2014年7月1日火曜日

教員の社会人経験の国際比較

 教員は視野が狭い,社会を知らないといわれます。22歳まで「学校」で学び,その後もずっと「学校」で勤務するわけですから,確かにそうかもしれません。

 このことにかんがみ,最近は教員採用試験でも社会人の特別枠を設けたり,研修でも民間企業等に教員を派遣する社会体験研修が取り入れられています。

 それはさておき,わが国の教員のうち,社会人経験もある者はどれほどいるのか,国際的にみて多いのか少ないのか。今回は,こういう基本的な部分を明らかにしてみようと思います。

 OECDの国際教員調査(TALIS 2013)では,対象の中学校教員に対し,教育職以外の職で働いた経験を尋ねています。働いた年数を記入してもらう形式です。同調査のローデータには,記載されたままの数値が入力されていますが,私はこれを6つの階級にまとめ,その分布をとってみました。校長は除く,一般教員のデータであることを申し添えます。
http://www.nier.go.jp/kenkyukikaku/talis/


 上に掲げたのは主要4国の分布図ですが,日本は8割が「0年」,すなわち経験ゼロです。フランスも日本と同じ型ですが,日本よりは社会人経験ゼロ教員は少なくなっています。

 英仏をみると,この2国の場合,社会人経験のある教員のほうがマジョリティーです。アメリカでは,全教員の6割が,5年以上教育職以外の職で働いたことがあると答えています。あらゆる機会が開かれている国といいますが,こういう職業移動(mobility)の機会も開かれているのですね。

 ローデータに記録されている社会人経験年数(上図のカテゴリーにまとめる前)をもとに,その平均年数を計算すると,日本が0.8年,アメリカが8.0年,イギリスが5.3年,フランスが1.6年となります。日本が最も短いですね。

 では,対象となった32か国の布置図を描いてみましょう。多くの国を対象とする場合,簡便な代表値を使うことになりますが,まずは,先ほど出した社会人経験の平均年数を用います。教育職以外の職に勤務した年数の平均値です。

 それとあと一つ,教育職以外の職に就いた年数が教員の勤務年数よりも長い,「社会派教員」の割合も出してみます。日本でいうと,両方の年数を答えた教員2,861人のうち,後者よりも前者が長い教員は92人です。よって,社会派教員の出現率は3.2%となります。アメリカは32.4%!。3人に1人が,「社会人経験年数>教員経験年数」の社会派教員です。

 この2つの指標を使って,各国の教員の社会人経験の量を測定し,結果をグラフで表してみます。横軸に社会人経験の平均年数,縦軸に「社会人経験>教員経験」の教員の比率をとった座標上に,32の社会をプロットしてみました。点線は平均値です。


 2指標は相関していますので右上がりの分布になっていますが,日本はお隣の韓国と並んで右下にあります。教員の社会人経験量が少ない社会です。対極には,先ほどのアメリカのほか,カナダとメキシコがありますね。アジア型と北中米型のコントラストが際立っています。

 わが国では,社会人経験のある教員が少ないことがデータで分かりました。そういう教員を増やすべきかについて,教職課程の学生さんとたまに議論するのですが,「増やすべきだ」という意見が大半です。中高の頃,偏差値とは別の「実社会」を知っているセンセイに出会えたなら…。こういう声も聞きます。それに,社会に出た後で,やっぱ教員になりたいと思う人だっているじゃんと。

 なるほどと頷かされますが,大阪の民間出身校長が立て続けに不祥事を起こすなど,負の判断材料も多し。正負の材料とも,掘ればいくらでも出てくるでしょうが,政策とはやはり客観的なエビデンスで決められるべきもの。

 純粋培養教員と社会人教員とで,職務のパフォーマンスがどう異なるか。こういう問題を実証的に明らかにすることが求められるでしょう。TALISでは,対象教員の自己有能感や職務満足度についても尋ねています。これらの回答が両群でどう違うか。

 さしあたり,この問題を追及することは可能です。今後の課題とし,興味ある結果が出ましたら,この場で報告しようと思います。

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