5月も今日でおしまい。暦のうえでは,明日から夏です。
今月,私がネット上でキャッチした教員不祥事報道は37件です。「5月病」か分かりませんが,入職して間もない若手教員の不祥事が目につきます。電車内での痴漢(東京),教師が嫌になったと,勤務校に脅迫状を送り付ける(秋田)など。
若手教員の危機については,離職率のデータからもうかがえます。近年は,教員の年齢構成ピラミッドが逆ピラミッドになっていることにより,若手に強い負荷がかかる構造になっています。それでいて,今の現場は忙しく,先輩が若手をサポートする体制が手薄になっている。
状況は地域によって違うと思いますので,自治体レベルにおいて,若年教員をとりまく環境の点検も求められるでしょう。
6月になりました。ブログの背景を五月雨模様に変えます。
<2016年5月の教員不祥事報道>
・女子中学生の裸撮影容疑 元県立高教諭を追送検(5/3,神戸新聞,兵庫,高,男,25)
・酒気帯び運転で小学校臨時教諭逮捕(5/3,TSSテレビ,広島,小,男,24)
・中学校教諭が公然わいせつ容疑 浜松中央署逮捕(5/7,静岡新聞,静岡,中,男,32)
・高校の教え子に不適切なメール 男性教諭に停職処分
(5/10,フジテレビ,東京,高,男,34)
・偽造した教員免許提出、教壇に…元講師の女逮捕(5/10,読売,福島,高,女,44)
・<淫行>県立高教頭を逮捕、容疑否認(5/10,毎日,広島,高,男,51)
・「個別で教えてあげる」 数学講師が女子生徒にわいせつ容疑
(5/11,産経,神奈川,中,男,37)
・「話に割り込まれた」男性高校教諭、男子生徒に平手打ち
(5/13,朝日,愛知,高,男,30代)
・万引働いた中学校女性教諭を停職処分(5/13,産経,愛媛,中,女,43)
・女子児童にわいせつ行為の教諭処分(宮城県)(5/13,日テレ,宮城,小,男,30代)
・懲戒処分:飲酒運転検挙の県立高教諭 教諭は依願退職
(5/13,毎日,福岡,高,男,30代)
・尾張の私立高で教諭体罰 停職1週間、制止の同僚にも暴行
(5/13,中日,愛知,高,男,36)
・女子児童に触る教諭懲戒免職(5/13,NHK,宮城,小,男,30代)
・女子児童に蹴り 教諭を減給 (5/14,NHK,埼玉,小,男,45)
・生徒とみだらな行為、免職 男性教諭、電話で隠蔽指示(5/16,産経,宮城,高,男,30)
・中学生殴り重傷負わす 男性教諭を書類送検(5/16,読売テレビ,兵庫,中,男性)
・生徒の鼓膜破る 教諭書類送検(5/17,ヤフーニュース,兵庫,中,男,35)
・支援学校教諭が障害ある生徒と関係、懲戒免職(5/17,京都新聞,京都,特,男,59)
・生徒にわいせつ行為、窃盗 教諭と元校長処分
(5/17,河北新報,宮城,わいせつ:高男30,窃盗:中男56)
・女子高生のスカートの中を盗撮の疑い 小学校教諭を逮捕(5/18,産経,長野,小,男性)
・鹿児島)酒気帯び運転や体罰、教諭5人懲戒処分
(5/18,朝日,鹿児島,飲酒運転:中男47,高男46,高女46,体罰:高43,中29)
・吹田市立中 教諭が「はたく」「蹴る」(5/19,毎日放送,大阪,中,男,54)
・生徒にLINE2900回 教諭処分(5/20,神奈川新聞,神奈川,中,男,42)
・酒気帯び運転で事故の中学教諭を懲戒免職(5/20,産経,宮崎,中,男,28)
・体罰高校教諭に減給の懲戒処分 発覚隠蔽工作も(5/21,産経,新潟,高,男,50代)
・つくば市立校副校長を懲戒免職 酒気帯びで書類送検
(5/23,産経,茨城,義務教育,男,55)
・13歳の少女に裸画像送らせる 岡山の中学講師を逮捕(5/24,産経,岡山,中,男,24)
・生徒たたき、押し倒す 教諭を懲戒処分(5/25,大分合同新聞,大分,高,男,51)
・勤務の中学に脅迫状=容疑で講師の男逮捕(5/25,時事通信,秋田,中,男,25)
・女子生徒にみだらな行為 県立高校男性教諭が懲戒免職
(5/26,テレビ神奈川,神奈川,高,男,28)
・高校教諭をひき逃げ容疑で逮捕(福岡県)(5/26,日テレ,福岡,高,男,26)
・同僚女性にセクハラ 男性教諭を停職処分(5/26,産経,静岡,中,男,43)
・小学校トイレに盗撮カメラ 倉敷署が元中学講師を逮捕
(5/26,山陽新聞,岡山,中,男,36)
・公然わいせつ容疑 逮捕の教諭懲戒免職(5/27,静岡新聞,静岡,中,男,32)
・11万円着服した51歳中学教諭を懲戒免職(5/28,産経,福岡,中,男,51)
・調布の小学校教員、痴漢容疑で逮捕(5/30,朝日,東京,小,男,20代)
・教え子の「アイドル」とキス写真流出(5/30,サンスポ,東京,中,男,31)
2016年5月31日火曜日
2016年5月29日日曜日
2050年の人口ピラミッド
日曜ですが,いかがお過ごしでしょうか。お出かけになっている方も多いと思います。
勤め人でない私は,出かけるのは平日にしています。そろそろ暑くなってきたので,駅への往復はバスを使うのですが,平日昼間のバス車内の高齢化率はスゴイ。乗客の多くは,推定65以上の白髪の高齢者です。
「これは,近未来の日本全体の縮図なんだろうなあ」と思うのですが,将来人口の年齢構成については,精度の高い推計結果が公表されています。国立社会保障・人口問題研究所による『将来推計人口』(2012年1月時点)です。
http://www.ipss.go.jp/syoushika/tohkei/newest04/sh2401top.html
中位推計値を使って,2050年の日本の人口ピラミッドを描くと下図のようになります。ピラミッドの形状だけではつまらないので,働く人とそうでない人の色分けもしてみました。2010年の『国勢調査』の就業率を適用して,各年齢の就業者(非就業者)の内訳を出した次第です。
つぼ型を通り越して,上が厚く下が薄い「逆ピラミッド」型になることが見込まれます。15歳未満の年少人口が1割強,65歳以上の高齢人口が4割近くです。文字通り,少子高齢化が極度に進んだ社会になります。図にすると,インパクトありますねえ。
社会は成員が働くことによって成り立ちますが,今の就業率が変わらないとすると,「就業者2:非就業者3」の比になります。現在ではちょうど半々くらいですが,近未来では,働かない人(従属人口)のほうが多くなると。
まあ,未来社会では高齢者の就業率が高まるでしょうし,外国人労働者やAIロボットの協力も見込めますので,そんなに悲観することはないとは思いますけど。
