2016年5月14日土曜日

東京都内23区の犯罪発生率

 『東京カレンダー』というWeb誌に,都内23区の犯罪発生率を計算した記事がアップされています。

 「別に珍しくはないじゃん」と思われるでしょうが,私にとっては,教えられる内容でした。それは,犯罪発生率の計算の仕方です。

 犯罪率は通常,当該地域内で認知された事件の件数を,当該地域の人口で除して算出されます。人口あたり*件,という具合にです。このやり方で都内23区の犯罪率を出すと,都心部で高くなります。千代田区がダントツです。

 しかし都心は昼間,他地域から大量に人口が流入してきますから,それだけ犯罪の件数は多くなります。千代田区の場合,昼間人口は夜間人口{定住人口)の15倍にも膨れ上がります。それでいて,ベースに使う人口は,流入人口を含まない夜間人口であると。これでは,都心の犯罪率がべらぼうに高くなるのは当然です。

 上記の記事では,このような弊を排した計算方法が提案されています。「昼間人口+流出人口」をベースに充てる方式です。

 昼間人口とは,夜間人口(定住人口)と流入人口の合算から,流出人口を引いた値です。字のごとく,昼間の人口です。これに,他地域に出て行っている流出人口を加えた数を分母に充てると。

 都内の場合,通勤・通学による人口の地域移動がメチャクチャ激しいので,その影響を除去する必要があります。冒頭の記事で紹介されている犯罪率の計算方法は,それに適しています。

 私はこのやり方で,2015年の都内23区の犯罪発生率を計算してみました。分子は2015年間の刑法犯認知件数であり,分母は同年3月の「昼間人口+流出人口」の推計値です。それぞれの出所資料のURLを記しておきます。

 下表は,計算の結果です。犯罪発生率は,ベース1000人あたりの認知件数で示しています。


 最高は台東区の13.2件,最低は中央区の4.1件となっています。前者は,後者の3倍以上です。赤字は上位5位であり,台東区,豊島区,江戸川区,渋谷区,新宿区の順です。

 定住の夜間人口ベースの犯罪率とは,様相が全然違っていますが,各区の治安の指標としては,こちらのほうがよいのではないかと思います。

 この新方式で出した犯罪率ですが,各区のどういう社会経済指標と相関しているか。「貧困と犯罪」という犯罪社会学の古典テーマを想起し,各区の平均世帯年収との相関をみてみましょう。前に,『住宅土地統計』(2013年)から計算した数値を使います。下記記事をご覧ください。


 23区の平均年収と犯罪率は,有意なマイナスの相関関係にあります。年収が高い区ほど,犯罪率が低い傾向。これまでの夜間人口ベースの犯罪率では出てこなかった傾向が,出てきました。

 警察の犯罪地域統計は,事件が起きた場所に基づく「発生地主義」なのですが,犯行者の居住地に依拠した「居住地主義」の統計にすれば,当人の生活条件と犯罪の関連がもっとクリアーになるでしょう。

 発生地主義の犯罪統計からは,「犯罪を誘発する環境の浄化を」という提言しかできません。居住地主義の統計なら,当人をとりまく生活環境(貧困など)の改善に向けた動きを促すことができます。こちらの統計も整備していただきたいものです。

 しかし現存の統計から,ピンとくる犯罪の地域構造を明らかにできました。『東京カレンダー』の記事には,教えられました。感謝申します。

2016年5月13日金曜日

食生活の乱れと肥満の関連

 「」は人間の最も基本的な営みですが,近年,この部分が疎かにされつつあります。

 朝食欠食率は上昇傾向で,塾通いの子どもが夕食をファーストフードで済ますのは日常茶飯事。これでは頭が訓練されても,体は蝕まれる一方です。子どもの肥満の増加は,こうした歪みの表れに他なりません。

 この点に関する実証データを作ってみましたので,ご覧に入れましょう。資料は,厚労省『21世紀出生児縦断調査(2001年出生児)』の第13回です。

 本調査は,2001年に生まれた児童を追跡する大規模調査で,2014年に実施された第13回調査の時点では,追跡対象の児童は13歳になっています。

 この第13回調査の結果報告書では,食生活の状況と体格のクロス集計表が公開されています。私はこのデータをもとに,以下の表を作ってみました。食事のとり方によって,肥満児の出現率がどう異なるかです。ここでいう肥満児とは,軽度・中等度・重度の合算です。


