2019年2月20日水曜日

年収のジェンダー差の国際比較

 タナカキミアキが,チャンネルを移動するそうです。長年かけて育て上げた今のチャンネルを捨てると。相手との対話もせず,そういう極端な手段に出る。自信がないのでしょうね。

 私のことを色々言って下さっていますが,スルーしておきましょう。このブログを,あなたの話題で埋めるのは気持ち悪いのでね。

 本日,ニューズウィーク日本サイトにて,拙稿「年功賃金,男女格差……収入カーブから見える日本社会の歪み」が公開されています。年収の年齢カーブを国ごとに比べています。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/02/post-11728.php

 当該記事の図2を見ていただければ,日本のカーブの特異性がお分かりになるかと思います。年功賃金,高齢期になると急減する,そして凄まじいジェンダー格差…。初めてグラフを見る方は,言葉を失うかと思います。

 多くの国の収入曲線を描き込むとグチャグチャしますので,日本,韓国,アメリカ,スウェーデンの4国のグラフしか紹介していません。OECD「PIAAC 2012」の対象は25か国ですが,他の国はどうか,という関心もあるかと思います。とりわけ,日本のものすごいジェンダー差は,25か国の中でどうなのか,という疑問を持たれるでしょう。

 働き盛りの35~44歳に焦点を当てて,収入のジェンダー差の国際比較をやってみましょう。OECD「PIAAC 2012」では,有業者に年収を尋ね,有業者全体の中での相対階層に割り振っています。以下の表は,日本の男女の分布表です。リモートツールで出しましたので,粗い整数値になっていますがご容赦ください。


 同じアラフォーですが,男女では分布が全然違いますねえ。男性は高収入層ほど多いですが,女性はその逆です。男性は上位10%以内が28%と最多ですが,女性は下位10%未満が50%(半分!)です。

 言わずもがな,男性はバリバリ稼ぐフルタイム就業が大半であるのに対し,女性は家計補助のパート就業が多いためです。配偶者控除(150万円)のラインを意識した働き方をしている女性も多し。

 上表の分布をもとに,年収の相対値の中央値を出してみましょう。累積相対度数が50ジャストの値です。按分比例を使って割り出します。本ブログを長くご覧いただいている方は,もう慣れっこですよね。

男性:
 按分比=(50-45)/(72-45)=0.1852
 中央値=50+(25×0.1852)=77.8

女性:
 按分比=(50-0)/(50-0)=1.0000
 中央値=0+(10×1.0000)=10.0

 男性は77.8,女性は10.0という数値です。意味はお分かりですね。普通のアラフォー男性の稼ぎは上位20%,女性は下位10%,という具合です。この差は酷い…。

 他国では,こんなに大きな開きがあるのでしょうか。私は同じやり方で,25か国のアラフォー男女の年収相対値の中央値を計算しました。結果をグラフにしますが,どういう図法にするか。ここでの主眼はジェンダー差を可視化することですので,男女のドットの開きが分かる図にしましょう。


 男性と女性の差が大きい順に,25か国を配列しました。日本のジェンダー差がダントツではありませんか。

 われわれの感覚では,「子育て中で,稼ぎ過ぎないよう就業調整しているママが多いんだから当たり前だろ」ですが,われわれが見慣れている光景は,全然普遍的ではないのですね。それどころか,国際的な標準からすれば完全にアブノーマルです。異常です。

 右側をみると,東欧の旧共産圏ではジェンダー差が小さいようですが,国民皆労働の伝統があるためでしょうか。フランスも小さいですねえ。子育て中のママといえど,シッターを雇う,家事の手抜きをするなど,バリバリ働く社会です。

 自国の状況を普遍的だと思ってはいけません。国際比較をすると,本当に日本の特異性が浮かび上がることに驚きます。だからこそ,止められないのですが。これも,「ファクトフルネス」(ハンス・ロスリング)の実践の範疇に入ると,勝手に思っています。

2019年2月14日木曜日

タナカキミアキよ

 タナカキミアキさん,昨日公開の動画「お前のチャンネルを潰すぞ!カネ払え!★商人としての解決法」を拝見しました。視聴数アップに貢献したくないので,リンクは貼りません。

