2019年11月30日土曜日

2019年11月の教員不祥事報道

 寒くなってきました。11月も今日でおしまいです。

 教員いじめが起きる等,教育界も「お寒い」状況ですが,それは不祥事報道の数にも出ています。今月,私が把握した教員不祥事報道は66件です。いつもより,かなり多くなっています。

 長崎で飲酒運転をした,53歳の小学校女性教諭。家族との諍いでヤケ酒をし,その後ハンドルを握ってしまったそうです。晩産化の影響により,育児と介護のダブルケアを課されるなど,この年代の女性への重圧が大きくなっていますが,それが教員の激務と相いれないことは言うまでもありません。

 国立女性教育会館の調査によると,小・中学校の教員の93%は「管理職になりたくない」と答え,その半数が「家庭での育児・介護等との両立が困難だから」という理由をチョイスしています。女性校長を増やす上では,家事労働を外部化する費用(シッター,ヘルパー代)を補助する仕組みなんてのも,いいかもしれません。欧米諸国では,夫婦とも要職についている家庭は,家事なんてガンガン外注していますからね。

 ツイッターで,定期試験のヒントをつぶやいてしまった,兵庫県の高校教諭。酒なんか飲んでいると,ついやりがちな過ちです。大学教員にも,授業用アカウントをつくり,「試験でこれ出そうかな」なんてツイートしている人を見かけますが,アウトですので止めましょう。

 ツイッターは便利ですが,両刃の剣でもあります。「指一本のRTで名誉毀損」という判例もできました(岩上 VS 橋下訴訟)。スキャンダル等のニュースを拡散する時は,真実性のウラをある程度とってからにしましょう。掲示板や匿名ブログ等の戯言は,拡散NGです。私も編集者氏から,「ツイッターには,くれぐれも気を付けてくださいよ」と繰り返し言われています。

 明日から師走です。今月は,名寄市立大学のしょーもない事案に翻弄されましたが,無事に,平穏に年を終えられることを願います。

<2019年11月の教員不祥事報道>
備品を盗んだ中学教諭免職、山口 プロジェクターなど15点
 (11/1,共同通信,山口,中,男,35)
授業中に教諭が体罰 他の生徒が動画撮影しSNSで公開
 (11/2,上毛新聞,群馬,高,男,40代)
県立校教諭が窃盗 教職員から計12万円
 (11/2,愛媛新聞,愛媛,高,男,30代)
飲酒運転の疑いで福島県の高校教諭を逮捕 懇親会後に物損事故
 (11/3,時事通信,福島,高,男,58)
中学校教諭が5年余 無免許運転(11/5,NHK,北海道,中,男,50代)
同僚の金盗んだ教諭を懲戒免職(11/5,NHK,愛媛,特,男,34)
千葉の小学校教諭を逮捕 高2少年にわいせつ疑い
 (11/7,産経,千葉,小,男,37)
男児を平手でたたいた教諭を減給 やけど負わせた教諭
 (11/7,神奈川新聞,神奈川,体罰:小男51,やけど:中男42)
県立高校教員が女子生徒を盗撮(11/7,NHK,栃木,高,男,40代)
高校の陸上部監督が体罰繰り返す 匿名の通報で発覚
 (11/8,テレ朝,熊本,高,男,37)
「スカート丈短い高校生多い」滋賀へ“盗撮遠征”の高校教諭処分
 (11/8,神戸新聞,兵庫,高,男,27)
盗撮などで教職員2人を懲戒免職(11/8,NHK,岡山,小,男,32)
児童にわいせつ行為か教諭を免職(11/8,NHK,兵庫,小,男,32)
聖カタリナ学園高校で生徒指導の女性教諭が体罰
 (11/9,南海放送,愛媛,高,女,50代)
男性教諭、生徒に水かけられ頬たたく…女性教員2人が生徒をそそのかして
 (11/10,産経,大坂,中,男,35)
高校教諭を逮捕 酒気帯び容疑で(11/11,NHK,岡山,高,男,57)
生徒347人の成績など USBメモリ紛失(11/11,NNN,奈良,中,男)
駅で女性を投げ飛ばす 50歳の小学校教諭の男を逮捕
 (11/11,神奈川新聞,神奈川,小,男,50)
交際する生徒とみだらな行為、教諭免職 生徒が好意…勘違いした別の教諭もみだらな行為(11/12,埼玉新聞,埼玉,特男28,高男34,中男27)
教師が生徒を拳で突き上あご骨折 減給処分
 (11/12,ABCテレビ,徳島,高,男,59)
児童にはさみ近づけ「頭の中どうなってる」
 (11/13,朝日,兵庫,小,女,50代)
東大寺学園の男性教諭 修学旅行先で生徒19人を平手打ちする体罰
 (11/13,読売,奈良,高,男,40代)
小学教諭が散歩中の女性2人はねる…1人死亡
 (11/13,MBS,兵庫,小,男,29)
浜松の小学校教諭 盗撮で懲戒免職 学校に報告せず1ヵ月勤務
 (11/14,静岡放送,静岡,小,男,50)
置き引き容疑で私立高校教諭逮捕(11/14,NHK,神奈川,高,男,58)
福岡県内の中学校教師が覚醒剤を所持か「自分で使うために」
 (11/15,テレ朝,福岡,中,男,55)
★飲酒運転か小学校教諭 免職処分(11/15,NHK,長崎,小,女,53)
陸上部顧問、合宿先で女子部員の体触る…その後行方不明に
 (11/16,読売,兵庫,中,男,40)
小学校教諭を逮捕・起訴 児童にわいせつ行為か
 (11/16,MBS,大阪,小,男,39)
教諭逮捕、女子大生に抱きつきけがさせたか
 (11/18,TBS,佐賀,小,男,46)
16歳の少女にみだらな行為 石巻工業高男性教諭 懲戒免職処分
 (11/19,産経,宮城,高,男,29)
中学講師をみだらな行為で逮捕(11/19,NHK,福島,中,男,29)
小学校教諭 元教え子の中学生にキス 容疑で逮捕
 (11/19,産経,大阪,小,男,37)
市立高の校長が生徒引率の「研修旅行で飲酒」で処分
 (11/19,MBS,京都,高,男,55)
酒気帯び2教員を免職 県教委処分(11/19,岩手新聞,岩手,高男52,小男57)
生徒を床に倒して頬たたき、スマホを床にたたきつける
 (11/20,読売,京都,高,男,40代)
山形県教委、高校教諭を懲戒免職 授業中スカート内盗撮
 (11/20,時事ドットコム,山形,高,男,50代)
飲酒運転などで3教員に懲戒処分(11/20,NHk,千葉,飲酒運転:中男61,セクハラ:高男44,窃盗:高女41
お茶の水女子大付属中で男性教諭が生徒に足蹴り あばら骨折る大けが
 (11/21,毎日,東京,高,男,30代)
女性講師「イベント記念になれば何でも欲しい」…通行証盗み建造物侵入
 (11/21,読売,千葉,中,女,41)
小学生男児2人はねられる 同じ学校の教諭を逮捕
 (11/21,産経,北海道,小,男,40代)
わいせつ行為の30代男性教諭を懲戒免職
 (11/21,産経,静岡,高,男,30代)
鳥取中央育英高校の50代男性教諭 生徒足元に千枚通し投げつけ処分
 (11/21,FNN,鳥取,高,男,50代)
「うそばっか言うな、こら」 小学校教頭が保護者に暴言
 (11/21,朝日,香川,小,男,50代)
無免許運転容疑など教頭書類送検(11/21,NHK,宮崎,小,男,53)
酒気帯び運転疑い中学校教諭逮捕(11/21,NHK,奈良,中,男,58)
小学教諭、同僚や児童に暴言 学校や教委「指導不十分だった」
 (11/22,毎日,山口,小,男,50代)
埼玉の高校教諭、負傷部員に暴言 「骨折れるくらいやれ」
 (11/22,共同通信,埼玉,高,男,50代)
車に落書きした教諭を減給処分(11/24,毎日,新潟,男,40代)
少女と淫らな行為教員2人を免職(11/25,NHK,埼玉,特男29,31)
★期末テストのヒントをTwitterに投稿か 兵庫県立高の教諭を戒告
 (11/26,共同通信,兵庫,高,男,44)
野球部コーチが体罰で謹慎処分(11/26,NHK,熊本,高,男,23)
教諭「感情的になって」、テスト中に立ち歩く児童の腹蹴る
 (11/27,読売,大阪,小,男,33)
「感覚がマヒした」無免許運転5年、中学教諭を懲戒免
 (11/27,読売,北海道,中,男,56)
正当な理由なく包丁1本を所持 宮崎市の小学校女性教諭を現行犯逮捕 
 (11/27,宮崎放送,宮崎,小,女,32)
高校教諭が児童ポルノ禁止法違反(11/27,NHK,静岡,高,男,23)
私立中教諭がタクシー料金払わずに逃げ、運転手殴ったか
 (11/28,MBS,大阪,中,男,34)
女子中学生のスカート内を盗撮 35歳助教諭
 (11/28,徳島新聞,徳島,中,男35)
児童の歯が…小学校で男性教師が男児2人を2度投げ飛ばす
 (11/29,東海テレビ,愛知,小,男,55)
女子トイレで女装 盗撮容疑で逮捕の高校講師 停職6か月の懲戒処分
 (11/29,名古屋テレビ,愛知,高,男,27)
暴力行為の教諭に懲戒処分(11/29,熊本放送,熊本,中,男,40代)
生徒引率中に飲酒 中学校長処分(11/29,NHK,福岡,中,男,50代)
教頭アパート侵入容疑で逮捕(11/29,NHK,山形,小,男,60)
いじめ放置で校長を戒告処分 大阪府教育庁(11/29,産経,小,男,60)
盗撮や飲酒運転で教諭を懲戒免職
 (11/29,NHk,奈良,盗撮:小男25,飲酒運転:中男58)
高校教員がUSBメモリー紛失 無許可で自宅へ
 (11/30,神戸新聞,兵庫,高,男,40代)

