2012年5月28日月曜日

項目別の幸福度国際比較④

各国の幸福度シリーズも4回目になりました。今回みるのは,北欧の2国です。フィンランドとスウェーデン。福祉国家として知られる両国ですが,国民の幸福度プロフィール図は,どういう形を示すでしょうか。

 OECDの幸福度指数(BLI)は,収入,住居などの11項目の幸福度を,24の統計指標でもって測っています。まずは,上記2国の24指標の値がどういうものかを観察しましょう。
http://www.oecdbetterlifeindex.org/

 OECDの原資料では,水準を異にする諸指標を同列に扱うため,各指標の値を0.0~1.0の標準スコアに換算する方法が提案されています。全対象国(36か国)の最大値は1.0,最小値は0.0になるように計算されます。犯罪率のようなネガティブ指標(下表の▼印)は,その反対です。スコアの計算方法の詳細は,5月25日の記事を参照ください。

 下表は,このスコア値の一覧です。わが国の数値も掲げています。


 どの指標のスコアも,値が高いほど(1.0に近いほど)好ましいことを意味します。0.8を超えるスコアは赤色にしましたが,どうでしょう。日本は6つですが,フィンランドは12,スウェーデンは13の数値が赤色です。両国の幸福度の高さをうかがわせる材料が多いことが知られます。

 フィンランドは,教育,コミュニティ,環境,安全,そして生活満足の箇所がオール・レッド。学力は1.0です。全対象国の中で最も高い,ということです。ここでいう学力とは,PISA2009の平均点のことですが,この国の子どもの学力の高さは,広く知られているところです。

 スウェーデンは,環境の指標がいずれも1.0で最高値。このことと関連してか,国民の健康状態もきわめて良好であるようです。

 いやー,すごいですね。この2国は,収入のような経済面の幸福度はさほど高くないのですが,人々の「暮らし」の側面の幸福度がとても高いことがうかがわれます。

 上記のローデータを均せば,様相はもっとクリアーになります。項目ごとのスコア平均を計算しましょう。教育の場合,教育普及度,平均在学年数,そして学力の3スコアの平均をとるわけです。結果は下表のようです。


 フィンランドは5つ,スウェーデンは6つの項目において,スコア平均値が0.8を超えています。目立って低い項目はといえば,0.5を下回る収入ぐらいです。総じて,項目間のバランスがとれた円満な型であると思われます。視覚化すれば以下のごとし。


 日本も,WLバランス,健康,社会参画,および生活満足度のスコアをもっとアップさせて,両国の図形に近いづきたいものですね。

 これまで,先進5か国,途上国2か国,ならびに北欧2か国の幸福度カルテをみてきました。合計9か国。全対象国(36か国)の4分の1です。残りの27国のカルテはどうか,という関心をお持ちの方もおられると思います。この中には,お隣の韓国,大国ロシア,中東のイスラエルなど,興味をそそられる国も含まれています。

 残りの国については,上図のようなカルテのみをご覧にいれます。さぞ,特徴的な型が並ぶことでしょう。それは機会をみてということで。本シリーズは,一旦おしまいにします。

2012年5月27日日曜日

項目別の幸福度国際比較③

今回は,OECDの幸福度指数(BLI)に依拠して,日本,ブラジル,およびメキシコの幸福度を多角的にみてみようと思います。ブラジルとメキシコは発展途上国に括られますが,この2国のプロフィール図は,前回みた先進国のものとは大きく異なることが予想されます。
http://www.oecdbetterlifeindex.org/

 前回と同じ手順でいきましょう。まずは,11の項目を測る24の指標(Index)の値がどういうものかをみてみます。下表には,各指標の値を0.0~1.0までの標準スコアに換算したものが示されています。ポジティヴ面の指標は,値が高いほど1.0に近くなるように計算されます。▼印のネガティヴ指標は,その逆です。それ故,どの指標のスコアも値が高いほど好ましいことを意味します。スコアの算出方法の詳細は,5月25日の記事を参照してください。


 予想されることではありますが,途上国は,多くの指標において日本よりも好ましくない様相を呈しています。0.1に満たないスコアは青色にしていますが,ブラジルは5つ,メキシコは6つの指標のスコアが青色になっています。その分布でいうと,収入,教育,そして安全の面での幸福度が際立って低いことがうかがわれます。