 男子では,朝食を食べる群(14401人)のうち,肥満児は1109人。比率にすると7.7%となります。朝食を食べない群では,この比率はちょっと高くなります(8.1%)。

 夕食の取り方とも関連しており,父母などの家族で食べる群よりも,孤食群や欠食群で肥満率は高い傾向です。

 女子では,この傾向がクリアーです。肥満児の割合は,朝食の欠食頻度や夕食の取り方ときれいに相関しています。

 13歳といえば痩身志向が強くなる時期で,ダイエットで朝食を抜く子が多くなるといいますが,それは逆効果です。朝食を抜くと,昼食で摂取したカロリーが過剰に蓄積され,肥満になりやすいといいます。

 夕食の取り方にしても,孤食群は好きなものばかり食べるなど,栄養が偏るためでしょう。

 食育が求められる所以ですが,食生活の歪みは家庭の経済状況と相関しており,その結果,貧困と肥満がリンクする「健康格差現象」があることもよく知られています。

 学力格差,体力格差,そして健康格差といった教育格差の底には,社会全体の経済格差が横たわっていることは,言うまでもありません。無力な子どもは,その影響をなす術もなく被ることになります。子どもの貧困待ったなし,といわれる所以は,こういうところにもあります。

2016年5月11日水曜日

女性が結婚相手に求める条件

 未婚化が進んでいますが,その原因としてよく言われるのは,結婚相手に求める条件と現実のギャップです。たとえば,女性は高年収の男性を望むが,現実にはそういう男性はわずかしかいないと。

 この点に関するデータは,本ブログでも繰り返し提示してきました。30代の未婚男女でみると,女性の7割が年収400万以上の男性を望んでいますが,そのレベルの年収のある男性は,全体の3割弱しかいません。この年齢の未婚男性の半分は,年収300未満であるのが現実。
http://tmaita77.blogspot.jp/2014/02/blog-post_7.html

 これにより,女性は実家にパラサイトしながら,理想の相手に出会えるのを待ち続ける。この行いの集積により,社会全体の未婚化が進行する。そこで,親同居税を取ったらどうかと。1999年に刊行された,山田昌弘教授の『パラサイト・シングルの時代』(ちくま新書)には,こういうことが書いてあります。

 しかし,女性が結婚相手に求める条件は,収入(income)だけではありません。複数の条件を比較すると,収入以上に重視されている条件があります。それは,家事・育児の能力・姿勢です。下記の記事をみて,知りました。
http://news.yahoo.co.jp/feature/186

 厚労省の『出生動向基本調査』のデータということですので,原資料にあたって調べてみました。なるほど,18~34歳の未婚男女に対し,結婚相手に求める条件を尋ねています。8つの項目を提示し,「重視する」「考慮する」「あまり関係ない」から選んでもらう形式です。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/118-1.html

 私は,「重視する」の回答比率を拾ってみました。下図は,最新の2010年調査のデータをもとに作成したグラフです。横軸に男性,縦軸に女性の重視率をとった座標上に,8つの項目をプロットしています。斜線は均等線です。


 7つの項目が,斜線の上に位置しています。女性のほうが,相手に強く求める条件が多いようです。その中では人柄がトップですが,その次に重視率が高いのは,家事・育児の能力・姿勢です(62.4%)。3番目は,自分の仕事に対する理解度(48.9%)。

 こういうソフト項目のほうが,収入学歴・職業といったハード項目より重視されているのですね。時代変化をみると,下図のようになります。未婚女性の重視率が,1997年から2010年にかけてどう変わったか。


 さして大きな変化はないですが,家事・育児の能力・姿勢の重視率が20ポイント近くも上昇しています。家事メン・イクメンを求める女性が増えていることがうかがわれます。

 これは,女性の社会進出志向が強まっているためでしょう。1999年に男女共同参画基本法が制定され,今世紀になってから,それに向けた取り組みが実施されているのは,よく知られていること。

