2019年12月10日火曜日

既婚女性の子ども数は減っていない

 今年(2019年)の出生数が90万人を割り,86万人ほどになる見通しです。昨年は91万8400人でしたから,たった1年間で6万人近く減ることになります。

 これは少子化ですが,高齢化で死ぬ人も増えますので,人口の減少は加速度的に進むことになります。2020年代以降,人口が毎年50万人,2040年代以降は毎年100万人のペースで人口が減ることが見込まれます。1日あたり1370人,2740人の人がいなくなっていく。テロ並みの脅威です。
https://twitter.com/tmaita77/status/1203983801929453569

 少子化の要因は,①結婚する女性が減っていること(未婚化)と,②既婚女性が産む子どもが減っていること(少産化),という2つのフェーズに分けることができます。どちらも進んでいると思われていますが,②については違うのだそうです。

 ソロ社会研究者の荒川和久氏がデータを示されています。荒川氏は「少子化は,お母さんが産む子どもの数が減ったからではない」と題する記事にて,既婚女性の子ども数の分布を,1985年と2015年で対比しています。
https://comemo.nikkei.com/n/n857d9b6f6b61

 『国勢調査』にて,既婚女性が同居している児童数分布の統計表があるのですが,このデータが使われています。ほう,こんな表があるとは知りませんでした。荒川氏は,15~44歳の既婚女性を取り出していますが,私は25~44歳の既婚女性を抽出し,同居している児童数(=子ども数)の分布を,1985年と2015年で対比してみました。


 両年とも,子どもが2人というお母さんが最も多くなっています。1985年では全体の40.4%,2015年では37.4%を占めます。右欄の%の分布をみると,この30年間で大きな変化はないですね。既婚女性の子ども数(結婚した女性が産む子どもの数)はほとんど変わっていないようです。

 変わったのは,お母さんの絶対数です。左欄の人数の合計をみると,1985年では1595万人だったのが,2015年では1001万人と,およそ3分の2に減っています。昔に比して出産年齢の若い女性の絶対数が減り,加えて未婚率も上昇しているのですから,当然のことですね。

 荒川氏は,少子化ではなく「少母化」が問題なんだと主張されています。

 さて,上記の分布から既婚女性の子ども数の中央値(median)を出すと,1985年が2.08人,2015年が2.03人となります。ほとんど変化なしです。この値を都道府県別に計算してみると,驚くなかれ,増えている県もあります。


 既婚女性の子ども数の中央値です。この30年間の変化をみると,減っている県が多いですが,増えている県が19県あります。黄色マークです。子どもの絶対数が減っているのは明らかなんですが,既婚女性に限るとこうなんですねえ。

 以前に比して,既婚者は同世代の中でセレクションされた層になっていて,出産を前提にできる層(経済力のある層)しか結婚しなくなっている,という見方もできるかとは思います。

 既婚女性の出産数は減っていない。少子化の真因は,人口減少・未婚化による「少母化」のようです。これは如何ともし難い。人数的に多い団塊ジュニア世代の女性ももうすぐ50代になり,出産年齢を外れます。若い女性の絶対数もどんどん減りますので,逆立ちしても,一国の出生数を増やすことは不可能です。

 事態をいくぶんか食い止める方法は,「少母化」のもう一つの要因である未婚化を抑えること。これは広く認識されており,だいぶ前から各地で婚活支援の取組が盛んですが,なかなか効果を上げられないでいます。

 実をいうと,若者の間では結婚はオワコンという向きも強まっているのですよね。前にニューズウィーク記事で書きましたが,「旦那は要らんが子どもは欲しい」と考える若い女性,結構いるのです。20代女性のおよそ3割が該当します。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/09/post-12915.php
 
 これらの女性が出産に踏み切れたら,状況はかなり改善されるでしょう。それは夢物語かもしれませんが,事実婚,同性婚,未婚…どういうライフスタイルを選ぼうが,子どもを産み育てられる社会の実現が求められるのは間違いありません。国際的にみて,日本はその実現度合いが最も低い部類でしょう。未婚のシングルマザーの寡婦控除を認めようという議論の際,政府関係者が「未婚者を寡婦に加えると,結婚して出産するという伝統的家族観が揺らいでしまう」などと発言するのですから。

 そういうしょーもない伝統的家族観が,少子化を進行させてしまっていることに気づいたほいがいい。

 今回のデータから,伝統的家族観に沿った暮らし(法律婚)をしている夫婦に限ると,出産数は減ってないことが分かります。法律婚をしているのは,25~44歳女性の62%ですが(2015年,『国勢調査』),残りの38%の人たちも出産・子育てを考えられるような社会にすべし。未婚の母への支援が以前よりも進んでいるのは,それに向けた具体的な動きとして評価できます。

2019年12月6日金曜日

普通に働いて得られる所得

 師走になり,寒くなってきました。今日の横須賀は曇天で,寒風が吹き荒んでいます。

 インフルエンザの流行も懸念されます。私は10月半ばに行った健診で,「40歳を過ぎたらインフルエンザの予防接種したほうがいいですよ」と言われ,3200円払って注射を受けました。高校を卒業して以来なんで,四半世紀ぶりです。これで罹患を免れる保証はないですが,重症化する確率はかなり下がるとのことです。

