2019年10月31日木曜日

年収と情報機器の所持率

 国立青少年教育振興機構は,2年おきに『青少年の体験活動等に関する実態調査』をしています。最新は2016年度調査で,個票データも公開されています。申請すれば,CD-ROMで送ってもらえます。

 調査対象は,小学校1~6年生,中学校2年生,高校2年生で,小学生については保護者調査も実施されてます。家庭の年収もバッチリ訊いています(問14)。調査設計に,教育社会学者が加わっているのでしょうね。ここの前理事長は,千葉大名誉教授の明石要一先生でした。

 個票データを使って,各設問への回答を,家庭の年収とクロスさせてみると面白い。保護者調査の問11にて,スマホ,・パソコン等の機器(専用)を,子どもに持たせているかと問うています。日本の子ども・若者の情報機器所持率が低いのは分かっていますが,家庭環境との相関はまだ明らかにしてませんでした。

 おそらくは,裕福な家庭ほど所持率は高いだろう。中学生や高校生ではそういう階層差は小さいだろうが,小学生,とりわけ低学年の児童ではそれが大きいのではないか。私はこういう仮説をもって,データを分析してみました。結果は,昨晩にツイッターで発信した通りです。意外な結果ゆえか,見てくださる方が多くなっています。

 ただ,小学校1年生の児童を家庭の年収階層(7階層)で分けたら,サンプルが少なくなるのではないか,という疑問が寄せられています。そうですね。最も低い200万未満と,最も高い1200万以上の層は100人を割ります。

 ここでは,小学校1年生と2年生の低学年サンプルを取り出して,年収別の所持率を出してみます。これだと,どの群も200人以上の母数を確保できます。下の表は,スマホ,タブレット,パソコンの所持率の階層差です。正確には,低学年のわが子に,当該の機器(専用)を持たせている保護者のパーセンテージです。


 昨日,ツイッターで流したデータと近似しています。スマホの所持率をみると,費用がかかるので年収と比例するかと思いきや,そうではありません。

 200万未満の層が19.3%と最も高く,600~700万円台の階層まで低下し,その後反転して上昇する「U字」型になっています。低学年児童のスマホ利用層は,貧困層と富裕層に割れているようです。

 私はこのデータをみて,どこかで聞いた「貧困層ではスマホ育児が多い」説を思い出しました。子どもに構う時間的・精神的余裕が親になく,四角い物体を子どもに持たせて,ひとまず黙らせると。富裕層の用途は,これとは違います。現職の小学校の先生は,「年収低い層が子どもを手っ取り早く黙らせるために持たせるか,年収の高い層がより能力を伸ばすために持たせるか」の違いだと言われています。
https://twitter.com/sunostrism/status/1189523005795233792

 エグイ言い方ですが,的を射ているような気がします。あとは,親が子どもと接する時間とリンクしているようにも思えます。貧困層には一人親世帯などが多く,富裕層にはバリバリの共稼ぎ夫婦が多し。こういう家庭が,わが子との連絡手段ないしは安否確認の手段としてスマホを持たせていると。

 タブレットは,スマホに比して,貧困層ほど所持率が高い傾向が明瞭です。

 「だからどうした?」という話ですが,親の監督もなく,幼少期より一人で電子機器に見入ることで目が悪くなる,ないしは姿勢が悪くなるといった,健康不良には注意をしたいものです。こういう要素も,家庭環境による子どもの健康格差につながっているといえるでしょう。

 なお,家庭の年収階層を問わず,専用のパソコンを子に持たせる保護者はわずかしかいません。低学年のデータだからだろと思われるかもしれませんが,中学年,高学年でみても,数値はほぼ一緒です。高学年の富裕層でようやく5%になる程度です。

 多くの親が,インターネットは検索して情報を得るためのツールと思ってるのでしょうね。それならデカイPCなんて不要で,スマホで十分。こういう考えなんでしょうか。ネットで得た原情報を加工し,創作物を生み出し発信する。こういう用途が頭に浮かぶ親御さんが少ないようで,残念な気がします。これからの時代で求められる姿勢は,「創作」と「発信」で,そのために不可欠なツールがPCだと思うのですが…。

 教育のICT化が遅れており,PCが必須の環境が用意されてないこともあるでしょう。北欧の諸国では,PCがないと宿題もできません。

 今回のデータはシンプルなものですが,いろいろな課題を演繹できるものかと思います。


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 インターエデュという会社のサイト記事にて,私のブログコンテンツが不正利用されていました。27日の朝に,地方の高校の先生から「この記事の県別大学進学率,文科省資料には出てらず,舞田さんがブログで出しているものじゃないですか」と情報提供がありました。

 先方に確認したところ,非を認めたので,記事の削除および謝罪の告知をしてもらいました。
https://www.inter-edu.com/article/uni-research/uni-research181205/
 
 1年前の記事で,執筆者や当時の担当編集者はもう会社にいないので,事の経緯は定かでないという回答ですが,私がブログで出している県別大学進学率は,文科省の資料に載っているものだと勘違いしたのでしょうか。でも,私が計算したデータということをブログには書いているのですがね。まあ,悪意はなかったと解釈しておきましょう。

 1年間の営利利用ですので,意地の悪い人なら使用料を相当吹っ掛けるのでしょうが,私は少額の請求にとどめました。謝罪と対応がしっかりしたものでしたので。

 やったことは結果的には「盗用」でけしからんことですが,問題が発覚した後の動きは満点です。ミスは仕方ありません。大事なのは,事が起きてからの対応です。よほど酷い事案でない限り,誠意ある謝罪と普通の対応をしてくれれば,私は事を荒げたりはしません。

 西俊明,およびタナカキミアキは初動を間違えたので,あんな大ごとになったのです。

 タナカキミアキの一昨日の動画を見たら,「私は生き残るためなら手段を選ばない人間だ」と言っています。ほう,ずいぶん正直ですね。あなたを多少知る身として,納得です。

 島倉さんという人が「著作権について認識が甘すぎるユーチューバーに喝!」という動画を出しています。名前は出されてませんが,誰のことやら。5分30秒あたりから,スゴイことが言われています。怖いなあ。

 タナカさん,無職になって,これから「手段を選ばない形で」這い上っていくそうです。「手段を選ばない」はいいですが,ルールはちゃんと守らないといけません。