2019年10月4日金曜日

『特別支援学校らくらくマスター』(2021年度版)

 実務教育出版より,『特別支援学校らくらくマスター』『小学校全科らくらくマスター』の出来本が届きました。来年夏実施の2021年度採用試験に向けて使っていただくものです。10月8日ころ,発売の予定です。


 両方とも,最新の出題傾向に合わせて毎年刊行していますが,特別支援学校のほうは大幅リライトしています。過去5年間の典型過去問を取り寄せ,仕分けし,章やテーマの構成をかなり変えました。

 特別支援学校とは,障害のある子どもの教育を行う学校のことです。2006年までは,養護学校,聾学校,盲学校というように分かれていましたが,2007年度から特別支援学校に一本化されています。障害のある子どもの教育の名称が,特殊教育から特別支援教育に変わったことも注目。障害児は特殊なのではなく,特別のニーズを持つだけの存在です。

 特別支援教育は,通常の学校でも行われます。その主な場は特別支援学級で,軽度の障害のある子どもは,通常の学級に籍を置きつつ,週に何時間か特別の指導を受ける「通級による指導」の対象になります。

 上記の書物は,特別支援学校の教員志望者向けのものですが,通常学校の教員を志す学生さんにも役立つかと思います。小・中・高校にも,特別な支援を要する子はいますので。たとえば,発達障害の子などです。

 最新の『特別支援学校らくらくマスター』は,①特別支援教育の基礎,②特別支援学校,③障害の理解,④障害の診断・検査,⑤時事事項,の5つの章からなります。この5つの章立ての下,合計62の小テーマを盛り込んでいます。


 上記は,最初のテーマ1です。文科省の公的資料をもとに,特別支援教育とは何ぞやを解説しています。重要語句を赤字にし,フィルムで隠した暗記学習ができるようにしています。実際の試験で出る空欄補充問題さながらの学習が可能です。

 お堅い公的資料の原文の紹介がメインになるのはやむを得ないですが,図や表組の整理も多用し,トーンが単調にならないよう工夫を凝らしています。以下は,障害児教育史の重要人物のまとめです。


 既に勉強を始めている方はお分かりでしょうが,特別支援学校の試験では,障害の医学的な事項が出題されます。網膜色素変性といった病名を選択肢なしで書かせる,オージオグラムから平均聴力を計算させる,日常用語を点字で表記させるなど,難易度の高い問題がガンガン出題されます。

 一番の難関はココで,頭を抱えている受験生が多いでしょうが,過去問を眺めてみると,出題元の資料はほぼ決まっています。文科省の『教育支援資料』(2013年)です。問題を作成する側も,医学のプロではないので,こういう資料に頼らざるを得ないようです。出題ミスも怖いですし…。
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/material/1340250.htm

 上記のリンク先から現物に飛んでみると,視覚障害,聴覚障害,知的障害,肢体不自由といった障害種ごとに,障害の概要や指導方法について詳述しています。『特別支援学校らくらくマスター』では,この公的資料をもとに,障害の概要,求められる合理的配慮,ならびに指導方法の3本立てで整理しています。以下は,視覚障害の概要の部分です。


 私なりに原資料の内容を咀嚼したうえで,内容の配列や盛り方を工夫しています。手前味噌ですが,本書の「障害の理解」のチャプターをきちんと押さえれば,障害の医学事項の問題の8割は正答できるかと思います。赤字をフィルムで隠したドリル学習を反復しましょう。難解な医学書を紐解く必要はないです。

 教員採用試験の本は他社からも多数出ていますが,特別支援学校の試験対策用は,片手の指で数えるほどしか出ていません。この分野の執筆を担当できる人がいないのでしょうか。

 『特別支援学校らくらくマスター』は,その少数の本の中でも,一番売れているようです。アマゾンで「教員採用試験 特別支援学校」で検索すると,最上位のおススメ本として出てきます。


 試験を受験する学生さんだけでなく,特別支援学校の現職の先生にも使っていただいているようでありがたや。ある特別支援学校の教頭先生からは,「内容がコンパクトにまとまっており,毎年,研修のテキストとして使わせてもらっています」という,ありがたいメッセージもいただきました。

 現在は,インクルージョンの時代です。障害のある子の教育を担う特別支援学校の教員,特別支援教育の素養を身に付けた人材への需要は,ますます高まるはずです。教員採用試験の受験者だけでなく,障害児教育の全般を幅広く学びたいという全ての方に,本書を手にとっていただきたく存じます。

 実は私の亡き母は,晩年は重度のリウマチで寝たきりの状態でした。身体障害者手帳の1級も取得していました。私が本書の執筆を引き受けたのは,こういう身の上もあってのことです。