桜も散り,若葉が生い茂る季節になりました。ブログの背景も新緑バージョンにチェンジです。
今月,私がネット上で把握した教員不祥事報道は32件です。今月は,窃盗,横領,スリといった財産犯が目立つ印象です。
生活苦でおにぎりを万引きした校長(愛媛),パチンコの借金返済のため公金横領した教頭(埼玉)といった事案があります。
生活が安定している教員(それも管理職)でなぜ,という感じですが,教員は融資がバンバン通るので,ついお金を借り過ぎてしまうのでしょうか。それで首が回らなくなると。ストレスのあまり,パチンコにハマる教員が少なからずいることは,去年の夏,都の教員研修会で講演したときに聞きました。 教員と生活苦,教員とパチンコ・・・。想像しにくい組み合わせですが,太い糸でつながっているのかもしれません。
まあ,戦前期の教員の生活苦は,よく知られているのですが,
http://tmaita77.blogspot.jp/2012/04/blog-post_14.html
GWが始まりました。私は過ごし方は変わりませんが,良い連休をお過ごしください。
<2016年4月の教員不祥事報道>
・住居侵入:小学校教諭逮捕 酔って別の学校教諭宅に(4/4,毎日,福岡,小,男,53)
・15歳中3女子を買春容疑 兵庫県立高教諭を再逮捕(4/4,産経,兵庫,高,男,25)
・男児に体罰、「一生許さへん」=男性教諭を戒告処分(4/5,時事通信,大阪,小,男,37)
・女子高生にわいせつ 支援学校講師を逮捕(4/7,鹿児島読売テレビ,兵庫,特,男,41)
・高校教諭、少女買春の疑い 愛知県警が逮捕(4/7,朝日,岐阜,高,男,29)
・中学教諭を酒気帯び運転で逮捕(4/9,朝日,鹿児島,中,男,46)
・中高一貫校校長、おにぎり万引き容疑 「金銭的に困窮」(4/12,朝日,愛媛,中高,男,63)
・卒業生の個人情報紛失=市立中教諭、生徒67人分
(4/12,時事ドットコム,岡山,中,男,50代)
・星城高女子バスケ部で監督が部員12人に体罰(4/13,読売,石川,高,女,40)
・盗撮容疑で中学教諭を逮捕 京都の阪急電車内(4/14,日刊スポーツ,京都,中,男,48)
・愛知・大治町で重体事故 小学校教諭を逮捕(4/14,中日,愛知,小,男,45)
・幼稚園教諭の女、窃盗で逮捕(4/14,京都新聞,京都,幼,女,45)
・中学校教諭が同僚にキス(福島県)(4/15,福島中央テレビ,福島,中,男,50)
・女子生徒をホテル駐車場へ 高校講師処分(4/15,鹿児島読売テレビ,愛知,高,男,60)
・元教え子にわいせつ行為 中学教諭を懲戒免職(4/16,佐賀新聞,佐賀,中,男,40代)
・「好きで、くっつきたくなっちゃう」「肩もみしましょう」女性職員にセクハラメール繰り返し
(4/16,産経,東京,中,男,27)
・高校教諭を盗撮容疑で逮捕(4/17,産経,新潟,高,男,44)
・生徒名簿使い署名活動 在職中、無断持ち出し(4/19,千葉日報,千葉,高,男,60代)
・京都府立高教諭 わいせつ行為で懲戒免職(4/20,毎日放送,京都,高,男,50代)
・県立高講師、採点ミス指摘の生徒殴る…訓告処分(4/21,読売,愛知,高,男,30代)
・小学校長と栄養教諭 千葉県教委が減給処分に
(4/21,千葉日報,千葉,調査書誤記:小男54,勤務中AV鑑賞:小男37)
・万引の男性教諭、停職6カ月 横浜市教委(4/22,神奈川新聞,神奈川,小,男,44)