 私を意識した内容になっているように感じるのは,気のせいでしょうか。あなたのお言葉をいくつか抜粋させていただきましょう。まずは以下の2つ。大意を損なわない程度に砕いています。

 「誠意を見せるとは,お金を払うことだ
 「何か落ち度があった場合,とにかくお金を払って解決することだ

 なるほど,確かにあなたはカネの支払いは早かったですね。その後の対応は,問題大有りでしたけど。


 「お金は即座に払いました!」などと,誇らしげにツイートしてましたっけ。ツイッターアカウントを削除されてしまいましたので,スクショを掲げておきます。


 気になるのは,カネを払っておしまいで,問題の本質に反省が及んでないのではないか,ということです。私は別の動画について不正の疑いを指摘し,「削除したらどうか」と進言しましたが,あなたは未だにそれに応じていません。反論もありません。

 「学歴なんて関係ないって労働者に言える?★採用の現実」という動画にて,東洋経済オンライン記事の統計表を出典の記載なく使っているのではないですか?? あなたは私に,「引用の作法を遵守せず,不快な思いをさせてしまい,申し訳ありませんでした」と,私にメールしてきませんでしたっけ。本当に,「引用の作法」について反省を巡らせているのでしょうか。

 続いて以下の2つです。

 「私はプロダクションに属しており,バックに弁護士が付いている
 「これ以上関わりたくないと言っているのに,絡み続けるのは脅迫とみなし,事務所で処理しますよと

 タナカさん,これは私に対する牽制でしょうか?なるほど,私とやり取りした動画コメントの末尾に「今後一切関わりたくない方です」と書いていますね(最初のスクショ参照)。

 おあいにく様,タナカさん。私,こういうこと言われるとますます燃えるタイプなんですよ。私だけじゃなく,学者・研究者といわれる人種はみんなそうかな。
https://twitter.com/tera_sawa/status/460285243631489024

 衣袋宏美さんという方が,私の言いたいことを見事に代弁してくださってますので,そのツイートをお借りします。


 私くらいの年齢で,家族がいる大企業社員や公務員なら,あなたの牽制は効くかもしれません。しかし,私はそうじゃないのですわ。失うものなんてないですし,「好戦的」で「暇」です。一昨年は,弁護士を立てない本人訴訟も起こしています。

 「今後,一切関わらないでくれ」と言えば,更なる追及を逃れられるのなら,政治家はさぞ楽になるでしょうねえ。

 申し訳ないですが,あなたのことはしばらくウォッチさせていただきます。ちょうど,大きな原稿が片付いたところでしてね。ツイッターで言いましたが,来週時間をとって,あなたのチャンネルの動画を総点検しようかと思っているところです。

 ヤバいと思う動画があるのなら,削除しておくことですね。さしあたり,私が指摘した動画「学歴なんて関係ないって労働者に言える?★採用の現実」を削除したらどうでしょう。不正でないというなら,反論してください。私はツイッターで削除を勧告しましたが,あなたは私をブロックし,アカウントを削除してしまいました。メールでも勧告しましたが,それもガン無視です。これでは疑われても仕方ないでしょう。

2019年2月10日日曜日

タナカキミアキの盗用行為

 タナカキミアキというユーチューバーの動画にて,私が作成した統計表とグラフ(4点)が無断使用されていました。出典も明記されていませんでした。盗用と同じです。

 9日の朝に情報提供があり,現物を確認しました。「社会の底辺炎上感謝★学歴と犯罪率のタブーにも触れる」(1月19日公開)という動画です。問題の箇所のスクショを貼っておきます。


 この画像の右横で,この人が物知り顔で解説しているのですが,その姿はカットしておいてあげましょう。人様の作ったデータやグラフを,あたかも自分が作ったかのようです。作品の制作者として,不快の念を禁じ得ません。

