2017年4月21日金曜日

大学タイプ別の奨学金利用率・延滞率

 日本学生支援機構が,「学校毎の貸与及び返還に関する情報」という資料をHP上で公開しました。字のごとく,学校ごとに奨学金の貸与者数や返還の延滞者数などが分かるものです。
https://www.sas.jasso.go.jp/ac/HenkanJohoServlet

 私の母校の東京学芸大学のデータを呼び出してみると,2015年度の学生数は4824人で,このうち奨学金貸与者は1540人。よって奨学金の利用率は31.9%,およそ3人に1人となります。私も,その恩恵にあずかっていた学生の1人です。

 奨学金といっても借金ですので,学生時代に借りていた人は卒業後にちょっとずつ返すわけですが,経済的理由などで返済が滞っている人の割合はどれくらいでしょう。

 2010~14年度の5年間における,同大学の奨学金貸与終了者数は2646人です。借用書を提出し返済義務を負っている人たちですが,このうち,2015年度末の時点において,3か月以上返済が滞っている人(延滞者)は15人。出現率にすると0.6%ほどです。

 これが東京学芸大学の奨学金利用者の返済延滞率ですが,まあ低い部類に入るでしょうね。教員養成大学の老舗で,卒業生の多くは教育公務員になりますので(私みたいな半フーテンもいますが)。

 しかるに,大学によって値は大きく異なるでしょう。一口に大学といっても,国公私立の大学がありますし,量的に多い私立大学は,入試難易度によって精緻に階層化されています。

 興味が持たれるのは,こうした大学のタイプによって,学生の奨学金利用率や,奨学金利用者の返済延滞率がどう異なるかです。ユニバーサル段階(大学進学率50%超)に到達している,わが国の大学教育の「見えざる」病理が明らかになるかもしれません。

 私は上記サイトの資料をもとに,関東甲信越・東京の大学のデータベースを作ってみました。私立大学については,入試偏差値も明らかにしました(資料はココ)。擁している学部の偏差値を平均し,当該大学の偏差値とした次第です。

 こんな感じのデータベースです。


 関東甲信越・東京(1都9県)のデータですが,260の大学について,奨学金利用率,延滞率,入試偏差値を得ることができました。

 私は,分析対象の260大学を,8つのグループに分けました。①国立,②公立,③私立A(偏差値60以上),④私立B(55~),⑤私立C(50~),⑥私立D(45~),⑦私立E(40~),⑧私立F(40未満),です。

 まずは,この8つのグループごとに,学生の奨学金利用率がどう違うかをみてみましょう。分母の学生数と,分子の貸与者数をグループごとに集計し,割り算をしました。下表をご覧ください。


  奨学金の利用率は,国立が29.9%,公立が40.0%,私立が27.8%となります。公立で高いには,地方の低所得層の学生が多いためでしょう。公立大学の機能は,こうした層の若者に高等教育の機会を供することです。

 意外にも私立が最も低くなってますが,いわゆるランク(偏差値)によって値が違っています。偏差値60以上のAランクでは21.8%ですが,最低のFランクでは40.0%です。俗にいう「Fラン」では,経済的に苦しいが,無理をして大学に来ている学生も少なくないでしょう。私もこの手の大学で6年間教えましたが,その経験に照らしても頷けます。

 では,借りた奨学金をちゃんと返せるものなのか。同じく大学のタイプ別に,奨学金返済の延滞率を出してみましょう。


 むうう。こちらはきれいな傾向がありますね。国立よりも公立,私立大学の内部では,大よそランクが下がるほど,奨学金の延滞率が高くなっています。Aランクでは0.91%ですが,Fランクでは2.69%,およそ37人に1人です。

 率の水準は高くはないですが,こうも明瞭な傾向が見出されることに,ちょっと驚かされます。「奨学金が支えるFランク」,「Fランクは,ATMのあるパチンコ屋のようなもの」という論もありますが,的を得ている気がしないでもない……。
http://toyokeizai.net/articles/-/114808

 大卒学歴が欲しいばかりに,奨学金という借金を背負って,無理をして入ってくる。卒業後,それが返せなくて人生が破たんする。こういう「死」のコースに若者を呼び込んでいるのだとしたら,果たして存在意義はあるのか。先述のように,私はこの手の大学で6年間教えましたが,教育機関として機能してない……。在学中にかけて,学生の覇気がなくなってくるように感じました。

 この大学の学生から,「先生は,俺らが食わせてるんですよね」と言われたことがありますけど,私は何も反論しませんでした。教育機関としてではなく,そこに在籍する教員を食わせるためにある。そんな思いがぬぐえなかったからです。

 言葉がよくないですが,ユニバーサル化した,日本の大学教育の病巣を見る思いです。今後,この部分がますます広がるとしたら恐ろしい。

 気が滅入ってきましたので,話題を変えましょう。上記の奨学金利用率,延滞率は,大学の立地するエリアによっても違っています。ここで分析対象としているのは,関東甲信越・東京の260大学ですが,東京の大学とそれ以外の大学に分けて,2つの指標を計算すると,差が見られます。

 下図は,結果のグラフです。指標の定義は,先に掲げた2つの表をご覧ください。


 学生の奨学金利用率は,東京では24.0%ですが,それ以外の9県(茨城,栃木,群馬,埼玉,千葉,神奈川,新潟,長野,山梨)では39.3%です。返済の滞り率も,東京以外の県の大学のほうがちょっと高くなっています。

 所得水準の低い地方では,奨学金に依存せざるを得ない家庭が多いのでしょう。分析対象を全国に拡張したら,もっと明瞭な傾向が出てきそうです。沖縄や東北の奨学金利用率をざっと見てみると,6~7割の大学がザラです。延滞率も4~5%という,高率の大学も少なくありません。

 その気になれば,47都道府県別に,奨学金の利用率と延滞率を計算することができます。データベース作りに時間がかかりますが,結果が出たら,この場で報告したいと思います。

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