 その一方で,健康良好度や生活満足度が日本よりもかなり高いのは興味深い点です。ラテン系気質というやつでしょうか。物的条件に恵まれずとも,健康・朗らか。単一数値に一元化する前のローデータに当たってみると,こういう側面もみえてきます。

 では,項目ごとのスコア平均を出してみましょう。健康の項目の場合,平均寿命と健康良好度の2指標のスコアを均します。ブラジルでいうと,(0.300+0.700)/2 ≒ 0.500 です。


 データが見やすくなりました。この表でも,途上国の項目別幸福度の特徴をつかむことはできますが,レーダーチャート図にするとインパクトはもっと強烈です。


 何も言いますまい。収入,教育,および安全の項の極端な凹み,その一方で生活満足度は高い。項目間の落差が激しい,とても特徴的な型です。

 次回は,北欧の国の幸福度プロフィール図をみてみようと思います。「さすが福祉国家」とうなりたくなるような型になっていますよ。

2012年5月26日土曜日

項目別の幸福度国際比較②

OECDの幸福度尺度(BLI)では,11の項目をもとに,各国の幸福度を計測しています。前回は,わが国の項目ごとの幸福度が,OECD平均とどう違うかを明らかにしました。今回は,日本を含む先進5か国(日,米,英,独,仏)について,11の極からなる幸福度プロフィール図を描いてみようと思います。

 前回のおさらいですが,BLIでは,11の項目(収入,仕事,住居・・・)の幸福度を,24の統計指標で測っています。たとえば収入を測る指標として,世帯収入と世帯金融資産の2指標が選択されています。私が関心を持つ教育は,教育普及度,平均在学年数,および学力という3指標で測られています。
http://www.oecdbetterlifeindex.org/

 まずは,5か国の24指標の値をみてみましょう。ここで示すのは,各指標の値を0.0~1.0までの標準スコアに換算したものです。世帯収入のような,ポジティヴ面を測る指標は,値が高い(低い)ほど1.0(0.0)に近くなるように計算されます。殺人率のようなネガティブ面の指標(▼印)は,その反対です。よって,いずれの指標のスコアも,値が高いほど好ましいことを示唆します。指標の説明とスコアの計算方法の詳細は,前回の記事を参照ください。


 5か国中の最大値は赤色にしています。日本は,教育面と安全面の幸福度指標が,いずれも5か国中最高です。これは誇ってよいことでしょう。

 教育普及度とは,後期中等教育卒業以上の学歴保有者の比率ですが,この指標のスコアは1.00です。つまり,全対象国(36か国)の中で最も高いことになります。教育普及度が高いことには,進学の社会的強制のような問題が伴う面もありますが,この点は置いておきましょう。

 アメリカは,収入面と住居面の幸福度が高いようです。世界トップの産業,広大な国土を考えると,さもありなんです。収入の2指標のスコアは双方とも1.00で,全対象国の中でも最高であることが知られます。まあ,この国では内部格差が大きいことに注意しなければなりませんが。

 イギリスは,環境面の指標のスコアが高くなっています。独仏の大陸国はワーク・ライフバランス(仕事と生活の調和)が進んでいるようです。うーん,分かる。日本はというと,この面がお寒い状況です。長時間労働率,余暇時間とも,他の4国に比して,スコアが格段に低くなっています。

 上記のローデータを簡易化しましょう。項目ごとのスコア平均を出してみます。収入の場合,世帯収入と世帯金融資産の2指標のスコアを均すことになります。日本でいうと,(0.520+0.696)/2 ≒ 0.608です。


 かなりスッキリしました。ではこのデータをグラフ化してみましょう。下図は,表中の11の項目(極)からなるレーダーチャート図です。各国のどの項が突出していて,どの項が凹んでいるのかに注目してください。5か国のチャートを一つに盛り込みましたので,見にくいかもしれませんが,表の数字の羅列よりはよいでしょう。


 
 総体的にみて,日本の図形の面積は大きくはないようです。WLバランス,社会参画,および生活満足の部分の凹みが効いています。また,図形の形もあまりよくありません。ヨーロッパ3国のような,円満な形になってほしいものです。

