2011年8月11日木曜日

大学生の留年(続)

 1月8日の記事において,大学生のうち,最低修業年限を超過して在学している者(留年生)の比率を計算しました。2010年の数字でいうと4%,つまり25人に1人ほどでした。今回は,この留年生出現率が過去からどう推移してきたか,またどの学部で率が高いかを明らかにしようと思います。

 最近,卒業年度中に就職が決まらなかった学生が,翌年度も「新卒枠」で就職活動を行うべく,自発的に留年をするケースが増えていると聞きます。そのような学生には,留年期間中の学費を軽減するなどを措置をとる大学も出てきています。

 それだけ,現在の学生さんの就職が厳しい,ということでしょう。仮説的には,大学生に占める留年生の比率は上昇してきているように思いますが,実情はどうなのでしょう。

 8月4日に,2011年度の文科省『学校基本調査』の速報結果が公表されました。それによると,同年5月1日時点の大学生2,893,434人のうち,最低修業年限を超過して在学している,いわゆる留年生は111,768人だそうです。よって,この年の大学生の留年生出現率は38.6‰となります。大学生のおおよそ26人に1人が留年生です。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/NewList.do?tid=000001011528

 私は,1975年(昭和50年)から,この指標の値がどう推移してきたかを調べました。下図をご覧ください。1年超過者と2年以上超過者の組成が分かるようにしてあります。なお,今回は,在学期間が5年ないしは6年の大学も計算に入れていますので,1月8日の記事とは,数字が若干異なることに留意ください。


 図によると,この期間中,大学生の留年率が最も高かったのは,1978年の51.9‰です。この年では,留年生の比率が5%を超えていたわけです。大学生の留年率は大局的には減少の傾向にあります。ですが,2009年以降は増加に転じています。08年のリーマンショックによる不況の影響のためと思われます。

 大学生の留年率は,昔のほうが高かったのですねスチューデント・アパシーというやつでしょうか。1970年代半ばといえば,大学が多すぎるということで,都市部において,大学進学抑制政策が敷かれた頃です。また,実用的な教育を行う専門学校が創設された頃でもあります。勉強しない大学生,無気力な大学生という問題を,当局が認識してのことだったのでしょうか。

 ところで,大学といっても,いろいろな学部(Faculty)があります。どの学部の学生で留年生が多いのかも気になるところです。2011年の速報統計からは,学部別の留年率を出すことはできませんので,2010年の統計を使って,主な学部の留年率を出してみましょう。私は,学生数が1万人を超える主な学部について,留年率を計算しました。


 50‰(=5%)を超える学部は,ゴチにしています。ゴチになっているのは,外国語学部,法学部,政治経済学部,経済学部,商学部,経営情報学部,理学部,工学部,理工学部,です。外国語学部の留年率が高いのは,留学による最低修業年限超過が多いものと推察されます。

 ほか,留年率が高いのは,法学部や経済学などの社会科学系学部,および理学部や工学部などの理系学部です。私は,昨年度まで,武蔵野大学政治経済学部の卒論ゼミを持っていましたが,政経学部の留年率は高いのだなあ。冒頭で述べたような,就職未決定による留年も多いことと思います。

 1月8日の記事でも申しましたが,大学生の留年率は,道草を許さない,日本社会の世知辛さを可視的に表現する指標とも読めます。新卒至上主義であり,大学卒業後の経歴に,ほんの少しのブランクが出ることも許さない。このような奇妙な慣行のために,留年を強いられ,時間とお金を浪費せざるを得ない若者が多く出ることは,何とも悲しいことです。

 「卒業後3年までは新卒扱いにせよ」という要望が,文科省から経団連に出されたようですが,効をあげているのかしらん。

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