 この人の連絡先が分からなかったので,動画のコメントに「無断使用ですね,削除されたい」と書き込みました。するとお昼前に削除されました。

 これで済まそうかと思いましたが,動画のアップ期間およそ3週間,視聴回数3.7万回という数字でしたので,これで「手打ち」にするわけにはいかぬと,使用料を請求することを思い立ちました。別の動画コメントに「メールをください」と書き込んだところ,午後3時前に「申し訳ありませんでした」という題のメールが届きました。

 私は使用料として3万円請求し,即座に支払われました。次の要求として,当人の謝罪を公にしてもらおうと,事の次第と舞田への謝意をツイッターでつぶやくよう求めました。今朝のことです。

 メールへのリプがないので,念のため,この人の最新動画のコメントに「メールの要望に対応してください。誠意を示すには,対応が迅速であることです」と書き込みました。

 さて問題はここからです。この人は私の書き込みに逆上し,「お金は既に払ってある」「支払い画面のスクショまで添えたのに理解できないのか」「こんな公の場に,私が要求に応えてないかのような言いがかりをされ,こっちが損害賠償したいくらいだ」と立て続けにリプしてきました。

 まあ,メールボックスの確認もしないで「勇み足」もここまでくると立派だと呆れながら,「追加の要望をしたのです。メールボックスをみてください。返信はメールでしてください」と書き込みました。

 すると,「要求の謝罪ツイートはしました」とメールがきました。


 その後,悔しさを抑えられないのか,タナカは「謝罪の書き込みはしました。2度と関わりたくない方です」などと,私とやり取りした動画コメントの末尾に書き込みました。

 ふん,お互い様です。私とて,あなたのような人と金輪際関わりたくありません。まあしかし,人の作品をパクって金儲けしておいて,何という言い草でしょうか。カネを払って解決,問題の本質には反省が及んでないようですね。「使用料は払いました!」と,誇らしげにツイートしています。

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 この人は,東京中野区のあおば会計税理士事務所に非常勤として勤務する,会計コンサルタントだそうです。言っちゃなんですが,こんな人にコンサル頼む人の気が知れません。西俊明といい,コンサルには,あまりいい人はいないなという印象です。私は「コンサル」と聞くと,もう色眼鏡をかけてしまいます。

 西「剽窃だと? 名誉毀損だ! 弁護士に訴える」
 タナカ「こんな公の場に,人の信用を低下させるようなことを書き込むなんて,こっちが損害賠償請求したいくらいだ」

 いやあ,コンサル脳ってよく似ていますねえ。

 バカらしいので,これくらいにしましょう。今日も動画のアップに精を出しているようですが,こういう問題が起きた後は,活動をしばらく自粛するのが筋じゃないですかねえ,タナカさん。

 時間がないのでチェックしてませんが,他の動画でもこういうことをしているのではないですか? だとしたら,そのうち痛い目に遭いますよ。忠告しておきます。


追記:
 この人の他の動画をちょいと見てみたところ,「学歴なんて関係ないって労働者に言える?★採用の現実」という動画で,「職業別の年収ランキング」の統計表が出てきます。最後のほうです。この表は,東洋経済オンラインの記事のものです。出典が明記されていません。

 私は不正を疑い,この動画を削除するようツイッターで勧告しましたが,私をブロックした上,果てはツイッターアカウントを削除してしまいました。後ろめたいところがあるのでしょうか。
https://twitter.com/tmaita77/status/1095567681573421056

 この人のチャンネルの動画は,時間をとって総点検してみる必要がありそうです。

2019年2月8日金曜日

熱中症,凍死による死者数

 明日から3連休ですが,今年最強の寒波が襲ってくるそうです。北海道ではマイナス22度,危険な寒さです。鼻水が凍ります。当地にお出かけになる方は,防寒対策をしていきましょう。

 ここ横須賀も,明日は3度までしか上がらないとのこと。雪もチラつくようなので,週末のお楽しみの長井水産には行けそうにありません。

 ここ数年,夏は異常な暑さによる熱中症が問題化されていますが,冬場には凍死があります。前者は異常な高温,後者は異常な低温に晒されることで起きるものですが,数としてはどちらが多いのでしょう。