・私立高校教諭 酒気帯び運転で現行犯逮捕(4/23,鹿児島読売テレビ,静岡,高,男)
・LINEで生徒に不適切メッセージ 教諭を懲戒免職(4/25,NHK,東京,中,男,28)
・児童買春容疑:小学校講師を逮捕(4/25,毎日,愛知,小,男,35)
・中学講師、女子生徒が更衣室として使用する教室にスマホ設置
(4/26,サンスポ,岡山,中,男,27)
・女性教諭が教え子の男子生徒とわいせつ行為(4/26,サンスポ,東京,高,女,30代)
・部活指導で暴力63回 中学ソフトボール部顧問を停職(4/27,朝日,大阪,中,男,26)
・教頭130万円横領 懲戒免職(4/27,NHK,埼玉,小,男,57)
・高校教諭 修学旅行中にゴルフ(4/29,毎日,岐阜,高,男,50,25)
・強制わいせつ未遂容疑で都立高校教諭を逮捕(4/29,産経,東京,高,男,25)
・さいたま市立小教諭を逮捕 電車内で財布盗んだ疑い(4/30,朝日,埼玉,小,男,23)
2016年4月30日土曜日
2016年4月29日金曜日
稼げないオトコが結婚できない理由
3月4日の記事では,男性の結婚ジニ係数という指標を主要国について計算しました。「稼げないオトコが結婚できない」のレベルを測る指標です。日本の値は0.535で,7か国ではトップでした。
4月19日の記事では,フルタイム男性の年収が,フルタイム女性の年収の何倍かを国別に出しました。日本は1.731倍で,18か国の中でトップでした。
「もしや」と思い,2つの指標を絡めてみたところ,下図のような傾向が出てきました。
年収のジェンダー差が大きい社会ほど,男性の結婚チャンスは稼ぎに規定される度合いが高いようです。主要7か国のデータですが・・・。
女性が結婚相手に求める年収と,未婚男性のそれにはギャップがあることは,これまで何度もデータで示してきました。
https://twitter.com/tmaita77/status/721617130131558403
寄せられた反応は,「女性の要望は非現実的」「高望みしてけしからん」というものが大半でした。私も正直,そう思ってた伏しもあります。
しかし上図をみると,賃金面で男性と著しく差別されるので,結婚相手に高い年収を求めざるを得ない,という面もあるのかなと。結婚・出産というキャリア断絶の影響も大きいですし。
手元にある主要7か国のデータですが,もっと多くの社会のデータを集めて,考えてみたいと思います。
https://twitter.com/tmaita77/status/721617130131558403
寄せられた反応は,「女性の要望は非現実的」「高望みしてけしからん」というものが大半でした。私も正直,そう思ってた伏しもあります。
しかし上図をみると,賃金面で男性と著しく差別されるので,結婚相手に高い年収を求めざるを得ない,という面もあるのかなと。結婚・出産というキャリア断絶の影響も大きいですし。
手元にある主要7か国のデータですが,もっと多くの社会のデータを集めて,考えてみたいと思います。
2016年4月28日木曜日
朝日新聞(学びを語る)に掲載
今朝の朝日新聞朝刊に,私の談話が掲載されました。「学びを語る」という企画で,月に2回のペースで教育面に載るようです。
http://www.asahi.com/articles/DA3S12332070.html
19日に『全国学力・学習状況調査』が実施されましたが,この手の公的調査の生データ(ローデータ)を一般に広く公開してほしい,という要望を言わせていただきました。