2019年11月26日火曜日

名寄市立大学の論文不正

 11月12日に,「名寄市立大学の紀要論文にて,舞田さんがブログで出している県別大学進学率のデータが,出典の記載なく使われている」という情報提供がありました。以下の論文です。

 大坂祐二「教育におけるジェンダー平等:大学進学率の男女差に注目して」『名寄市立大学コミュニティケア教育研究センター年報』第3号,2019年5月。

 匿名のメールでしたが,大学の紀要なんて一般人は読まないので,おそらく研究者でしょう。当該大学内部の関係者の可能性もあります。

 「やれやれ」と現物を確認したところ,県別・性別大学進学率(2018年度)の統計表が,私のブログ記事からまるまる転載されています。舞田が計算したというクレジット表記もなく,ブログから引用したという記載もありません。「資料:学校基本調査」とあるだけです(下記)。


 これは,『学校基本調査』に載っているデータではなく,同資料から私が独自に計算したデータです。他人が作成したデータを,適切な表記なく使うのは「盗用」です(文科省ガイドライン,10ページ)。
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/26/08/1351568.htm

 これは大学の研究論文なんで看過するわけにはいかぬと,大学に「どういうことか」とメールを出しました。数時間後,事務局長より「大学内部で調査している,お待ちください」とリプがあり,2日後の14日に,コミュニティケア教育研究センター長から回答がありました。

 「表のデータの一部は筆者が計算したものであるが,残りは(舞田の)のブログのものである。本文でブログについて触れ,引用文献にもブログ記事を載せていたので,表の下の出典表記を省略してしまった」とのことです。

 なるほど,本文で「舞田がブログで毎年,県別・性別大学進学率を出している。進学率の地域差について,舞田はこういう見解を示している」ということが書かれています。引用文献リストにも,私のブログ記事名とURLが記載されています。しかし,表のデータは舞田が計算したものだということが,どこにも書かれていません。誰がどう見ても,このデータは筆者の大坂祐二が調べたものに映るでしょう。学術論文としては,完全にアウトです。

 さて,「表のデータの一部は筆者が計算したものである」という点が気になったので,それは具体的にどこなのかと質問を返しました。翌週の18日(月曜)になっても回答がないので,督促のメールを出し,翌日の19日に大学事務局に電話し,質問にちゃんと答えるよう要請しました。20日に事務局長から「明日中に回答します」と連絡があり,21日(木曜)にセンター長から再度の回答がありました。要した期間,1週間です。

 それによると,「一部筆者が計算した箇所というのは,表の右端にある『男子/女子』の倍率である。今回の問題について,学識経験者等の意見も聴いて検討していたので,返答が遅れてしまった。本文でブログに触れ,引用文献に記載しているにしても,表のデータは舞田先生が作成されたもので,出典表記を略すのは不適切という結論に至った」ということです。