 厚労省『人口動態統計』の詳細死因分類に,「自然の過度の高温への曝露(X30)」,「自然の過度の低温への曝露(X31)」というカテゴリーがあります。前者は熱中症,後者は凍死による死亡とみてよいでしょう。

 この数字を拾うと,2017年中の熱中症死亡者は635人,凍死死亡者は1371人となっています。数としては,凍死のほうがずっと多いのですね。倍以上の差です。こういうマイナーな死因は年による変動が大きいと思われますが,どの年でも,熱中症より凍死が多いのでしょうか。ネットでは,『人口動態統計』の詳細統計は1999年まで遡れますので,この年から2017年までの推移をまとめてみました。


 年による凹凸はありますが,熱中症・凍死による死者は,大まかには増加の傾向にあります。人口の高齢化により,抵抗力の弱い高齢者が増えているためでしょう。

 両者の数を比べると,2007年と2010年を除く年で,凍死のほうが多くなっています。先ほど述べたように,最新の2017年の死者数は,熱中症が635人,凍死が1371人です。

 数の上では凍死が多いのに,問題化されている度合いは熱中症のほうが高し。これは,熱中症は全ての人に関わる病だと認識されているからでしょうね。凍死は,雪山に挑んで遭難するとか,泥酔して路上で寝込むとか,当人の過失による部分が大きい,と思われていると。

 しからば,凍死者には若者が多いように思われますが,どうなのでしょう。2017年の死者数の年齢カーブを描くと,以下のようになります。


 予想に反して,凍死は高齢者で多くなっています。ほぼ9割が60歳以上の高齢者です。無茶をしがちな若者の凍死者はわずかしかいません。

 もう一つ,われわれの予想を裏切る統計的事実があります。凍死が起きる場所は,屋外ではないのです。2016年の『人口動態統計』の内部保管統計に,死因小分類と死亡場所のクロス集計表があります。これをもとに,熱中症と凍死の死亡場所の内訳表を作ってみました。


 どうでしょう。2016年の凍死者1093人のうち,最も多いのは自宅での死者数です。その数414人で,全体の4割近くを占めています。遭難したとか,路上で寝込んだとか,そういうのがマジョリティではないのですね。

 屋根があり,雨露をしのげる屋内でも凍死は起こり得る,いやこちらがメインであると。明日から北海道は危険な寒さになるそうですが,こんな土地で,布団をかぶらないで寝たら危ないでしょう。気温11度で命を落としたケースもあるとのこと。寒さの感覚が鈍くなる高齢者は要注意(老人性低体温症)。
http://news.livedoor.com/article/detail/14319574/

 日本の「家のつくり」も問題なんでしょうね。ある方がツイッターで教えてくれたのですが,徒然草で「家の作りやうは,夏をむねとすべし。冬は,いかなる所にも住まる」と言われているそうです。湿度が高い日本では,古来から,住居は夏向けに作られてきたと。海外はそうではなく,ヨーロッパではレンガ造りの住居が主で断熱性に優れています。ドイツでは,寒い家を貸した家主は裁判で負けるのだそうです。
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190206-00185115-hbolz-soci

 家の造りも,見直さないといけないですね。それと暖房代です。夏場の冷房代もかかりますが,額としては冬の暖房代のほうがかかります。冷房が使えず熱中症で亡くなった高齢者の事件がよく報じられますが,暖房をつけられず極寒の室内で凍死した事件も起きているはず。基本的人権(生存権)を保証する範疇として,空調代は生活保護において支給しないといけません。

 「住」は生活の基盤です。まっとうな家に住みたいというのは,誰もが願うところ。夏場で熱中症が問題化していますが,冬場の凍死についても,もっと注目されてよいでしょう。学校ではどうなのでしょう。極寒の日に,半袖・半パンの体操着で体育の授業を遣るなどという愚は,そろそろ止めにしてほしいものです。

2019年2月3日日曜日

高等教育の私費負担額の国際比較

 日本が教育にカネを使わない社会であるのは知れ渡っていますが,その根拠として出されるのが,教育費の公的支出額の対GDP比です。

 最新の2015年の統計によると,高等教育への公的支出額のGDP比は0.45%で,OECD加盟国では最低となっています。大学進学率が高い教育大国ですが,費用をどうやって賄っているのか。言わずもがな,学生の家庭に払ってもらっているわけです。高等教育への家計支出額(保護者が払った学費等)の対GDP比は0.94%,政府支出額より多いことが知られます。