 未婚女性の予定ライフコースをみても,主婦コースや再就職コースが減り,家庭と仕事の両立コースの比重が増えています。


 収入も大事だが,自分が仕事を続けることに理解を示し,家事・育児を分担する。こういう女性が増えているというのは,頷けます。

 未婚化の真因は,女性が求める年収と男性の年収のギャップというよりも,女性が求める家事・育児能力・意識と,男性の現実のそれの隔たりかもしれません。男性の年収が低くとも,二馬力で稼げば何とかなるのですから。

 そうした二馬力就業の条件となるのが,男性の家事・育児分担であることは,言うまでもありません。

 しかし,日本のオトコは家事・育児をしない。世界最低。それはなぜか? 5月7日に発売された『プレジデントウーマン』6月号にて,私が思うところをデータを交えて述べております。「家事分担率ランキング なぜ日本の男は家事をやらないの?」という記事です。興味ある方は,ご覧いただけますと幸いです。
http://presidentstore.jp/books/products/detail.php?product_id=2548

2016年5月9日月曜日

貧困による子どもの盗み・売春は例外か?

 朝日新聞に,子どもの貧困にまつわるショッキングな記事が連日公開されています。「ここまできたか・・・」という思いです。

・「3歳児,おなかすいて盗んだ 両親は借金背負い不在」
 http://www.asahi.com/articles/ASJ4C3DS1J4CPTFC006.html
・「中学時代,5千円で売春 これで上履きが買える」
 http://www.asahi.com/articles/ASJ4T42VWJ4TPTFC008.html

 こんなのは,子どもの自殺率にも等しい「超レア」なケースだろう,と一蹴できるでしょうか。2012年の『就業構造基本調査』をもとに,18歳未満の子どもがいる世帯の年収分布表をつくると,以下のようになります。
http://www.stat.go.jp/data/shugyou/2012/index.htm

 母子世帯,父子世帯,その他というように,世帯タイプ別に分けています。その他とは,2人親の世帯で,祖父母同居の拡大世帯も含みます。


 ここで注目すべきは,幼児の盗みや思春期の子どもの売春を生じせしめるような,経済的に困窮している世帯の量(magnitude)です。右上の黄色マークの部分がそれで,年収100万未満の世帯は16.5万世帯,年収200万未満の世帯まで広げると49.1万世帯が該当します。

 全体に占める割合は7.4%で,14世帯に1世帯がこれに当たると。朝日新聞で取り上げられているような悲劇を,子どもの自殺率にも等しい「超レア」なケースと切り捨てることはできないと思います。

2016年5月7日土曜日

教育費支出と合計特殊出生率

 今朝の朝日新聞に,「大学生,奨学金よりバイト頼み 卒業後の返済大変」と題する記事が載っています。
http://www.asahi.com/articles/ASJ4M2H4CJ4MUTIL002.html?iref=comtop_list_edu_n01

 高等教育段階となると,どの国でも奨学金制度が設けられていますが,わが国のそれは,よく知られているように「実質ローン」。返済義務のある借金です。

 よって,卒業後の返済負担を考え,利用を控え,無茶なバイトに従事すると。「奨学金が結婚の足かせに」「奨学金を借りている人との交際を親に禁じられる」という話を聞きますが,奨学金という借金が,後々のライフイベントに負の影響を及ぼすのは確かです。

 奨学金というと聞こえはいいですが,これでは,利用を躊躇するのも分かろうというものです。奨学金の機能不全。なぜこういう病理が起きているかといえば,国が教育のカネを使ってないからでしょう。

 昨年の11月26日の記事でみたように,教育への公的支出額の対GDP比は,日本は3.5%で,OECD加盟国の中で最下位です。これが教育費の高騰をもたらし,教育機会の不平等,さらには出生率の低下を引き起こしているといえます。データを示すまでもなく,夫婦が出産をためらう最大の理由は「教育費が高いこと」です(厚労省『出生動向基本調査』2010年)。

 はて,教育費支出の対GDP比は,各国の出生率とどう関連しているか。こういう基本的なデータをまだ作っていませんでした。総務省『世界の統計2015』から,国別の合計特殊出生率(女性が生涯に生む子どもの平均数)を拾い,上記の記事のデータと絡めてみました。

 下に掲げるのは,双方の数値が得られた30か国の散布図です。


 攪乱はありますが,教育費支出が多い社会ほど,出生率が高いという,うっすらとした傾向がみられます。相関係数は+0.439で,30というデータ数を考慮すると,5%水準で有意です。