 はとバスが停車中のハイヤーに乗り上げ,ハイヤーの運転手が死亡する事故が起きました。バスの運転手はインフルエンザで高熱の状態だったとのこと。会社員なんで予防接種は受けていたのでしょうが,過労で体の免疫が低下し,罹患してしまったのでしょうか。

 仕事に殺されることがないようにしたいものです。労基法で規定されている,週間の労働時間は40時間。1日8時間,週5日がスタンダードです。こういう普通の働き方で,普通の暮らしが得られる社会になってほしい。今年の参院選で,ある候補者がこの点を訴えていましたが,全く同意です。

 現実はどうなんでしょう。毎度使っている『就業構造基本調査』では,「年間日数 × 週間就業時間 × 所得のクロス表」が出ています。そうですねえ。年間就業日数が200~249日,週間就業時間が43~45時間の労働者を,フツーの働き方をしている人とみなし,所得の分布をとってみましょうか。最新の2017年調査のデータを呼び出すと,以下のようになります。


 週5日,1日8時間のフツーの働き方をしている労働者(340万人ほど)の所得分布です。中層が膨らんだノーマルカーブになっています。最も多いのは300万円台で,中央値(累積%=50)は400万円台の階級に含まれることが分かります。

 按分比例で割り出すと,中央値(median)は405万円です。うん,まあ普通の暮らしはできるレベルといえそうです。労働の世界が病んでいるといわれる日本ですが,捨てたもんじゃありません。これは税引き前の所得なんで,手取りにしたらもっと少なくはなりますが。

 しかし,違和感を覚える人もいるはずです。週5日,1日8時間のフルタイム労働をしているが,これの半分くらいしかもらってない! こう叫びたくなる人もいるでしょう。ボーナスなんてない非正規雇用,最低賃金の概念がないフリーランスの人たちなどです。

 従業地位別の分布も出せます。普通に働く労働者から,正規雇用者,非正規雇用者,フリーランスの3つのグループを取り出し,年間所得の分布をとってみましょう。フリーランスは,雇人のない業主を指します。%の母数は,正規雇用が269.1万人,非正規雇用が47.5万人,フリーランスが8.3万人ほどです。


 うーん,同じように普通の働き方をしていても,従業地位によって稼ぎの分布がかなり違っています。最頻階級は正社員は300万円台ですが,非正規雇用とフリーランスは200万円台前半です。

 累積%にして中央値が含まれる階級の目星をつけ,按分比例でそれを割り出すと,正規雇用が447万円,非正規雇用が230万円,フリーランスが234万円となります。労働時間が同じであっても,正社員と非正規・フリーの間では,稼ぎに倍近くの差があるのですね。

 最初の表は,人数的に多い正社員の傾向を反映しているようです。とはいえ,非正規やフリーの人も結構おり,今後,ますます増えることが見込まれます。現状では,こういう人たちが普通の働き方をしても,普通の暮らしをするに足る稼ぎを得るのは難しいようです。週5日,1日8時間労働しても,非正規の3割,フリーの4割が所得200万未満のワーキングプアであるのもイタイ。

 性別と年齢を組み入れてみると,普通の労働で普通の暮らしができる層が限られていることが,もっとリアルに分かります。正規雇用者と非正規雇用者については,性別と年齢もかけ合わせることができます。男性正規,男性非正規,女性正規,女性非正規という4つのグループを設定し,所得の分布が年齢に応じてどう変わるかをグラフにすると,以下のようになります。見やすさを考慮し,所得階級は4つに簡略化しました。


 普通の暮らしに足るのは,緑色赤色のゾーンかと思いますが,この2つが幅を利かせているのは正社員だけのようです。非正規雇用では300万円に満たない人が大半で,女性非正規にあっては200万未満のプアが多くなっています。普通にフルタイム労働をしてコレです。

 最初の労働者全体の所得分布をみれば,「普通の労働で普通の暮らしが得られる」社会になっているようにも思えますが,従業地位・性別・年齢で労働者を分解してみると,一部の層に限られていることが分かります。

 4グループの年齢層別の中央値の折れ線を描いて,おしまいにしましょう。


 普通の暮らし,そこそこの暮らしができる所得のラインを引きましたが,これを超えるのは,働き盛りの正社員に限られることを見取ってください。

 くどいようですが,これは普通の働き方をしている労働者に限ったデータです。にもかかわらず,正規か非正規か,男性か女性かでこんなにも差が出るのは明らかにおかしい。異国の人からすれば,差別以外の何物でもない,という感想しか抱かないでしょう。そもそも「セイキ,ヒセイキ」という区分は何なのかと。

 海外ではどうなのか。正規と非正規の格差の国際比較をやってほしい,というリクエストをよく受けますが,諸外国では「正規/非正規」なんていう区分はありません。労働時間に依拠して,フルタイム,パートという区分けがあるだけです。

 上記のグラフから,男性の正社員に富が偏していることも読み取れます。性役割分業,メンバーシップ雇用が長らく続いてきたことの結果です。しかし男女共同参画の時代になり,企業も正社員を抱える体力がなくなり,おまけに人口の高齢化も進行しています。今述べた2つの慣行は,確実に崩れつつあります。