 OECDの「Education at a Glance 2018」という資料から拾った数字ですが,これだけでは,学生の親がどれほど懐を痛めているかのイメージがわきません。上記の比率をGDPにかけて実額にし,推定学生数で割って,学生1人あたりの額にしてみましょう。

 2015年の日本の名目GDPは4兆3954万億8700万円です(総務省『世界の統計2018』)。先ほどの比率をこれにかけると,政府が支出した高等教育費は197億7400万ドル,家計が支出した高等教育費は412億2600万ドルとなります。

 このやり方で,高等教育費の公費と私費の実額を国ごとに計算すると,以下の表のようになります。OECD加盟の33か国のデータです。


 額が大きいのでピンときませんが,日本の数値を他国と比すとどうでしょう。ドイツやフランスの政府支出額は,日本より多いですね。これらの国の学生数は,日本よりもかなり少ないにもかかわらずです。その分,私費負担額は少なくなっています。日・独・仏の3国について,高等教育の私費負担の比重を計算してみましょうか。

 日本 = 41226/(19774+41226)= 67.6%
 ドイツ = 6314/(34172+6314)= 15.6%
 フランス = 7233/(27734+7233)= 20.7%

 日本は高等教育費の7割近くが私費(家計負担)で賄われていますが,独仏では8割ほどが公費でカバーされています。フィンランドやノルウェーでは,95%以上が公費です。

 上表の公費・私費の実額を学生数で割れば,政府ないしは家計が1人の学生につきいくら払っているかが分かります。各国の親が,子どもを大学にやるのに年間いくら負担しているかの目安になります。日本は100万円ほどでしょうか。北欧諸国では限りなくゼロに近いのでは…。

 高等教育機関の学生数を国別に知ることはできません。乱暴なのを承知で,人口統計と高等教育修了率から便法で割り出してみます。

 2015年の国連人口統計「World Population Prospects」によると,日本の15~24歳人口は1211.9万人です。これに0.7をかけて,高等教育就学年齢人口である18~24歳人口848.3万人を得ます。このうちの何%が学生かですが,2015年の25~54歳の高等教育修了者比率(51.4%)を使いましょう(OECD「Education at a Glance 2018」)。日本の高等教育機関の学生数は,848.3×0.514=436.4万人と見積もられます。

 上表の公費・私費総額を,この推定学生数で割ると,学生1人あたりの公費は4531ドル,私費は9447ドルとなる次第です。1ドルを110円とすると,1人あたりの公費は49.8万円,私費は103.9万円ですかね。大学生等の親の年間負担額はおよそ104万円。まあ,違和感のない数値です。均したらこんなもんでしょう。

 かなり乱暴ですが,同じ手法で学生1人あたりの公費・私費の実額を国別に試算すると,以下のようになります。私費負担割合は,公私の合算に占める私費の割合(%)です。


 日本の公費は50万円,私費は104万円ですが,フィンランドでは公費は204万円,私費は7万円となっています。すごいコントラストですね。フィンランドでは,家計の年間負担額はたった7万円なり。その分,政府が学生1人につき年間204万円支出していると。

 日本の家計負担が大きいのは明らかですが,これを上回る国もあります。オーストラリア,カナダ,チリ,イギリス,アメリカです。評判にもれず,アメリカの私費負担は年間232万円とメチャ高。まあ,この国では各種の奨学金が充実していることを割り引く必要はあるでしょう。国の支出額も126万円と,日本よりはうんと多くなっています。日本が「高負担・低支給」なら,米国は「高負担・高支給」の社会です。

 日本の高等教育の年間私費額は104万円で,高等教育費全体の7割ほどが家計負担で賄われていることが知られます。これが国際標準から隔たっていることは,火を見るより明らかでしょう。

