2017年10月21日土曜日

学部と修士の正社員就職率

 「頭のいい女子はいらないのか:ある女子国立大院生の就活リアル」と題する記事が目に止まりました。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171020-00010000-binsider-bus_all

 内容は,タイトルから推して知るべし。シューカツに臨んだ院生が,「大学院ねえ。そんなに勉強してどうするの」「あなたの学歴ではもったいない」などと,嫌味を言われるケースです。

 女子の場合,男子にもまして,こういう風当たりは強いでしょう。私が修士課程で一緒だった女子院生も上記のようなことを言われたことがあるそうで,「逆学歴差別だ」と憤っていました。

 大学院まで行くと,かえって就職がなくなる。だいぶ前からこういうことが言われていますが,データでみるとどうなのでしょう。今年春の卒業生の正規職員就職率を,大学学部と修士課程で比べてみましょう。分子と分母は以下です。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/NewList.do?tid=000001011528

 分子=正規職員就職者数+臨床研修医数
 分母=卒業生数-大学院等進学者数-専修学校等入学者数

 分子ですが,医学部の場合,キャリアが臨床研修医からスタートすることが多いですので,この数も含ませます。分母は,就職の意思がない大学院等進学者と専修学校等入学者は除外します。

 このやり方で,学部卒業者と修士課程修了生の正規職員就職率を計算してみました。下図は,結果をグラフにしたものです。ジェンダー差をみるため,性別で分けています。


 男子は,学部から修士にかけて,正社員就職率がちょっと上がります。しかし女子は,学部では85.4%だったのが,修士になると69.5%と大きく陥落します。学部では「男子<女子」だったのが,修士卒では大逆転です。

 ただこれは,専攻の違いによるかもしれません。理系では,学部卒より院卒が有利といいますが,理系の院生の大半は男子です。対して,女子院生の多くは文系の専攻であると。

 そこで,学部・修士の正社員就職率を専攻別に出してみました。下表は,結果の一覧です。上段は学部,下段は修士の専攻別の正社員就職率です。


 女子でも,理学専攻は,学部から修士にかけて正社員就職率がアップします(87.4%→90.6%)。

 予想通りといいますが,下落が大きいのは文系の専攻です。人文科学の女子では,学部の83.3%から修士の45.0%へと,40ポイント近くも落ちています。社会科学も,88.7%から59.1%と大下落です。

 文系の院に行くと悲惨であるのは男子も同じですが,女子はそれが顕著であると。ちなみに冒頭の記事で紹介されているのは,国立大の社会学の女子院生のケースです。

 男女の専攻別の正規職員就職率が,学部から修士にかけてどう変化するか。この点を視覚的に見て取れるグラフを作ってみましょう。横軸に学部卒,縦軸に修士卒の正社員就職率をとった座標上に,男女の10専攻のドットをプロットしてみました。

 青色は男子,オレンジ色は女子です。専攻名は,頭文字で略記しています(人=人文科学,社=社会科学…)。


 斜線は均等線です。このラインより上にあるのは,学部より修士の正社員就職率が高い専攻です。下にあるのは,その反対です。

 修士に行くメリットがあるのは,男子の理系専攻ですね。男子の理学専攻は,学部の78.6%から修士の89.3%へと,10ポイント以上の増。この専攻に限っては,女子も院進学の利点があるようです。

 しかるに女子にあっては,理学を除く全ての専攻で,大学院に進学すると正社員就職チャンスが狭まります。その度合いは,均等線からの垂直距離で見て取れますが,悲惨を極めているのが,人文・社会系です(緑枠)。

 最近は大学院修士課程への進学率が上がっているといいますが,正社員就職率という点でみると,メリットがあるのは男子の理系専攻に限られるようです。

 素朴な人的資本論に従えば,学部卒より院卒のほうが生産性に優れているので重宝されるはずなのですが,わが国の現実はさにあらず。ある方がツイッターでつぶやいていましたが,「欲しいのは学力・能力ではなく,ただの奴隷」なんだなと。
https://twitter.com/WadaJP/status/921264218728361984

