全国一の短命の青森県ですが,塩分の摂り過ぎが原因ではないかということで,「スープは残してください」と張り紙をするラーメン屋さんも多いそうです。ラーメン好きには辛いですね…。
しかし,本県の塩分摂取量は全国一ではありません。2016年の『国民健康・栄養調査』によると,本県の成人男性の塩分摂取量は46県中8位です(熊本県は除く)。各県の塩分摂取量は,平均寿命と有意な相関関係にはありません。
飲酒率も然り。厚労省『国民生活基礎調査』(2016年)から,毎日飲酒する成人の率を出し,平均寿命との相関をとると,マイナスではありますが有意とは認められません。
あと思いつく不健康因子は喫煙ですが,こちらは飲酒にもまして地域差が大きくなっています。下図は,「毎日喫煙する」と答えた人の率の年齢カーブを,全国と青森県で比べたものです。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/20-21.html
毎日喫煙率は40代以降は下がり,60歳を超えた高齢期では地域差がほとんどなくなります。健康を意識し,タバコを控える人が増えてくるのでしょう。
しかるに,30~40代の働き盛りでは差が大きくなっています。禁煙は早いほどいい,若い頃の喫煙は,取り去ることのできないダメージをもたらすと言いますが,この年齢層の喫煙率の差が,平均寿命とリンクしてはいないか。
私は,30~40代の毎日喫煙率と,男性の平均寿命のデータを都道府県別に揃えました。前者は,2016年の『国民生活基礎調査』から計算した者です。後者は,先日公表された2015年の『都道府県別生命表』から得ました。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/tdfk15/index.html
下表は,都道府県別のデータの一覧です。熊本県は震災の影響で,2016年の喫煙率は出せませんでした。
30~40代の喫煙率は20.5%~35.2%,男性の平均寿命は78.7歳~81.8歳までの開きがあります。
どうでしょう。喫煙率が高い北東北の3県(青森,岩手,秋田)は,平均寿命が80歳を下回っています。逆に喫煙率が低い東京や京都は,寿命が比較的長いような…。
傾向がどうであるかは,相関図を描けば一目瞭然。横軸に喫煙率,縦軸に寿命をとった座標上に,熊本県を除く46県を配置してみます。
ほう,右下がりですね(相関係数は-0.5965)。30~40代の喫煙率が高い県ほど寿命が短いという,有意なマイナスの相関関係です。
地域単位の相関関係から,個人の行動レベルの因果関係を引き出すことは慎むべきですが,こういう事実もあるんですね。
寿命の規定要因については,個人レベルのアンケート調査をもとに,いろんな因子を取り込んだ重回帰分析がされているのでしょうが,上記のグラフを試しにツイッターで流した所,多くの方が見てくださいました。喫煙と寿命の相関のデータって,あまり出されていないのかしら。喫煙の害がいろいろ叫ばれている割には。そこで,ここにも載せておこうと思いました。
タバコへの風当たりが強く,今は大学の建物は全面禁煙で,吸う人は外に出ないといけない。吸った後は一定時間経たないと,エレベータに乗っちゃダメ。厳しくなったもんです。
亡き恩師はヘビースモーカーでしたが,今の時期に大学に勤められていたら発狂されたかもしれません。
論文の個別指導の時も,遠慮なくスパスパされる先生でしたが,研究室の密室なんで,私もうんと煙を吸わされました。今なら大問題になるでしょうが,不思議と嫌な気持ちはしませんでした。「長生きなんてしてもしょうがない」。こういう思いを,師弟で共有していたからかな…。
考えは人それぞれ。タバコだけをやり玉に挙げる,今の風潮にはちょっとばかり違和感を持ってはいます。