 ここで試算したのは2015年のデータで,高等教育の無償化が施行される今年度以降では,日本の様相はかなり変わるかもしれません。いや,支援の対象は非課税世帯に限定されますので,そんなに変わらないか…。

 大学生等の親が年間いくら払うか。日本は100万円超ですが,33か国の平均値はその半分の55万円というところです。20万円,いや10万円にも達しない国だって存在します。ここでお見せしたのは学生1人あたりの額であり,高等教育の普及度のような要因は除かれています。教育をどう見ているかの違いでしょう。

 「北欧諸国はバカ高い税金をとっているからだ,日本でそれをやれというのか」という声が多数ですが,「消費税20%!」というような,日常生活全般に響くような政策は大きな混乱をきたすでしょうただ,次世代育成税のような課税をしてもいいかなと。介護保険税とロジックは同じです。「誰しもやがては要介護状態になる」と同時に,「子の有無に関係なく,上の世代は誰しも下の世代の世話になる」のです。

 「下の世代」が健やかに育つための費用負担を,国民皆で分担してもいいのではないか。用途としては,ここでみたような歪な高等教育財政の是正,また超薄給といわれる保育士の待遇改善等が考えられます。これで少子化に歯止めがかかるのなら,投じた費用は回収されるように思うのですが,どうでしょうか。少子化が進む最大の要因は,「教育費が高いこと」「夫婦2馬力で稼げなくなること」であるのは,各種の調査から分かり切っています。

 財政のド素人が頭の中で描いていることですので,読み流していただいていいのですが,申したいのは,未来の社会の担い手を育てるための費用は国民皆で負うべきだ,ということです。

2019年1月31日木曜日

2019年1月の教員不祥事報道

 年が明けたと思ったら,1月は今日でおしまいです。夕食を食べてから,あわててツイログを漁って今月の不祥事報道を採取しました。

 今月,私がネット上でキャッチした教員不祥事報道は26件です。年始ということもあり,やや少なめです。古書の値札を貼りかえる,2000円払いたくないばかりに餅と弁当を万引きする…。こんなしょーもない事案が見受けられます。カラ出張や書類偽造といった知能犯もあり。

 いずれも,小金を懐に入れようという目論見ですが,お金に困っているセンセイもいるのでしょうか。教員は安定していますが,何かの落ち度で多額の借金でもこさえた場合,返済のめどが立たないことがハッキリ分かってしまいます。後先の自分の稼ぎが見えてしまいますので。

 「辛いのは,自分の未来が見えてしまうことだ」。こんなフレーズを何かの本で読んだことがありますが,その通りだと思います。「多寡が知れている」という言い回しもありますしね。教員とて,副業をする,自身の実践の成果をネットで発信するなど,未知の可能性の源泉を確保しておきたいものです。

 つい先ほど,面白いブログ記事を見つけました。研究者の道を断念し,民間企業への道に転じた人の体験談です。電車に飛び込もうかという絶望に駆られたそうですが,方向転換が何とか上手くいったとのこと。
https://tjo.hatenablog.com/entry/2019/01/31/190000

 そういえば,季節ですねえ。3月末に今の職場を去らねばならないポスドクや任期付き研究員は,身も心も凍てつく冬を過ごしているでしょう。私は2017年春に大学非常勤講師の職を辞しましたが,他に食い扶持の源泉を確保していたので,何とも思いませんでした。「複数の顔」を持っていて,よかったと思います。今の職場を切られたら「おしまい」の人間になるなかれ。

