2015年2月6日金曜日

失業と自殺の時系列的相関

 あらゆる財やサービスが貨幣を通じて交換される現在にあっては,働いて収入を得ることが,生存の条件になります。よって,仕事に就けず収入が得られないことは,「生」を脅かす死活問題となります。

 このことはとりわけ男性に顕著であり,男性の失業率と自殺率の時系列曲線は,まことによく近似しています。失業率とは,働く意欲のある労働力人口のうち,職に就けないでいる完全失業者が何%いるかです。自殺率は,人口10万人あたりの自殺者数です。前者は『労働力調査』,後者は『人口動態統計』に計算済みの数値が掲載されています。

 1953~2013年という60年間の長期スパンを据えて,男性の失業率と自殺率の推移線を描くと,下図のようになります。先日のツイッターでは60年代以降の図を発信しましたが,ここでは50年代の初頭まで射程を延ばしてみます。


 むうう・・・両者は気持ち悪いくらい同調しています。相関係数は+0.891にもなります。これはもう,失業率が分かれば自殺率をほぼ正確に言い当てることのできるレベルです。働こうにも職がなく,収入が得られない人間が増えるほど,自殺率が高まる。上図の共変関係は,因果関係的な部分を多く含んでいるとみてよいでしょう。

 また,デュルケムもいうように,社会的な存在たる人間にあっては集団が「生」の目的となり得るのですが,男性にとっては職業集団が重要な位置を占めています。これを喪失(はく奪)される状態に置かれることは,大きな苦痛の源泉になると思われます。失業と自殺の強い関連は,単に経済的な次元でのみ考えられるべきではないでしょう。

 以上は男性の経験データですが,女性のほうはどうでしょう。女性にあっても,上図のような強い相関関係が観察されるでしょうか。両性について,失業率と自殺率の相関模様が分かる散布図をつくり,左右に並べてみました。横軸に失業率,縦軸に自殺率をとった座標上に,それぞれの年のドットをプロットした図です。最新の2013年のドットは,赤色で強調しました。


 男性にあっては失業と自殺は強い正の相関関係にありますが,女性はさにあらず。むしろ,右下がりの負の相関すらみられます。失業率と自殺率の相関係数は,男性は先ほど示したように+0.891ですが,女性は-0.223とマイナスの値です。

 まあ,われわれが薄々感じていたことが可視化されただけのことかもしれませんが,男女の役割期待差によるのでしょうね。寅さんではないですが,「男はつらいよ」・・・。

 上記は,20世紀後半から21世紀初頭の経験データですが,未来の研究者が21世紀全般の時系列統計を観察したら,女性にあっても,失業と自殺の間に強い相関が認められるようになるでしょうか。皮肉なことですが,今世紀の男女共同参画施策の効果,男女の役割差の縮小レベルは,こういう面で表現されることになるかもしれません。

 ところで,「生」の目的となる重要な集団は,職業集団だけではありません。それよりももっとプライマリーな「濃い」集団があります。言わずもがな,それは家族です。今の日本では,職業集団の持つ意味合いは男女で異なるでしょうが,家族にあっては,大きな性差はないような気がします。男女双方にとて,情緒安定機能を提供してくれる第1次集団でしすね,

 しかるに,データでみるとどうでしょう。離婚率と自殺率の相関を観察することで,その手がかりが得られそうです。それは,来週公開される日経デュアルの拙稿にて行うこととしましょう。どうぞ,お楽しみに。

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