 確かにそうかもしれませんねえ。採用面接で,学校で何を学んだかなんて聞かれないし…。先方が知りたいのは,性格にクセがないか,言われたことを従順にやってくれるか,これだけです。知識や技術は入社後に訓練すると。

 中には,学生の有している資質・能力に関心を持つ会社もあるでしょう。「大学院でプラス2年間学んだそうだが,それで得られたものは何か」と。学生の側は,それを分かりやすく伝える術を身に付けないといけません。
https://twitter.com/vc66AaZmbH5oZbE/status/921313998938578944
 
 ただ,同じ専攻にもかかわらず,大学院に進むと一般社会に出るチャンスが明瞭に「男子>女子」となるのは,「学のある女は要らぬ」という,旧態依然としたジェンダー観念が未だに蔓延っていることの証左といえるでしょう。

 国際比較をやったら,日本固有の傾向なのかもしれません。

2017年10月12日木曜日

18歳と19歳の投票率

 今月22日は衆院選の投票日ですが,昨年より選挙権の付与年齢が18歳に引き下げられ,高校生も投票できるようになっています。それに伴い,各地の高校で主権者教育が行われています。

 関心が持たれるのは,若きティーン(18・19歳)の投票率ですが,昨日の神戸新聞の記事によると,18歳から19歳にかけて投票率がガクンと下がる傾向があるそうです。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171011-00000016-kobenext-soci

 「ホンマかいな」と,昨年の参院選の年齢別投票率をグラフにすると,下図のようになります。昨日,ツイッターで発信した図です。


 ほう。18歳では51.2%と半分を超えていたのが,19歳では39.7%に急落し,22歳まで低下を続けます。大学在学中にかけて投票率は下がるのですねえ。

 上記の神戸新聞でも言われていますが,18歳の高校生は,学校で密な主権者教育(啓発)がされますが,教師と学生の距離が大きい大学はさにあらず。要するに,野放しの大学生は投票所に足を運ばないのでしょう。

 あと考えられるのは,住民票を移していない学生が多いということ。これでは,自分が住んでいるアパートに投票案内は届きません。実家に戻って投票するなんて,億劫なことはしたくない。よって,投票率が低くなると。

 それをうかがわせるデータもあります。問題の19歳の投票率が,都道府県でどう違うかです。昨年の参院選でいうと,19歳の投票率の全国値は39.7%ですが(上図),都道府県別にみると,最高の53.8%から26.6%までの開きがあります。倍の格差です。

 各県の19歳の投票率を地図にすると,以下のようになります。


 値が相対的に高いのは,都市部ですね。実家から大学等に通っている学生が多いためでしょう。

 対して西日本のエリアでは,投票率が35%に満たない県(白色)が多くなっています。私の郷里の鹿児島も然り(34.3%)。住民票を移さないまま都会に出ている学生が多いので,投票率が低くなってしまうのでしょう。

 このマップの白色の県は,大学進学の際,住民票をきちんと移すよう,指導を強化する必要があるのではないでしょうか。

 住民票を移してない学生さんも,帰省せずして投票できる「不在者投票制度」なるものもあるようですが,結構手続きが煩瑣です。また,利用できない自治体もあるとのこと。住民票を移すのがベストであるのは,言うまでもありません。
https://www.buzzfeed.com/jp/sumirenakazono/senkyo-hitorigurasi-touhyo?utm_term=.ile5gOdVDM#.xuEPnaZv6J

 私は,事情あって18歳から独立生計でしたので,役所関係の諸手続きはきちんとする習性が身についています。そうでないと,病院すらいけないですからね。

 学生さんもやがては親の扶養を離れ,独立生計者となりますが,各種の行政手続きを「親任せ」ばかりにしていると,後々痛い目をみるでしょう。大学入学に伴い転居したら,まずはその地の役所に足を運び,ちゃんと住民登録をしましょう。

 さて,今月の衆院選は,ティーンに選挙権が与えられた2度目の国政選挙ですが,投票率はどうなるでしょう。今年の19歳は,昨年(18歳時)の経験があるので,最初のグラフのような大幅な陥落傾向は消えているかもしれませんね。

