2012年11月22日木曜日

餓死者数の長期推移

 11月15日の記事では,近年になって餓死者が増えていることをみました。飽食といわれる現代日本での現象であるだけに,注目されるべきことです。

 上記記事では,1997年以降の推移をたどったのですが,今回はもっと遡って,戦後初期の頃からの変化を跡づけてみます。ソースは,厚労省の『人口動態統計』です,今日,総務省統計局の図書館に出向いたので,本資料のバックナンバーにあたって,数字を採取してきました。

 ここでいう餓死者とは,以下の死因による死亡者のことをいいます。

 1950年~1994年 ・・・ 「栄養欠乏」+「飢え,渇,不良環境への放置」
 1995年以降 ・・・ 「栄養欠乏」+「栄養失調」+「食料の不足」

 1994年までの「栄養欠乏」の中には,栄養失調も含まれます。95年以降は,栄養欠乏と栄養失調のカテゴリーが分かれているので,整合性を持たせるため,両者を合算しました。11月15日の記事では,「栄養失調」と「食料の不足」を足した数を餓死者としましたが,今回の分析では,栄養欠乏も加えています。ゆえに,先の記事とは数が異なることに留意ください。

 上記の意味での餓死者数は,1950年から2011年の約60年間において,下図のように推移してきています。


 食べ物にも事欠いていた戦後初期の頃では,餓死者が多かったようです。1950年(昭和25年)では,9,119人。しかし,社会が安定するとともに餓死者数はぐんぐん減り,10年後の1960年には1,362人にまで減少します。

 高度経済成長期が終わる頃の1970年には622人となり,以後,70年代から80年代にかけては大よそ500人前後で推移します。

 陰りが見え始めるのは,1990年代以降です。この時期から餓死者数は増加に転じ,阪神大震災が起きた1995年には1,000人を超えます。今世紀初頭の2001年には1,500人を超え,それから10年を経た2011年現在では2,053人となっています。とうとう2,000人突破です。

 現在の餓死者数は,1950年代後半の頃の水準に立ち戻っています。90年代以降の不況や孤族化の影響がまざまざと表れています。

 最近10年間のトレンドでいうと,餓死者の年間平均増加数は50人ほどです。今後もこの傾向が続くとすると,今から20年後の2030年あたりには,餓死者数は3,000人を超えることが見込まれます。これは,1954年の数と同じくらいです。

 餓死者数の恐怖のU字カーブが描かれることになるのか。加速度的に進む高齢化・孤族化,そして生活保護制度の抜本見直しなど,そうした事態が実現することの条件が多く出てきています。生活保護の不正受給はけしからぬことですが,生存権を保障するための最後のセーフティネットを根こそぎ破壊することがあってはなりません。

 雨宮処凛さんの『14歳からわかる生活保護』(河出書房新社,2012年)を,図書館から借りてきました。こういう本を読んで,知的武装を図ることも大切かと。
http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309616766/