2050年の日本の人口構成図は,上記のような型になると見込まれるのですが,世界全体の中では,どういう位置になるのでしょう。世界各国について,上のようなピラミッドを描くことはできませんので,年少人口率と高齢人口率のマトリクスにおける,それぞれの国の位置をみてみます。
国連人口推計サイトから200か国のデータを採取し,散布図をつくってみました。
http://esa.un.org/unpd/wpp/
図の見方はお分かりですね。左上にあるほど,年少人口が少なく,高齢人口が多い,つまり少子高齢化が進んだ社会ということになります。
斜線は均等線で,このラインより上にある場合,子どもより高齢者が多いことを意味します。2050年では,こういう社会がマジョリティーになるようです。日本やドイツは今でもそうですが,近未来では,主要国は軒並みこのラインを超えると予測されます。
名誉かどうかは分かりませんが,日本は群のトップに位置しています。人口ピラミッドの形状が最初の図でみたような逆ピラミッド型ですから,当たり前です。その次は韓国,そしてドイツと・・・。国名は書きませんでしたが,日韓の周辺には,イタリア,スペイン,ギリシャなど,南欧国があります。
高齢者がマジョリティーの社会が多くなるわけですが,この頃には,高齢者の役割革新も進んでいることでしょう。「支えられる」から「支える」存在へです。老化防止薬の開発など,医療技術の進歩により,高齢者の就労が今よりも容易になっているかもしれません。
私は今年で40歳になりますが,明治の頃だと,もう立派な高齢者でした。しかし140年ほどを経た平成の現在では,バリバリの働き盛りです。社会っていうのは,変わるものです。
未来については悲観的な予測が多いのですが,私はそんなに先行きを憂いてはいません。技術革新に期待を寄せるのは楽観に過ぎますが,なすべきは,年齢(性)による役割規範を撤廃すること。日本ではそれがとくに強固なのですが,これが薄い社会では,近未来を悲観している国民はそう多くないのではないか,と思うのです。
勤め人でない私は,出かけるのは平日にしています。そろそろ暑くなってきたので,駅への往復はバスを使うのですが,平日昼間のバス車内の高齢化率はスゴイ。乗客の多くは,推定65以上の白髪の高齢者です。
「これは,近未来の日本全体の縮図なんだろうなあ」と思うのですが,将来人口の年齢構成については,精度の高い推計結果が公表されています。国立社会保障・人口問題研究所による『将来推計人口』(2012年1月時点)です。
http://www.ipss.go.jp/syoushika/tohkei/newest04/sh2401top.html
中位推計値を使って,2050年の日本の人口ピラミッドを描くと下図のようになります。ピラミッドの形状だけではつまらないので,働く人とそうでない人の色分けもしてみました。2010年の『国勢調査』の就業率を適用して,各年齢の就業者(非就業者)の内訳を出した次第です。
つぼ型を通り越して,上が厚く下が薄い「逆ピラミッド」型になることが見込まれます。15歳未満の年少人口が1割強,65歳以上の高齢人口が4割近くです。文字通り,少子高齢化が極度に進んだ社会になります。図にすると,インパクトありますねえ。
社会は成員が働くことによって成り立ちますが,今の就業率が変わらないとすると,「就業者2:非就業者3」の比になります。現在ではちょうど半々くらいですが,近未来では,働かない人(従属人口)のほうが多くなると。
まあ,未来社会では高齢者の就業率が高まるでしょうし,外国人労働者やAIロボットの協力も見込めますので,そんなに悲観することはないとは思いますけど。
2050年の日本の人口構成図は,上記のような型になると見込まれるのですが,世界全体の中では,どういう位置になるのでしょう。世界各国について,上のようなピラミッドを描くことはできませんので,年少人口率と高齢人口率のマトリクスにおける,それぞれの国の位置をみてみます。
国連人口推計サイトから200か国のデータを採取し,散布図をつくってみました。
http://esa.un.org/unpd/wpp/
図の見方はお分かりですね。左上にあるほど,年少人口が少なく,高齢人口が多い,つまり少子高齢化が進んだ社会ということになります。
斜線は均等線で,このラインより上にある場合,子どもより高齢者が多いことを意味します。2050年では,こういう社会がマジョリティーになるようです。日本やドイツは今でもそうですが,近未来では,主要国は軒並みこのラインを超えると予測されます。
名誉かどうかは分かりませんが,日本は群のトップに位置しています。人口ピラミッドの形状が最初の図でみたような逆ピラミッド型ですから,当たり前です。その次は韓国,そしてドイツと・・・。国名は書きませんでしたが,日韓の周辺には,イタリア,スペイン,ギリシャなど,南欧国があります。
高齢者がマジョリティーの社会が多くなるわけですが,この頃には,高齢者の役割革新も進んでいることでしょう。「支えられる」から「支える」存在へです。老化防止薬の開発など,医療技術の進歩により,高齢者の就労が今よりも容易になっているかもしれません。
私は今年で40歳になりますが,明治の頃だと,もう立派な高齢者でした。しかし140年ほどを経た平成の現在では,バリバリの働き盛りです。社会っていうのは,変わるものです。
未来については悲観的な予測が多いのですが,私はそんなに先行きを憂いてはいません。技術革新に期待を寄せるのは楽観に過ぎますが,なすべきは,年齢(性)による役割規範を撤廃すること。日本ではそれがとくに強固なのですが,これが薄い社会では,近未来を悲観している国民はそう多くないのではないか,と思うのです。
2016年5月26日木曜日
大学入学の地元志向(性別)
5月1日の記事では,大学入学の地元志向が,90年代から現在までにかけてどう変わったかをみました。分かったのは,自県内大学入学率が増えていること,しかし様相には都道府県差があることです。私の郷里の鹿児島では,全国的傾向に反して,自県内入学率は減っています。
今回は,男子と女子で分けたデータをみてみようと思います。自県内入学率は,大学入学の地元志向の指標ですが,当然,男女で異なるでしょう。常識的に考えて,男子より女子のほうが高いと思われます。