 筆者が一部計算したというのは,ジェンダー差の倍率を出しただけのことで,私が計算した県別・性別大学進学率をクレジット表記なく使ったこと,それは不適切であることを認めてきました(当然ですが)。

 私は,①筆者の直筆の謝罪文を送ること,②今回の件を大学ホームページで告知すること,の2点を要求しました。後者の告知は,翌日の22日(金曜)になされました。リンクを貼っておきます。
https://www.nayoro.ac.jp/organization/crecc/nenpo/teisei-owabi.html


 大坂祐二の謝罪文も先ほど届きました。自身の非を率直に認め,研究者としての未熟を恥じ,今後は十分に注意するという内容で,反省の念は伝わってきました。

 本文でブログ記事について言及し,引用文献にも載せていた。つい気が抜けて,統計表の下に出典表記を入れるのを怠ってしまった…。まあ,悪意はなかったとみなしておきます。

 厳しい人なら,論文取り下げ等を要求するのかもしれませんが,そこまでは求めないこととしましょう。


********************

 ただ,この大坂祐二という人は研究者失格のように思います。他人が汗水流して作った統計表を転載し,出典表記を怠るなどは言語道断です。文科省ガイドラインにしたがえば,れっきとした盗用。こういう人が学生の卒論等の指導をしているのかと思うと,暗澹たる気分になります。

 私の質問への回答に時間がかかった理由が,「学識経験者等の意見を聴いていたから」というのも気になります。自分たちでは問題の性質について判断しかねるので,外部の専門家の意見も聴いていた,ということでしょうか。

 その結果,「表のデータは舞田先生が作成されたもので,一部改変したとはいえ,出典表記を略すのは不適切という結論に至った」とのことですが,そんなのは当たり前です。他人の成果物を,適切な表記なく使うのは「盗用」(文科省ガイドライン)。こういうことも知らぬ人が,学生の論文指導をする資格があるのかどうか…。

 大坂祐二の問題の論文(実践報告という位置づけ)をみると,内容が陳腐である感が否めません。公的資料に載っているデータやグラフをそのまま使っているようで,大学進学率の県別データは私のブログの丸パクリ。地域格差についての考察も,私がブログに書いているのを,ほぼなぞっているだけ。大学進学率の地域格差の先行研究にも触れていません。厳しい言い方ですが,学生の卒論レベルです。

 査読ナシなんでこのレベルでも紀要に載り,業績としてカウントされ,一応は研究者としての職務を果たしていると見なされる。それで(高い)給与をもらえ,大学に居続けることができる…。

 まあ最近は,査読なしの紀要は採用や昇進に際して評価されないのですがね。私の母校に,50代半ばの某准教授がいます。毎年せっせと紀要に書いていますが,やはり教授昇進の材料としては全く評価されないようです。

 ちなみに大坂祐二の業績を調べてみると,博士号なし,全国レベルの学会誌論文なし,単著なしです。こんな「三なし」が,公立大学によく採用されたもんだと思います。おまけに教授昇進までしているのですから,開いた口がふさがりません。この大学の採用・昇進の基準はどうなっているのでしょうか。

 優秀であっても,底辺私大で死ぬような思いをしている研究者はわんさといます。そういう人からすれば,こんな人が公立大学でぬくぬくとしているは我慢ならないでしょう。私に告発の情報提供をくれたのは,こういう人なのかもしれません。

 文科省は大学にカネを出すを嫌がっていますが,今回のような案件に出くわすと,その姿勢を支持したくなったりもします。

 *今回の事件の経緯は,ツイッターのスレッドでも記録しています。リアルタイムで,私の感情も出ています。スレッド機能,便利ですよね。
https://twitter.com/tmaita77/status/1194103345469906945

2019年11月25日月曜日

中堅教員の不在

 神戸の小学校で起きた,教員間いじめが世間を震撼させています。子どものいじめを戒める立場にある教員がいじめとは何たることか。関係者は,ショックを隠せないでいます。

 当の教員の資質を問う声が多数ですが,当人の個人的要因に帰してだけでは,解決策は「研修の充実を!」でおしまいです。それも大事なんですが,社会学的な立場からすれば,職場環境の要因というのも抽出してみたい。これは,政策によって変えることができるからです。

 こんな不満を持っていたのですが,昨日の神戸新聞に面白い記事が出ています。「40代,20年で半分以下 公立小教諭のいびつな年齢構成 教員間暴力の背景か」と題するものです。
https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/201911/0012902819.shtml

 今の40代といったら,私の世代ですね。新卒時の教員採用試験が厳しかったからでしょう。教員の年齢構成は,文科省『学校教員統計』で知れます。最新は2016年ですので,およそ20年前の1998年と比べてみましょうか。下図は,公立小学校教員の年齢カーブを描いたグラフです。全数に占めるパーセンテージによります。


 1998年では,中堅の40代に山がありました。しかし2016年では,この層に谷ができています。40代の教員,減ってるんですね。実数でいうと,15万5796人から8万4867人へと減少です。全体に占める割合は39.7%から22.7%に低下。上記記事タイトルにあるように,20年間でおよそ半減です。

 なるほど,今の教員の年齢構成は歪(いびつ)な型になっています。ちなみに都市部に限ると,40代の凹みはもっと大きくなります。千葉県では,公立小の40代比率が15.1%です。ピラミッドを描くと,若年層と年輩層に分化した型ができています。

 私がまず思ったのは,今の若手教員は,年齢が近い先輩教員の指導やサポートを受ける機会がないのだろうなあ,ということです。少子化で学年単学級の学校も多くなってますので,同学年の担任同士の助け合いもできなくなりつつあります。早いうちから,学年主任等の責任あるポジションを任されるプレッシャーも大きい。

 こういうことが要因かは分かりませんが,最近,若年教員の病気離職率が上がっているのです。教員の病気離職率は90年代以降増えているのですが,とりわけ若年層で増加幅は大きくなっています。仔細は,下記ニューズウィーク記事のグラフを見てください。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/04/post-10042.php

 まあ,30代そこそこにして校内の要のポジションにつくことも多くなっているでしょうね。しかし中には,それを逆手にとって,横暴な振る舞いをする輩もいます。神戸の小学校でいじめを主導した教員2名(30代)は,校内で中核的な位置にあり,一定の力を持っていたそうです(上記の神戸新聞記事)。

