7/10に参院選が実施されますが,投票率はどれくらいになるやら。選挙年齢が18歳まで引き下げられた初の国政選挙ですが,若者の投票率が上がることを願うばかりです。
その投票率ですが,若者より高齢者が大きいという年齢差と同時に,階層による差も見逃せません。6月9日の記事では,世帯年収と投票行動をクロスさせ,富裕層ほど投票の頻度が高いというデータを示しました。
若者の投票率が低いことは知られていますが,その若者の中でみても,階層差が見受けられます。ひとまず,階層の指標を最終学歴でみることにしましょう。『世界価値観調査』(2010~14年)のデータにて,「国政選挙ではいつも投票する」という者の比率をとると,日本の20~30代では,義務教育卒業で21.6%,中等教育卒業で36.5%,高等教育卒業で51.1%となっています。
同じ若者でも,義務教育しか終えていない群では2割ほどであるのに対し,高等教育卒業群では半分を超えると。
20歳以上の成人を「年齢×学歴」で群分けし,「国政選挙ではいつも投票する」者の比率を出すと,下表のようになります。年齢,学歴,投票頻度とも,有効回答を寄せた2354人のデータです。
表の見方はお分かりでしょうか。20~30代の高等教育卒業者数は235人。そのうち,国政選挙でいつも投票する者は120人,後者を前者で除した出現率にすると51.1%ということです。
下段の出現率をみると,高齢層ほど,高学歴層ほど投票意欲が高いことが知られます。ヨコの年齢差のほうが顕著ですが,同じ年齢層の内部において,少なからぬ学歴差(社会階層差)があることにも要注意です。
上表のデータを図解しておきましょう。2354人の正方形を9つの群の比重で区分けし,各群のセルを,国政選挙でいつも投票する者の比率の水準で塗り分けてみました。色が濃いほど,それが高いことを示唆します。
右上の「高齢・高学歴層」では投票意欲が高く,左下の「若年・低学歴層」ではその逆であると。
この2つの層では,政治に対する要望は大きく異なるでしょう。前者は年金等の高齢社会対策を強く求めるが,後者が欲するのは,雇用機会の充実や所得格差の是正などでしょう。しかるに,上記の図をみるに,量の上で大きな差があるのに加え,いつも投票する者の率がこうも違っては,政治の比重は前者に傾くのは明らかです。
支配層による支配層の政治になり,既存の体制が再生産されやすくなります。
右下の群は,不利な生活条件に置かれた人たちでしょうが,それだけに,社会問題への鋭い関心を持っていると思われます。それが政治的関心に昇華されることで社会変革の道が開けるのですが,現状はそうなっていない。むしろ,左下の群の志向が,暴動やテロのような「よからぬ」方向に向く危険すら感じられます。
同じ図を発展途上国について作ると,どうなりますかねえ。社会に不満を抱いている左下の群の投票意欲が高く,日本とは図柄が逆になるかもしれません。
社会への不満(怒り)のエネルギーを逃避ではなく,打開の方向に仕向けて行きたいものです。人格が形成される青年期の政治教育において,それが重要な位置を占めることは言うまでもないことです。
同じ主張を,本日公開のニューズウィーク日本版の記事でもしています。どうぞ,ご覧ください。
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/07/post-5425.php