高校の頃,「男子は東京まで高跳びしていいが,女子は地元,出るにしても九州圏内」とかいう話をよく耳にしました。九大に受かる力があるのに,女子だから地元の鹿大にしろと,親に言われていた女子生徒もいました。90年代半ばの話です。
男女の大学入学の地元志向が,過去に比してどう変わったか。都道府県別にみるとどうか。こんな疑問を解いてみたいと思います。
まずは全国統計にて,大学入学者の地元入学率がどう変化したかを,性別にみてみましょう。先の記事と同じく,1990年と2015年の比較をします。4年制大学の入学者(浪人生含む)は,1990年では48.7万人でしたが,2015年では60.2万人にまで膨れ上がっています(文科省『学校基本調査』)。進学率が高まっているためです。
両年の大学入学者を,「男子か女子か」,「出身高校と同じ県内の大学か,それ以外か」で区分けした図をお見せします。
入学者の量を,四角形の面積で表現したグラフです。女子の進学率上昇もあり,女子の割合が30.1%から45.1%にアップしています(横幅)。
ここでの関心事である自県内大学入学者の比率(色付き)は,この15年間で男女とも伸びています。予想通り,「男子<女子」ですが,男子のほうが伸び幅が大きいので(33.4%→41.5%),最近では性差が縮まっています。
地元志向が男子より女子で高いのは予想通りですが,過去と比した伸び幅は男子のほうが高し。バブルの頃と違い,家計もひっ迫していますので,男子といえど都会に出すのが困難になった,ということかと思います。
これは全国の傾向ですが,地元入学率の男女差や過去と比した変化は,県によって違っています。地域差を見てみましょう。
下表は,男子と女子について,1990年と2015年の自県内入学率を都道府県別に計算したものです。47都道府県中の最高値には黄色,最低値には青色マークをつけています。赤字は,上位5位です。
どうでしょう。全国的傾向と同じく,この15年間にかけて自県内入学率が増加した県が多いですが,その逆の県もあります。増分がマイナスの県です。
私の郷里の鹿児島はこのタイプで,男女とも地元入学率が減じています。沖縄などは,地元志向の減少がもっと顕著です。
数の上では,男女とも地元入学率が伸びている県が多いですが,伸び幅に性差がある県も多し。たとえば長崎は,男子は6.7ポイント増であるのに対し,女子は20.2ポイントも増えています。地元に,女子大でもできたのでしょうか。
逆に青森は,男子の地元志向の高まりが,女子よりも際立って顕著です。経済的苦境により,都会の大学に出すのが難しくなった,というような事情を感じさせます。福島のように,男子は増加,女子は低下という,反対方向のベクトルの県もあり。
総じてみるに,女子より男子の地元志向の高まりが強く,その結果,地元残留率のジェンダー差が縮まってきています。女子が外に出るようになったことではなく,男子が残るようになってことによります。男女双方の「地元」化です。
男女の地元入学率の変化を視覚化しておきましょう。横軸に男子,縦軸に女子の地元入学率の増加ポイント(上表の増分)をとった座標上に,47都道府県を配置してみました。
右上にあるのは,男女とも自県内入学率の高まりが顕著な,ローカル化の強い県です。ただ石川などは,北陸新幹線の開通により,今後はどうなりますかね。
左下は,男女とも県外に出ていくようになっている県で,郷里の鹿児島や沖縄が該当します。
今回のデータをみて,政策担当者は「いい傾向だ」と,喜びの声を上げるでしょう。地方創生が叫ばれている昨今ですものね。ですが,私はそうではありません。大学が,地元の学生だらけになっていいのかと。
大学の起源は,中世のヨーロッパに見いだされるのですが,教わりたい教師をしたって,学生が地域移動する形式が主流でした。ある教師のもとに集う学生の出身国(地域)は様々。多様な人間を包括する,文字通りの「University」だったわけです。毛色が違う人間と接することは,青年らの人間形成にも寄与したことでしょう。
正直にいうと,私は,大学進学時の地域移動(県外流出)を悪いことだとは思っておらず,むしろ促進すべきだと思っています。青年期には,他流試合をすべきかと。地方都市では,中学時の「スクールカースト」が烙印のごとくついて回りますが,それから解放される上でも結構なことです。
ただ,都会で学んだあとは,なるべく帰ってきてほしい。最近,大卒後は地元に帰ってくることを条件に無利子の奨学金を貸与するとか,地元に帰ってきた学生には報奨金を出すとかいう政策をよく聞きます。カネで若者の人生を管理・統制する向きがないではないですが,当面は,こういう強硬策も仕方ありますまい。
こういう考えから,私が強く関心を持つのは,大学進学時の地域移動ではなく,就職時のそれです。何度もいいますが,『学校基本調査』の大卒者の進路統計にて,就職先の都道府県別の集計をしていただきたいです。それを4年前の地域移動と照合すれば,Uターン率の近似値を出すことができます。
申すまでもないですが,実態が明らかでないと,対策の立てようがありません。大学進学率が50%に達した現在,重点的に解明すべきは,大学卒業時の地域移動の様相です。このステージにおける,公的統計の整備を強く望みます。
今回は,男子と女子で分けたデータをみてみようと思います。自県内入学率は,大学入学の地元志向の指標ですが,当然,男女で異なるでしょう。常識的に考えて,男子より女子のほうが高いと思われます。
高校の頃,「男子は東京まで高跳びしていいが,女子は地元,出るにしても九州圏内」とかいう話をよく耳にしました。九大に受かる力があるのに,女子だから地元の鹿大にしろと,親に言われていた女子生徒もいました。90年代半ばの話です。
男女の大学入学の地元志向が,過去に比してどう変わったか。都道府県別にみるとどうか。こんな疑問を解いてみたいと思います。
まずは全国統計にて,大学入学者の地元入学率がどう変化したかを,性別にみてみましょう。先の記事と同じく,1990年と2015年の比較をします。4年制大学の入学者(浪人生含む)は,1990年では48.7万人でしたが,2015年では60.2万人にまで膨れ上がっています(文科省『学校基本調査』)。進学率が高まっているためです。
両年の大学入学者を,「男子か女子か」,「出身高校と同じ県内の大学か,それ以外か」で区分けした図をお見せします。
入学者の量を,四角形の面積で表現したグラフです。女子の進学率上昇もあり,女子の割合が30.1%から45.1%にアップしています(横幅)。