 なるほど,教員の歪(いびつ)な年齢構成が教員間暴力に影響するとは,こういうことですか。未熟な教員が校内を牛耳るようになると,よからぬことが起きやすい。近年,教員採用試験の競争率が低下しており,新規採用教員の質が落ちているともいわれます。こういう世代が,早いうちから校内でリーダー的な位置につくことになる。うーん,今回の教員いじめのような事件が,これから増えてきそうな予感がしないでもありません。

 教員の歪な年齢構成が,教員間暴力の背景要因になり得る。ユニークな見解ですが,歪な年齢構成の度合いは,地域によって違っています。注意を喚起する意味合いで,47都道府県別の「歪度」を出しておきましょう。

 全教員に占める,40代の中堅教員の割合です。これが高いほど,若手へのサポート条件が整っているといえます。低いのはその逆で,よからぬ若手が学校を牛耳るなんてことも起きやすいことになります。


 ほう,首位は私の郷里の鹿児島じゃないですか。40代の教員が全体の4割です。私の世代が新卒のとき,この県は競争率が相対的に低かったのかなあ。赤字は40代が3割以上で,年齢カーブを描くと,大よそ中堅層が膨らんだノーマルな型になります。

 右下はその逆で,40代の中堅層が凹んでいる県です。都市的な県が多く,東京は19.1%,大阪は16.4%,最低の千葉は15.1%です。この記事で述べた,中堅教員の不在に伴う諸問題のリスクが大きいといえるでしょう。OB教員等の活用も含め,若手へのサポート資源を充実させる必要があります。早い段階から校内の要職につく若手への研修も不可欠となるでしょう。

2019年11月17日日曜日

夫の稼ぎ割合の国際比較

 前回の続きです。前回は,アラフォー世帯の夫の稼ぎ割合を明らかにしました。40代有配偶男性の所得中央値を,40代の核家族世帯のそれで割ることによってです。その結果は76.1%で,夫と妻の稼ぎ割合は「76:24」であることが知られます。

 地域差もありますので,興味ある方は前回の記事をご覧くださいませ。最高は大阪の95.8%,最低は山形の64.4%でした。

 まあしかし,国内の地域比較なんて「どんぐりの背比べ」です。今回は世界に目を向け,国際比較をやってみようと思います。

 ISSPが毎年実施する国際意識調査では,対象者に自分の収入と世帯の収入を訊いています。25~54歳の有配偶男性の回答から両者の中央値を出し,割り算をすれば,世帯全体の収入に占める夫の寄与分が出てきます。
http://www.issp.org/data-download/by-year/

 最新の2017年調査の個票データを使って,各国の値を計算してみました。大国のアメリカを例に,計算の方法を説明します。下表は,同国の25~54歳の有配偶男性(事実婚含む)に,自分の年収と世帯の年収を尋ねた結果です。無回答,無効回答は除きます。


 ISSPの方で階級を任意に設定し,それぞれの中間の階級値が示されています。これによると,本人年収の中央値は5.5万ドル,世帯年収の中央値は10万ドルの階級に含まれることが分かります(黄色マーク)。1ドル=110円とすると,550万円,1000万円ですか。

 階級の幅が分かれば,按分比例で精度の高い中央値を出せるのですが,原資料には階級値しか出てませんので,階級の幅が分かりません。仕方がないので,中央値が属する階級の階級値を,中央値とみなすことにしましょう。

 これによると,本人年収の中央値は5.5万ドル,世帯年収の中央値は10万ドルですので,アメリカの夫の稼ぎ割合は,前者を後者で割って55.0%ということになります。この国では3世代同居はほぼ皆無でしょうから,残りの45%を妻の稼ぎとみなし,夫婦の稼ぎ割合は「55:45」という結果になります。

 同じやり方で日本の結果を出すと,「73:27」となります。前回の国内統計の結果と近似しています。アメリカと日本,だいぶ違いますね。夫婦二馬力,女性が稼げる環境の実現度合いは,社会によって異なるようです。

 日米の結果は以上ですが,他国の試算結果も見ていただきましょう。有配偶男性の本人収入中央値を,世帯収入中央値で割った値です。年収ではなく月収を問うている国もあるので,グラフの注釈では「収入」という言い回しにしています。


 トップはスイスで84.1%です。夫の稼ぎが大半のようですが,女性の社会進出がこんなに進んでなかったか。その次はスリナムで,日本の73.3%は3位となっています。

 下をみると,夫の稼ぎが半分をいかない国もあるようです。南アフリカは45.7%,インドは22.9%です。これらの国は大家族が多いので,残りが妻の稼ぎとは限らないでしょう。インドは,夫の稼ぎ寄与分は5分の1ですか。この国の旅行記を読むと,男性が怠け者で,女性があくせく働くという記述をよく見ますが。

 主要先進国をみると,アメリカは55.0%,イギリスは64.6%,ドイツは62.5%,フランスは50.0%,スウェーデンは58.1%,となっています。3世代同居は嫌われる国々なんで,残りは妻の稼ぎとみていいでしょう。フランスは夫婦半々なんですね。

 わが国には「大黒柱」という言葉がありますが,夫依存の家計が普遍的でも何でもないことが,国際比較から知られます。

 日本は夫の稼ぎ割合が高い代わりに,夫は家事をしません。しかしフランスは夫婦半々の稼ぎなんで,夫の家事をそこそこするのでしょうか。OECDの「Gender data portal 2019 Time use across the world」という資料に,1日あたりの成人男女の家事時間が出ています。男性の家事分担率を出し,上記の稼ぎ割合と絡めてみましょうか。

 下の図は,両方のデータが得られた19か国の布置図です。点線は19か国の平均値を指します。


 インドと南アフリカを除けば,概ね右下がりの傾向ですね。夫の稼ぎ割合が高い国ほど,夫は家事をしない。ある意味,道理です。フランスは夫婦の稼ぎ割合が半々で,夫は家事の4割をする社会です。日本はその対極です。価値判断を加えるなら,前者に軍配が上がるでしょう。

 しかしインドは酷いですね。夫の稼ぎ割合は低く,家事もしない…。右上は,夫が稼いで家事も頑張る社会です。北欧諸国が多し。

 夫婦の稼ぎ分担について,前回は国内の地域差,今回は国際差をみてきました。国際差はかなりラフなやり方で出した試算値ですが,日本の状況を相対視できたでしょうか。日本の「夫大黒柱型」は,21世紀の男女共同参画社会にふさわしくなく,リスクも大きい。夫が倒れたらおしまいで,妻にすれば離婚すると貧困に一直線です。