莫大な費用をかけて作った「ビッグデータ」を,もっと有効活用したものです。一部の「お偉いさん」だけでなく,万人がいろいろな視点から徹底的にしゃぶり尽くす。前からツイッターでつぶやいていることですが,新聞に載せていただき,うれしく思います。
取材ではいろいろなことを話し(愚痴り)ましたが,以下の2点に絞ってまとめられています。
①:男女別の集計結果を出してほしい。理系学力や理系志向のジェンダー差などは,重要な分析課題です。国際学力調査PISAでは,男女別結果が出ており,「男子<女子」の社会も数多くあります。国内でも探せば,そういう地域や学校はあるでしょう。そういう事例を研究することにもつなげます。逆に「男子<女子」の伝統的性差が大きい学校には,女性の理数教員を加配するなどの対策もとれます。
②:社会経済条件が異なる地域(学校)をそのまま比較するのはアンフェア。地域条件から予測される値(期待値)を出し,それと実測値を照合する。実測値の水準だけでなく,それが期待値を上回っていることも「がんばっている」の目安にする。英国などでは,こういう基準が採用され,予算配分にも考慮されるそうです。この点は,2008年の拙稿「地域の社会経済条件による子どもの学力の推計」(『教育社会学研究』第82集)にも書いています。
http://ci.nii.ac.jp/naid/110006793455
ささやかな主張ですが,データ公開の在り方を変えるきっかけになればと思っております。こういう場を設けてくださった,朝日新聞の杉原里美記者に感謝申します。
http://www.asahi.com/articles/DA3S12332070.html
19日に『全国学力・学習状況調査』が実施されましたが,この手の公的調査の生データ(ローデータ)を一般に広く公開してほしい,という要望を言わせていただきました。
莫大な費用をかけて作った「ビッグデータ」を,もっと有効活用したものです。一部の「お偉いさん」だけでなく,万人がいろいろな視点から徹底的にしゃぶり尽くす。前からツイッターでつぶやいていることですが,新聞に載せていただき,うれしく思います。
取材ではいろいろなことを話し(愚痴り)ましたが,以下の2点に絞ってまとめられています。
①:男女別の集計結果を出してほしい。理系学力や理系志向のジェンダー差などは,重要な分析課題です。国際学力調査PISAでは,男女別結果が出ており,「男子<女子」の社会も数多くあります。国内でも探せば,そういう地域や学校はあるでしょう。そういう事例を研究することにもつなげます。逆に「男子<女子」の伝統的性差が大きい学校には,女性の理数教員を加配するなどの対策もとれます。
②:社会経済条件が異なる地域(学校)をそのまま比較するのはアンフェア。地域条件から予測される値(期待値)を出し,それと実測値を照合する。実測値の水準だけでなく,それが期待値を上回っていることも「がんばっている」の目安にする。英国などでは,こういう基準が採用され,予算配分にも考慮されるそうです。この点は,2008年の拙稿「地域の社会経済条件による子どもの学力の推計」(『教育社会学研究』第82集)にも書いています。
http://ci.nii.ac.jp/naid/110006793455
ささやかな主張ですが,データ公開の在り方を変えるきっかけになればと思っております。こういう場を設けてくださった,朝日新聞の杉原里美記者に感謝申します。
2016年4月27日水曜日
虐待に影響するのは,同居か?共働きか?