 ここ数日,10月とは思えぬ暑さが続きましたが,明日は気温が一気に下がり,肌寒くなるそうです。今日のマックスが28度に対し,明日は17度(横浜)。10度以上の落差です。ちゃんと,布団を被って寝ましょう。

 今日は立川病院に行き,先日受けた歯根端切除手術の予後観察を受けましたが,「予後不良,再手術の必要あり」という判断。確定ではありませんが,来月にまた入院し,手術を受ける可能性が高くなってしまいました。やれやれです。(-_-;)

2017年10月9日月曜日

首都圏の大学学部別の公務員・教員就職率

 前回は,母校・東京学芸大学と文教大学教育学部について,卒業生の教員就職率を出してみました。資料は,旺文社の『大学の真の実力 2018年度用』です。
https://www.obunsha.co.jp/product/detail/051009

 各大学の学部別に,公務員就職者数と教員就職者数が分かる,スグレモノです。私はこれを使って,公務員就職率と教員就職率の分布を明らかにしたいと考えました。また上位の20位を拾い,「公務員(教員)になるならココ」という情報も出したいと思いました。

 ひとまず首都圏(埼玉・千葉・東京・神奈川)の分だけ,データベースを作りました。それぞれの学部について,就職率の算出に必要なデータを入力した次第です。その数,720学部なり。



 公務員(教員)就職率を出すに当たっては,就職の意思のない大学院等進学者を,卒業生全体から除いた数をベースにしました。東京学芸大学教育学部でいうと,今年春の卒業生は1131人,進学者は213人,教員就職者は317人ですので,教員就職率=317/(1131-213)=34.5% となります。これは,前回の記事で明らかにしたことです。

 公務員(教員)就職者が非公表であるなど,率の計算ができない学部,分母(卒業生から進学者を除いた数)が50人に満たない学部は,分析対象から外します。

 私はこのやり方で,首都圏の664学部の公務員就職率,649学部の教員就職率を明らかにしました。下表は,その分布です。

 なお,本資料に計上されている就職者数は,フルタイムの雇用形態のようですので,臨時職員や時間講師の類は含まれないと思われます。フルタイムの公務員(教員)就職率です。


 公務員や教員になる学生は多くないので,就職率が5%ないしは10%未満という学部がほとんどです。

 私の母校・東京学芸大学教育学部は,公務員就職率が5.1%,教員就職率が34.5%ですので,表の黄色マークの階級に属します。

 しかし,率が高い学部もありますね。公務員就職率のマックスは48.9%,教員就職率のそれは79.5%です(いずれも私立)。教員就職率およそ8割。前回みた文教大学教育学部の74.8%をも凌駕していますが,どこかしら。

 では,首都圏の大学の学部のうち,公務員就職率ないしは教員就職率が高い学部の顔ぶれをみていただきましょう。まずは,前者の上位20位です。表の「母数」は,パーセンテージの分母となった数(=卒業生数-進学者数)です。


 トップは,日本文化大学ですか。公務員就職率48.9%,およそ半分。公務員に強い大学として定評があり,公務員志望者向けの「公共コース」,警察官・消防官向けの「法心理コース」といった課程を設けているようです。
http://www.nihonbunka-u.ac.jp/about/feature/

 その次は,同じ八王子市にある創価大学看護学部。そして3位は,東京大学・法学部です。多くが国家公務員でしょう。

 上位20学部の内訳は,国立が10,私立が9で,公立は首都大学東京の都市環境学部がランクインしています。

 次に,教員就職率です。わが母校・東京学芸大学は,首都圏の上位20位にランクインするか。50%以上,進学者を除く卒業生の半分以上が教員になる学部は赤字にしました。


 トップは,千葉の秀明大学です。文教を上回るって,ここですか。「学校教師学部」と名にふさわしく,強いですねえ。全寮制で,1年次から学校現場で研修をしているそうです。
http://www.shumei-u.ac.jp/faculties/edu/index.html

 3位は鎌倉女子大学の教育学部で,4・5位が千葉大と埼玉大の教育学部となっています。私が出入りしていた武蔵野大学の教育学部は48.1%で9位。割と頑張っているんだな。

