2020年5月30日土曜日

コロナショックの可視化

 4月の『労働力調査』の結果が公表されました。このページで,主な数値の月別時系列表をみることができます。

 それをみると,コロナの傷跡がまざまざと表れています。それはニュースでも報じられていますが,ジェンダーの視点を絡めると「!」という状況が出てきます。それを淡々とご紹介しましょう。全体を見た後は,層別に見る。データ観察のイロハです。

 まずは失業者数です。調査時点において,職探しをしている人をいいます。2018年1月から今年4月までの推移を描くと,以下のようになります。


 今年になってから右上がりに急増しています。コロナの影響であるのは火を見るより明らかです。有期雇用の人は3月いっぱいで切られることが多いので,4月に増えるのは毎年のことですが,今年は群を抜いています。2019年4月の失業者は176万人でしたが,今年4月は189万人と,前年同月より13万人増です。

 性別でみると,男性は15万人増ですが,女性は2万人減っています。働く必要に迫られる度合いは男性の方が強いでしょうが,女性の場合,休校で家にいる子どもの世話に忙しく,調査時に求職活動をしておらず,失業者として計上されてない人が結構いそうです。

 次にオフィスで働く雇用労働者数をみると,前年4月は5959万人で,今年4月は5923万人で,36万人の減少となっています。コロナで失職した人たちでしょう。性別にばらすと,男性は3万人,女性は34万人の減少で,減少幅は女性のほうがずっと大きくなっています(四捨五入の関係上,両性の合算が全体に一致せず)。

 女性の減少分が多いことの理由はお分かりですよね。そう,非正規雇用が多いからです。東京新聞でも報じられましたが,非正規雇用者は昨年4月で2116万人だったのが,今年4月では2019万人にまで減りました。97万人の減少で,1年間でここまで減ったのは史上初だそうです。減った97万人の性別内訳をみると,男性が26万人,女性が71万人で,女性の非正規雇用が大きく減ったことによります。飲食業やサービス業でパートとして働いていた人たちでしょう。コロナで最も打撃を被った業界です。

 上記のデータを,表でまとめておきます。文章でくだくだ書いても,伝わにくいと思いますので。


 注目は,働く女性の減少です。コロナで失職したのは女性,とりわけ女性の非正規雇用者であるのが知られます。にもかかわらず失業者が減じているのは,上述のように,休校で在宅している子どもの世話で手一杯で,求職活動ができなかった人が多いからと思われます。

 まあ4月の年度初めに,非正規雇用者,とりわけ女性の非正規雇用者が大きく減るのは,毎年のことです。3月末で契約を切られますので。しかし今年はそれが激しいことは,以下のグラフから明瞭です。最初の失業者数と同じく,2018年1月からの月別推移です。


 今年は,3月の1473万人から4月の1379万人と,たった1か月で100万人近くも減っています。コロナの影響であるのは明らかですが,男性より減少がずっと大きく,こういう時に女性にしわ寄せがいくのだなと感じます。

 男性にあっては非正規雇用は非常に少ないですが,女性にあってはさにあらず。昨日,ツイッターで発信しましたが,働く女性の半分は非正規雇用です。何かあったら真っ先に切られる,不安定な働き方をしていると。
https://twitter.com/tmaita77/status/1266336107479719937

 夫の扶養下で,家計の補助的な働き方をしている人だけじゃありません。非正規雇用で得られる収入で暮らしている人もおり,シングルマザーにはそういう人が多いとみられます。シングルマザーの多くは,飲食業やサービス業で(非正規で)働いていますが,コロナで失職した人も結構いるのではないでしょうか。

 シングルマザーはただでさえ貧困状態だというのに(所得中央値は200万円ほど),その乏しい収入源をも断たれたらひとたまりもありません。1日1食という,食うにも困る極貧状態に直ちに陥ります。

 そういう世帯にすれば,1世帯10万円の給付金など「焼け石に水」。公共料金免除,家賃の8割補助など,負担を除く政策も併行すべきです。

 今日,横須賀市から10万円給付金の申請書が届きました。市の職員さんは,休日返上で発送作業に追われたことと思います(送り返される申請書の審査も大変)。しかし私としては,減税,公共料金減額,奨学金返済猶予のほうがずっとありがたい…。カネを配るよりも,負担を除く。これなら「スッキリ・カンタン」ですぐできるでしょう。

 こういう面の救済も,考えてほしいと思います。生活の困窮度が高い人については,待ったなしです。