私は,携帯電話(以下,ケータイ)を持っていません。昨年まで持っていたのですが,あまりに利用頻度が低く,基本料金を払うのがバカバカしくなり,解約してしまいました。
しかし,ケータイを持っていないことを人に告げると,とても驚かれます。学生さんからは,「先生,よく生きてられますね」と言われ,ドコモショップの店員さんからは,「お客さん,本当にいいんですか。何でしたら,通話だけのお安いサービスもありますよ」と,解約を思いとどまるよう,説得されました。
いやはや,天然記念物扱いです。しかるに,統計をみると,自分がいかに珍しい存在であるかが分かります。総務省の『平成21年・通信利用動向調査』によると,過去1年の間にケータイを使ったことがあるという,ケータイの利用率は,6歳以上の対象者の74.8%だそうです。2001年の41.9%に比して,かなり伸びています。
ちなみに年齢別にみると,2009年の30代の利用率は95%です。つまり,私は,残りの5%に含まれていることになります。年齢別の利用率の動向を,例の社会地図形式で俯瞰すると,下図のようになります。
http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/statistics/statistics05a.html
当然ですが,若年層ほど利用率が高くなっています。最近の20~40代では,利用率が90%を超えています。もっとも,高齢層でも利用率はかなり高くなっており,2009年の70代では40.2%となっています。2001年の10.6%に比して,著しい伸びです。
ところで,この便利なツールの使用を強制的に制限されている人たちがいます。学校に通う児童生徒です。2009年1月,文科省は「学校における携帯電話の利用等について」という通知を出し,小・中学校では校内への持ち込みを原則禁止,高等学校では校内での利用を制限,という方針を明らかにしました。生徒が授業中にメールをするなど,教育活動に支障が出ている状況を憂いてのことでしょう。私としては,よいことだと思います。
しかし,一歩校外に出てみると,電車やバスの中で通話するなど,マナー違反をしている大人の姿を,彼らは至る所で目にすることになります。これでは,上記の政策の効果は半減するというものでしょう。子どものケータイ利用の適正化を実現するには,学校内における強制策と同時に,校外において,大人が範を示す,ということも重要だと思います。学校とは,所詮,子どもの生活の場の一部でしかないのですから。