 母校・東京学芸大学(34.5%)は,首都圏の649学部の中では17位となっています。横国は19位。前回も書きましたが,ゼロ免課程の学生が結構おり,この部分を除けば率はもっと上がるでしょう(それは千葉大や埼玉大の教育学部も同じですが)。

 14位の聖徳大学児童学部は,亡き恩師・陣内靖彦先生が,学大を定年後に行かれたところです。

 上記の2つの表は,「公務員(教員)になるならココ」という情報にもなるかと思います。これは首都圏(1都3県)のデータです。射程を全国に広げれば,顔ぶれはガラリと変わるでしょう。過激な広告で知られる,関西の雄・近畿大学は強そうだな。

 どなたか時間のある方,関西版をぜひやってみてください。旺文社の『大学の真の実力 2018年度用』は,2300円です。

2017年10月8日日曜日

旺文社『大学の真の実力』

 3連休の2日目ですが,いかがお過ごしでしょうか。秋晴れの空が広がっていますね。近くのソレイユの丘は,家族連れで賑わっていることでしょう。私は変わらず,自宅仕事ですが。

 さて,毎年この時期になると,各社の大学調査の結果をまとめた冊子が公刊されます。翌年度の受験生の参考に供するためです。私は毎年,読売新聞社の『大学の実力』を購入していますが,旺文社も独自に調査をやっているようです。

 受験雑誌『蛍雪時代』で知られる会社ですが,その特別号として,大学調査のデータをまとめた冊子が出るようです。その名は『大学の真の実力』。今年(2017年)の調査には,全国の751大学全てが回答しているとのこと。
https://www.obunsha.co.jp/product/detail/051009

 今年の調査結果の冊子を,アマゾンで取り寄せました。


 全大学が回答しているのは,大学(学部)別の退学率のようなデータは出さない,という編集方針の故でしょう。

 しからば,読者の目を引く「きわどい」データが載ってないかというと,そんなことはありません。入学者の地元出身率・現役率,卒業者のうちの公務員就職者・教員就職者など,読売新聞調査にはないデータも載っています。

 公務員就職者・教員就職者数を,全国の大学の学部別に知れるのはスゴイ。私は,東京学芸大学という教員養成大学の出身ですので,教員就職率という指標に関心を持ちます。

 この資料が集計している教員就職者とは,無期雇用,ないしは雇用期間1年以上で週の労働時間が30~40時間程度の者,ということですので,フルタイムの雇用形態の者とみてよいでしょう。時間講師の類は含まれないと思われます。

 はて,今の学大はどれくらい頑張っているか。300ページに,今年春の学大の卒業生(1131人)の進路が出ています。私の頃からのライバル,埼玉の私大・文教大学教育学部との優劣も,気になりますねえ。以下のシンプルな比較表を作ってみました。


 教員就職者数は,学大が317人,文教大が347人です。卒業者は学大の方が多いのに,教員就職者は文教のほうが多し。就職の意思のない大学院等進学者を除く卒業生(学大の場合,1131-213=918人)に占める,教員就職者の割合は,学大が34.5%,文教が74.8%です。

 ぐうう,倍以上の差です。だいぶ水を開けられていますねえ。まあ学大の場合,ゼロ免課程が結構ありますので,この部分を除いたら教員就職率はもっとアップするでしょうが,それでも文教の74.8%には及ばないだろうなあ。

 上表のデータをグラフにしましょう。進学者を除く卒業生ベースの教員就職率がイメージしやすいようにします。この場合,横幅も使えるモザイク図が一番。横幅を使って,進学者とそれ以外に分かち,後者の中での教員就職者の比重を可視化します。


 違いがよく分かりますね。進学先も就職先も決まってない進路未定者は,教員養成大学の場合は,多くが教員採用試験の浪人組でしょう。

 これは2つの大学の結果ですが,他にも教員養成大学(学部)はたくさんあります。学大の教員就職率は34.5%ですが,全体の中の位置はどうなのかなあ。国立と私立の分布の差も知りたいところ。国立の教員養成大学は,未だに研究志向が強く,社会のニーズに応えていない,という社説を新聞で読んだことがありますが,国立と私立ではどっちに軍配が上がるか。

