2017年4月25日火曜日

大学進学展望のジェンダー差の国際比較

「どの段階の学校まで進みたいか?」。青少年を対象としたアンケートでよく設けられる問いですが,大学進学率が50%を超えている日本にあっては,多くが大学ないしは大学院まで行きたい,と答えるでしょう。

 しかるに性別の差,ジェンダーの差もあると思います。昔は,女子には大学教育は不要という考えが強かったですから,勉強が好きでも進学を止められる少女が少なくありませんでした。私の母親(1940年生)もその一人で,進学を止められたそうです。

 今でも,男女の子どもが2人いて,経済的事情で1人しか大学にやれないとなったら,勉強の出来に関係なく男子優先。こういう家庭もあるかもしれません。言いたくはないですが,私の郷里の鹿児島では,その度合いが顕著なような気がする。私は毎年,47都道府県の大学進学率を性別に出していますが,どの年でも,ジェンダー差が最も大きいのはこの県なのです。

 2016年春の18歳人口ベースの大学進学率は,鹿児島でみると男子が41.4%,女子が30.1%で,10ポイント以上も開いています。
http://tmaita77.blogspot.jp/2016/08/2016.html

 これは国内比較ですが,視界を広げて国際比較をしたいなと思っていたところ,OECDの「PISA 2015」の生徒質問紙調査にて,以下ような設問があるのを知りました。問11です。


 どの段階の教育まで終えることができると思いますか,という問いです。「want」ではなく「expect」ですので,自分の将来を予想してもらうものです。

 選択肢は6つ提示されていますが,ISCEDとは教育の段階分けの国際標準をいいます。レベル2は義務教育,3B~Cは後期中等教育の職業課程,3Aは後期中等教育の進学準備課程,4は高等教育とはみなされない中等後教育,5Bは職業的な高等教育,5A~6はアカデミックな高等教育(3年以上)を指します。

 日本でいうと,レベル2は中学,3B~Cは高校専門学科,3Aは高校普通科,4は専修学校,5Bは短大・高専,5A~6は大学・大学院ということになるでしょう。

「PISA 2015」の調査対象は15歳生徒ですが,当然,回答の分布は国によって違っています。レベル4以下は一つにまとめて,3段階の回答分布を日米で比べると下図のようになります。ジェンダー差も見ます。サンプルサイズは,日本の男子が3270人,女子が3281人,アメリカの男子が2974人,女子が2817人。無解答を除いた,有効回答分です。


「5A or 6」と答えた生徒が,自分は大学まで行けると思っている生徒です。アメリカのほうが高いですね。現実にも,この国大学進学率は日本を上回っているのですが。

 しかるに注意すべきは,ジェンダーの差が日米ではになっていることです。日本では男子が64.4%,女子が52.8%と,男子のほうが10ポイント以上高いのですが,アメリカでは女子のほうが高くなっています。

 これは,短大やコミュニティカレッジなどは含まない,大学・大学院の進学展望率です。まあこの中にも,教養重視のコースや高度専門職の資格のコースなど,いろいろありますが,男女差が両国で反対なのは面白い。

 はて国際的にみて,日本とアメリカのどっちのタイプがマジョリティなのでしょうか。私は53の国について,「5A or 6」の段階まで進むと思うと答えた生徒の割合を男女別に出してみました。大学進学展望率と名付けましょう。

 下表は結果の一覧です。


 色付きの主要国をみると,日本,韓国,アメリカは率の水準が高いですね。進学率が高く,大学教育がユニバーサル段階に達している国です。余談ですが,今朝,韓国の高学歴者の失業問題を報じた記事を見ました。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170425-00027148-hankyoreh-kr

 しかし注目すべきは男女差です。日本とドイツを除いて,どの国も「男子<女子」ではないですか。ドイツも微差で,日本ほど「男子>女子」の傾向がクリアーではありません。

 表を全体的にみても,大学進学展望率は男子より女子が高い国がほとんどです。男子が女子より10ポイント以上高い国なんて,日本以外に見当たりません。

 表の数値の羅列では分かりにくいので,男女差をグラフで「見える化」しちゃいましょう。横軸に男子,縦軸に女子の大学進学展望率をとった座標上に,53の社会を配置します。斜線は均等線で,この線より上にある国は「男子<女子」です。


 ぐうう。日本とドイツを除く全ての国が斜線より上にあるじゃないですか。これは驚きです。短大のような短期高等教育は含まない,大学・大学院の進学展望率ですが,国際的にみると「男子<女子」の国がほとんどなのですね。

 女子は教養重視の課程を志望する子が多いのかもしれませんが,それは日本も同じでしょう。にもかかわらず,日本の特異性が怖いくらい浮き出ている。

 15歳の時点でコレです。日本は,教育アスピレーションのジェンダー分化(gender segregation)が最も早い社会といえるかもしれません。カリキュラムの専門分化が起きる前の,義務教育を終えて間もない時点でこうなってしまっている。

 いつ頃からこうなるのか,どういう地域の学校でそれが顕著か。小6と中3を対象とした悉皆調査の『全国学力・学習状況調査』のローデータが研究者に提供されることになるそうですが,それをフルに使って,児童期・思春期における「ジェンダー的社会化」のプロセスが解明されるといいなと思います。

 小6と中3のデータを同一世代で接合することで,こういう分析も可能になるでしょう。

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