ここでの関心事である自県内大学入学者の比率(色付き)は,この15年間で男女とも伸びています。予想通り,「男子<女子」ですが,男子のほうが伸び幅が大きいので(33.4%→41.5%),最近では性差が縮まっています。
地元志向が男子より女子で高いのは予想通りですが,過去と比した伸び幅は男子のほうが高し。バブルの頃と違い,家計もひっ迫していますので,男子といえど都会に出すのが困難になった,ということかと思います。
これは全国の傾向ですが,地元入学率の男女差や過去と比した変化は,県によって違っています。地域差を見てみましょう。
下表は,男子と女子について,1990年と2015年の自県内入学率を都道府県別に計算したものです。47都道府県中の最高値には黄色,最低値には青色マークをつけています。赤字は,上位5位です。
どうでしょう。全国的傾向と同じく,この15年間にかけて自県内入学率が増加した県が多いですが,その逆の県もあります。増分がマイナスの県です。
私の郷里の鹿児島はこのタイプで,男女とも地元入学率が減じています。沖縄などは,地元志向の減少がもっと顕著です。
数の上では,男女とも地元入学率が伸びている県が多いですが,伸び幅に性差がある県も多し。たとえば長崎は,男子は6.7ポイント増であるのに対し,女子は20.2ポイントも増えています。地元に,女子大でもできたのでしょうか。
逆に青森は,男子の地元志向の高まりが,女子よりも際立って顕著です。経済的苦境により,都会の大学に出すのが難しくなった,というような事情を感じさせます。福島のように,男子は増加,女子は低下という,反対方向のベクトルの県もあり。
総じてみるに,女子より男子の地元志向の高まりが強く,その結果,地元残留率のジェンダー差が縮まってきています。女子が外に出るようになったことではなく,男子が残るようになってことによります。男女双方の「地元」化です。
男女の地元入学率の変化を視覚化しておきましょう。横軸に男子,縦軸に女子の地元入学率の増加ポイント(上表の増分)をとった座標上に,47都道府県を配置してみました。
右上にあるのは,男女とも自県内入学率の高まりが顕著な,ローカル化の強い県です。ただ石川などは,北陸新幹線の開通により,今後はどうなりますかね。
左下は,男女とも県外に出ていくようになっている県で,郷里の鹿児島や沖縄が該当します。
今回のデータをみて,政策担当者は「いい傾向だ」と,喜びの声を上げるでしょう。地方創生が叫ばれている昨今ですものね。ですが,私はそうではありません。大学が,地元の学生だらけになっていいのかと。
大学の起源は,中世のヨーロッパに見いだされるのですが,教わりたい教師をしたって,学生が地域移動する形式が主流でした。ある教師のもとに集う学生の出身国(地域)は様々。多様な人間を包括する,文字通りの「University」だったわけです。毛色が違う人間と接することは,青年らの人間形成にも寄与したことでしょう。
正直にいうと,私は,大学進学時の地域移動(県外流出)を悪いことだとは思っておらず,むしろ促進すべきだと思っています。青年期には,他流試合をすべきかと。地方都市では,中学時の「スクールカースト」が烙印のごとくついて回りますが,それから解放される上でも結構なことです。
ただ,都会で学んだあとは,なるべく帰ってきてほしい。最近,大卒後は地元に帰ってくることを条件に無利子の奨学金を貸与するとか,地元に帰ってきた学生には報奨金を出すとかいう政策をよく聞きます。カネで若者の人生を管理・統制する向きがないではないですが,当面は,こういう強硬策も仕方ありますまい。
こういう考えから,私が強く関心を持つのは,大学進学時の地域移動ではなく,就職時のそれです。何度もいいますが,『学校基本調査』の大卒者の進路統計にて,就職先の都道府県別の集計をしていただきたいです。それを4年前の地域移動と照合すれば,Uターン率の近似値を出すことができます。
申すまでもないですが,実態が明らかでないと,対策の立てようがありません。大学進学率が50%に達した現在,重点的に解明すべきは,大学卒業時の地域移動の様相です。このステージにおける,公的統計の整備を強く望みます。
2016年5月24日火曜日
年齢層別のジニ係数の国際比較(2012年)
昨年の10月9日の記事では,ジニ係数の国際比較をしましたが,今回は,年齢層別のそれをしてみようと思います。
資料は上記と同じで,ISSPの『家族と性役割の変化に関する意識調査』(2012年)です。この調査では,各国の18歳以上の国民に対し,属する世帯の収入を尋ねています。月収で回答している国が大半です(日本やアメリカは年収)。
私は,30歳未満,30~50代,50歳以上の3群に対象者を分かち,この3群のジニ係数を計算しました。遠い異国の南アフリカの若年層を例に,計算の方法を説明します。
上表は,南アフリカの30歳未満の若者に対し,属する世帯の月収を尋ねた結果です。通貨の単位はランド(R)です。階級の区分は,原資料によります。
人数の横の富量とは,それぞれの階級が手にした富の量のことで,階級値に人数を乗じた値です。たとえば,月収1001~1500Rの階級には,1250R×64人=80000Rの富が得られたと考えます。
15階級の富をトータルすると,276万3750ランドとなります。これが社会全体の富になるわけですが,この巨額の富が,各階級にどう配分されているか。
中央の相対度数の欄をみると,人数と富量の分布はかなりズレています。全体の46.1%が月収1500R以下の世帯で暮らしているのですが,この層には富全体の9.5%しか届いていません。逆に,人数では4.1%でしかない月収20001R以上の富裕層が,富全体の28.0%をもせしめています。
予想はしていましたが,この国では,富の配分の格差が大きいようですねえ。それは,右端の累積相対度数をグラフにすることで可視化されます。下図は,横軸に人数,縦軸に富量の累積相対度数をとった座標上に15の階級をプロットし,線でつないだ曲線です。これを,ローレンツ曲線といいます。
この曲線の底が深いほど,人数と富量のズレが大きいこと,すなわち富の配分の格差(偏り)が大きいことを示唆します。
われわれが求めようとしているジニ係数は,図の色付きの面積を2倍した値です。この部分の面積は0.302,よって,南アフリカの若者の世帯月収ジニ係数は,これを2倍して0.604と算出されます。*計算の仕方の詳細は,下記記事をご覧ください。