 これから増えるのは,女性の労働者,パートの労働者,組織に属さないフリーの労働者です。しかし今回のデータではっきりと分かるように,これらの人たちは「普通の労働=普通の暮らし」から遠く隔たっています。

 富と先端技術を有する日本において,1日8時間の労働で普通の暮らしが得られる社会を実現できないはずはありますまい。それを妨げているのは,労働生産性の低さと富の偏りです。前者はAIやICT,後者は同一労働同一賃金の徹底で克服できるはず。

 「働き方改革」が昨今のキーワードですが,令和の時代で自ずと進行するのは「働き方の多様化」です。どういう働き方をしようが,普通に働けば普通に暮らせる社会の実現が望まれるのです。

2019年12月1日日曜日

社会階層とアルバイト

 修学旅行の費用が高騰しています。2016年の文科省『子供の学習費調査』によると,高2生徒の保護者が支出した平均額は私立で11.2万円,公立でも8.2万円になります。

 私立で高いのは想像がつきますが,公立でも8万円超えとは驚きです。1994年,私が高校生だった頃は5.4万円でした。バブルの余韻漂う当時に比して,家計は厳しくなっていますが,修学旅行の費用は上がっていると。行先に,海外を選ぶ学校が増えているためでしょう。

 経済的理由で修学旅行に行けない生徒もおり,親や教師にすれば実に忍びない。ちなみに修学旅行というのは,息抜きや思い出作りのための娯楽ではありません。正規カリキュラムの特別活動の範疇に属する,れっきとした授業です。社会科の授業内容を織りまぜる学校もあります。

 経済的理由で修学旅行の機会を奪われるというのは,広くとれば,教育を受ける権利の侵害ともいえるでしょう。

 しかるに高校生ともなれば,10万円弱の費用くらい,アルバイトをして自分で稼いだらどうか,という意見もあります。社会勉強も兼ねてです。生徒や保護者に対し,堂々とそれを言う高校もあるようです。
https://dot.asahi.com/aera/2019112700030.html

 突飛な提案に聞こえますが,諸外国ではよく聞く話ですよね。アメリカでは,家が裕福であっても,バイトをして,遊ぶ金や大学進学の費用を自分で稼いでいる生徒が結構います。親にすれば,わが子に社会経験を積ませるという目論見もあるようです。

 OECDの「PISA 2015」によると,アメリカの15歳生徒のアルバイト実施率は30.4%で,日本の8.1%よりもずっと高くなっています。調査対象の57か国・地域を高い順に並べると以下のごとし。PISA 2015 Results STUDENTS’ WELL-BEINGという資料に載っているデータです。


 首位は北アフリカのチュニジアで,日本でいう高1生徒の47.2%,半分近くがバイトをしています。上位をみると,発展途上国が多くなっています。これは予想通りです。

 先進国でも,バイト率が高い国があります。ニュージーランドは36%,福祉先進国のデンマークは33%,アメリカは30%です。英独仏も,日本よりはだいぶ高くなっています。

 日本の8.1%は下から2番目ですね。最下位は韓国の5.9%。受験競争が激しい国で,経済的に逼迫でもしてない限り,バイトをする生徒は少ないのでしょう。それを禁止する学校も多し。

 「経済的に逼迫」と書きましたが,日本のデータでみると,社会階層が下の生徒ほど,バイトの実施率は高い傾向にあります。上記の「PISA 2015 Results STUDENTS’ WELL-BEING」では,社会階層のスコアに依拠して,15歳生徒を4つのグループに分け,アルバイトの実施率を出しています(462ページ,表Ⅲ-12-7)。日本のデータでいうと,一番下のグループ(以下,下層)は13.7%,一番上のグループ(以下,上層)は3.9%です。

 まあ,分かりやすい結果ですよね。家庭に余裕がない生徒ほど,働かざるを得ない。しかしイギリスのデータだと,下層の生徒が22.1%,上層の生徒が21.4%で,階層差がほとんどありません。イギリスの富裕層は,日本の貧困層よりもバイト率が高いのも興味深し。

 先ほど書いたように,切羽詰まった経済的理由とは性質が違う,社会勉強の類のバイトが多いと思われます。イギリスだけでなく,欧米諸国の多くはこんな感じです。下図は,8か国の下層と上層の生徒のバイト率を図示したグラフです。


 日本は「下層>上層」で,経済的理由でのバイトが多くを占めるとみられます。しかし欧米諸国ではバイト率の階層差は小さく,イギリスとスウェーデンはほぼナシです。ノルウェーでは,貧困層より富裕層の生徒のほうがバイトしています。

 繰り返しますが,バイトの意味合いが違うのでしょう。「社会勉強を兼ね,修学旅行の費用を自分で稼がせてください」。教師のこうした提言に戸惑う生徒や保護者もいるでしょうが,異国ではすんなり受け入れられるはず。

 高校学習指導要領では,専門学科においては,就業体験をもって実習に替えることができるという規定があります。普通科でも就業体験を重視することになってますが,目的の明確な一定期間のバイトをもって,単位認定することはできないか。

 選挙権が18歳に下げられ,成人年齢も20歳から18歳に下げられることが決まっています。高校生活において,社会との接点を増やしてもいいのではないか。むろん,学業に支障が及ぶまでの児童労働は,社会の力で撲滅されねばなりません。しかし貧困対策の文脈を強調するあまり,「働くこと=可哀想」というイメージを定着させてはなりますまい。

