灯台もと暗しではありませんが,現代社会の状況診断を行う際に,まずもって観測すべき指標を今まで落としていました。それは失業率です。統計上の用語では完全失業率といい,完全失業者数を労働力人口で除して算出されます。
労働力人口とは,働く意志のある人間です。学生や専業主婦など,働く意志がない人間は,非労働力として括られます。要するに,完全失業率とは,働きたいにもかかわらず,職に就けていない人間がどれほどいるかを示す指標です。
2010年の『国勢調査』の結果がまだ発表されていませんので,2005年の同調査の数字でいうと,労働力人口6,540万人のうち,完全失業者は389万人です。よって,後者を前者で除して,失業率は約6.0%となります。この値を半世紀ほどさかのぼると,最も低かったのは1960年の0.7%です。高度経済成長期にあった当時の様相を物語っています。しかし,その後じわりじわりと上昇し,1995年には4.3%,2005年には6.0%に至っています。
では,失業率を年齢層別に出し,例の社会地図で俯瞰してみましょう。2009年の率は,総務省『労働力調査』の統計から計算しました。
よく誤解されるのですが,失業率が高いのは若年層です。中高年のお父さん世代ではありません。失業率が高いゾーンは,1990年代以降の若年層の部分にあり,だんだんと下のほうに垂れてきています。2005年では,30代前半までが失業率6%以上でしたが,最近は少し持ち直しています。しかし,50代前半で率の上昇がみられることが気がかりです。
しかし,若者の失業率の高さは目を引きます。まあ,こうした若者の不遇は多くの国に共通のことなのでしょうが,わが国の特徴というのは,若者が大人しいことでしょう。フランスやエジプトでは若者が暴れています。昔のわが国でも,学生運動に象徴されるように,若者が暴れていた頃がありました。しかし,現在ではそういうことはなくなっています。
1月14日の記事で指摘したように,自らに責を帰す「内向性」が強まっているためでしょうか。前にも言いましたが,お上(政府)がこのような好?条件の上にあぐらをかき,惰眠をむさぼるようなことがあってはならないと思います。