一般にジニ係数は0.4を超えると,特段の事情がない限り是正を要するという危険信号と読めるそうです。0.6というのは,いつ暴動が起きてもおかしくないくらいヤバい,ということ。現に南アフリカでは,若者の暴動や凶悪犯罪が頻発しています。それがこういう経済格差に由来する部分が大きいことは,言うまでもありません。
ジニ係数の計算方法について,お分かりいただけたかと思います。では,同じやり方で出した,各国の年齢層別のジニ係数一覧表をご覧いただきましょう。黄色マークは最高値,青色マークは最低値です。0.5以上の(危険)数値は赤色にしました。
若年層と中年層のトップは,先ほど例として取り上げた南アフリカです。世界一の格差社会なり。
しかし高年層のトップは,オーストラリアとなっています。0.695とは,半端ない。他の年齢層の係数も高くなっています。資源に恵まれた大国で,格差社会というイメージはあまりないのですが,その資源から恩恵を受けているのは,限られた層だという指摘もあります。
http://guccipost.co.jp/blog/maehashi/?p=42888
メキシコやフィリピンのジニ係数も,高いですねえ。これらの国では,富裕層と貧困層の格差がべらぼうに大きいことは,各種の見聞記でよくいわれています。嵐よういちさんの「海外ブラックロード」シリーズなどを読むと,よくわかります。
お隣の韓国は,高齢層のジニ係数のみが高くなっています。社会の格差・貧困が,高齢層に集中しているのが,この社会の特徴。儒教社会で,「親の面倒は子が見るべし」とされてきた社会ですので,年金等の公的社会保障制度が未整備なのでしょう。
それでいて,若者の儒教的価値観は急速に崩れている。この国で,高齢者の自殺率が激増しているのも,分かろうというものです。まさに,「ヘル朝鮮」です。
https://twitter.com/tmaita77/status/495519038395527169/photo/1
日本はというと,若年層は0.360,中年層は0.285,高年層は0.391となっています。他国に比して高くはないですが,若者と高齢者で高い「V字」型。高齢層は,危険水準の0.4に迫る勢いです。2050年ことには,わが国の人口ピラミッドは完全な逆ピラミッドになりますが,こうなった時,高齢層のジニ係数はどうなっているか。現在の韓国社会に,近未来の日本の状況を見るようで悪寒がします。
国別のジニ係数と犯罪率や自殺率の相関をとっても,面白そうですね(年齢ごとに)。逸脱行動の原因は,個々人の個別的な事情だけではありません。その底には,当人が暮らす社会の状況があることは,間違いないところです。経済格差などは,その最たるものです。それを可視化することは,意義あることだと思っています。
ジニ係数の計算方法について,お分かりいただけたかと思います。では,同じやり方で出した,各国の年齢層別のジニ係数一覧表をご覧いただきましょう。黄色マークは最高値,青色マークは最低値です。0.5以上の(危険)数値は赤色にしました。
若年層と中年層のトップは,先ほど例として取り上げた南アフリカです。世界一の格差社会なり。
しかし高年層のトップは,オーストラリアとなっています。0.695とは,半端ない。他の年齢層の係数も高くなっています。資源に恵まれた大国で,格差社会というイメージはあまりないのですが,その資源から恩恵を受けているのは,限られた層だという指摘もあります。
http://guccipost.co.jp/blog/maehashi/?p=42888
メキシコやフィリピンのジニ係数も,高いですねえ。これらの国では,富裕層と貧困層の格差がべらぼうに大きいことは,各種の見聞記でよくいわれています。嵐よういちさんの「海外ブラックロード」シリーズなどを読むと,よくわかります。
お隣の韓国は,高齢層のジニ係数のみが高くなっています。社会の格差・貧困が,高齢層に集中しているのが,この社会の特徴。儒教社会で,「親の面倒は子が見るべし」とされてきた社会ですので,年金等の公的社会保障制度が未整備なのでしょう。
それでいて,若者の儒教的価値観は急速に崩れている。この国で,高齢者の自殺率が激増しているのも,分かろうというものです。まさに,「ヘル朝鮮」です。
https://twitter.com/tmaita77/status/495519038395527169/photo/1
日本はというと,若年層は0.360,中年層は0.285,高年層は0.391となっています。他国に比して高くはないですが,若者と高齢者で高い「V字」型。高齢層は,危険水準の0.4に迫る勢いです。2050年ことには,わが国の人口ピラミッドは完全な逆ピラミッドになりますが,こうなった時,高齢層のジニ係数はどうなっているか。現在の韓国社会に,近未来の日本の状況を見るようで悪寒がします。
国別のジニ係数と犯罪率や自殺率の相関をとっても,面白そうですね(年齢ごとに)。逸脱行動の原因は,個々人の個別的な事情だけではありません。その底には,当人が暮らす社会の状況があることは,間違いないところです。経済格差などは,その最たるものです。それを可視化することは,意義あることだと思っています。
2016年5月22日日曜日
死ぬ確率
昨日の読売新聞Web版に,「死亡保険はムダ? もしもの確率は何%なのか」と題する記事が載っています。内容はだいたい想像がつくでしょうが,無駄な保険を少し見直してはどうか,という主張です。
http://www.yomiuri.co.jp/fukayomi/ichiran/20160520-OYT8T50039.html
上記の記事では,「もしもの確率」の計算結果が示されていますが,国民トータルだけでなく,年齢別の数値も知りたいもの。年齢によって,命を落とすリスクはかなり異なることは,言うまでもありません。
私は,今年で40歳になります。バリバリの働き盛りの年齢ですが,最新のデータを使って,この年齢の死亡率を出してみましょう。
2014年の厚労省『人口動態統計』によると,同年中の40歳の死亡者は,1744人となっています。悪性新生物(がん)による死亡者は476人,交通事故による死亡者は41人です。外国人は含まない,日本人のデータです。
同年10月時点における,40歳の日本人人口は約195.6万人(総務省『人口推計年報』)。これらの数字から,40歳のトータルの死亡率,がんと交通事故の死亡率を試算すると,以下のようになります。