 次回は,発展途上国の幸福度プロフィール図を描いてみます。こちらは「!!」というような型になっています。

2012年5月25日金曜日

項目別の幸福度国際比較①

OECDは,各国の国民の幸福度を計測する統計指標を開発しています。名称は,"Better Life Index",和訳すると「より良い暮らし指標」でしょうか。

 このほど公表された最新の資料によると,日本のBLIの順位は21位で,昨年の19位よりも後退したとのことです。「幸福じゃない日本人・・・」,このようなフレーズを掲げた報道記事も見受けられます。
http://sankei.jp.msn.com/life/news/120523/trd12052312150012-n1.htm

 OECDのBLIは,収入やワーク・ライフバランスなど,11の項目を測る複数の統計指標の値を合成したものです。このような一元化処置は,各国を平面の上で序列づけるのには適していますが,現実の複雑性が捨象されてしまう難点もあります。

 日本は,どの項目が突出していて(優れていて),どの項目がそうでない(凹んでいる)のか。こういう情報は,総合処理された一つの値から知ることはできません。

 私が知りたいと思うのは,結果に至るまでの過程の部分です。BLIで設定されている11の項目ごとに,日本の幸福度の水準を明らかにし,それを視覚化した,多角的な幸福度プロフィール図をつくってみようと存じます。

 最初に,BLIを構成する11項目と,各項目を測る統計指標がどういうものかを確認しましょう。OECDのサイトに当たって調べてみました。
http://www.oecdbetterlifeindex.org/


 さすがはOECD。適切な指標選択がなされています。合計24指標。日本の各指標の値はどうなのでしょう。上記サイトの"Download the index data"をクリックすれば,各国の全指標の値が掲載されたエクセルの統計表が出てきます。

 日本の値は,世帯収入が23,458ドル,世帯金融資産が71,717ドル,就業率が70%,年間個人所得が33,900ドル,短期雇用(不安定)就業率が10.23%,長期失業率が1.88%,・・・となっています。

 ご覧のとおり,各指標の値の水準は大きく異なります。そこでOECDの資料では,それぞれの指標値を,0.0~1.0までの標準スコアに換算する方法が提案されています。全対象国(36か国)の分布の中でどのような位置を占めるか,という尺度です。計算式は以下の通り。

(当該国の指標値-36か国中の最小値)/(36か国中の最大値-36か国中の最小値)

 たとえば,上表のPISA平均点でいうと,日本は529点,36か国中の最大値は543点(フィンランド),最小値は401点(ブラジル)です。よって,日本のPISA平均点の標準スコアは,(529-401)/(543-401)=0.901点と算出されます。お分かりかと思いますが,最高のフィンランドのスコアは1.00点,最低のブラジルのそれは0.00点となります。

 このような操作を施すことで,水準を異にする各指標の値を同列に扱うことが可能になります。なお,▼印のついたネガティブ指標の場合は,上記式で出したスコア値を,1.00から差し引く処置をします。こうすることで,ネガティヴ指標であっても,スコアが高いほど(1.0に近いほど),幸福度が高いという性格を持たせることができます。

 以上の方法にて,日本の24指標の値をスコア化すると,下表のようになります。OECD平均の数値も掲げておきます。


 どうでしょう。日本は,安全面の指標は2つとも1.0に限りなく近くなっています。この面での幸福度がきわめて高いことが知られます。反対に,WLバランス面は芳しくありません。長時間労働率のスコアは0.314,余暇や個人ケアの時間は0.300です。健康状態良好の者の比率(健康良好度)は0.00で,36か国中最下位であることが知られます。

 それでは,項目ごとのスコア平均を出し,11の極からなる幸福度プロフィール図を描いてみましょう。収入面の幸福度は,日本の場合,(0.520+0.696)/2 ≒ 0.608となります。他の項目の平均も同じようにして出し,線で結びました。


 日本の幸福度がOECD平均を凌駕するのは,収入,仕事,教育,および安全の項目においてです。他の7項目は,国際的な平均水準を下回ります。とりわけ,WLバランス面の陥没が目立ちます。この部分の是正が急務です。

 それと,生活満足度が低いことにも要注意。収入のような経済面の幸福度が高い一方で,人々の意識における生活満足度は低くなっています。人間の幸福は,経済と直線的に比例するものではなさそうです。36か国のデータを動員した相関分析をすれば,この点がクリアーになるでしょう。それは,後々の課題ということで。