 日本のドットも,左上の方にシフトすることが望まれます。

2019年11月15日金曜日

アラフォー世帯の夫の稼ぎ割合

 私は43歳,アラフォーのステージです。独り身ですが,結婚して家庭を持っている人が数としては多いでしょう。

 夫婦はタッグなんですが,令和の時代にあっては,偏狭な役割分担はなるべく無くしたほうがいい。しかし日本は未だにそれが強固で,家事の負担は女性(妻)に偏しています。夫婦の家事分担率のデータは,これまで嫌と言うほど出してきました。

 しからば,稼ぎの分担はどうか。夫のシェアが大きいのは想像がつきますが,具体的なパーセンテージのデータはあまり見ません。40代の家庭に焦点を当てて,データを出してみましょう。当たり前のことを数値で可視化するのは,私の商売です。

 皆さんならどうしますか。40代の有配偶就業者の所得を男女別に出して,両性の合算に占める男性の割合を出しますか。しかしこれだと,働いてない専業主婦がオミットされちゃいます。

 私は以下の2つを計算し,bをaで割ってみることにしました。

 a) 世帯主が40代である核家族世帯(夫婦+子)の所得中央値
 b) 40代の有配偶男性有業者の所得中央値

 2017年の『就業構造基本調査』のデータを使います。では,a)のほうから計算してみましょう。以下の表は,当該年代の世帯所得の分布表です。


 世帯主が40代で,夫婦と子からなる核家族世帯は全国で407万世帯ほどです(所得不明は除く)。分布をみると,最頻階級は600万円台となっています。前々回で出した,小・中学生の家庭と一緒ですね。

 累積%が50ジャストの中央値は,700万円台の階級に含まれます。按分比例を使って割り出しましょう。

 按分比=(50.0-48.6)/(61.5-48.6)=0.1063
 中央値=700万円+(100万円 × 0.1063)=710.6万円

 アラフォーの子育て世帯の所得中央値は,711万円と出ました。これがフツーの水準です。皆さんのご家庭は,これと比してどうでしょうか。このレベルの稼ぎが要る時代なんですね,子育てには。

 最近は共稼ぎの夫婦が多いので,これは夫と妻の合算の結果でしょうが,夫の割合はどれくらいか。ここでの関心事はコレです。同じやり方で,上記の(b)40代の有配偶男性有業者の所得中央値を出すと,541万円です。

 よって,アラフォー世帯の夫の稼ぎ割合は,541/711=76.1%となります。およそ4分の3です。裏返すと,妻の稼ぎ分は4分の1ということになります。

 これは全国データですが,都道府県別の数値もはじき出せます。一覧表を見ていただきましょう。


 全国値は76.1%ですが,県別にみると64.4%~95.8%までの幅(range)があります。山形は「夫64:妻36」ですが,大阪は「夫96:妻4」という割合です。

 黄色マークは8割を超える県ですが,近畿地方に多くなっています。大阪は,世帯所得が668万円で,そのうち夫が640万円。あくまで見立てですが,妻の稼ぎはほとんどないことになります。大阪は離婚率が高かったと思いますが,夫と別れた母子が貧困化するリスクはどうか。それが大きいので,夫のDVに耐え忍ぶ妻も多かったりして。

 当然,夫の稼ぎ割合は,共稼ぎ世帯の率と逆相関の関係にあります。東北地方は,共稼ぎの世帯の率が高し。山形の世帯所得は,大都市の大阪より高くなっています。これは妻の稼ぎが多いことによるもので,配偶者控除が適用されず,可処分所得だと少なくなっちゃいそうです。配偶者控除,存続させる必要のある制度でしょうか。

 東京の40代有配偶男性の所得は653万円で,鹿児島の40代子育て世帯(585万円)よりも高くなっています。ざっくり言うと,「東京の一馬力 > 鹿児島の二馬力」です。私は両方の暮らしを知ってますが,違うものですね。鹿児島では,夫婦正社員の共稼ぎでないと,子を大学にやるのは難しいと言われます。

 共稼ぎが必須の時代ですが,夫の稼ぎ割合をみると,妻の寄与度をもっとアップさせ,世帯の収入アップを図る余地はあるように感じます。ISSPの2017年調査では,自分の収入と家族の収入を訊いていますが,スウェーデンの25~54歳の有配偶男性の回答を元にすると,「当人の収入中央値/世帯の収入中央値」は58.1%です。「夫58:妻42」なり。日本の「夫76:妻24」とは,だいぶ違いますね。

 国際比較をやる術を見つけましたので,次回ではそれをやってみます。

2019年11月13日水曜日

有業者のリーダー比率

 私のパソコンには,PISA,TIMSS,PIAAC,そしてTALISなど,国際調査のローデータファイル(エクセル)が入っています。どれも非常に大容量で,開くのに時間がかかり,動作も不安定になります。

 しかし便利なツールも用意されていて,下記サイトにて,3重クロスまでの分析はリモート集計でできます。
https://nces.ed.gov/surveys/international/ide/

 最近は,こちらを使っています。個票データのファイルを開くのが億劫というのもありますが,データの再現が容易であるためです。言わずもがな,再現可能性は科学の大前提です。

 個票データだと,無数の変数の組み合わせが可能ですが,いろいろ欲が出て,自分でもワケが分からない袋小路にハマりがち。しかしリモート集計は3重クロスまでですので,精選した変数によるシンプルな分析を心がけるようになります。亡き恩師がよく言われてましたが,他人にも分かりやすいシンプルな分析がいいのです。

 ここ数日,「出世に際して重要なのは,能力かジェンダーか」という関心をもって,OECDの国際成人力調査「PIAAC 2012」のデータを分析しています。まず思いつくのは,有業者の管理職比率のジェンダー差ですよね。

 「Do you manage or supervise other employees?」という問いに,イエスと答えた人の割合を使いましょう。ただこれには,作業チームのリーダーのような人も含まれるので,管理職ではなく「リーダー」ということにします。

 日本だと,16~65歳の有業者のうちリーダの割合は,男性では40%,女性では16%です。その差は24ポイント,予想通り男性のほうが圧倒的に高し。もはや驚きもしませんが,他国はどうでしょう。調査対象の26か国のデータは以下です。


 下に位置するのは,「男性>女性」の度合いが大きい国ですが,日本と韓国が仲良くワーストに位置しています。リーダー的地位に到達するチャンスのジェンダー差が最も大きい社会です。

 それはどの社会でも同じですが,上のほうの国は,男性と女性の差が比較的小さくなっています。エストニア,スウェーデン,イギリスでは8ポイントの差です。日本や韓国より,ジェンダー差がずっと小さいと。