トータルの死亡率 0.089% (1,122人に1人)
がんの死亡率 0.024% (4,109人に1人)
交通事故の死亡率 0.002% (47,707人に1人)
健康なステージですので,さすがに低いですね。がんの死亡率は0.024%,4,109人に1人ですか。がん検診で陽性の診断結果が出ても心配することはない,多くが誤診だという論がありますが,なるほど,そういう気がしなくもないです。
http://bylines.news.yahoo.co.jp/mamoruichikawa/20160503-00057271/
しかし,もっと年をとると数値も変わってきます。全年齢について,上記の3つの死亡率を出してみましたので,その一覧表を掲げます。みなさんにお馴染みの%の表記にししています。
青年期や中年期までは,ネグリジブル・スモールといってもいいくらい低いですが,加齢とともにリスクは上がってきます。
今日,戦争孤児作家の西村滋さんの訃報に接しましたが,91歳だったそうです。上表によると,この年齢のトータルの死亡率は13.3%。さすがにこの年齢になると,7人に1人が命を落とすと見込まれます。
現在では,人々の不安の心理につけこんで,いろいろな保険商法が幅を利かせていますが,冒頭の読売新聞記事がいうような,「もしもの確率」を眺めてみると,考えが変わることもあるかと思います。
あれこれ不安に苛まれていても,キリがありません。冒頭の記事でいいことが書かれていますので,引用しましょう。
「心配しすぎて,やりたいことができなくなったり,不安を抱えたりするとストレスも抱えることになってしまいます。ストレスは,健康にとって大敵です」。
不安を抱くことは,リスクを高めることにつながります。「死ぬときは,死ぬ」。私はこういう気構えをもって,いつ死んでも悔いがないよう,奔放に生きています。そろそろ健診に行く予定ですが,重度のがんが見つかり,「余命*年」と宣告されても,生活にあまり変化はないでしょう。
http://www.yomiuri.co.jp/fukayomi/ichiran/20160520-OYT8T50039.html
上記の記事では,「もしもの確率」の計算結果が示されていますが,国民トータルだけでなく,年齢別の数値も知りたいもの。年齢によって,命を落とすリスクはかなり異なることは,言うまでもありません。
私は,今年で40歳になります。バリバリの働き盛りの年齢ですが,最新のデータを使って,この年齢の死亡率を出してみましょう。
2014年の厚労省『人口動態統計』によると,同年中の40歳の死亡者は,1744人となっています。悪性新生物(がん)による死亡者は476人,交通事故による死亡者は41人です。外国人は含まない,日本人のデータです。
同年10月時点における,40歳の日本人人口は約195.6万人(総務省『人口推計年報』)。これらの数字から,40歳のトータルの死亡率,がんと交通事故の死亡率を試算すると,以下のようになります。
トータルの死亡率 0.089% (1,122人に1人)
がんの死亡率 0.024% (4,109人に1人)
交通事故の死亡率 0.002% (47,707人に1人)
健康なステージですので,さすがに低いですね。がんの死亡率は0.024%,4,109人に1人ですか。がん検診で陽性の診断結果が出ても心配することはない,多くが誤診だという論がありますが,なるほど,そういう気がしなくもないです。
http://bylines.news.yahoo.co.jp/mamoruichikawa/20160503-00057271/
しかし,もっと年をとると数値も変わってきます。全年齢について,上記の3つの死亡率を出してみましたので,その一覧表を掲げます。みなさんにお馴染みの%の表記にししています。
青年期や中年期までは,ネグリジブル・スモールといってもいいくらい低いですが,加齢とともにリスクは上がってきます。
今日,戦争孤児作家の西村滋さんの訃報に接しましたが,91歳だったそうです。上表によると,この年齢のトータルの死亡率は13.3%。さすがにこの年齢になると,7人に1人が命を落とすと見込まれます。
現在では,人々の不安の心理につけこんで,いろいろな保険商法が幅を利かせていますが,冒頭の読売新聞記事がいうような,「もしもの確率」を眺めてみると,考えが変わることもあるかと思います。
あれこれ不安に苛まれていても,キリがありません。冒頭の記事でいいことが書かれていますので,引用しましょう。
「心配しすぎて,やりたいことができなくなったり,不安を抱えたりするとストレスも抱えることになってしまいます。ストレスは,健康にとって大敵です」。
不安を抱くことは,リスクを高めることにつながります。「死ぬときは,死ぬ」。私はこういう気構えをもって,いつ死んでも悔いがないよう,奔放に生きています。そろそろ健診に行く予定ですが,重度のがんが見つかり,「余命*年」と宣告されても,生活にあまり変化はないでしょう。
2016年5月20日金曜日
幼子がいる共働き世帯の夫の評価
「評価」というとおこがましいですが,わが国の男性の生活構造が著しく歪んでいることは,よく知られています。
とくに,子がいる共働き世帯の父親にあっては,妻の過重負担や子どもの発育にも影響が及ぶ恐れがありますので,歪みの様相を統計で可視化し,事態の改善を図るための礎石としなければなりません。
その歪みがどういうものかについては,申すまでもありますまい。仕事の領分が肥大し過ぎて,家庭生活(家事・育児)を圧迫していることです。それは当人の生活のアンバランス,および家事・育児が妻に偏ることとなって表れます。
この2つのレベルを「見える化」する指標として,以下のものを考案しました。
①:WLB指数 = 家事・育児時間/(仕事時間+家事・育児時間)
②:家事・育児分担率 = 夫の平均時間/(夫の平均時間+妻の平均時間)
①のWLBとは,「ワーク・ライフ・バランス」の略です。家庭の領分が,仕事と家庭の合算にどれほどの比重を占めているか。②は,夫婦でこなす家事・育児のうち,夫がどれほど担っているかです。
2011年の『社会生活基本調査』によると,幼子(6歳未満)がいる共働き世帯の夫の平均仕事時間(平日1日あたり)は570分,平均家事・育児時間は37分,妻の平均家事・育児時間は331分となっています。