2019年11月30日土曜日

2019年11月の教員不祥事報道

 寒くなってきました。11月も今日でおしまいです。

 教員いじめが起きる等,教育界も「お寒い」状況ですが,それは不祥事報道の数にも出ています。今月,私が把握した教員不祥事報道は66件です。いつもより,かなり多くなっています。

 長崎で飲酒運転をした,53歳の小学校女性教諭。家族との諍いでヤケ酒をし,その後ハンドルを握ってしまったそうです。晩産化の影響により,育児と介護のダブルケアを課されるなど,この年代の女性への重圧が大きくなっていますが,それが教員の激務と相いれないことは言うまでもありません。

 国立女性教育会館の調査によると,小・中学校の教員の93%は「管理職になりたくない」と答え,その半数が「家庭での育児・介護等との両立が困難だから」という理由をチョイスしています。女性校長を増やす上では,家事労働を外部化する費用(シッター,ヘルパー代)を補助する仕組みなんてのも,いいかもしれません。欧米諸国では,夫婦とも要職についている家庭は,家事なんてガンガン外注していますからね。

 ツイッターで,定期試験のヒントをつぶやいてしまった,兵庫県の高校教諭。酒なんか飲んでいると,ついやりがちな過ちです。大学教員にも,授業用アカウントをつくり,「試験でこれ出そうかな」なんてツイートしている人を見かけますが,アウトですので止めましょう。

 ツイッターは便利ですが,両刃の剣でもあります。「指一本のRTで名誉毀損」という判例もできました(岩上 VS 橋下訴訟)。スキャンダル等のニュースを拡散する時は,真実性のウラをある程度とってからにしましょう。掲示板や匿名ブログ等の戯言は,拡散NGです。私も編集者氏から,「ツイッターには,くれぐれも気を付けてくださいよ」と繰り返し言われています。

