近年,子どもを産むなら女の子がよいという,女児選好が強まっていると聞きます。昔であれば,家の継承の関係から男児を望む親が多かったのでしょうが,今日では,そういう柵(しがらみ)はかなり薄れています。
となれば,男子に比べて大人しくて育てやすい女子を希望する,ということでしょうか。確かに,悪さをしでかす頻度というものは,女子のほうがかなり低いです。警察庁の『平成21年の犯罪』によると,2009年中に検挙・補導された10代の非行少年は106,818人でしたが,そのうち女子は21,973人となっています。比率にすると20.6%,男子4:女子1という具合です。
非行少年の女子比の推移をたどってみると,上図のようになります。私が生まれた1976年では18.5%でしたが,その後波を打って上昇し,1998年に25.1%とピークを迎えます。最近は下降の傾向で,2009年の20.6%に至っています。
ところで,これは全体の数字ですが,細かく年齢別にみるとどうでしょうか。女子の比重が高くなる,「危険な年齢」というのはあるのでしょうか。例の社会地図形式によって,1976年以降の年齢別の女子比を俯瞰してみます。
1990年代後半以降の,14~16歳あたりの部分に,25%以上の高率ゾーンが広がっています。絶対水準としては高いとはいえませんが,最近になって,こうした「思春期の危機」が強まっていることが注目されます。
私は,大学の講義の受講生に,小学校から高校までの学校体験を書いてもらっています。女子のものをみると,中2頃から皆でつるんで先生に反発し出した,髪を染め始めた,グループで繁華街に繰り出すようになった,というような記述によく出会います。このような個々の事例記述が,マクロデータによって裏付けされた,という印象です。
ところで,女子の行動を語る際のキーワードは,何といっても「グループ」でしょう。属したグループが,互いに切磋琢磨し,悪いことは悪いと言い合えるような「よい」グループならば結構なのですが,悪さを競い合うような「悪い」グループというのは考えものです。
「朱に交われば赤くなる」といいますが,人間は,集団の力にはなかなか抗えないものです。とくに,女子少年にあっては,そういう傾向が強いものと思われます。機会をみつけて,非行の形態(単独or集団…)に男女差があるかどうかについても調べてみようと思います。