2014年7月29日火曜日

学校中退者の意識の国際比較

 日本は同調圧力が強く,標準のレールを逸脱した人間はあまり歓迎されない社会です。そのことは,学校中退者の意識にも表れています。この層の自尊心や将来展望を他国と比較してみると,わが国の特異性が見出されます。今回はそれをみてみましょう。

 内閣府の『2013年度・我が国と諸外国の若者の意識に関する調査』では,対象の13~29歳の青少年に対し,現在の在学状況を尋ねています。選択肢は,①在学中,②在学しているが休学中,③学校は卒業した(既卒),④学校は中退した,の4つです。
http://www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/thinking/h25/pdf_index.html

 このうちの④が学校中退者ですが,これに該当する者の数は,日本が31人,韓国が27人,アメリカが29人,イギリスが46人,ドイツが23人,フランスが104人,スウェーデンが45人です。対象者全体に占める比率は,日韓が2.6%,米が2.8%,英が4.3%,独が2.2%,仏が10.3%,瑞が4.2%となります。

 数的には少ないですが,これら7国の学校中退者(13~29歳)のすがたと意識を観察してみましょう。まずは,就業状態からです。意識をみる前に,それを規定するとみられる客観的な条件から押さえることとします。


 どうでしょう。他国ではフルタイム就業や懸命に職探しをしている失業者が多くなっていますが,日本では,パート(バイト)と専業主婦・夫以外の無業者が幅を利かせています。フルタイム就業という形で社会に受け入れられない,あるいはそうする意欲をなくしている中退者の現実が看取されます。

 このことは,彼らの将来展望からもうかがえます。「自分の将来について明るい希望を持っているか」という問いへの回答分布をとると,下図のようになります。


 わが国の学校中退者の将来展望閉塞が明らかです。およそ半数の者が「希望がある」と明言している韓米とは大違いです。今が辛いというだけならまだしも,将来の展望が開けていないことは,大きな苦痛の源泉となるでしょう。

 まあ,中退者でなくとも,日本の若者の展望は閉塞しているのは確かです。それでは,中退者と一般群の数値を並べることで,前者の特徴をあぶり出してみましょう。後者の一般群とは,中退者以外の者のことです。

 私は,7か国の中退者と一般群について,以下の4つの数値を明らかにしました。

ア)自分に満足している ・・・ 「そう思わない」の比率
イ)自分には長所がある ・・・ 「そう思わない」の比率
ウ)仲のよい友達が一人もいないの比率
エ)自分の将来に明るい希望を持っているか ・・・ 「希望がない」の比率

 ア,イ,エは,4段階のうち最も強い否定の回答です。では,結果のグラフをみていただきましょう。縦軸の目盛幅は0~60%にしています。10%ごとの目盛選を入れていますので,それに依拠して大よその水準を読みとってください。


 自分への不満,自尊心欠如,ぼっち,将来展望閉塞とも,一般群よりも中退者で高くなっていますが,日本ではその差が際立っています。青色のバーの高さが何とも痛々しい。一般群の水準を考慮に入れても,わが国の学校中退者の苦境が知られます。

 中退というのは,字のごとく卒業を待たずして中途で学校を辞めることですが,それはれっきとしたオルタナティヴであり,否定的に捉えられるべきものではないと私は考えます。むしろ,そういう「逃げ」の道を開けておかないほうが大きな罪です。

 制度としてはこの道は開かれていますが,現実問題として,そこに踏み出すのは躊躇せざるを得ない。今回のデータから,早い段階で学校とおさらばした若者の苦境と同時に,そうしたくともそれができず,学校という檻の中で窒息している生徒・学生の悲劇をも読み取るべきであると思います。

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