2011年10月17日月曜日

秋田・福井の教員集団

 文科省の『全国学力・学習状況調査』における教科の平均正答率をみると,秋田と福井が常に上位を占めています。なぜでしょうか。この問いには,お上も関心があるらしく,現地に調査団を派遣するという熱の入れようです。
http://www.asahi.com/edu/news/chousa/TKY201008210151.html?ref=recc

 理由としては,いろいろなことが考えられるでしょう。分かりやすい授業を行っている,教員が実践的な研修を頻繁に行っている・・・など。しかるに,こうした教育実践の中身を吟味する前に,まず注目すべきなのは,教育実践の担い手たる教員集団の組成がどのようなものかです。

 年齢構成はどうか,どういう経歴(学歴)の者が多いか,というようなことです。教育実践の有様は,こうした基底的な条件に規定されている側面があります。この部分に注目しないで,先進地域の優れた実践が紹介されたとしても,「フン,あの地域とウチは条件が違うんだよ。真似なんかできるかい。」というような陰口がたたかれることになります。

 私は,2007年の文科省『学校教員統計調査』をもとに,秋田と福井における,公立小学校の教員集団の特性を明らかにすることを試みました。下の表は,同年の10月1日時点における教員数,教員集団の組成,ならびに教員の勤務条件指標の値を整理したものです。両県の特性が検出できるよう,全国値との比較を行います。


 まず,上段の教員数の箇所をみると,両県では,児童100人あたりの教員数が全国水準よりも多いようです。両県において,分かりやすい授業が行えることの条件の一つは,こうしたTP比の高さにあるといえないでしょうか。

 次に,教員集団の組成をみると,両県では,20代の若年教員が比較的少ないようです。その分,ベテラン教員が多いことがうかがえます。学歴では,教員養成系大学出身者が際立って多いことが知られます。両県とも80%以上であり,全国値との差が明白です。加えて,福井においては,大学院修了者(=専修免許保有者)が相対的に多いことも注目されます。

 最後に,下段の勤務条件指標をみると,秋田と福井では,給与水準が全国値よりも高くなっています。両県では,民間の給与水準は高くないでしょうから,民間と比した教員の給与水準の高さは際立っているものと思われます(この点については,1月18日の記事をご覧ください)。一方,週当たりの担当授業時数の平均値は,全国値を下回ります。秋田と福井では,教員の勤務条件は比較的よいといえそうです。

 いかがでしょうか。このように大雑把に観察してみるだけでも,両県の(相対的な)特徴として,①ベテラン教員が多い,②教員養成系大学出身者が多い,③大学院修了者が多い,④教員の待遇がよい,というようなことが示唆されます。両県を対象とした調査の報告書をまとめるのであれば,最初に,こうした基底条件の存在について,ぜひ言及していただきたいものです。

 ところで,上記の①~④の中で,最も際立っているのは②でありましょう。10月8日の朝日新聞によると,秋田の好成績の要因として,秋田大学教育文化学部の教員養成力が大きい,といわれています。同大学の同学部は,まぎれもなく教員養成系大学です。
http://www.asahi.com/edu/news/TKY201110070252.html

 はて,教員養成系大学の「底力」は本当なのでしょうか。公立小学校教員について,教員養成系大学出身者の比率を県別に出し,地図化すると,以下のようです。2007年10月1日時点の統計によるものです。


 秋田と福井は,最も高い80%以上の階級に含まれます。首都圏や近畿圏のような都市部では,この比率は小さいようです。東京は48.8%,大阪は48.0%です。この比率は,児童の学力水準と相関しているのでしょうか。分析はまだしていません。面白い結果が出たら,報告いたします。

 回を改めて,今度は,秋田と福井における教育実践の中身に関連する統計をみてみようと存じます。文科省の『全国学力・学習状況調査』の学校質問紙調査では,対象となった学校に対し,授業のやり方や教員研修の頻度などについて尋ねています。この結果を使うつもりです。

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