 上に立つのは有能な人が望ましいのですが,上記の差は能力の性差の反映でしょうか。「PIAAC 2012」は学力調査ですので,認知面の学力も知ることができます。ホワイトカラー労働が多くなっている現在では,学力が職務遂行能力と強く相関するとみてもよいでしょう。

 日本の16~65歳の有業者を,数学的思考力の習熟度レベルに基づいて3つのグループに分けてみます。レベル3未満を低,レベル3を中,レベル4・5を高としましょう。最後の高学力グループのサンプルでリーダー比率を出すと,男性が50%,女性は19%となります。同じ高学力層でも,リーダーの出現率にはジェンダー差があります。というか,上表の有業者全体の場合よりも差が広がるじゃないですか。

 もっと驚くべき事実があります。女性の高学力グループのリーダー比率は,男性の低学力グループよりも低いのです。前者は19%,後者は32%なり。言葉がよくないですが,有能女性よりも無能男性のほうがリーダーになる確率は高いと。能力よりもジェンダーの社会です。

 こういう国って他にあるのでしょうか。他国についても高学力女性,低学力男性の2グループを取り出し,リーダーの比率を計算してみました。データが得られた21か国の一覧をご覧ください。


 一番上のアイルランドでは,低学力男性が27%,高学力女性が45%で,後者のほうが18ポイントも高くなっています。ジェンダーよりも能力です。数としては,こういうタイプのほうが多数です(右端の差分がプラス)。

 悲しいかな,日本はそれとは逆で,能力よりジェンダーの度合いが韓国に次いで高くなっています。無能男性が有能女性の上に立つ。会社勤めをしている人は,こういう光景を常日頃目にしていることでしょう。朝日新聞で「働かないおじさん」が取り上げられていますね。機械的な年功序列で管理職に上り詰め,能力に見合わない高給をむさぼっている中高年男性のことです。

 両性の3つの学力グループの数値をグラフにすると,日本の女性の閉塞状況が露わになります。以下のグラフは,日本とアイルランドの対比です。


 緑は学力高群,オレンジは中群,青は低群のリーダー比率です。アイルランドでは学力レベルが上がるにつれ,両性ともほぼ同じスパンでリーダー比率が上がっていきます。

 しかし日本の女性は何たることか,3つの学力群とも2割弱の位置に固まってしまっています。能力に関係なく女性は低位置に留め置かれる。低位収束現象とでも呼んでおきましょう。

 日本の女性には,見えない天井があるようですが,いわゆるマミートラックの影響もあるでしょう。結婚・出産で退職し,子育て後復職しても,元のキャリアを取り戻すのは難しい。配偶者の転勤についていくことで,キャリアがその都度リセットされる。

 残念といいますか,女性の管理職昇進意欲が低いこともいわれています。「管理職になりたいか」と問うても,イエスという回答の率が男性に比して有意に低し。晩産化の影響で,40~50代のステージは「育児+介護」のダブルケアになる時代ですが,こうした負荷に管理職の重責が加わるのは耐えがたい,という意識もあるとみられます。

 しかしこれは日本の事情で,上記のデータで分かるように,他国では違うのですよね。夫の家事分担が進んでいる,家事の省力化・外注化が進んでいる,女性の昇進に対する妬みがない…。日本と異なる要因は数多く指摘できます。結果として,女性のハイタレントがちゃんと活用されているのは,素晴らしいことです。

 管理職の女性比率を*%にする。こういう数値目標を掲げ,それを達成するためのアファマーティブ・アクションも必要かもしれません。

2019年11月6日水曜日

小・中学生の家庭の年収分布

 「年収600万円で中学受験はできるか」という主題の記事を見かけました。
https://st.benesse.ne.jp/ikuji/content/?id=44042

 受験費用,合格後の入学金,授業料,制服代,交通費,学用品費…等のデータが示され,私立生の親の何人かに年収を尋ねた結果が紹介されています。

 こういう問題を扱う場合,私立に通わせている家庭の年収分布を出すのが手っ取り早いと思うのですが,それはされていません。文科省『子供の学習費調査』に出ているのですがね。秋晴れの昼下がり,ヒマですので,アシストをさせていただきましょう。

 上記のリンク先の「5 世帯の年間収入段階別,項目別経費の金額段階別構成比」に,小・中学生の家庭の年収分布が%値で出ています。公立と私立に分けられています。公私立の小・中学校の分布を採取し,中央値の検討をつけるため累積%にしてみました。結果は以下のようです。



 左は公立,右は私立の分布ですが,かなり違いますね。公立小の最頻階級は400~500万円台,公立中は600~700万円台ですが,私立は小中ともマックスの1200万円以上です。分布が高年収層に偏しており,私立小では半分近くが1200万円以上となっています。幼少期の「お受験」をできる家庭はやっぱりスゴイ。

 下段の累積%をみると,50ジャストの中央値(median)は,公立は600~700万円台,私立は1000~1100万円台の階級に含まれることが知られます(赤字)。按分比例を使って割り出すと,児童・生徒の家庭の年収中央値は以下のようになります。

 公立小 = 636万円
 公立中 = 675万円
 私立小 = 1160万円
 私立中 = 1022万円

 いかがでしょう。まず冒頭の記事の問いに絡めると,年収600万円というのは,私立中学校の家庭では中央値よりもずっと下ですね。全生徒の下位15%のラインにも達しません。中学受験をする家庭のフツーの年収は1000万円,下位25%でも700万円くらい。この事実を押さえましょう。

 公立でみても600万円を超えているのに驚きます。公立小は400万円台かなと思いきや,それよりもずっと高し。うーん,ざっくり言うなら,子育てをするには600万円の年収が要る時代ってことでしょうか。

 小・中学生の親は30~40代くらいだと思いますが,この年齢層の男性有業者の所得分布を,2017年の『就業構造基本調査』から明らかにすると以下のごとし。



 小・中学生のお父さん年代の所得分布ですが,真ん中が膨らんだきれいなノーマルカーブですね。右端の累積%から,中央値は400万円台であるのが分かります。

 小・中学生の家庭の年収中央値は600万円台,父親年代のそれは400万円台。上表の分布は税引き前の所得の分布ですので,手取りだともっと下方にシフトします。子育てをするには,共稼ぎでないとキツイ時代になっているようです。