 次回は,目ぼしい国の幸福度プロフィール図を紹介いたします。主要先進国,福祉国家といわれる北欧諸国,および物騒な発展途上国について,上記のようなチャート図を描いてみたら,どういう図形になるでしょう。お楽しみに。

2012年5月24日木曜日

性別・年齢層別の心理負担度

私は,2009~2010年度の2年間,武蔵野大学現代社会学部で卒業研究ゼミを担当しました。名称は,教育学・社会病理学ゼミ。ゼミ生の卒論テーマは多岐にわたっていましたが,大学生の心理ストレスについて知りたい,という関心を持った学生さんがいました。

 具体的に何をしたいのかと問うと,大学生にアンケートをとって,彼らの心理ストレスの程度が,性別,学業成績,サークル加入状況などによってどう違うかを明らかにしたいとのこと。うんうん,興味深い問題設定です。

 それでは,対象者の心理ストレスを測る設問(尺度)をつくってごらんなさい,という課題を出しました。当人がつくってきた設問案は,以下のごとし。

問 あなたはどれほど心理ストレスを持っていますか。当てはまるものに○をつけてください。
1.ある  2.少しある  3.普通  4.あまりない  5.ない

 初心者だから仕方ありませんが,これは単純すぎます。「心理ストレス」というのは,とても漠とした概念です。対象者が具体的にイメージできるような,意識・行動レベルの症状をいくつか提示し,それらに対する反応を合成する,というやり方をとったほうがよいでしょう。

 心理ストレスを含む精神的な問題の程度を測る尺度として,広く用いられているものがあります。K6スコアというものです。米国のKesslerらが考案したものです。厚労省『国民生活基礎調査』の用語解説によると,「うつ病・不安障害などの精神疾患をスクリーニングすることを目的として開発され,一般住民を対象とした調査で心理的ストレスを含む何らかの精神的な問題の程度を表す指標として広く利用されている」とのこと。

 以下の6つの設問に対し,5段階(まったくない,少しだけ,ときどき,たいてい,いつも)で答えてもらいます。

①:神経過敏に感じましたか
②:絶望的だと感じましたか
③:そわそわ,落ち着かなく感じましたか
④:気分が沈み込んで、何が起こっても気が晴れないように感じましたか
⑤:何をするのも骨折りだと感じましたか
⑥:自分は価値のない人間だと感じましたか

 「まったくない」は0点,「少しだけ」は1点,「ときどき」は2点,「たいてい」は3点,「いつも」は4点とします。すると,対象者の心理負担の程度は,0~24点の点数で計測されることになります(4点×6=24点満点)。件の学生さんには,この尺度を使うことを提案した次第です。

 さて今回は,このK6スコアを使って,日本国民の心理負担度を測ってみようと思います。2010年の厚労省『国民生活基礎調査』の標本から推計される,12歳以上の国民のK6スコア分布は,下表のようです。


 0点が全体の4割を占めています。上記の6つの設問に対し,軒並み「まったくない」と回答した人たちです。逆に,全設問に対し「いつも」と答えた重度のメンヘラーは全体の0.3%,実数にして約23万人なり。

 この分布から,12歳以上国民のK6スコアの平均点は,次のようにして算出されます。全数を100人とした,右欄の構成比を使った方が計算が楽です。
{(0点×40.2人)+(1点×9.8人)+・・・(24点×0.3人)}/ 100.0人 = 3.29点

 この値を性別に出すと,男性が3.02点,女性が3.55点です。相対差ですが,女性のほうが心理負担度は大きいことがうかがわれます。

 次に,年齢層別のK6スコア平均点を出してみましょう。私は,5歳刻みの年齢層別の平均点を出し,各々を結んだ曲線を描きました。下図には,男性と女性の2本のカーブが描かれています。点線は,先ほど計算した国民全体の値(3.29点)です。


 スコア平均点は,男女とも,20代であたりで高くなっています。心理負担度は,若年層で相対的に大きいようです。昨今の展望不良状況を考えると,さもありなんという感じです。60代後半以降の上昇は,病気や身体の故障によるものでしょう。

 K6スコアで現代日本の国民の心理負担状況を評価すると,男性よりも女性,年齢では若年層において,その程度が相対的に高いことが判明したことを報告いたします。

 なお,『国民生活基礎調査』から,県別のK6スコア平均を出すことも可能です。私が興味を持つのは,若年層のK6スコア平均が,地域によってどう異なるかです。おそらく,失業率や自殺率のような社会病理指標とも相関していることと思われます。検討してみたい課題です。