 今日は久々の雨でした(横須賀は)。明日は,都心で積雪の可能性もあるとのこと。通学・通勤にはお気をつけくださいませ。背景を雪模様に変えます。

<2019年1月の教員不祥事報道>
県立高校の54歳教諭が10代女性のスカート内盗撮
 (1/7,NNNニュース,三重,高,男,54)
聴覚支援学校校長、15歳少女を買春した疑い
 (1/7,朝日,兵庫,特,男,59)
女子中学生にわいせつ行為 容疑の小学校教諭逮捕
 (1/9,福岡,朝日,小,男,34)
中学教諭 体罰で戒告の懲戒処分(1/9,NHK,青森,中,男,57)
児童にわいせつか元臨時講師逮捕(1/9,NHK,兵庫,小,男,38)
卒業生とみだらな行為 横浜市教委が中学校の男性教諭を懲戒処分
 (1/10,テレビ神奈川,神奈川,中,男,20代)
カラ出張で自ら決済…特別支援学校の59歳校長 4年間旅費を不正受給
 (1/11,東海テレビ,三重,特,男,59)
3歳男児殴りけがさせた疑い 中学校教諭を逮捕
 (1/12,MBC,鹿児島,中,男,48)
餅や弁当万引きの教諭、声掛けたら2万円所持(1/13,読売,三重,高,男,50)
児童買春の疑いで中学教諭逮捕 SNS通じて知り合う
 (1/16,朝日,栃木,中,男,43)
「下町ロケット」古書に別の値札貼る 教諭に停職処分
 (1/16,朝日,千葉,高,男,57)
酒気帯び運転で追突し逃走 事故不申告で教諭に罰金命令
 (1/17,河北新報,宮城,高,男,59)
盗んだカードでゲーム機など購入 前橋の小学教諭免職
 (1/18,産経,群馬,小,男,23)
横浜市立小臨時教諭が女子高生買春(1/21,産経,神奈川,小,男,39)
岩手県教委、交通死亡事故起こした教諭を処分
 (1/22,河北新報,岩手,小,男,45)
県立高教員 酒気帯び容疑で検挙(1/22,NHK,長野,高,男,41)
酒気帯び運転の校長 停職処分(1/24,NHK,愛媛,小,男,60)
養護学校の50代教諭、児童の腕折る(1/24,朝日,鹿児島,特,男,50代)
少女にわいせつ 男性講師懲戒免 茨城県教委
 (1/26,茨城新聞,茨城,中,男,27)
知人の女性宅で強盗未遂 容疑で高校教諭逮捕
 (1/27,産経,兵庫,高,男,33)
女子生徒にわいせつ行為…中学校の40代男性教師を懲戒免職 スカート内盗撮の別の教師も(1/28,東海テレビ,三重,わいせつ:中男40代,盗撮:高男55)
元支援学校長 買春容疑で再逮捕(1/28,NHK,兵庫,大阪,特,男,59)
スマホで盗撮、領収書偽造…高校教諭ら懲戒免職
 (1/29,神戸新聞,兵庫,盗撮:高男25,領収書偽造:小男53)
キャンプにボランティアで参加した男性教師 男子児童の下半身触るなどのわいせつ行為(1/30,東海テレビ,愛知,特,男,30代)
暴行、わいせつ、窃盗…小学校の男性教諭を懲戒免職
 (1/30,産経,千葉,小,男,29)
偽造書類で有給休暇 懲戒免職に(1/31,NHK,北海道,高,男,46)

2019年1月27日日曜日

平成のジェネレーショングラム

 4月末に元号が変わります。平成の時代も,残りわずかになってきました。

 平成はこういう時代だったという,記事や番組が目につきます。平成の世相・出来事の年表が提示されますが,時代軸に,人間の成長過程(年齢)の軸も加味すると,それぞれの世代の軌跡が浮かび上がります。

 平成という時代をどういうステージで過ごしたかは,世代によって異なります。平成は激動の時代でしたが,そのインパクトは一律ではないわけです。

 1976年生まれの私の世代は,平成の元年(89年)に13歳でした。つまり,思春期以降をこの時代で過ごしたわけです。平成の初頭に生まれた世代は,今年で30歳になります。今年の春に就職する学生は,1996(平成8)年生まれですね。

 縦軸に平成の時代(1989~2019年),横軸に人間の年齢(青年期まで)をとった座標上にて,各世代の軌跡線を引くと,平成の時代と,その時代下における人間形成の様相を一度に知ることができます。久しぶりの登場ですが,ジェネレーショングラムという図法です。