 先週のニューズウィーク記事で扱いましたが,都内23区の出生率をみると,今世紀初頭の頃と現在では,地域差の構造が変わっています。一昔前では地価の安いエリアで高かったのが,現在では所得水準が高いエリアで多産になっているのです。母親のフルタイム就業率とも相関するようになっています。これなども,共稼ぎでないとキツイ時代になっていることの証左です。

 今からでも遅くはありません。増税でえられた財源の使いみちを正しましょう。重きを置くべきは,保育の費用負担の軽減ではなく,受け皿の拡充です。保育士の待遇改善はそのための主要戦略ですが,保育士の非正規化もビックリするほど進行しています。
https://twitter.com/tmaita77/status/1190947315093098501

 非正規のパートと思って応募したら,正規職員と同等の仕事をさせられるのもザラ。正規でも安いのに,それをも上回る低賃金で働かされる。これでは,保育の質も脅かされるというもの。

 共稼ぎでないとキツイ,そうでないと出産できない。こういう時代になっていることは,子育てファミリーの稼ぎを一瞥するだけで分かっちゃいます。

2019年11月5日火曜日

フルタイム就業者の所得の職業比較

 朝晩,急に冷え込むようになりましたが,いかがお過ごしでしょうか。

 ここ数日,ツイッターにて,職業別の非正規雇用率のデータを発信しています。図書館司書・学芸員,保育士,幼稚園教員,介護職員…。これらの職業の非正規化は,全国的にスゴイことになっています。
https://twitter.com/tmaita77/status/1190508161058230272

 教育,文化,福祉…。成熟社会を象徴する職業が軽んじられています。

 司書の非正規率が高いのは知ってましたが,保育士の非正規率もかなり高いことに驚きました。2015年の『国勢調査』のデータによると,全国値で42.2%,マックスの長野県で57.9%です。人手不足で,望めば正規職員として雇ってくれる園なんていくらでもあると踏んでましたが,そうでもないのですね。

 増税で得られた財源で幼保の無償化が始まってますが,保育士の薄給は手付かずのまま。フルタイムの正規職員でも,お給料は少ないことでしょう。業務負担と責任を考えると,正職員で働くなんてアホらしい,パートのほうがいい。こう考える人が多いから,保育士の非正規率が高いのかもしれません。

 久々ですが,『就業構造基本調査』に出ている,職業別の所得分布統計をいじってみたくなりました。職業別の平均所得はこれまで何度も出してきましたが,今回はフルタイム就業者に限定します。また分布の代表値として,平均値ではなく中央値(median)を使います。

 私は,2017年調査の全国編の統計表「03500」に当たって,年間250日・週43時間以上就業している有業者を取り出し,税込みの年間所得の分布を明らかにしました。以下に掲げるのは,全職業1669万人の分布表です。所得の階級は,原資料によります。


 年間250日(月20日),かつ週43時間以上働いているフルタイム就業者のデータです。中層が膨らんだノーマル分布ですね。ピークは300万円台で,全体の20.3%がこの階級に属します。週5日,1日8時間以上勤務してこれかと,ちょっと落胆しますが,老弱男女ひっくるめた全労働者だとこんな感じです。

 累積%値が50ジャストの中央値も,この階級に含まれるようです。按分比例を使って推し量りましょう。

 按分比 =(50.0-34.2)/(54.4-34.2)= 0.781
 中央値 = 300万円+(100万円 × 0.781) = 378.1万円

 最近のフルタイム就業者の所得中央値は378万円と出ました。400万円は超えるかと思ってましたが,さにあらず。貧しくなってますね。ちなみに所得300万円に満たないプアは全体の34.2%います(上表の真ん中の%値)。フルタイムで働いても,3人に1人がプアであると。フルタイム・ワーキングプアと命名しておきましょう。実数にして571万人です。

 では,職業別のデータをご覧に入れましょう。私は,フルタイム就業者の年間所得分布をもとに,67の職業の所得中央値を計算しました。中央値は計算に手間取りますが,はじき出される数字はリアルです。また,所得300未満の者の割合も出しました。フルタイムで働いても,プアの状態にある人の率です。

 まずは,管理職からサービス職までの35職業のデータからです。


 赤字は中央値が500万円を越える職業ですが,専門職は高いですね。トップは医師で1226万円。真ん中の中央値でコレです。その次は管理的公務員で915万円,3位は法務従事者(弁護士等)で755万円となっています。

 教員は570万円,著述家・記者・編集者は522万円ですか。後者はプアの率が21.5%と高いことから,売れっ子とそうでない人の格差が大きいものと思われます。

 保育士が属する社会福祉専門職は315万円。私立園の保育士に絞ったら,もっと低いでしょうね。この職業のプア率は45.8%,フルタイム就業しても半分近くが300万円稼げません。介護サービス職はもっと低し。

 続いて,保安職業以降の32職業をみていただきましょう。


 体を動かすブルーカラー系の職業です。全般的に低いですが,公共性のある鉄道運転士と,パイロットを含む船舶・航空機運転手は高くなっています。

 しかし,年間250日(月20日),かつ週43時間以上働いてコレとは,ちょっと驚きます。女性や高齢者が搾取されていることの表れでしょうか。わが国では,働く人が手にする富が,生産年齢の男性に集中しがちです。

 最後に,今みた2つの変数のマトリクス上に,67の職業を配置したグラフにしておきましょう。横軸に中央値,縦軸にプア率をとった座標上に,各職業を散りばめました。点線は全職業の値です。


 両者は表裏ですので,ナナメの配置になります。私が注目する社会福祉専門職と介護職は,左上にあります。重要性を増しているにもかかわらず,待遇は低し。

 あなたの職業はどの辺に位置づくでしょうか。大雑把な職業中分類のデータですみませんが,先ほどの表から自分が属する職業の目星をつけ,該当のドットを赤で囲ってみるとよいでしょう。

 フルタイム就業者に絞った中央値の比較です。こういうデータはあまり出てないと思いますので,参考にしていただければ幸いです。

 余談ですが,データえっせいαの2回目の記事を本日公開しました。テーマは,犯罪の認知度です。犯罪統計には当局の恣意がどうしても入りますが,そこを切り口に社会を読むと面白い。どうぞ,お読みください。
https://note.mu/tmaita77

2019年11月1日金曜日

2019年10月の教員不祥事報道

 昨日は記事を出しましたので,先月の教員不祥事報道の整理を今日やります。

 先月,私がネット上でキャッチした教員不祥事報道は41件です。赤字は注目事案。声が小さいと,クラス全員を長時間起立させた小学校教諭。私も経験ありますね。10分くらいだったかな。こんなしょーもないことで,授業時間を潰していいのかと思った覚えがあります。