 目下,首都圏(1都3県)の分のデータベースを作っているところです。おカネのある研究者なら,バイトを雇って全国の大学(学部)の卒業生の進路DBを作るのも容易でしょうが,私はそうはいきません。
https://twitter.com/tmaita77/status/916614544906117120

 しかるに,限られた労力(資源)から有意義なアウトプットを引き出すのも,研究者の腕の見せ所。首都圏のデータをもとに,教員就職率の分布と,「教員ないしは公務員を目指すなら,**大学の**学部!」ということが分かるデータを作ってみようと思います。

2017年10月2日月曜日

47都道府県の真正待機児童数の推定

 すっかり知れ渡っている,待機児童問題。待機児童とは,保育所に入りたくても入れず,待たされている児童のことです。

 この数はどれほどか。毎年,厚労省が数値を発表していますが,この統計が「抜け」だらけで,実態を把握し切れていないことはよく知られています。「どうせダメだろう」と,保育所への入所を申し込まなかった場合はカウントされない,母親が求職活動をしなかった場合はカウントされないなど…。

 こういう状況に危機感を持ったのか,野村総研が,就学前の乳幼児がいる母親を対象にした大規模調査をもとに,真正の待機児童数を推し量ってくれました。希望しつつも入れなかった乳幼児の数で,厚労省の狭い定義から外れるものも含みます。その数,34万6千人とのこと。
https://mainichi.jp/articles/20170930/k00/00m/040/133000c

 厚労省発表によると,2016年4月時点の待機児童数は2万3553人。ずいぶん違いますねえ。公的統計の背後には,13倍もの暗数があると推測されます。

 さて,上記の真正待機児童の推定数34万6千人ですが,この数は,2016年10月時点の保育所等在所者(約369万人)の9.37%に該当します。保育所等非在所者とは,0~5歳人口から,認可保育所および幼保連携・保育型認定こども園の在所者数を引いた数です。

 私はこの比率(9.37%)を適用して,47都道府県の真正待機児童の数を見積もってみました。各県の0~5歳の保育所等非在所児の9.37%が,希望しつつも入れないでいる,真正の待機児童である。こういう仮定です。


 真正の待機児童数(c)は,保育所等非在所児数(=a-b)に0.0937をかけることで得られます。東京の場合,出てきた数は3万9620人。厚労省発表の2016年4月時点の数値(8466人)と隔たってますね。

 厚労省統計(d)によると,9の県で待機児童数がゼロという素晴らしい結果が出ていますが,母親の生の声をもとにすると,残念ながら4ケタの待機児童がいると推測されます。

 北海道,埼玉,千葉,東京,神奈川,静岡,愛知,大阪,兵庫,福岡では,5ケタの暗数があると見込まれます(黄色マーク)。cの赤太字は,真正待機児童数が当局発表の100倍以上に上る県で,北海道,群馬,岐阜,愛知,和歌山,佐賀が該当します。

 以上は,9.37%という比率を一律に適用したラフ推計です。保育所不足が深刻な都市部では,もっと高い比を乗じるのが妥当でしょうから,真正待機児童数はもっと多くなると思われます。

 ただ言えるのは,待機児童数を掬う現行の網の目があまりにも粗い,ということ。上表の右端に示された潜在需要数に,各自治体は目を向けてもらいたいと思います。

2017年9月30日土曜日

2017年9月の教員不祥事報道

 日が落ちるのが早くなりました。夕刻の散歩は,5時くらいに出ています。もう半袖じゃ肌寒いですね。

 月末の教員不祥事報道の整理です。今月,私がネット上で把握した報道は44件です。赤字は珍事案。児童に無理やり給食を食べさせ,5人を嘔吐させたという,小学校のベテラン女性教師の事案が注目されます。

 私の頃は,「お前が全部食わないと,みんなが昼休みに入れんぞ」とよく脅されました。保護者からも「偏食は厳しく直してほしい」という要望多数で,涙目になってゲロを吐く児童も結構いました(それがもとで,いじめに発展すると)。

