもとに,15~24歳の自殺率と死因中の自殺比を算出したものです。


 日本をみると,1990年から2013年にかけて,少子化のためベース人口は1869万人から1198万人に減っています。死亡者数も同じ。しかし自殺者数だけは,1309人から1709人に増えています。

 その結果,自殺率(c/a)は7.0から14.3に上昇し,死因全体に占める自殺比重(c/b)に至っては14.3%から46.3%と3倍以上になりました。最近では,若者の死因の半分近くが自殺です。この点はメディアでもよく報じられますので,ご存知の方も多いでしょう。まあこれは,病死や事故死が減っていることにもよるのですが。

 90年代以降の「失われた四半世紀」にかけて,わが国の若者の生きづらさが増していることが知られます。私の世代は,この時期を若者として生きましたので,非常によく分かりますねえ。

 はて,このような変化は他国でも同じなのか。死因中の自殺比はどの国も上がっていますが,日本ほどではありません。自殺率は,日本,韓国,スウェーデンは上がっていますが,それ以外の4か国(米英独仏)は下がっています。

 口でくだくだ言っても分かりにくいので,グラフにしましょう。普通の人は,2つのグラフに分けて,自殺率と自殺比の変化を折れ線や棒で表すのでしょうが,私は,2指標のマトリクスの上で7か国がどう動いたかを表現する策をとりました。横軸に自殺率,縦軸に自殺比をとった座標上に,1990年と2013年のドットを配置し,線でつなぐやり方です。

 昨日,ツイッターに載せたグラフがそれですが,ここに再掲いたします。


 日本は,1990年の(7.0,14.3)から2013年の(14.3,46.3)へと,右上に大きく動いています。自殺率,自殺比とも大幅に増えた,ということです。韓国とスウェーデンも同じ方向に動いていますが,矢印の長さ(変動幅)は日本には及びません。

 対して,米英独仏の4か国は左上にシフトしています。横軸の自殺率が下がっているためです。

 主要7か国だけの比較ですが,社会状況が近似した先進国の中で,若者の状況悪化が最も酷いのは日本という事実は,注目されてよいでしょう。「失われた四半世紀」にかけて,わが国の若者がどういう仕打ちを受けてきたかを思えば,合点のいく傾向です。

 ただ,もっと長期的にみると,日本の若者の自殺率のピークは,1950年代の半ばにありました(下図)。


 ラフな5年刻みのカーブですが,1955(昭和30)年に大きな山ができています。この年の若者の自殺率は,現在の3倍以上でした。

 戦後の大混乱がおさまり,高度経済成長への離陸が始まる時期ですが,戦前と戦後という新旧の価値観が最も混在していた頃です。両者に引き裂かれ,生きる指針を見いだせず,心的葛藤に苛まれる若者も少なくありませんでした。

 当時の自殺統計をみると,若者の自殺動機の首位は「厭世」となっています。世の中が厭(いや)になったということです。今は,いじめ被害とかシューカツ失敗とかですが,当時はもっとスケールが大きかったようです。アイデンティティの確立を期待される青年期が,社会の激動期と重なったことによる悲劇といえましょう。

 しかるに,激動期という点では現在も同じです。IT化の進行で,人々のライフスタイルは大きく変わりつつあります。加えて少子高齢化により,多数の上の世代が少数の若年世代におぶさるような状況にもなっています。今の若者も辛いのです。

 ITを知らず,学校至上主義の親世代との葛藤も大きくなっています。新旧の価値観が混在・対立しているのは,1950年代と同じ,いやそれ以上かもしれません。自殺統計を丹念に見ると,親・家族からの叱責という動機での自殺が結構あります。

 未曾有の売り手市場といわれ,若者をとりまく基底的な状況は改善されたといわれます。まあこれとて,疑問符がつくのですが…(求人倍率上昇は中小企業のみ!)。

 それはさておき,上の世代が心がけるべきは,社会の変化を鋭敏に察知し,新しいものを持ち込んでくる若者を,異物として頭ごなしに抑えつけないことです。ネットが普及した今,勉強は学校でなくてもできます。この時代に,登校を嫌がる我が子を無理に学校に引っ張っていくほど,ナンセンスなことはありません。

 人間にとって辛いのは,貧困に象徴されるような生活条件の欠如(不足)で,とくに日本では,そうした歪みが若者に集中する傾向があります。しかし,自己の生き方を定立できないのはもっと辛い。激動の時代の今,上の世代は,時代遅れになった自分たちの価値観を引き合いにして,若者の足を引っ張ることは慎まないとなりますまい。