よって,①のWLB指数は,37/(570+37)=6.1%となります。②の家事・育児分担率は,37/(37+331)=10.1%です。
低いですねえ。乳幼児がいる共働き夫の,仕事と家事・育児の合算に占める後者の割合はたった6.1%で,家事・育児の1割ほどしか担っていないと。逆にいえば,残りの9割は妻にのしかかっているわけです。
これは全国の数値ですが,様相は地域によって違っています。下表は,上記の①と②を都道府県別に計算した結果です。幼子がいる共働き世帯の夫の生活を,県別に診断してみましょう。
黄色は最高値,青色は最低値をさします。両方ともマックスは島根で,WLB指数は15.0%,家事・育児分担率は20.4%となっています。子育て期の女性の正社員率が最も高い県ですが,それだけ夫も相応の負担をしているのでしょう。絶対水準としては高くはないですが・・・。
最も低いのは,両方とも大阪です。順に0.7%,1.1%。むーん,幼子がいる共働き世帯の夫の生活に「家事・育児」の領分はほぼゼロで,家事・育児の99%は妻が担っていると。
赤字は上位5位ですが,島根のほか,宮城,秋田,大分などが優良県ですね。大分は,ちょっと前までは悲惨な状況だったそうですが,ここ数年の取組により,事態が飛躍的に改善しているそうです。
http://www.pref.oita.jp/site/papakosodate/
診断に使った2指標のマトリクス上に,47都道府県を配置してみましょう。
右上は優良県,左下は要改善県と性格づけられます。埼玉は,地方から流入してきた核家族世帯が多く,親や親せきに頼れない,という事情もあるかと思います。
しかるに,ここでみたのは,国内の相対比較の結果です。上図の右上を最終ゴールに据えるというのは,それこそ「井の中の蛙」で,国際社会からみたら失笑を買います。
18歳未満の子がいる有配偶男性のWLB指数,家事・育児分担率について,国際データを前に作ったことがあります。日本は,双方とも最下位です。
http://tmaita77.blogspot.jp/2016/02/wlb.html
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/03/post-4607.php
上記の都道府県分布を,国際的な布置図の中に位置づけると,下図のようになります。
草の根の取組を行いつつも,思考は常にグローバル。国内比較と国際比較は,セットでなされないといけません。
とくに,子がいる共働き世帯の父親にあっては,妻の過重負担や子どもの発育にも影響が及ぶ恐れがありますので,歪みの様相を統計で可視化し,事態の改善を図るための礎石としなければなりません。
その歪みがどういうものかについては,申すまでもありますまい。仕事の領分が肥大し過ぎて,家庭生活(家事・育児)を圧迫していることです。それは当人の生活のアンバランス,および家事・育児が妻に偏ることとなって表れます。
この2つのレベルを「見える化」する指標として,以下のものを考案しました。
①:WLB指数 = 家事・育児時間/(仕事時間+家事・育児時間)
②:家事・育児分担率 = 夫の平均時間/(夫の平均時間+妻の平均時間)
①のWLBとは,「ワーク・ライフ・バランス」の略です。家庭の領分が,仕事と家庭の合算にどれほどの比重を占めているか。②は,夫婦でこなす家事・育児のうち,夫がどれほど担っているかです。
2011年の『社会生活基本調査』によると,幼子(6歳未満)がいる共働き世帯の夫の平均仕事時間(平日1日あたり)は570分,平均家事・育児時間は37分,妻の平均家事・育児時間は331分となっています。
よって,①のWLB指数は,37/(570+37)=6.1%となります。②の家事・育児分担率は,37/(37+331)=10.1%です。
低いですねえ。乳幼児がいる共働き夫の,仕事と家事・育児の合算に占める後者の割合はたった6.1%で,家事・育児の1割ほどしか担っていないと。逆にいえば,残りの9割は妻にのしかかっているわけです。
これは全国の数値ですが,様相は地域によって違っています。下表は,上記の①と②を都道府県別に計算した結果です。幼子がいる共働き世帯の夫の生活を,県別に診断してみましょう。
黄色は最高値,青色は最低値をさします。両方ともマックスは島根で,WLB指数は15.0%,家事・育児分担率は20.4%となっています。子育て期の女性の正社員率が最も高い県ですが,それだけ夫も相応の負担をしているのでしょう。絶対水準としては高くはないですが・・・。
最も低いのは,両方とも大阪です。順に0.7%,1.1%。むーん,幼子がいる共働き世帯の夫の生活に「家事・育児」の領分はほぼゼロで,家事・育児の99%は妻が担っていると。
赤字は上位5位ですが,島根のほか,宮城,秋田,大分などが優良県ですね。大分は,ちょっと前までは悲惨な状況だったそうですが,ここ数年の取組により,事態が飛躍的に改善しているそうです。
http://www.pref.oita.jp/site/papakosodate/
診断に使った2指標のマトリクス上に,47都道府県を配置してみましょう。
右上は優良県,左下は要改善県と性格づけられます。埼玉は,地方から流入してきた核家族世帯が多く,親や親せきに頼れない,という事情もあるかと思います。
しかるに,ここでみたのは,国内の相対比較の結果です。上図の右上を最終ゴールに据えるというのは,それこそ「井の中の蛙」で,国際社会からみたら失笑を買います。
18歳未満の子がいる有配偶男性のWLB指数,家事・育児分担率について,国際データを前に作ったことがあります。日本は,双方とも最下位です。
http://tmaita77.blogspot.jp/2016/02/wlb.html
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/03/post-4607.php
上記の都道府県分布を,国際的な布置図の中に位置づけると,下図のようになります。
草の根の取組を行いつつも,思考は常にグローバル。国内比較と国際比較は,セットでなされないといけません。
2016年5月18日水曜日
家族型福祉の肯定率の年齢差
日本の保育と介護は危機的状況にあり,施設と人員が共に不足しています。「そもそも,幼児や高齢者の面倒は家族が見るべし」という考えが根強いことが,問題の解決を遅らせていることは間違いないでしょう。