 しかしですねえ。これは「肉体的苦痛を与える」という,体罰の構成要件に該当するともとれますね。あまり,やり過ぎないようにしてほしいものです。

 明日から10月,秋も深くなってきます。季節の変わり目,体調を崩されませぬよう。背景を秋晴れ模様に変えます。

<2017年9月の教員不祥事報道>
女子更衣室にカメラ設置し盗撮企て、小学校教諭免職
  (9/4,日刊スポーツ,兵庫,小,男,31)
盗撮の41歳小学教諭を懲戒免職(9/4,日刊スポーツ,東京,小,男,41)
「競馬や借金の返済に…」 90万円着服の元小学校校長に退職金返納命令
 (9/4,名古屋テレビ,愛知,小,男,60)
野球部物品購入費約30万円私的流用した中学校教諭を懲戒免職
 (9/6,産経,宮城,流用:中男56,セクハラ:小男49)
京都で生徒引率中に万引疑い…女性養護教諭を逮捕 
 (9/6,サンスポ,鳥取,中,女,35)
無免許運転:支援学校教諭の処分検討(9/6,毎日,』岐阜,特,男,30代)
生徒の指骨折させた教諭を懲戒戒告(9/7,MBC,鹿児島,男,40代)
はがき偽造:学校講師、容疑で逮捕(9/8,毎日,愛媛,特,男,29)
体罰と暴言で男性教諭処分 県教委、停職1カ月
 (9/8,神奈川新聞,神奈川,高,男,51)
北海道立高の教諭逮捕 速度測定器蹴った容疑
 (9/8,産経,北海道,高,男,52)
市立小学校男性臨時教師が盗撮 懲免処分(9/8,朝日放送,大阪,小,男,23)
校内に大量の女性下着 「バザー販売用」男性教諭が保管
 (9/9,西日本新聞,福岡,高,男,40代)
<高知・公立中教諭>女子生徒3人に「校内外でキス」
 (9/9,毎日,高知,中,男,40代)
男児に強制わいせつ容疑、保育教諭の36歳男を逮捕 
 (9/11,日刊スポーツ,静岡,男,36)
男性高校教諭が女子生徒30人に「正座」強要(9/14,福島民友,福島,高,男)
大阪・市立高:無免許教科で授業 非常勤講師
 (9/14,毎日,大阪,高,男,20代)
わいせつ動画投稿疑いの高校教諭を懲戒免職 
 (9/15,サンスポ,滋賀,高,男,31)
スマホ盗撮の高校教師「懲戒免職」 女子高生などのスカート内
 (9/16,福島民友,福島,高,男,30)
<わいせつ>SNSに下半身動画投稿 高校教諭を懲戒免職
 (9/16,毎日,滋賀,高,男,31)
支援学校の講師逮捕=女子中生にわいせつ容疑
 (9/19,時事通信,兵庫,特,男,23)
小学校教諭、男児にわいせつ未遂容疑 トイレ個室に押し込む
 (9/20,京都新聞,茨城,小,男,37)
酒気帯び運転の中学教諭2人懲戒免職 岩手県教委
 (9/21,産経,中男57,中女52)
<児童情報紛失>女性教諭、飲酒後転倒で意識失い
 (9/21,毎日,大阪,小,女,50代)
不正に口座開設 容疑で小学校教諭を逮捕(9/21,産経,茨城,小,男,43)
女子高生の裸撮影した疑い 高校非常勤講師の男逮捕 
 (9/21,日刊スポーツ,千葉,高,男,23)
下着窃盗容疑で小学校教諭逮捕、写真や動画を撮影 
 (9/21,日刊スポーツ,奈良,小,男,48)
教え子の小6女児にわいせつ容疑 56歳教員を逮捕 
 (9/21,日刊スポーツ,茨城,小,男,56)
中学講師が衣類“万引き” 試着室に何度も
 (9/22,テレビ朝日,広島,中,女,47)
中学校長、住宅侵入疑い 宮崎、呼気からアルコール
 (9/22,産経,宮崎,中,男,59)
小学校教諭が酒飲みノーヘルでミニバイク運転
 (9/23,神戸新聞,兵庫,小,男,24)
懲戒処分:万引き中学教諭、減給 横浜市教委
 (9/23,毎日,神奈川,中,女,34)
傷害容疑で高校教諭逮捕 茨城・取手の飲食店
 (9/25,産経,東京,高,男,27)
中学校侵入し女子生徒の上履き盗んだ疑いで支援学校講師を免職
 (9/25,サンスポ,秋田,特,男,22)
給食の完食指導で5人が嘔吐 小学校教諭を厳重注意
 (9/26,朝日,岐阜,女,50代)
覚醒剤所持で逮捕された中学教諭を懲戒免職(9/26,産経,埼玉,中,男,27)
中学校の20代男性教師 勤務先の女子生徒にみだらな行為で書類送検
 (9/27,東海テレビ,愛知,中,男,20代)
部活中に女子生徒の脚触る 中学教諭、保護者に謝罪
 (9/28,神戸新聞,兵庫,中,男,40代)
男子生徒に“平手打ち”で骨折など全治3カ月
 (9/28,TNC,福岡,高,男,30代)
水泳授業中、腕立てする女子高生にまたがる 教諭を処分
 (9/29,朝日,大阪,高,男,57)
飲酒運転の車に同乗の教諭を懲戒停職処分(9/29,日テレ,山梨,小,男,20代)
少女との淫らな行為撮影の男性講師ら懲戒免職
 (9/29,産経,大阪,高,男,34)
着服:元中学校長、PTA費など 室蘭、登別で計238万円
 (9/29,毎日,北海道,中,男,60)
女子生徒に「結婚して下さい」 高校の助手を停職処分
 (9/30,朝日,神奈川,高,男,20代)
酔って車にビールかけたうえ破損 男性教諭と講師を懲戒処分
 (9/30,産経,大阪,中,男,29・31)