 明日から師走です。今月は,名寄市立大学のしょーもない事案に翻弄されましたが,無事に,平穏に年を終えられることを願います。

<2019年11月の教員不祥事報道>
備品を盗んだ中学教諭免職、山口 プロジェクターなど15点
 (11/1,共同通信,山口,中,男,35)
授業中に教諭が体罰 他の生徒が動画撮影しSNSで公開
 (11/2,上毛新聞,群馬,高,男,40代)
県立校教諭が窃盗 教職員から計12万円
 (11/2,愛媛新聞,愛媛,高,男,30代)
飲酒運転の疑いで福島県の高校教諭を逮捕 懇親会後に物損事故
 (11/3,時事通信,福島,高,男,58)
中学校教諭が5年余 無免許運転(11/5,NHK,北海道,中,男,50代)
同僚の金盗んだ教諭を懲戒免職(11/5,NHK,愛媛,特,男,34)
千葉の小学校教諭を逮捕 高2少年にわいせつ疑い
 (11/7,産経,千葉,小,男,37)
男児を平手でたたいた教諭を減給 やけど負わせた教諭
 (11/7,神奈川新聞,神奈川,体罰:小男51,やけど:中男42)
県立高校教員が女子生徒を盗撮(11/7,NHK,栃木,高,男,40代)
高校の陸上部監督が体罰繰り返す 匿名の通報で発覚
 (11/8,テレ朝,熊本,高,男,37)
「スカート丈短い高校生多い」滋賀へ“盗撮遠征”の高校教諭処分
 (11/8,神戸新聞,兵庫,高,男,27)
盗撮などで教職員2人を懲戒免職(11/8,NHK,岡山,小,男,32)
児童にわいせつ行為か教諭を免職(11/8,NHK,兵庫,小,男,32)
聖カタリナ学園高校で生徒指導の女性教諭が体罰
 (11/9,南海放送,愛媛,高,女,50代)
男性教諭、生徒に水かけられ頬たたく…女性教員2人が生徒をそそのかして
 (11/10,産経,大坂,中,男,35)
高校教諭を逮捕 酒気帯び容疑で(11/11,NHK,岡山,高,男,57)
生徒347人の成績など USBメモリ紛失(11/11,NNN,奈良,中,男)
駅で女性を投げ飛ばす 50歳の小学校教諭の男を逮捕
 (11/11,神奈川新聞,神奈川,小,男,50)
交際する生徒とみだらな行為、教諭免職 生徒が好意…勘違いした別の教諭もみだらな行為(11/12,埼玉新聞,埼玉,特男28,高男34,中男27)
教師が生徒を拳で突き上あご骨折 減給処分
 (11/12,ABCテレビ,徳島,高,男,59)
児童にはさみ近づけ「頭の中どうなってる」
 (11/13,朝日,兵庫,小,女,50代)
東大寺学園の男性教諭 修学旅行先で生徒19人を平手打ちする体罰
 (11/13,読売,奈良,高,男,40代)
小学教諭が散歩中の女性2人はねる…1人死亡
 (11/13,MBS,兵庫,小,男,29)
浜松の小学校教諭 盗撮で懲戒免職 学校に報告せず1ヵ月勤務
 (11/14,静岡放送,静岡,小,男,50)
置き引き容疑で私立高校教諭逮捕(11/14,NHK,神奈川,高,男,58)
福岡県内の中学校教師が覚醒剤を所持か「自分で使うために」
 (11/15,テレ朝,福岡,中,男,55)
★飲酒運転か小学校教諭 免職処分(11/15,NHK,長崎,小,女,53)
陸上部顧問、合宿先で女子部員の体触る…その後行方不明に
 (11/16,読売,兵庫,中,男,40)
小学校教諭を逮捕・起訴 児童にわいせつ行為か
 (11/16,MBS,大阪,小,男,39)
教諭逮捕、女子大生に抱きつきけがさせたか
 (11/18,TBS,佐賀,小,男,46)
16歳の少女にみだらな行為 石巻工業高男性教諭 懲戒免職処分
 (11/19,産経,宮城,高,男,29)
中学講師をみだらな行為で逮捕(11/19,NHK,福島,中,男,29)
小学校教諭 元教え子の中学生にキス 容疑で逮捕
 (11/19,産経,大阪,小,男,37)
市立高の校長が生徒引率の「研修旅行で飲酒」で処分
 (11/19,MBS,京都,高,男,55)
酒気帯び2教員を免職 県教委処分(11/19,岩手新聞,岩手,高男52,小男57)
生徒を床に倒して頬たたき、スマホを床にたたきつける
 (11/20,読売,京都,高,男,40代)
山形県教委、高校教諭を懲戒免職 授業中スカート内盗撮
 (11/20,時事ドットコム,山形,高,男,50代)
飲酒運転などで3教員に懲戒処分(11/20,NHk,千葉,飲酒運転:中男61,セクハラ:高男44,窃盗:高女41
お茶の水女子大付属中で男性教諭が生徒に足蹴り あばら骨折る大けが
 (11/21,毎日,東京,高,男,30代)
女性講師「イベント記念になれば何でも欲しい」…通行証盗み建造物侵入
 (11/21,読売,千葉,中,女,41)
小学生男児2人はねられる 同じ学校の教諭を逮捕
 (11/21,産経,北海道,小,男,40代)
わいせつ行為の30代男性教諭を懲戒免職
 (11/21,産経,静岡,高,男,30代)
鳥取中央育英高校の50代男性教諭 生徒足元に千枚通し投げつけ処分
 (11/21,FNN,鳥取,高,男,50代)
「うそばっか言うな、こら」 小学校教頭が保護者に暴言
 (11/21,朝日,香川,小,男,50代)
無免許運転容疑など教頭書類送検(11/21,NHK,宮崎,小,男,53)
酒気帯び運転疑い中学校教諭逮捕(11/21,NHK,奈良,中,男,58)
小学教諭、同僚や児童に暴言 学校や教委「指導不十分だった」
 (11/22,毎日,山口,小,男,50代)
埼玉の高校教諭、負傷部員に暴言 「骨折れるくらいやれ」
 (11/22,共同通信,埼玉,高,男,50代)
車に落書きした教諭を減給処分(11/24,毎日,新潟,男,40代)
少女と淫らな行為教員2人を免職(11/25,NHK,埼玉,特男29,31)
★期末テストのヒントをTwitterに投稿か 兵庫県立高の教諭を戒告
 (11/26,共同通信,兵庫,高,男,44)
野球部コーチが体罰で謹慎処分(11/26,NHK,熊本,高,男,23)
教諭「感情的になって」、テスト中に立ち歩く児童の腹蹴る
 (11/27,読売,大阪,小,男,33)
「感覚がマヒした」無免許運転5年、中学教諭を懲戒免
 (11/27,読売,北海道,中,男,56)
正当な理由なく包丁1本を所持 宮崎市の小学校女性教諭を現行犯逮捕 
 (11/27,宮崎放送,宮崎,小,女,32)
高校教諭が児童ポルノ禁止法違反(11/27,NHK,静岡,高,男,23)
私立中教諭がタクシー料金払わずに逃げ、運転手殴ったか
 (11/28,MBS,大阪,中,男,34)
女子中学生のスカート内を盗撮 35歳助教諭
 (11/28,徳島新聞,徳島,中,男35)
児童の歯が…小学校で男性教師が男児2人を2度投げ飛ばす
 (11/29,東海テレビ,愛知,小,男,55)
女子トイレで女装 盗撮容疑で逮捕の高校講師 停職6か月の懲戒処分
 (11/29,名古屋テレビ,愛知,高,男,27)
暴力行為の教諭に懲戒処分(11/29,熊本放送,熊本,中,男,40代)
生徒引率中に飲酒 中学校長処分(11/29,NHK,福岡,中,男,50代)
教頭アパート侵入容疑で逮捕(11/29,NHK,山形,小,男,60)
いじめ放置で校長を戒告処分 大阪府教育庁(11/29,産経,小,男,60)
盗撮や飲酒運転で教諭を懲戒免職
 (11/29,NHk,奈良,盗撮:小男25,飲酒運転:中男58)
高校教員がUSBメモリー紛失 無許可で自宅へ
 (11/30,神戸新聞,兵庫,高,男,40代)

2019年11月26日火曜日

名寄市立大学の論文不正

 11月12日に,「名寄市立大学の紀要論文にて,舞田さんがブログで出している県別大学進学率のデータが,出典の記載なく使われている」という情報提供がありました。以下の論文です。