唐突ですが,まずは一枚のグラフから見ていただきましょう。
乳幼児がいる世帯の共働き率と,乳幼児が被害者である虐待相談件数の相関図です(47都道府県)。後者は,0~5歳人口1万人あたりの数にしています。2014年度間の相談件数を,同年10月時点の0~5歳人口で除した値です。
共働き世帯率と虐待相談率の間には,有意なマイナスの相関関係がみられます。傾向としては,共働きが多い県ほど,虐待の相談件数が少ない。これが因果の関係を含むならば,育児ストレスの解放のような事態を想起できます。
しかし,本当の要因は核家族世帯率ではないか,とも思われます。同居の親のサポートがないと,イライラが募り,虐待が生じやすい。あり得る事態です。
この要因を考慮しても,共働き率の虐待抑止効果がみられるか。この問題を検討すべく,私は,県別の虐待相談率を目的変数,核家族世帯率と共働き世帯率を説明変数に立てた重回帰分析を行いました。
核家族世帯率と共働き世帯率は,6歳未満の子がいる世帯(一人親世帯は除く)の中での比率です。2012年10月時点の値で,総務省『就業構造基本調査』のデータより計算しました。
では,分析に使うデータを全部見ていただきましょう。47都道府県の指標の一覧です。繰り返しますが,虐待相談率とは,就学前の乳幼児が被害者である虐待相談が,0~5歳人口1万人あたりでみて何件かです。分子は2014年度間,分母は同年10月時点の数値を使って算出しました。
黄色は最高値,青色は最低値ですが,どの指標も大きな都道府県差がありますね。
47都道府県のデータを使って相関係数を出すと,虐待相談率と核家族世帯率は+0.3909,虐待相談率と共働き世帯率は-0.5414(最初の図)となります。
単相関係数で見る限り,虐待相談の多寡は,核家族世帯率より共働き世帯率と強く相関しています。しかし単相関係数でもって,目的変数に対する影響度を知ることはできません。両者が重なっている可能性もあります。そこで,2つを同時に投入して,目的変数への影響度を個別に析出する必要があります。
そのために使われるのが,重回帰分析です。重回帰分析とは,複数の説明変数から目的変数を予測する式を作る手法です。核家族世帯率(X1)と共働き世帯率(X2)から,虐待相談率(Y)を予測する式を作ると,以下のようになります。
Y=0.2542X1-1.7008X2+117.2373
この式から出される虐待相談率の理論値と,上表にある実測値の相関係数は+0.5434で,それを二乗した決定係数は0.2952です。この係数から,目的変数の都道府県分散の3割ほどが,ここで投入した2つの要因で説明されることが知られます。2要因の単純モデルとしては,この予測式の精度は合格です(p < 0.01)。
係数の符号から,核家族世帯率は各県の虐待相談率にプラス,共働き世帯率はマイナスの影響を有していることが知られます。係数の絶対値から,共働き世帯率のほうが影響が大きいように見えますが,X1とX2では単位が違いますので,この値をそのまま読んではダメです。
そこで,それぞれの要因の単位を考慮し,同列で比較できるように係数を標準化します。これが標準化偏回帰係数(β値)であり,目的変数への独自の影響度は,この値の絶対値でもって測られます。
下表は,標準化されたβ値です。
β値の絶対値から判断すると,各県の虐待相談率の規定力としては,核家族世帯率のプラス効果より,共働き世帯率のマイナス効果のほうがずっと大きくなっています。
簡単な言い回しで言うと,虐待防止に際しては,三世代の同居よりも,共働きの促進のほうが効果がある,ということです。そのための最良の戦略が,保育所の増設であることは言うまでもないことです。
このモデルは単純すぎる,もっと多くの要因を投入すべきだという意見もあるでしょうが,都市化率,県民所得,保育所在所率などを同時投入すると,多重共線が生じ,重回帰式の予測の精度が落ちることを知りました。核家族世帯率と共働き世帯率の組み合わせがベストなので,これらに絞ったことを申し添えます。
「同居か?共働きか?」。マクロ統計から分かる,ジャッジの判断材料をここに提示いたします。