 長時間起立させるのは,肉体的苦痛を与えますので,れっきとした体罰です。体罰の判定基準は,肉体的苦痛を与えるか否か。教員採用試験でも頻出ですので,主な事例を示した文科省通知はみておきましょう。『教職教養らくらくマスター』だと,教育原理のテーマ24です。
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1331908.htm

 風俗店でバイトしていた,大阪の小学校教諭。動機は「お金をかせぐため」。29歳の若年教員みたいですが,もしかすると奨学金返済の重荷を抱えているのでしょうか。公務員の副業(営利事業への従事)は制限されていますが,視野を広げる上でも,解禁を検討してみてはどうかなと思います。

 教員の世界は,大きく揺れています。兵庫県の教員いじめが注目を集めています。いじめを憎み,厳しく指導すべき教員の世界で酷いいじめが起き,大々的に報道されるのは前代未聞のことです。そうした腐敗は子どもにも伝播し,問題の小学校ではいじめが増えているとのこと。ギスギスした教員社会の風通しをよくしたいものです。働き方改革は,その中核に位置します。

 秋も深くなってきました。季節の変わり目,体調を崩されぬよう。私は,今年はインフルエンザの予防接種を受けるつもりです。学校卒業以来です。

<2019年10月の教員不祥事報道>
セクハラ教員を懲戒免職…だが処分直後に公表せず 香川県教委
 (10/1,瀬戸内海放送,香川,高,男)
埼玉県の教諭淫らな行為か 逮捕(10/2,NHK,埼玉,特,男,31)
わいせつ行為 盗撮の疑い 県立学校教諭2人を懲戒免職
 (10/3,佐賀テレビ,佐賀,高男40:盗撮,特男39:わいせつ)
酒酔い運転疑いで中学校教諭逮捕(10/3,NHK,北海道,中,男,47)
教諭 女子にみだらな行為か逮捕(10/6,NHK,埼玉,特,男,29)
岡山の小学校教諭を買春容疑で逮捕 女子高生にわいせつ行為をした疑い
 (10/7,共同通信,岡山,小,男,35)
京都府立校講師が回答書き換え、府教委が処分
 (10/8,産経,京都,高,女,50代)
祖母殺害容疑、幼稚園教諭を逮捕(10/8,読売,兵庫,幼,女,21)
37歳高校教師が女子生徒に「付き合ってほしい」と教室で抱きしめ車でも2度キス
 (10/10,東海テレビ,愛知,高,男,37)
女子高生2人の胸つかむ 中学教師を懲戒免職
 (10/10,京都新聞,京都,中,男,30)
鹿児島市の小学校 校長が教諭に不適切指導
 (10/13,MBC,鹿児島,小,男,50代)
盗撮容疑で逮捕 時間講師を免職 県が懲戒処分
 (10/13,毎日,宮崎,産業技術専門学校,男,33)
裸の写真送らせた疑い 教諭免職(10/11,NHK,長崎,小,男,24)
買春容疑で岡山の小学校教諭逮捕広島県警
 (10/14,信濃毎日,岡山,小,男,32)
中学の男性講師5年以上無免許運転、接触事故で発覚
 (10/16,中京テレビ,岐阜,中,男,20代)
1カ月以上無断欠勤 千葉県教委、男性教諭を分限免職
 (10/17,千葉日報,千葉,小,男,58)
支援学校教諭わいせつで懲戒免職(10/18,NHK,秋田,特,男,30代)
中学教諭が女子生徒に不適切画像(10/18,NHK,島根,中,男,20代)
男性教諭を懲戒免職 更衣室の女児盗撮で
 (10/19,わかやま新報,和歌山,小,男,27)
女性教諭「業務を考えながら運転していたら…」(10/20,読売,鹿児島,女,38)
県立の特別支援学校 担任の男性講師が中2生徒を虐待か
 (10/21,FNN,熊本,特,男)
川崎市立小教諭を逮捕 女子高校生に淫行疑い
 (10/23,産経,神奈川,小,男,23)
小学校講師採点前テスト用紙紛失(10/23,NHK,兵庫,小)
支援学校教諭、生徒つかみ「ぶん殴るぞ」 処分検討
 (10/23,朝日,大阪,特,男,40代)
中学講師を逮捕 児童買春の疑い(10/23,NHK,長野,中,男,31)
わいせつ、酒気帯び…小学校長ら3人懲戒免職 新潟県教委(10/23,毎日,新潟,わいせつ:小男58,裸画像要求:中男48,飲酒運転:小男47
教諭、背を向け歩き出した生徒の肩を押す…転倒させ腕骨折
 (10/24,読売,兵庫,中,男,25)
小学校教諭の女 酒気帯び運転で現行犯逮捕(10/24,NNN,長崎,小,女,53)
アンケート破棄し体罰隠蔽 埼玉県立高の教諭処分
 (10/24,産経,埼玉,高,男,30)
あいさつの号令「声が小さい」 神戸市立小でクラス全員に長時間の起立強制
 (10/24,毎日,兵庫,小,女)
盗撮目的で女装し女子トイレ侵入した疑い 高校講師を逮捕
 (10/24,サンスポ,愛知,高,男,26)
「用を足している姿が見たかった」 男子トイレをスマホで撮影した教師
 (10/25,静岡テレビ,静岡,中,男,20代)
児童11人盗撮の罪で教諭を起訴(10/25,NHK,奈良,小,男,25)
無免許運転で教諭懲戒処分 北九州市教委(10/26,毎日,福岡,小,女,35)
高3少年にわいせつな行為 埼玉県立高教諭を逮捕
 (10/28,日刊スポーツ,埼玉,高,男,42)
教え子高1女子に校内でキス、下半身触る 教諭を懲戒免職
 (10/28,神奈川新聞,神奈川,高,男,27)
罰金の小学教諭、停職6カ月処分 ポルノ禁止法違反
 (10/30,毎日,岐阜,小,男,49)
生徒の頬たたき唇切るけが 中学教諭を減給処分
 (10/30,北海道テレビ,北海道,中,男,40代)
コーチの体罰報告せず 岐南工高前教頭を処分
 (10/30,岐阜新聞,岐阜,高,男,56)
小学校の男性教諭、男性向け風俗店で勤務 懲戒処分検討
 (10/31,朝日,大阪,小,男,29)
17歳女子生徒に淫行疑い 元私立高教諭逮捕(10/31,日経,三重,高,男,28)