2021年7月16日金曜日

県庁所在地の基礎生活費

  日経新聞WEB版に「地方移住,こんなはずでは,増える支出に落とし穴」という記事が出ています。内容は推して知るべし。生活費が安くなるからと移住したもの,光熱・水道費や自動車関連費がかさんで,かえって支出が増えてしまった,という体験談です。

 そうですねえ。東京からの移住の場合,住居費は確実に安くなるでしょうが,光熱・水道費は上がりそうです。田舎はプロパンガスが多いですが,都市ガスより高いですからね。水道も,維持費の関係で田舎では割高です。自動車の費用は言うまでもません。公共交通網が発達している東京と違って,地方では車は必須です。維持費がバカになりません。

 データで総決算の比較をすると,どうなるでしょう。『家計調査』に,2人以上世帯の年間支出額平均が47都道府県の県庁所在地別に出ています。2020年のデータは,コチラの統計表です。私は,①住居費,②光熱・水道費,③鉄道・バス費,④自動車関連費の4つを,各県の県庁所在地別に呼び出しました。③を入れたのは,都市部では自動車は要らずとも,公共痛交通機関の費用が要ると考えるからです。

 手始めに,東京23区と,私の郷里の鹿児島市を比べてみましょうか。背比べの積み上げグラフにすると以下のごとし。


 住居費は鹿児島市が安いですが,自動車関連費用がかかります。しかしトータルでみると,鹿児島市の方が安いですね。上記は2人以上世帯の年間支出額ですが,平均世帯人員は東京23区が2.97人,鹿児島市が2.92人ですので,家族サイズを考慮しても鹿児島市のほうが割安です。

 郷里をひいきするのではないですが,きたれ,鹿児島へ。生活費が安いのに加え,食べ物も美味い!

 しかし47都道府県の県庁所在地のデータを眺めると,東京区部より割高なエリアも見受けられます。以下は一覧表です。


 黄色マークは最高値,青色マークは最低値です。住居費は東京がマックスですね。光熱・水道費は寒い北国で高くなっています。鉄道・バス費は都市部で高く,自動車関連費はその逆です。

 47都道府県の県庁所在地の基礎生活費は,4つの費目の合算を平均世帯人員で割った値で測れます。東京区部は,4つの費目の合算は81.25万円で,世帯人員は2.97人ですので,1人あたりの基礎生活費は27.36万円となります。鹿児島市は24.62万円です。

 47都道府県の県庁所在地の数値を,高い順に並べると以下のようになります。


 東京がマックスではないですね。上位というのでもなく,中よりちょっと上という位置です。首位は住居費と自動車費がともに高い福岡市で,その次は鳥取市です。鳥取市では車関連の支出が多い(年額55.8万円)。

 右下をみると,関西圏では基礎生活費が安上がりですね。京都市は19.14万円で,福岡市の半分くらいです。学生の街ですが,これは2人以上世帯のデータに基づく数値なんで,単身学生は除外されています。

 冒頭の日経新聞でも言われてますが,移住しようとしているエリアのデータを調べてみるのもいいでしょう。

 地方の郡部では,光熱・水道費や自動車費がもっと高くなると思われます。随所で言われていますが,移住はまず地方都市からで,それを経てから郡部に移るという2ステップを踏んだほうがよさそうです。郡部には「濃すぎる人間関係」という,別のコストもありそうですしね。

 『家計調査』からササっとこしらえたデータですが,生活費が「都市>地方」とは単純には言えないようです。