2017年9月27日水曜日

親世代の所得と大学授業料の変化

 昨日の文科省の発表によると,2015年度の私大の平均年間授業料は86万8447円で,過去最高を記録したそうです。
http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shinkou/07021403/1396452.htm

 記録更新は毎年のことですので,驚くに値しませんが,「高い」の一言に尽きます。その一方で,親世代の所得は減ってきていますので,家計の負担は大きくなっています。今や親を頼れず,学費稼ぎの無理なバイトをしたり,奨学金という借金をフルに借り込む学生も少なくありません。

 私は,このトレンドをグラフで表してみたいと考えました。大学の授業料推移はググれば一発で出てきますが,親世代の所得の推移を重ねたものは見つかりません。あるにしても,全世帯の所得変化とリンクさせたものだけ。

 全世帯の所得減少は,高齢化(乏しい年金暮らし世帯の増加)によりますので,これは使わないほうがよいでしょう。願はくは,大学生の親世代の世帯に限定したいもの。

 厚労省の『国民生活基礎調査』に,世帯の年間所得分布を,世帯主の年齢層別に集計したデータがあります。年齢区分は10歳刻みになっていますが,世帯主が40~50代の世帯を,大学生の子がいる世帯と見立てることにしましょう。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/20-21.html

 最新の2016年版の資料には,前年(2015年)のデータが掲載されています。


 両裾が低く,真ん中辺りに山があるノーマルカーブではないようです。最も多いのは,所得1200~1500万円の階級となっています。バリバリの働き盛りで,共働きの世帯も多いでしょうから,こうなるでしょうか。

 この幅広い分布を,一つの代表値に集約しましょう。極端な値に引きずられる平均値ではなく,中央値(Median)にします。上記の3216世帯を所得が高い順に並べた時,ちょうど真ん中にくる世帯の所得がナンボかです。

 右端の累積相対度数から,中央値は所得600~650万円の階級に含まれることが分かります。按分比例の考えを使って,中央値(50.0)がこの階級の中のどこにあるかを推し量ります。以下の2ステップです。

