4月ということで,ブログの背景の色を明るい桜色にしたのに,話題は暗いものばかりが続きます。今回は,若者の自殺の原因についてです。
自殺者の頭数を数えることも重要ですが,どういう原因で自らを殺める人間が多いのかも気になるところです。この点については,警察庁の統計があります。もっとも,当人の遺書や遺族への聞き取りから,警察官が類推したものですので,信憑性に疑問がないわけでもありませんが,ひとまず,この統計を使いましょう。
警察庁の『自殺の概要資料』には,原因別の自殺者数が掲載されています。2006年版までは原因の分類が大雑把なものでしたが,翌年の2007年版より,細かな小分類の表が掲げられています。私は,2007年から2010年にかけて,20~30代の若者の自殺者数が,原因別にみてどう変わったかを調べました。上記の資料は,下記サイトにて,PDFファイルでアップされています。
http://www.npa.go.jp/toukei/index.htm
まずは,大雑把な大分類の表からみてみましょう。これによると,原因が判明した自殺者数は,この期間中,797人増えています。増加率にすると,10.6%増です。原因別にみると,増加した人数では,健康問題という原因が最も多くなっています。しかし,増加率という点からすると,家庭問題や勤務問題の値の高さが目立ちます。その内実は,家族成員間の不和,失業といったものでしょう。
では,おおよその見当をつけたところで,小分類の表に移ります。小分類だと,原因は52にもなりますので,全部はお見せきでません。そこで,増分が上位10の原因のみを掲げることにします。
この3年間で,100人以上増えたのは,鬱病,就職失敗,および生活苦といった原因による自殺です。増加率という点でみると,就職失敗の増加率は109%で,3年間で倍増しています。3月8日の記事で,就職失敗による大学生の自殺について書きましたが,若者全体についても,この原因が痛手になっているようです。
ほか,親子(夫婦)関係の不和など,家庭に関する原因の増も,上位に挙がっていることが気になります。若者の生活構造の主要部である家庭と職場の双方に,歪みが起きていることがうかがわれます。これでは,逃げ場がないのも同然で,当人にすればたまったものではないでしょう。
ひとまず,最近の若者の自殺増に最も寄与している要因は,就職失敗であることが判明しました。私は今,森健さんの『勤めないという生き方』という本を読んでいます。大学生のみなさん,時間を見つけてこの本を一読し,視野の拡張を図ってください。いろいろな生き方があるものですよ。