2012年5月22日火曜日

病気・けが等の自覚症状

5月19日の記事では,国民の悩み・ストレスの状況をみましたが,こうした「心」の負担は,身体にも影響します。これを心身相関といいます。今回は,病気やけが等の自覚症状を持っている者がどれほどいるか,その内実はどういうものかを観察してみようと思います。
 
 厚労省の『国民生活基礎調査』では,対象者(入院者除く)に対し,病気・けが等の自覚症状の有無を尋ねています。2010年調査の標本の回答結果をもとにすると,病気・けが等の自覚症状を有する国民の数は4,052万人ほどと見積もられます。国民全体のおよそ3割です。

 現在の日本では,国民の2人に1人が悩み・ストレスを持ち,3人に1人が身体の故障を感じているようです。後者の比率を年齢層別に計算すると,下表のようになります。ベースの人口は,『国勢調査』の速報集計結果によるものです。分母,分子とも単位は千人です。


 病気やけが等の自覚症状を有する者(以下,有訴者)の比率は,高齢層ほど高くなっています。ピークは,70代後半の52.8%です。加齢に伴い,身体の故障が増えてくるのは,まあ当然といえば当然です。

 しかるに,若年の有訴者も少なからずいます。20~30代の有訴者の数,約720万人なり。私が属する30代後半では,有訴者率は26.5%,4人に1人です。私は,今の時点ではこの中に含まれませんが,今後どうなることやら。

 さて,有訴者はトータルで4,052万人ほどいるわけですが,彼らが感じている身体症状はどういうものなのでしょう。年齢層による違いも気になります。厚労省の上記調査では,最も気になる症状を1つ,有訴者に選んでもらっています。私は,その分布を年齢層別に明らかにし,結果を面グラフで表現しました。以下に,作品?を展示します。


 子どもでは,鼻づまりやせき・たんが多くを占めます。私も子どもの頃は,よく鼻炎にかかったなあ。「ゼイゼイする」とういうのは喘息でしょう。かゆみや発疹のような皮膚系の症状も幅をきかせています。うーん,これもよく分かる。

 成人期以降になると,肩こりと腰痛の比重が急に大きくなります。いずれも,オフィスでのデスク・ワークと関係が深い症状です。腰痛は,肥満とも関係があります。お腹が出てくると,各種の動作の際,腰に負担がかかりますので。私は今,そのことで悩んでいます。いつ,腰をやることやら。

 高齢期以降では,手足の関節痛といった身体症状が目立ってきます。聞こえにくい,見えにくいなど,感覚関連の症状も出てきます。また,もの忘れなど,認知面の症状も浮上してきます。まあこれらは,加齢(エイジング)に伴う生理的な変化ともいえます。

 これまで,①自殺の原因,②悩み・ストレス,そして③病気・けが等の自覚症状について,上図のような統計図を描きました。いずれも拡大プリントして,部屋の壁に貼っています。学生さんに話したら,「先生,よくそんな部屋で食べたり寝たりできますね」と言われました。返す言葉がありませんでした。

 統計アート(Statistic Art)というジャンルがあるのかどうか知りませんが,つくった図を,東京都の統計グラフコンクールにでも応募してみようかなあ。

2012年5月21日月曜日

22歳の危機

幸か不幸か,現代の日本社会に生まれ落ちた人間は,2度の大きな選抜を経験します。15歳と18歳の時点においてです。説明は要りますまい。15歳は高校入試,18歳は大学入試の時期に相当します。少子化により入試競争が緩和されてきているとはいえ,15と18の春が人生の大きな節目になっていることは今もそうでしょう。

 ところで最近,これらに次ぐ「第3の選抜」とでもいうべき時期が注目されています。いつかというと,22歳です。22歳といえば,大学の卒業年齢です。大学進学率が50%を超えている現在,多くの者がこの時期に学校から社会への移行(Transition from School to Work)を経験します。

 別に22歳でなくてもよいのですが,ご存知の通り,わが国は新卒採用の慣行が非常に強い社会です。新卒時の就職に失敗した場合,翌年以降は「既卒」の枠に放り込まれ,就職活動で大きな不利益を被るといいます。