 ① (50.0-46.2)/(51.2-46.2)= 0.753
 ② 600万円+(50万円 × 0.753)≒ 637.7万円

 世帯主が40~50代の世帯の年間所得の中央値は,637.7万円と出ました。まあ,違和感はない数値ですね。これは2015年のデータですが,上記の厚労省資料は1996年版までをネットで見れますので,1995年以降の20年間の推移を辿ることができます。

 95年といえば,私が大学に入った年。当時と今では状況は変わっているでしょう。親世代の所得の変化と,国公私立大学の年間授業料のそれを併行させると,以下の表のようになります。国立の授業料は,2004年の独法化以降は,国が示した標準額です。公私立大学の額は平均値です。ソースは,冒頭のリンク先の文科省統計です。。

 黄色マークは観察期間中の最高値,青色マークは最低値です。


 予想通り,親世代の所得は減ってきています。ピークは96年の752.4万円でしたが,2015年現在では637.7万円までダウンしています。115万円の減です。

 その一方で,大学の授業料は年々上昇しています。1995年と2015年の両端を比べると,国立は8.8万円,公立は9.7万円,私立は14.0万円の増です。私立の負担増が顕著ですが,私大の比重が高いわが国にあっては,家計へのダメージは大きい。

 上表に示されたヤバいトレンドをグラフにしましょうと凹凸が結構ありますので,3年間隔の移動平均法で推移を滑らかにします。当該年と前後の年の数値(3年次)の平均をとるわけです。たとえば2000年の数値は,99年,00年,01年の平均をとります。

 このやり方で,親世代の世帯の所得中央値と私大授業料のカーブを描くと,下図のようになります。


 きれいな「X」になりました。家計の余裕のなくなりと,それを顧みない(冷酷な)学費増加。大学生のブラックバイトや奨学金返済地獄は,こういう条件に由来することを忘れてなりますまい。

 この問題がようやく認識されてきたようで,大学の授業料無償化について議論されています。高等教育は個人的な投資の意味合いが強いので,無償化はどうかという意見もあるようですが,教育を受けることは,奢侈品を買うのとは違います。法律で規定された「権利」です。それが家庭の経済条件に左右されることがあってはならぬこと。

 教育基本法第4条は「教育の機会均等」について定めていますが,それは初等・中等教育のみならず,高等教育にも適用されます。

 ただ大学の場合,一律に無償化を図るのは,富裕層を優遇することにもなるでしょう。金持ちだらけの大学もありますので。

 高等教育のどの部分を無償にするかが議論の焦点のようですが,まずは全体の学費の水準を下げ,貧困層に特化した授業料の減免枠を拡大するのがいいと,私は考えています。特定の部分に資源を注入する(狭く深く)ではなく,まずは「浅く広く」から始めたほうがいいと思います。

 私は,大学院以降はずっと授業料免除をもらいましたが,これにはホント救われました。私のような貧乏人が大学院博士課程まで学べたのは,この制度のおかげです。しかるに今は,独法化の影響もあり,枠がうんと減っているとのこと。それでもって,特定の部分を無償化したり,奨学金の貸付を増やすというのは,教育の機会均等に寄与しないでしょう。

 要は,「下」に手厚くする,ということです。2010年度に高校無償化政策が実施され,公立高校の学費が軒並み無償になりましたが,2014年度に制度改正されました。授業料の無償は止め,所得が一定水準以下の困窮家庭の生徒に就学支援金を支給する方式に変わりました。所得制限を設ける代わりに,浮いた財源で「下」に対する支援を手厚くする。これと類似のことを,大学段階でもやったらいいのではないか。

 日本の大学の授業料はバカ高なのですが,問題なのは,このことによって,大学教育を受けるチャンスが家庭の経済力によって制約されることです。こういう事態は,法が定める「教育の機会均等」の理念にも反すること。先決なのは,この病理を治癒することです。特定部分の無償化よりも,全体の学費の水準を下げる,貧困層を対象とした学費の減免枠を増やす。私がこう主張する所以です。

 高等教育の無償化という,インパクト100%の政策が目的化してしまってはいけない。何のためにそれを行うのか。原点を見失わないようにしたいものです。