乳幼児がいる世帯の共働き率と,乳幼児が被害者である虐待相談件数の相関図です(47都道府県)。後者は,0~5歳人口1万人あたりの数にしています。2014年度間の相談件数を,同年10月時点の0~5歳人口で除した値です。
共働き世帯率と虐待相談率の間には,有意なマイナスの相関関係がみられます。傾向としては,共働きが多い県ほど,虐待の相談件数が少ない。これが因果の関係を含むならば,育児ストレスの解放のような事態を想起できます。
しかし,本当の要因は核家族世帯率ではないか,とも思われます。同居の親のサポートがないと,イライラが募り,虐待が生じやすい。あり得る事態です。
この要因を考慮しても,共働き率の虐待抑止効果がみられるか。この問題を検討すべく,私は,県別の虐待相談率を目的変数,核家族世帯率と共働き世帯率を説明変数に立てた重回帰分析を行いました。
核家族世帯率と共働き世帯率は,6歳未満の子がいる世帯(一人親世帯は除く)の中での比率です。2012年10月時点の値で,総務省『就業構造基本調査』のデータより計算しました。
では,分析に使うデータを全部見ていただきましょう。47都道府県の指標の一覧です。繰り返しますが,虐待相談率とは,就学前の乳幼児が被害者である虐待相談が,0~5歳人口1万人あたりでみて何件かです。分子は2014年度間,分母は同年10月時点の数値を使って算出しました。
黄色は最高値,青色は最低値ですが,どの指標も大きな都道府県差がありますね。
47都道府県のデータを使って相関係数を出すと,虐待相談率と核家族世帯率は+0.3909,虐待相談率と共働き世帯率は-0.5414(最初の図)となります。
単相関係数で見る限り,虐待相談の多寡は,核家族世帯率より共働き世帯率と強く相関しています。しかし単相関係数でもって,目的変数に対する影響度を知ることはできません。両者が重なっている可能性もあります。そこで,2つを同時に投入して,目的変数への影響度を個別に析出する必要があります。
そのために使われるのが,重回帰分析です。重回帰分析とは,複数の説明変数から目的変数を予測する式を作る手法です。核家族世帯率(X1)と共働き世帯率(X2)から,虐待相談率(Y)を予測する式を作ると,以下のようになります。
Y=0.2542X1-1.7008X2+117.2373
この式から出される虐待相談率の理論値と,上表にある実測値の相関係数は+0.5434で,それを二乗した決定係数は0.2952です。この係数から,目的変数の都道府県分散の3割ほどが,ここで投入した2つの要因で説明されることが知られます。2要因の単純モデルとしては,この予測式の精度は合格です(p < 0.01)。
係数の符号から,核家族世帯率は各県の虐待相談率にプラス,共働き世帯率はマイナスの影響を有していることが知られます。係数の絶対値から,共働き世帯率のほうが影響が大きいように見えますが,X1とX2では単位が違いますので,この値をそのまま読んではダメです。
そこで,それぞれの要因の単位を考慮し,同列で比較できるように係数を標準化します。これが標準化偏回帰係数(β値)であり,目的変数への独自の影響度は,この値の絶対値でもって測られます。
下表は,標準化されたβ値です。
簡単な言い回しで言うと,虐待防止に際しては,三世代の同居よりも,共働きの促進のほうが効果がある,ということです。そのための最良の戦略が,保育所の増設であることは言うまでもないことです。
このモデルは単純すぎる,もっと多くの要因を投入すべきだという意見もあるでしょうが,都市化率,県民所得,保育所在所率などを同時投入すると,多重共線が生じ,重回帰式の予測の精度が落ちることを知りました。核家族世帯率と共働き世帯率の組み合わせがベストなので,これらに絞ったことを申し添えます。
「同居か?共働きか?」。マクロ統計から分かる,ジャッジの判断材料をここに提示いたします。
2016年4月26日火曜日
都道府県別・年齢別の保育所在所率
就学前の乳幼児のどれほどが保育所に入れているかは,地域によって異なります。それは,保育所の在所者数を乳幼児人口で除せば出てきます。
しかるに,乳幼児といっても年齢に幅があります。在所率を年齢別に出したらどうでしょう。いわゆる「0歳保育」が多いのはどこか。こういう関心もあろうかと思います。