 このような事態を避けるため,新卒時の就職に失敗した者の中には,翌年も新卒枠でシューカツを行うべく,自発的に留年する者もいます。多額の学費負担をも厭わずです。文科省はといえば,経団連に対し,「卒業後3年までは新卒者として扱ってほしい」という要望を出す始末。わが国の新卒至上主義は,お上をもひれ伏せさせるほど強固なものであることが知られます。

 見方を変えれば,新卒時(22歳時)に「学校から社会への移行(TSW)」が叶うかどうかが決定的に重要である,ということです。現代日本ほど,「22歳」という年齢に対する社会的な関心が強まっている社会はないでしょう。最近,『22歳負け組の恐怖』(中経出版,2012年)という本が出されました。大学研究家の山内太地さんの筆になる本です。「負け組」という言葉が何とも強烈です。
http://www.chukei.co.jp/business/detail.php?id=9784806143239

 ここでいう「負け組」は,数でみてどれほどいるのでしょう。文科省の『学校基本調査(高等教育機関編)』から,大卒者の進路状況を知ることができます。設けられている進路カテゴリーは,①進学,②就職,③臨床研修医,④一時的な仕事,⑤左記以外の者,⑥死亡・不詳,です。

 これらのうち④~⑥が,しっかりとした行き場のない,いわゆる「無業者」です。この3カテゴリーに該当する者の数が,最近どう推移してきたかを調べました。卒業生全体に対する比率も出してみました。


 2011年の3月卒業者でみると,大卒者55万人のうち,無業者は12万人ほど。比率にすると,5人に1人が無業者です。うーん,12万人・・・。この中には,大学院等の受験浪人や最初から就職を希望しなかった者もいるでしょうが,多くは,残念ながら就職が叶わなかった輩ではないかと思われます。12万の7割として,その数,およそ8万4千人なり。

 毎年,これほどまでの数の就職失敗者が出ているとすると,これはただならぬ事態です。彼らの多くは,今後の成り行きに対して悲観的な思いを抱いています。絶望のあまり,自らを殺めてしまう者だっています。近年,進路の悩みや就職失敗という理由によって自殺する大学生が増えていることは,3月14日の記事でみた通りです。

 さて,ようやく本題ですが,22歳の自殺者数はどう推移してきているのでしょうか。警察庁が発表している,進路の悩み・就職失敗による自殺者数の裏には,かなりの量の「暗数」が潜んでいるものと思われます。たとえば,遺書がなく,理由の分析の仕様がなかった自殺者など。

 就職失敗を苦にした自殺であっても,遺書がなかったばかりに,闇(理由不詳のカテゴリー)に葬られたケースは少なくないでしょう。22歳の危機の量(magnitude)を測るには,自殺者の頭数そのものに注目することも必要かと思います。

 最近は,厚労省の『人口動態統計』の公表データがとても充実してきており,1歳刻みの詳細な年齢別死因統計をみることが可能です。私は,本資料のバックナンバーをたどって,2001年から2010年までの22歳の自殺者数を明らかにしました。


 22歳の自殺者数は,2001年では257人でしたが,その後増加し,2007年には300人を超えます。それからアップダウンを繰り返し,最新の2010年データでは302人となっています。自殺者の頭数という点でみても,最近の22歳の危機状況が強まっていることが明らかです。

 なお,この期間中,ベースの22歳人口(a)は減っています。故に,自殺者数を人口で除した自殺率もかなり高まっています。あと一点,全死因に占める自殺の比重がグンと伸びていることにも注目されたし。2010年では,22歳の死亡者(550人)の54.9%が自殺者です。

 最後に,22歳の自殺率の伸びを全人口と対比した図を掲げておきましょう。上表にあるように,この期間中,22歳の自殺率は15.7から22.4までアップしました。1.43倍の伸びです。このような伸びは,人口全体の統計では観察されないことをお知りおきください。


 自殺統計から知られる危機状況の高まりは,全年齢の中で,22歳が最高なのではないでしょうか。22歳の危機,侮るなかれです。

 ところで,近況を観察してみたい年齢がもう一つあります。それは「35歳」です。35を過ぎたら正規雇用は無理,35を過ぎたら結婚できない・・・。「35歳の壁」を強調する言説は数多くあります。この年齢の者が抱く焦燥感は,決して小さなものではないでしょう。奇しくも,今の私は35歳です。自分の状況を客観的に眺める手立てにしたいと思っています。