核家族化や共働き化など,社会は変わっているにもかかわらず,意識は旧態依然のまま。われわれは今,こうした変動期(過渡期)の危機の只中にいます。
ここで改めて,家族型福祉の意識の国際布置図を描いてみましょう。下図は,横軸に「就学前の子の世話は家族がすべき」,縦軸に「高齢者の世話は家族がすべき」と考える国民(18歳以上)の比率をとった座標上に,43の国を配置したグラフです。
ISSPが2012年に実施した「家族と性役割の変化に関する意識調査」のデータをもとに,作成しました。ドイツは,調査対象が東西に分かれています。
http://www.issp.org/page.php?pageId=4
右上にあるのは,双方の肯定率が高い,家族依存型福祉を認める国々です。フィリピンや,中国,そして東欧など,家族を重んじる社会が位置しています。
対極の左下にあるのは,北欧の国々です。幼子や高齢者の世話は社会(国)がすべき,と考える国民が大半です。これらの国が,公的な福祉の先進国といわれる所以でもあります。
日本や欧米主要国は,この両極の間に分布していますが,私が意外に思ったのは,韓国の肯定率が低いことです。横軸,縦軸とも,平均水準を下回っています。儒教社会の伝統が急速に崩れているのでしょう。
「老親の面倒は子が見るべき」という意識が急速に廃れる一方で,公的な社会保障制度は未整備。近年における,韓国の高齢者の自殺率異常高は,こういう事情によってもたらされていると考えます。
https://twitter.com/tmaita77/status/720930555437514752
さて日本はというと,フィリピンや中国ほどではないにせよ,家族型福祉の意識が強い社会です。まあ,予想通りの位置ですが,横軸の肯定率を年齢層別に出すと「はて?」という傾向が出てきます。
「就学前の子の世話は家族がすべき」と考える者の割合を年齢別に出し,折れ線グラフにすると下図のようになります。主要7か国の年齢カーブです。
どの年齢層でも日本が最も高いのですが,日本のカーブはきれいな右下がりになっています。攪乱は全くありません。若者ほど,幼児の世話は家族がすべきと考えている。こんな傾向です。
この事実について,ツイッターで意見を少し募ったところ,「子育ての経験がないからでは」「家族だけで子育てすることの無理ゲーさを分かっていないから」という声がありました。確かに,そうでしょうね。
しかし,日本だけがきれいな右下がりになるとは・・・。国の不甲斐なさに愛想をつかし,「自分でやるしかない」と塞ぎ込んでいるのかも。
冒頭で述べたように,今の日本は,社会構造の変化に人々の意識が追い付いていないという,変動期の危機の只中にあります。やがては後者が前者にキャッチアップすることで,事態はよくなるだろうという楽観が持たれるのですが,上図をみると,「果たして,大丈夫か」という懸念も持たれます。
現在,次期学習指導要領の改訂に向けた議論がなされていますが,社会にもっと寄りかかっていいんだ,ということを教えるべきかと思います。そのことが,「仕事と子育ては両立可能」という展望を若者に持たせ,未婚化・少子化を解消する条件にもなるでしょう。
核家族化や共働き化など,社会は変わっているにもかかわらず,意識は旧態依然のまま。われわれは今,こうした変動期(過渡期)の危機の只中にいます。
ここで改めて,家族型福祉の意識の国際布置図を描いてみましょう。下図は,横軸に「就学前の子の世話は家族がすべき」,縦軸に「高齢者の世話は家族がすべき」と考える国民(18歳以上)の比率をとった座標上に,43の国を配置したグラフです。
ISSPが2012年に実施した「家族と性役割の変化に関する意識調査」のデータをもとに,作成しました。ドイツは,調査対象が東西に分かれています。
http://www.issp.org/page.php?pageId=4
右上にあるのは,双方の肯定率が高い,家族依存型福祉を認める国々です。フィリピンや,中国,そして東欧など,家族を重んじる社会が位置しています。
対極の左下にあるのは,北欧の国々です。幼子や高齢者の世話は社会(国)がすべき,と考える国民が大半です。これらの国が,公的な福祉の先進国といわれる所以でもあります。
日本や欧米主要国は,この両極の間に分布していますが,私が意外に思ったのは,韓国の肯定率が低いことです。横軸,縦軸とも,平均水準を下回っています。儒教社会の伝統が急速に崩れているのでしょう。
「老親の面倒は子が見るべき」という意識が急速に廃れる一方で,公的な社会保障制度は未整備。近年における,韓国の高齢者の自殺率異常高は,こういう事情によってもたらされていると考えます。
https://twitter.com/tmaita77/status/720930555437514752
さて日本はというと,フィリピンや中国ほどではないにせよ,家族型福祉の意識が強い社会です。まあ,予想通りの位置ですが,横軸の肯定率を年齢層別に出すと「はて?」という傾向が出てきます。
「就学前の子の世話は家族がすべき」と考える者の割合を年齢別に出し,折れ線グラフにすると下図のようになります。主要7か国の年齢カーブです。
どの年齢層でも日本が最も高いのですが,日本のカーブはきれいな右下がりになっています。攪乱は全くありません。若者ほど,幼児の世話は家族がすべきと考えている。こんな傾向です。
この事実について,ツイッターで意見を少し募ったところ,「子育ての経験がないからでは」「家族だけで子育てすることの無理ゲーさを分かっていないから」という声がありました。確かに,そうでしょうね。
しかし,日本だけがきれいな右下がりになるとは・・・。国の不甲斐なさに愛想をつかし,「自分でやるしかない」と塞ぎ込んでいるのかも。
冒頭で述べたように,今の日本は,社会構造の変化に人々の意識が追い付いていないという,変動期の危機の只中にあります。やがては後者が前者にキャッチアップすることで,事態はよくなるだろうという楽観が持たれるのですが,上図をみると,「果たして,大丈夫か」という懸念も持たれます。
現在,次期学習指導要領の改訂に向けた議論がなされていますが,社会にもっと寄りかかっていいんだ,ということを教えるべきかと思います。そのことが,「仕事と子育ては両立可能」という展望を若者に持たせ,未婚化・少子化を解消する条件にもなるでしょう。
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