私は47都道府県について,年齢別の保育所在所率を計算してみました。各年齢の認可保育所在所児数を,当該年齢人口で除して%を出しました。分子・分母とも,2014年10月時点の数値を使いました。分子の出所は厚労省『社会福祉施設等調査』,分母は総務省『人口推計年報』です。
分母の年齢は,県別の数値は5歳刻みの推定人口となっています。そこで,1~4歳人口は,0~4歳人口を5で割った値を使いました。5歳人口は,5~9歳人口の5分の1を充てました。やや粗い便法ですが,大まかな傾向を把握する分には許されるでしょう。
下表は,結果の一覧です。黄色マークは最高値,青色マークは最低値をさします。
0歳の在所率トップは青森の16.1%,その次は秋田で16.0%となっています。生後間もない乳児の7人に1人が,認可保育所に預けられていると。
1~2歳の在所率トップは島根,3~5歳は福井で最も高くなっています。首都圏は,どの年齢も在所率が低し。保育所が不足しているためです。
目ぼしい県の年齢別在所率をグラフにしましょう。下図は,秋田,埼玉,東京,福井の年齢グラフです。
違うものですね。秋田と福井を比べると,後者は「スロー・スターター」型です。3~5歳では,7割が保育所に通っています。埼玉や東京では,この年齢になると幼稚園に籍を置く子どもが多くなります。
学齢期と違って,乳幼児期に過ごし方は個々の家庭や地域によって,実に多様です。その違いが,後々の人間形成(学力,体力・・・)とどう相関するか。重要な分析課題です。大規模な追跡調査をする価値はあると思います。厚労省の『21世紀出生児縦断調査』で,それがされていないのが残念です。
2016年4月24日日曜日
都道府県別の保育士・介護職員の年収
『日経デュアル』にて,保育士の給与とやりがいについて論じた拙稿が公開されています。時宜にかなったテーマであるためか,読んでくださる方が多いようです。
http://dual.nikkei.co.jp/article.aspx?id=8317
この記事の図3にて,保育士の離職率の都道府県地図を掲げ,各県の離職率は,保育士の給与の相対水準と相関していると書きました。地方では,保育士の年収は全職種の8割ほどだが,東京や大阪のような大都市では6割,下手したら半分。こうした待遇の違いも,保育士の離職率と関連していると。
この箇所に関心をもった,ある保育園の園長さんから,「県別の保育士の年収を知りたい」というリクエストをいただきました。これについては,本ブログで前に紹介したことがありますが,最新のデータをご覧に入れましょう。ついでに,保育士と並んで需要が増している介護職員の年収も出してみます。
資料は,2015年の厚労省『賃金構造基本統計』です。この資料には,同年6月の月収(①)と,前年(2014年)の年間賞与額(②)が職種別に掲載されています。短時間労働者を除く,一般労働者のデータです。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chinginkouzou.html
①を12倍した値に②を足せば,推定年収が出てきます。保育士は①が21.9万円,②が60.3万円ですから,推定年収は323.3万円となります。介護職員は316.1万円です(安い・・・)。
ちなみに,同じやり方で全職種の推定年収を出すと489.2万円です。よって,これを1.0とした相対水準にすると,保育士は0.661,介護職員は0.646となります。保育士と介護職員の年収は,全職種の6割くらいであると。
これは全国の値ですが,保育士と介護職員の年収とその相対水準は,県によって大きく違っています。下表は,算出された推定年収と,全職種を1.0とした場合の相対水準の一覧表です。黄色は最高値,青色は最低値を意味します。
どうでしょう。保育士の年収は201.5~383.3万円,介護職員は250.7~403.3万円のレインヂが観察されます。
しかるに,県によって一般的な収入水準が違いますので,保育士と介護職員の待遇の良し悪しを知るには,右側の相対水準を見るのがよいでしょう。全職種の年収を1.0とした場合,どれくらいになるかです。
保育士の収入の相対水準をみると,最高の秋田では全職種の9割ほどですが,最低の鳥取では半分ほど。これは苦しい。東京も0.566で,保育士の待遇の悪さが際立っています。介護職員のレインヂは0.613~0.804で,保育士に比して待遇のバラツキは小さくなっています。
