今年度の『学校基本調査』の確報が公表されました。私は先週,文科省に電話して公表は今日の17時と聞いていたので,10分前からスタンバイして待っていました。
さて毎年恒例の,47都道府県別の大学進学率の計算とまいりましょう。もう毎年のことですので,計算方法の子細な説明は端折ってもいいですよね。分子と分母は以下です。
分子=2024年春の当該県の高校出身の大学入学者数
分母=2021年春の中学校,中等教育学校前期課程,義務教育学校後期課程卒業者数
高卒者ベースではなく,18歳人口ベースの進学率です。分子には上の世代(浪人経由者)も含まれますが,今年春の現役世代からも,浪人を経由して大学に行く人が同数出ると仮定し,両者が相殺するとみなします。
今年春の大学進学率は59.1%,6割に迫る勢いです。これを都道府県別に計算すると,まあ大きな格差があります。男子と女子の違いも出すべきですね。結果は以下のごとし。黄色マークは最高値,青色マークは最低値。赤字は上位5位,青字は下位5位を意味します。
最高は東京の77.9%,最低は宮崎の40.9%です。倍近くの開きがあります。大よそ都市部で高く,地方で低い。各県の大学進学率は,学力テストで分かるような子どもの学力(潜在能力)よりも,県民所得や親世代の大卒率といった,社会経済指標と強く相関しています。
各県に大学がどれほどあるかという,大学収容力とも強い相関あり。自宅から通えるか否かが左右されますしね。毎度言いますが,各県の生徒の進路志向が違うだけの,単なる「差」ではなく,不当な「格差」の性格を持っているといえましょう。
男子と女子の違いは,各県のジェンダーの表われともいえます。右端の性差は,男子が女子より何ポイント高いかです。山梨では男子が83.3%,女子が67.7%と大きな差です。
結果を淡々と述べるにとどめますが,大学進学率の地域格差が生じる背景要因について,私が思う所は,ニューズウィーク記事にて手短に書いています。どうぞ,ご参照あれ。
ただ,これで終わりでは芸がありませんので,一点だけ書いておきましょう。ズバリ,沖縄県についてです。上表をみると,今年春の本県の大学進学率は54.6%。全国値には達していませんが,九州県の中では最も高くなっています。中枢県の福岡よりも高し。全県中の順位は17位。
10年前は下から3番目くらいだったのに,すごい躍進です。沖縄県は,子どもの貧困対策に熱心と聞きますが,そういう取組の所産でしょうか。
新たに導入されている給付型奨学金も,積極的に活用しているようです。日本学生支援機構の公表資料によると,沖縄県内の大学生のうち,給付型奨学金をもらっているのは3824人(2023年度)。同年5月時点の,本県の大学学部学生数は1万7937人。利用率は21.3%,県内の大学生の5人に1人が,この制度を使っていることになります。
沖縄のこの数値は,全県で最も高くなっています。(下表)。
奨学金というと,まだまだ貸与型が主流で,給付型はわずかしか枠がないのではと思っていましたが,最近ではそうでもないようです。2023年度の統計によると,大学生の貸与奨学金利用者は33万2499人,給付型奨学金利用者は25万2069人。だいぶ接近しているではないですか。沖縄は順に4053人,3824人で,ほぼ半々です。
国も,だいぶ本腰を入れてきているようです。「為せば成る」。沖縄の大学進学率のトレンドを見ていて,こんな風に思います。