 大坂祐二「教育におけるジェンダー平等:大学進学率の男女差に注目して」『名寄市立大学コミュニティケア教育研究センター年報』第3号,2019年5月。

 匿名のメールでしたが,大学の紀要なんて一般人は読まないので,おそらく研究者でしょう。当該大学内部の関係者の可能性もあります。

 「やれやれ」と現物を確認したところ,県別・性別大学進学率(2018年度)の統計表が,私のブログ記事からまるまる転載されています。舞田が計算したというクレジット表記もなく,ブログから引用したという記載もありません。「資料:学校基本調査」とあるだけです(下記)。


 これは,『学校基本調査』に載っているデータではなく,同資料から私が独自に計算したデータです。他人が作成したデータを,適切な表記なく使うのは「盗用」です(文科省ガイドライン,10ページ)。
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/26/08/1351568.htm

 これは大学の研究論文なんで看過するわけにはいかぬと,大学に「どういうことか」とメールを出しました。数時間後,事務局長より「大学内部で調査している,お待ちください」とリプがあり,2日後の14日に,コミュニティケア教育研究センター長から回答がありました。

 「表のデータの一部は筆者が計算したものであるが,残りは(舞田の)のブログのものである。本文でブログについて触れ,引用文献にもブログ記事を載せていたので,表の下の出典表記を省略してしまった」とのことです。

 なるほど,本文で「舞田がブログで毎年,県別・性別大学進学率を出している。進学率の地域差について,舞田はこういう見解を示している」ということが書かれています。引用文献リストにも,私のブログ記事名とURLが記載されています。しかし,表のデータは舞田が計算したものだということが,どこにも書かれていません。誰がどう見ても,このデータは筆者の大坂祐二が調べたものに映るでしょう。学術論文としては,完全にアウトです。

 さて,「表のデータの一部は筆者が計算したものである」という点が気になったので,それは具体的にどこなのかと質問を返しました。翌週の18日(月曜)になっても回答がないので,督促のメールを出し,翌日の19日に大学事務局に電話し,質問にちゃんと答えるよう要請しました。20日に事務局長から「明日中に回答します」と連絡があり,21日(木曜)にセンター長から再度の回答がありました。要した期間,1週間です。

 それによると,「一部筆者が計算した箇所というのは,表の右端にある『男子/女子』の倍率である。今回の問題について,学識経験者等の意見も聴いて検討していたので,返答が遅れてしまった。本文でブログに触れ,引用文献に記載しているにしても,表のデータは舞田先生が作成されたもので,出典表記を略すのは不適切という結論に至った」ということです。

 筆者が一部計算したというのは,ジェンダー差の倍率を出しただけのことで,私が計算した県別・性別大学進学率をクレジット表記なく使ったこと,それは不適切であることを認めてきました(当然ですが)。

 私は,①筆者の直筆の謝罪文を送ること,②今回の件を大学ホームページで告知すること,の2点を要求しました。後者の告知は,翌日の22日(金曜)になされました。リンクを貼っておきます。
https://www.nayoro.ac.jp/organization/crecc/nenpo/teisei-owabi.html


 大坂祐二の謝罪文も先ほど届きました。自身の非を率直に認め,研究者としての未熟を恥じ,今後は十分に注意するという内容で,反省の念は伝わってきました。

 本文でブログ記事について言及し,引用文献にも載せていた。つい気が抜けて,統計表の下に出典表記を入れるのを怠ってしまった…。まあ,悪意はなかったとみなしておきます。

 厳しい人なら,論文取り下げ等を要求するのかもしれませんが,そこまでは求めないこととしましょう。


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 ただ,この大坂祐二という人は研究者失格のように思います。他人が汗水流して作った統計表を転載し,出典表記を怠るなどは言語道断です。文科省ガイドラインにしたがえば,れっきとした盗用。こういう人が学生の卒論等の指導をしているのかと思うと,暗澹たる気分になります。

 私の質問への回答に時間がかかった理由が,「学識経験者等の意見を聴いていたから」というのも気になります。自分たちでは問題の性質について判断しかねるので,外部の専門家の意見も聴いていた,ということでしょうか。

 その結果,「表のデータは舞田先生が作成されたもので,一部改変したとはいえ,出典表記を略すのは不適切という結論に至った」とのことですが,そんなのは当たり前です。他人の成果物を,適切な表記なく使うのは「盗用」(文科省ガイドライン)。こういうことも知らぬ人が,学生の論文指導をする資格があるのかどうか…。

 大坂祐二の問題の論文(実践報告という位置づけ)をみると,内容が陳腐である感が否めません。公的資料に載っているデータやグラフをそのまま使っているようで,大学進学率の県別データは私のブログの丸パクリ。地域格差についての考察も,私がブログに書いているのを,ほぼなぞっているだけ。大学進学率の地域格差の先行研究にも触れていません。厳しい言い方ですが,学生の卒論レベルです。

 査読ナシなんでこのレベルでも紀要に載り,業績としてカウントされ,一応は研究者としての職務を果たしていると見なされる。それで(高い)給与をもらえ,大学に居続けることができる…。