 図中には,目ぼしい出来事や教育政策を書き入れました。中谷・伊藤編『歴史の中の教育・教育史年表』教育開発研究所(2013年)を,主に参考にしたことを申し添えます。


 日本でいう平成の元年(1989年)は,世界的には,ベルリンの壁が崩壊し,東西ドイツが統一された年として知られています。国内では,埼玉県入間川流域で連続幼女誘拐殺人事件が起き,子を持つ親が震え上がっていました。

 現在,大学入試改革が議論されていますが,現行の大学入試センター試験は1990年に始まったのですね。第2次ベビーブーマーが受験期に達し,大学受験競争が最も激しかった頃です。時はバブル期,入り口は大変でも出口はラクで,学生の就職はウハウハ,超売り手市場でした。

 しかし浮かれた時代も終焉し(バブル崩壊!),社会に暗雲が立ち込めてきます。95年には,阪神・淡路大震災が発生し,オウム真理教による地下鉄サリン事件も起きました。私が大学入学で上京した年です。東京は物騒な所だ,と思った記憶があります。この年は,インターネットが勃興した「ネット元年」としても知られています。

 平成不況はいよいよ深刻化し,97年には大手の山一証券が倒産,翌年に年間自殺者が3万人の大台にのりました。学生の就職率はどん底,若者の自立も困難になりました。学校卒業後も実家暮らしを続ける「パラサイトシングル」が注目された出したのも,ちょうどこの頃です。図から分かるように,私の世代(緑色)は,大学卒業期がこうした暗黒期と重なった「ツイテない」世代,人呼んで「ロスト・ジェネレーション」です。

 前世紀の末は,「キレる子ども」なんていうフレーズも飛び交いましたね。栃木県の中学校で,生徒がナイフで女性教師を刺し殺す事件が起きたのは98年のこと。当時の文部大臣が「ナイフを持つのは止めよう」と呼び掛けていました。図をみると,この時期に思春期だったのは,平成初頭に生まれた世代(青色)です。多感なステージが,社会の暗黒期,ネットの隆盛による激変期だったことも影響しているでしょう。親が離婚した,リストラで父親が自殺したという生徒も,相対的に多いのでは。

 この春に就職する学生さんは,こうした大変な時期に生まれた世代(赤色)です。乳幼児期の時代状況は人格形成に影響するといいますが,モノを欲しない,どこか悟った気風があるのも,このことに由来するのでしょうか。

 小学校に上がった年(2002年)に,ゆとり学習指導要領が施行されます。教育内容が3割削減され,学校週5日制も完全実施されました。この世代は,6~15歳の学齢期がゆとり学習指導要領実施時期ともろにかぶっています。真正の「ゆとり世代」ですね。この春に入社してくる世代ですが,まずもって知っておくべき事実です。

 高校生の時期にスマホが普及し,それを手に取った最初の世代でもあるようです。当然,固定電話の使い方など知る由もありません。電話を忌み嫌い,PCのキーボード入力よりも,スマホのフリック入力が速い世代。職場における世代断層のタネは多そうです。

 しかるに,上の世代のやり方に押し込めるのはナンセンスです。21世紀型のスタイルを教えてくれる存在と見なしたいもの。この世代(96世代)が育った軌跡を見る限り,滅私奉公的を求めるやり方は通用しそうにありません。スマホで外部と簡単につながり,会社の不正はすぐに見破られ,SNSで容赦なく告発されます。怖いですねえ。

 しかし,日本の病んだ社会を変えてくれる改革者ではありませんか。ITやAIも駆使して,成熟社会にふさわしい働き方を打ち立ててくれるでしょう。なおこの世代は,多感な15歳の時に東日本大震災に遭遇し,ボランティア志向といった社会性が強い世代でもあります。それも活かしたいもの。

 平成は激動の時代でしたが,幼少期よりその乱気流を通り抜けてきた世代は,21世紀型の考え方・価値観を持ち合わせています。日本社会に新風を吹き込んでくれるでしょう。この春に就職する世代は,平成に次ぐ新時代の幕開けと共に社会生活をスタートするわけです。この世代の軌跡を描いてみると,面白い時代を創造してくれるのではないかと,期待しちゃいます。

 上の世代がなすべきは,それを押さえつけることではなく,認めることです。