2017年4月17日月曜日

職業別の高学歴率

 学歴が高いのはどの職業か?所得と並んで,これなどもそれぞれの職業の威信(prestige)を測る尺度となります。

 こういうデータは週刊誌でたまに見かけますが,就業者全体の大卒率などをとっていますので,各職業の年齢構成の影響が入ってしまっています。昔は大学進学率は低かったですから,高齢者が多い職業の大卒率は当然低くなると。

 ここではそうした弊を除くべく,若年の就業者に限定して,大卒以上の学歴の%値を比較してみます。25~34歳の就業者のうち,大学・大学院卒が何%いるかです。

 2012年の『就業構造基本調査』によると,最終学歴が分かる25~34歳の就業者は1183万人ほどです(10月の調査時点)。このうち,最終学歴が大卒ないしは大学院卒である者は474万人。よって,大卒・大学院卒比率はちょうど4割ということになります。

 今は大学進学率が5割を超えていますが,そのちょっと前の世代ですので,まあこんなところでしょう。

 では,職業別にみるとどうか。上記の資料の職業中分類統計を使って,68の職業について,同じ値を計算することができます。若い世代に限った,高学歴率の職業ランキングを見ていただきましょう。


 若年の就業者の高学歴率は,職業によってかなり違っています。トップの医師は99.5%,ほぼ全員です。これは当然ですよね。2位は経営・金融・保険の専門職,3位は研究者となっていて,これら3つは9割を超えます。

 8割を超えるのは,教員までです。幼稚園や小学校の教員には短大卒が結構いますので,大卒率は87%くらいになっています。

 表の青い点線のラインは,全職業の高学歴率(40.04%)の位置です。このラインより上にあるのは,平均水準に比して,高学歴化が進んでいる職業ということになります。人数的に多い一般事務やアーティストなども,そうなのですね。

 下のほうには労務系の職業がありますが,安定していて高収入の鉄道運転従事者の高学歴率が高くないのは,初めて知りました。上野に,電車の運転手を要請する専門の高校があると聞きますが,こういう学校の卒業者が多いのでしょう。実は私も中2の時,「鉄道系の高校に行く」と親に言って,驚かれたことがありますけど。

 職業の学歴差が出るのは,求められる知識や技能の水準に違いがあるためです。医師や教員は,免許を取るのに大卒学歴が必須。一番わかりやすい,機能主義理論による説明です。

 しかし,現実はそれだけでは説明できません。コリンズは名著『資格社会』において,「葛藤主義理論」を提唱しています。それぞれの職業集団が自らの威信を高めようと,機能的必要とは無関係に,参入者に高学歴を(競って)要求する。

 今の日本には,こちらのほうがよくフィットするでしょう。企業が高学歴者を好んで雇うのは,彼らの知識や技術に期待してのことではありません。「大卒なら間違いなかろう,覚えがよかろう」と踏んで,自社への入社資格として大卒学歴を求めているだけのこと。

 2012年の中教審答申で,今後は教員志望者には大学院修士の学位をつけさせようという案が出ましたが,これだって,子どもに教える知識内容の高度化といった,機能的必要から迫られたことではありません。今は保護者の多くが大卒なんで,箔をつけさせるべく,教員の学歴水準を一段高くしようと目論んでいるだけのこと。

 こんなしょーもない「見栄」で競い合って,どの職業の要求学歴水準も,機能的必要とは無関係に高くなっていく。その結果,一人前のハードルが無意味に引き上げられ,保護者にすれば長期の教育費負担を強いられ,少子化が進行する。こういう病理が潜んでいることも,見抜かないといけません。

 ちなみに日本は,「自分の学歴は,今の仕事に求められる学歴よりも高い」と考える労働者の割合が,世界で最も高いそうです(OECD「PIAAC 2012」)。

 採用する側は,学歴という安易なフィルター(シグナル)に依存しすぎるのは慎むべきでしょう。

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