 まあ最近は,査読なしの紀要は採用や昇進に際して評価されないのですがね。私の母校に,50代半ばの某准教授がいます。毎年せっせと紀要に書いていますが,やはり教授昇進の材料としては全く評価されないようです。

 ちなみに大坂祐二の業績を調べてみると,博士号なし,全国レベルの学会誌論文なし,単著なしです。こんな「三なし」が,公立大学によく採用されたもんだと思います。おまけに教授昇進までしているのですから,開いた口がふさがりません。この大学の採用・昇進の基準はどうなっているのでしょうか。

 優秀であっても,底辺私大で死ぬような思いをしている研究者はわんさといます。そういう人からすれば,こんな人が公立大学でぬくぬくとしているは我慢ならないでしょう。私に告発の情報提供をくれたのは,こういう人なのかもしれません。

 文科省は大学にカネを出すを嫌がっていますが,今回のような案件に出くわすと,その姿勢を支持したくなったりもします。

 *今回の事件の経緯は,ツイッターのスレッドでも記録しています。リアルタイムで,私の感情も出ています。スレッド機能,便利ですよね。
https://twitter.com/tmaita77/status/1194103345469906945

2019年11月25日月曜日

中堅教員の不在

 神戸の小学校で起きた,教員間いじめが世間を震撼させています。子どものいじめを戒める立場にある教員がいじめとは何たることか。関係者は,ショックを隠せないでいます。

 当の教員の資質を問う声が多数ですが,当人の個人的要因に帰してだけでは,解決策は「研修の充実を!」でおしまいです。それも大事なんですが,社会学的な立場からすれば,職場環境の要因というのも抽出してみたい。これは,政策によって変えることができるからです。

 こんな不満を持っていたのですが,昨日の神戸新聞に面白い記事が出ています。「40代,20年で半分以下 公立小教諭のいびつな年齢構成 教員間暴力の背景か」と題するものです。
https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/201911/0012902819.shtml

 今の40代といったら,私の世代ですね。新卒時の教員採用試験が厳しかったからでしょう。教員の年齢構成は,文科省『学校教員統計』で知れます。最新は2016年ですので,およそ20年前の1998年と比べてみましょうか。下図は,公立小学校教員の年齢カーブを描いたグラフです。全数に占めるパーセンテージによります。


 1998年では,中堅の40代に山がありました。しかし2016年では,この層に谷ができています。40代の教員,減ってるんですね。実数でいうと,15万5796人から8万4867人へと減少です。全体に占める割合は39.7%から22.7%に低下。上記記事タイトルにあるように,20年間でおよそ半減です。

 なるほど,今の教員の年齢構成は歪(いびつ)な型になっています。ちなみに都市部に限ると,40代の凹みはもっと大きくなります。千葉県では,公立小の40代比率が15.1%です。ピラミッドを描くと,若年層と年輩層に分化した型ができています。

 私がまず思ったのは,今の若手教員は,年齢が近い先輩教員の指導やサポートを受ける機会がないのだろうなあ,ということです。少子化で学年単学級の学校も多くなってますので,同学年の担任同士の助け合いもできなくなりつつあります。早いうちから,学年主任等の責任あるポジションを任されるプレッシャーも大きい。

 こういうことが要因かは分かりませんが,最近,若年教員の病気離職率が上がっているのです。教員の病気離職率は90年代以降増えているのですが,とりわけ若年層で増加幅は大きくなっています。仔細は,下記ニューズウィーク記事のグラフを見てください。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/04/post-10042.php

 まあ,30代そこそこにして校内の要のポジションにつくことも多くなっているでしょうね。しかし中には,それを逆手にとって,横暴な振る舞いをする輩もいます。神戸の小学校でいじめを主導した教員2名(30代)は,校内で中核的な位置にあり,一定の力を持っていたそうです(上記の神戸新聞記事)。

 なるほど,教員の歪(いびつ)な年齢構成が教員間暴力に影響するとは,こういうことですか。未熟な教員が校内を牛耳るようになると,よからぬことが起きやすい。近年,教員採用試験の競争率が低下しており,新規採用教員の質が落ちているともいわれます。こういう世代が,早いうちから校内でリーダー的な位置につくことになる。うーん,今回の教員いじめのような事件が,これから増えてきそうな予感がしないでもありません。

 教員の歪な年齢構成が,教員間暴力の背景要因になり得る。ユニークな見解ですが,歪な年齢構成の度合いは,地域によって違っています。注意を喚起する意味合いで,47都道府県別の「歪度」を出しておきましょう。

 全教員に占める,40代の中堅教員の割合です。これが高いほど,若手へのサポート条件が整っているといえます。低いのはその逆で,よからぬ若手が学校を牛耳るなんてことも起きやすいことになります。


 ほう,首位は私の郷里の鹿児島じゃないですか。40代の教員が全体の4割です。私の世代が新卒のとき,この県は競争率が相対的に低かったのかなあ。赤字は40代が3割以上で,年齢カーブを描くと,大よそ中堅層が膨らんだノーマルな型になります。

 右下はその逆で,40代の中堅層が凹んでいる県です。都市的な県が多く,東京は19.1%,大阪は16.4%,最低の千葉は15.1%です。この記事で述べた,中堅教員の不在に伴う諸問題のリスクが大きいといえるでしょう。OB教員等の活用も含め,若手へのサポート資源を充実させる必要があります。早い段階から校内の要職につく若手への研修も不可欠となるでしょう。

