2013年11月24日日曜日

留学志向の国際比較

 11月20日の読売新聞Web版に「韓国留学熱,父親に重圧・・・孤独,仕送り,自殺も」と題する記事が載っています。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131120-00000225-yom-int

 学歴社会である韓国では,母子連れだって早期留学する傾向が強く,一人残された父親が孤独や仕送りの重圧に苛まれて自殺にまで至る。こうした悲劇が頻発しているとのことです。やたらと推奨される(早期)留学ですが,こういう影の面もあるのだな,と感じました。

 私はこの記事を読んで,留学志向の国際比較をしてみたくなりました。国別の留学生数がないかと,OECDの “ Education at a Glance 2013 ” にあたったところ,留学生の出身国の構成比が載っていました。各国の高等教育機関で学んでいる留学生の,出身国の内訳です(2011年のデータ)。主要国の数値は,以下のごとし。

 日本 ・・・ 1.0%
 韓国 ・・・ 3.6%
 米国 ・・・ 1.4%
 英国 ・・・ 0.7%
 独国 ・・・ 3.1%
 仏国 ・・・ 1.6%

 調査に回答した,世界各国の留学生全体での比率ですから,こんなものでしょう。最も高いのは韓国の3.6%ですが,この国の高等教育該当年齢人口が他国よりも少ないことを考えると,これだけからも,隣国の留学志向の強さをうかがい知ることができます。

 ここにて,高等教育対象の年齢人口の量を考慮して,各国の留学志向を測る尺度を計算してみましょう。下の表をご覧ください。


 左欄は,上記資料に掲載されている,留学生の出身国内訳です。数値が分かるのは42か国であり,残りの45.7%は「その他」として括られています。ひとまず,この42か国を比較対象としましょう。留学生欄の万分比は,42か国から送り出されている留学生の合計を1万人とした場合の国別内訳です。

 私は,この留学生の万分比を,高等教育該当年齢人口(15~29歳人口)のそれと照合してみました。後者の出所は,国連の人口推計サイトです。
http://esa.un.org/unpd/wpp/unpp/panel_indicators.htm

 どうでしょう。お隣の韓国は,高等教育該当年齢人口では,42か国全体の0.922%しか占めていませんが,留学生の中では6.554%を占めています。よってこの国からは,通常期待されるよりも,7.1倍多く留学生が輩出されている計算になります(6.554/0.922 ≒ 7.10)。この値でもって,各国の留学志向の強さを測ることとしましょう。留学生輩出率と呼んでおきます。

 右端の欄にて42か国の留学生輩出率をみると,トップはルクセンブルク,2位はアイスランド,3位はスロバキア,4位はアイルランド,5位はエストニア,となっています。いずれもヨーロッパの小国ですが,距離的に近い先進国(英独仏)への留学生が多いものと思われます。

 色をつけた主要国の中でみると,韓国が最も高いようです。冒頭の記事でいわれている「韓国留学熱」,さもありなんです。日本は1.01であり,人口統計からみた期待値と同程度ですか。世界の知が集積する米国では,学問への需要が国内で十分満たされるのか,国外への留学志向は低いようです。

 全体の傾向の俯瞰するため,留学生輩出率を高い順に並べたランク図も掲げておきます。値がかっとんで高いルクセンブルクは非掲載です。


 地理的に隣接し,社会文化的な条件も近似している韓国と日本ですが,両国の位置は大きく離れています。しかるに今後,日本の位置は徐々に上がっていくのではないかと思われます。4学期制を導入し,学生の留学を後押ししようという大学も出てきていますしね。早期留学も次第に普及してくることでしょう。

 しかしそうなったとき,冒頭の記事でいわれているような病理現象が起こらないかどうか。文化を同じくする韓国の現在の有様は,わが国の先行きを映し出している鏡ともいえます。子どもの教育という点において,いちはやくグローバル化の波に乗っている(晒されている)隣国において何が起きているか。われわれは,つぶさに観察する必要がありそうです。

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