この値はおそらく,各県の保育士や介護職員の求人倍率や離職率などと相関しているのではないでしょうか。すぐ出せる値を紹介すると,保育士の年収の相対水準は,平均勤続年収と+0.5687という相関関係にあります(1%水準で有意)。待遇の良し悪しと職場定着の因果関係を推測させるデータですね。
上表の右欄の相対水準値をグラフにしておきましょう。下図は,横軸に保育士,縦軸に介護職員の年収の相対水準値をとった座標上に,47都道府県を配置したものです。
図の見方はお分かりですね。右上は,重要な福祉職の待遇が相対的に良好な県,左下はその逆です。
保育士や介護職員の薄給は,イヤというほど指摘されますが,細かい地域別にみると様相が違っています。この手のデータも公開し,地域レベルでの状況改善につなげていきたいものです。
http://dual.nikkei.co.jp/article.aspx?id=8317
この記事の図3にて,保育士の離職率の都道府県地図を掲げ,各県の離職率は,保育士の給与の相対水準と相関していると書きました。地方では,保育士の年収は全職種の8割ほどだが,東京や大阪のような大都市では6割,下手したら半分。こうした待遇の違いも,保育士の離職率と関連していると。
この箇所に関心をもった,ある保育園の園長さんから,「県別の保育士の年収を知りたい」というリクエストをいただきました。これについては,本ブログで前に紹介したことがありますが,最新のデータをご覧に入れましょう。ついでに,保育士と並んで需要が増している介護職員の年収も出してみます。
資料は,2015年の厚労省『賃金構造基本統計』です。この資料には,同年6月の月収(①)と,前年(2014年)の年間賞与額(②)が職種別に掲載されています。短時間労働者を除く,一般労働者のデータです。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chinginkouzou.html
①を12倍した値に②を足せば,推定年収が出てきます。保育士は①が21.9万円,②が60.3万円ですから,推定年収は323.3万円となります。介護職員は316.1万円です(安い・・・)。
ちなみに,同じやり方で全職種の推定年収を出すと489.2万円です。よって,これを1.0とした相対水準にすると,保育士は0.661,介護職員は0.646となります。保育士と介護職員の年収は,全職種の6割くらいであると。
これは全国の値ですが,保育士と介護職員の年収とその相対水準は,県によって大きく違っています。下表は,算出された推定年収と,全職種を1.0とした場合の相対水準の一覧表です。黄色は最高値,青色は最低値を意味します。
どうでしょう。保育士の年収は201.5~383.3万円,介護職員は250.7~403.3万円のレインヂが観察されます。
しかるに,県によって一般的な収入水準が違いますので,保育士と介護職員の待遇の良し悪しを知るには,右側の相対水準を見るのがよいでしょう。全職種の年収を1.0とした場合,どれくらいになるかです。
保育士の収入の相対水準をみると,最高の秋田では全職種の9割ほどですが,最低の鳥取では半分ほど。これは苦しい。東京も0.566で,保育士の待遇の悪さが際立っています。介護職員のレインヂは0.613~0.804で,保育士に比して待遇のバラツキは小さくなっています。
この値はおそらく,各県の保育士や介護職員の求人倍率や離職率などと相関しているのではないでしょうか。すぐ出せる値を紹介すると,保育士の年収の相対水準は,平均勤続年収と+0.5687という相関関係にあります(1%水準で有意)。待遇の良し悪しと職場定着の因果関係を推測させるデータですね。
上表の右欄の相対水準値をグラフにしておきましょう。下図は,横軸に保育士,縦軸に介護職員の年収の相対水準値をとった座標上に,47都道府県を配置したものです。
図の見方はお分かりですね。右上は,重要な福祉職の待遇が相対的に良好な県,左下はその逆です。
保育士や介護職員の薄給は,イヤというほど指摘されますが,細かい地域別にみると様相が違っています。この手のデータも公開し,地域レベルでの状況改善につなげていきたいものです。