2019年11月17日日曜日

夫の稼ぎ割合の国際比較

 前回の続きです。前回は,アラフォー世帯の夫の稼ぎ割合を明らかにしました。40代有配偶男性の所得中央値を,40代の核家族世帯のそれで割ることによってです。その結果は76.1%で,夫と妻の稼ぎ割合は「76:24」であることが知られます。

 地域差もありますので,興味ある方は前回の記事をご覧くださいませ。最高は大阪の95.8%,最低は山形の64.4%でした。

 まあしかし,国内の地域比較なんて「どんぐりの背比べ」です。今回は世界に目を向け,国際比較をやってみようと思います。

 ISSPが毎年実施する国際意識調査では,対象者に自分の収入と世帯の収入を訊いています。25~54歳の有配偶男性の回答から両者の中央値を出し,割り算をすれば,世帯全体の収入に占める夫の寄与分が出てきます。
http://www.issp.org/data-download/by-year/

 最新の2017年調査の個票データを使って,各国の値を計算してみました。大国のアメリカを例に,計算の方法を説明します。下表は,同国の25~54歳の有配偶男性(事実婚含む)に,自分の年収と世帯の年収を尋ねた結果です。無回答,無効回答は除きます。


 ISSPの方で階級を任意に設定し,それぞれの中間の階級値が示されています。これによると,本人年収の中央値は5.5万ドル,世帯年収の中央値は10万ドルの階級に含まれることが分かります(黄色マーク)。1ドル=110円とすると,550万円,1000万円ですか。

 階級の幅が分かれば,按分比例で精度の高い中央値を出せるのですが,原資料には階級値しか出てませんので,階級の幅が分かりません。仕方がないので,中央値が属する階級の階級値を,中央値とみなすことにしましょう。

 これによると,本人年収の中央値は5.5万ドル,世帯年収の中央値は10万ドルですので,アメリカの夫の稼ぎ割合は,前者を後者で割って55.0%ということになります。この国では3世代同居はほぼ皆無でしょうから,残りの45%を妻の稼ぎとみなし,夫婦の稼ぎ割合は「55:45」という結果になります。

 同じやり方で日本の結果を出すと,「73:27」となります。前回の国内統計の結果と近似しています。アメリカと日本,だいぶ違いますね。夫婦二馬力,女性が稼げる環境の実現度合いは,社会によって異なるようです。

 日米の結果は以上ですが,他国の試算結果も見ていただきましょう。有配偶男性の本人収入中央値を,世帯収入中央値で割った値です。年収ではなく月収を問うている国もあるので,グラフの注釈では「収入」という言い回しにしています。


 トップはスイスで84.1%です。夫の稼ぎが大半のようですが,女性の社会進出がこんなに進んでなかったか。その次はスリナムで,日本の73.3%は3位となっています。

 下をみると,夫の稼ぎが半分をいかない国もあるようです。南アフリカは45.7%,インドは22.9%です。これらの国は大家族が多いので,残りが妻の稼ぎとは限らないでしょう。インドは,夫の稼ぎ寄与分は5分の1ですか。この国の旅行記を読むと,男性が怠け者で,女性があくせく働くという記述をよく見ますが。

 主要先進国をみると,アメリカは55.0%,イギリスは64.6%,ドイツは62.5%,フランスは50.0%,スウェーデンは58.1%,となっています。3世代同居は嫌われる国々なんで,残りは妻の稼ぎとみていいでしょう。フランスは夫婦半々なんですね。

 わが国には「大黒柱」という言葉がありますが,夫依存の家計が普遍的でも何でもないことが,国際比較から知られます。

 日本は夫の稼ぎ割合が高い代わりに,夫は家事をしません。しかしフランスは夫婦半々の稼ぎなんで,夫の家事をそこそこするのでしょうか。OECDの「Gender data portal 2019 Time use across the world」という資料に,1日あたりの成人男女の家事時間が出ています。男性の家事分担率を出し,上記の稼ぎ割合と絡めてみましょうか。

 下の図は,両方のデータが得られた19か国の布置図です。点線は19か国の平均値を指します。


 インドと南アフリカを除けば,概ね右下がりの傾向ですね。夫の稼ぎ割合が高い国ほど,夫は家事をしない。ある意味,道理です。フランスは夫婦の稼ぎ割合が半々で,夫は家事の4割をする社会です。日本はその対極です。価値判断を加えるなら,前者に軍配が上がるでしょう。

 しかしインドは酷いですね。夫の稼ぎ割合は低く,家事もしない…。右上は,夫が稼いで家事も頑張る社会です。北欧諸国が多し。

 夫婦の稼ぎ分担について,前回は国内の地域差,今回は国際差をみてきました。国際差はかなりラフなやり方で出した試算値ですが,日本の状況を相対視できたでしょうか。日本の「夫大黒柱型」は,21世紀の男女共同参画社会にふさわしくなく,リスクも大きい。夫が倒れたらおしまいで,妻にすれば離婚すると貧困に一直線です。

 日本のドットも,左上の方にシフトすることが望まれます。