2011年8月13日土曜日

教育委員の保護者率

 都道府県や市町村といった地方公共団体には,教育委員会が置かれることになっています。教育委員会とは,「当該地方公共団体が処理する教育に関する事務」を管理し,執行する機関です(地方教育行政法第23条)。

 教育委員会は,教員採用に関すること,教科書の採択に関すること,教員の研修に関することなど,重要な事項を司る職務上の権限を有しています(同上)。現在,教員採用試験の一次試験の結果を固唾を飲んで待っている人も多いかと思いますが,教員採用試験の実施主体は,まぎれもなく教育委員会です。

 教育委員会を構成する教育委員の数は,5人が原則ですが,都道府県や市の教育委員会は6人以上,町村の委員会は3人以上でもよいとされています(同法第3条)。はて,重要な権限を付与されている教育委員会を動かす教育委員というのは,どういう人たちなのでしょう。

 教育委員会の委員は,「当該地方公共団体の長の被選挙権を有する者で,人格が高潔で,教育,学術及び文化に関し識見を有するもののうちから,地方公共団体の長が,議会の同意を得て,任命する」ことになっています(第4条第1項)。戦後初期の教育委員会法のもとでは,教育委員は住民の直接選挙で選ばれることになっていましたが,1956年の地方教育行政法制定に伴い,首長の任命で選ばれる方式に変わりました。簡単にいうと,公選制から任命制になったわけです。

 こうなると,首長の好みによって,教育委員の構成に偏りが出てくる恐れがあります。そこで,委員の任命に際しては,「委員の年齢,性別,職業等に著しい偏りが生じないように配慮するとともに,委員のうちに保護者である者が含まれるようにしなければならない」と法定されています(第4項)。2007年の地方教育行政法改正により,保護者の選任義務が明確に規定されたことがポイントです。児童生徒の保護者の意見を教育行政に色濃く反映させることを狙っています。

 文科省『教育行政調査』によると,2009年5月1日時点において,全国の市町村教育委員会の委員は7,495人いるそうです。このうち,保護者は2,066人とのこと。よって,末端の市町村委員会委員に占める保護者の比率は27.6%となります。2001年の12.1%よりもかなり増えています。上記の法改正の影響も大きいことでしょう。
 http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001028814&cycode=0
 
 私は,この値を県別に出してみました。下の表をご覧ください。2001年と2009年5月1日のものです。最大値には黄色,最小値には青色のマークをしてあります。


 2009年でみると,最も高いのは佐賀の34.2%,最も低いのは山梨の20.8%です。教育委員に占める保護者率には,13ポイントほどのレインヂ(極差)があります。47都道府県の標準偏差を出すと,2001年が3.87,2009年が3.07です。委員の保護者率の地域差は,縮まってきています。各県とも,保護者を選任することに懸命になったことの表れでしょう。神奈川では,7.3%から33.1%と,保護者率が4.5倍にも増えています。


 2009年の保護者率を地図化すると,上記の図のようになります。教育委員の保護者率は,東北の諸県で比較的高いようです。子どもの学力上位,博士号取得教員の積極採用など,いろいろと注目を集めている秋田ですが,このような偉業は,教育行政に保護者の意向が反映されていることの所産でしょうか。

 保護者率が最も低い山梨ですが,7月28日の記事でみたように,この県の小・中学校教員の離職率は全国で最も高い水準にあります。教員の離職率の高さと,教育委員の構成との間に,何か関連でもあるのでしょうか。

 こうみると,教育委員の構成というのは,各県の教育の有様と,無関係ではないようです。文科省の『教育行政調査』からは,各県の委員の年齢構成や職業構成,さらには在職期間の構成をも知ることができます。これらを説明変数,教員の離職率を被説明変数に据えた分析をしてみるのも一興かと思います。

 みなさま,よいお盆休みをお過ごしください。

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