2016年4月22日金曜日
首都圏の市区町村別の非正規公務員比率
雇用の非正規化が進んでいますが,公務員も例外ではありません。
2014年の総務省『経済センサス基礎調査・事業所統計』によると,産業中分類の「地方公務」の従業者(135万235人)のうち,正職員は114万4589人,比率にすると84.8%です。よって,それ以外の非正規公務員の占める割合は15.2%となります。
http://www.stat.go.jp/data/e-census/2014/index.htm
今や働く人間の3人に1人が非正規雇用といいますが,公務員の世界でも7人に1人がそうです。この値を都道府県別にみると,最高は沖縄の25.7%,最低は石川の10.4%となっています。
では,もっと下った市区町村レベルではどうか。このレベルのデータを紹介するのが,ここでの主眼です。私は,首都圏(1都3県)の非正規公務比率を同じ方式で出してみました。前後しますが,産業中分類の「地方公務」の中には,教員や警察官などは含まれません。大半が役所の職員とお考えください。
まずは,地図をみていただきましょう。4つの階級を設け,各市区町村に色をつけてみました。
都心部よりは,周辺の郡部で多い感じです。財政がひっ迫している自治体が多いためでしょうか。
では,マックスの値はどれくらいになるか。242市区町村の非正規公務員比率を高い順に並べたランキング表をご覧に入れましょう。
マックスは,千葉県柏市の44.3%です。埼玉西部の広域自治体の秩父市も,4割を超えています。私が住んでいる多摩市は14.6%で,「中の上」あたりです。
一方,非正規雇用の職員がほとんどいない自治体もあります。都内23区では,非正規公務員の比率が最も低いのは千代田区で6.3%です。
公務員は生活が安定するといいますが,それは賞与や福利厚生が充実しているからで,それらがない非正規公務員の悲惨はよく指摘されます。いわゆる,官製ワーキングプアというやつです。
現場のみなさん,上表のデータをみて「やはり」と思う部分がありますか。ご自分の勤務自治体はどこにありますか。資料として,提示しておきます。
2014年の総務省『経済センサス基礎調査・事業所統計』によると,産業中分類の「地方公務」の従業者(135万235人)のうち,正職員は114万4589人,比率にすると84.8%です。よって,それ以外の非正規公務員の占める割合は15.2%となります。
http://www.stat.go.jp/data/e-census/2014/index.htm
今や働く人間の3人に1人が非正規雇用といいますが,公務員の世界でも7人に1人がそうです。この値を都道府県別にみると,最高は沖縄の25.7%,最低は石川の10.4%となっています。
では,もっと下った市区町村レベルではどうか。このレベルのデータを紹介するのが,ここでの主眼です。私は,首都圏(1都3県)の非正規公務比率を同じ方式で出してみました。前後しますが,産業中分類の「地方公務」の中には,教員や警察官などは含まれません。大半が役所の職員とお考えください。
まずは,地図をみていただきましょう。4つの階級を設け,各市区町村に色をつけてみました。
都心部よりは,周辺の郡部で多い感じです。財政がひっ迫している自治体が多いためでしょうか。
では,マックスの値はどれくらいになるか。242市区町村の非正規公務員比率を高い順に並べたランキング表をご覧に入れましょう。
マックスは,千葉県柏市の44.3%です。埼玉西部の広域自治体の秩父市も,4割を超えています。私が住んでいる多摩市は14.6%で,「中の上」あたりです。
一方,非正規雇用の職員がほとんどいない自治体もあります。都内23区では,非正規公務員の比率が最も低いのは千代田区で6.3%です。
公務員は生活が安定するといいますが,それは賞与や福利厚生が充実しているからで,それらがない非正規公務員の悲惨はよく指摘されます。いわゆる,官製ワーキングプアというやつです。
現場のみなさん,上表のデータをみて「やはり」と思う部分がありますか。ご自分の勤務自治体はどこにありますか。資料として,提示しておきます。
登録:
投稿 (Atom)