 しかしここで注視すべきは,相関云々ではなく,2つのクラスターが析出されることでしょう。教育にカネを使い,出生率が高い社会と,その逆の社会です。日本は,後者に含まれてしまっています。

 しかしまあ,割れるものですね。「日本は子どもが少ないので,教育費支出が少ないのは当たり前だ」といわれますが,それを口上にして,事態を放置していてよいはずはありません。まずます少子化が進み,社会の維持・存続が脅かされることになります。

 一昨日の5日は「子どもの日」で,子どもの数が過去最低というデータが各紙で報じられました。それもいいですが,上記のような統計的事実にも注意する必要があるかと思います。

2016年5月4日水曜日

人口あたりの書店数マップ

 ネット書店の台頭により,街の本屋さんが苦境に立たされています。

 総務省『経済センサス』の産業小分類統計によると,書籍・文房具小売り事業所(本屋・文具屋)は,1991年では76915店でしたが,2014年では37817店まで半減しています。人口10万人あたりの店数も,62.0から29.8へと半減以下です。
http://www.stat.go.jp/data/e-census/index.htm

 人口10万人あたりの事業所数を都道府県別に出し,マップにすると下図のようになります。


 むうう。この四半世紀にかけて,街の本屋さんが淘汰されているのがよく分かります。2014年の地図はほぼ真っ白で,どの県が相対的に高いのか不明ですが,都市よりも地方で値は高くなっています。
https://twitter.com/tmaita77/status/727656513897009152

 都市部では,小さな個人経営の店は淘汰され,大規模店が幅を利かせているためでしょう。しかし,東京は例外です。独自の「色」を出してがんばっている零細店も多いのかもしれません。

 その東京ですが,都内の市区別に,人口10万人あたりの書店・文具店数を計算することもできます。ベース人口には,2015年の『国勢調査』の速報値を使います。下図は,それを地図にしたものです。


 都心の千代田区が,10万人あたり543.3店でダントツです。これは例外値ですが,都心で値が高くなっています。それと中央線沿線。

 この図をみて,前に作った,子どもの学力地図の模様と似ているな,という印象を持ちます。下図は,両者を関連付けた散布図です。書店数が飛ぶ抜けて多い千代田区は「外れ値」として,この図には入れていません。また,学力のデータがない町村部も対象から外しています。

 縦軸の学力ですが,平均正答率の地域分散が大きい,算数に注目しています。


 ほう。両者の間には,有意なプラスの相関がみられます。書店が多い地域ほど,子どもの算数学力が高いと。

 まあ,他の要因を介した疑似相関の可能性が大ですが,ぶらりと立ち寄れる本屋さんが多い地域ほど,子どもが本好きになり,学力アップという因果経路も考えられなくはないですよね。

 本はネット書店でも,街の本屋さんでも買えます。しかし後者の魅力は,思わぬ本にバッタリ出会えることです。ネット書店は,目的の本を買うだけですが,リアルの書店では,「おお,こんなのがあるんだ」と,当初の目当て以外の本を手に取ることもしばしば。発想の幅を広げることにもなります。

 それと,街の本屋さんは,文化の象徴という見方もあります。フランスはこういう考えをとっていて,街の本屋さんを保護すべく,送料無料のネット販売を禁じる法律を施行しています。通称,「反アマゾン法」です。

 『新潮45』の2015年2月号に,「人が人たる所以は,本を読むこと。活字を読まないのはケダモノを同じ」という趣旨の文言が載っていますが,その通りだと思います。
https://twitter.com/tmaita77/status/558492676195352576

 以前と比して,読書の量はさほど変わっていないと感じます。ただ,ネット経由で本を取り寄せる人の増加,コストがかからない図書館利用の増加,というような形式の変化は明らかです。悪いこととは一概に言えませんが,街の本屋さんの魅力を見直すことも必要でしょう。

 もちろん,書店の側にも経営努力は求められます。今朝の「サンケイBiz」サイトに,目利きの店主がチョイスした本を売る,というスタイルで生き残りを図っている書店のニュースが出ていました。こういう独自色を出せば,ネット書店への対抗も不可能ではありません。
http://www.sankeibiz.jp/econome/news/160503/ece1605030708002-n1.htm

 ぶらりと入って,「ハッ」という気付きを与えてくれる本屋さん。その魅力(強み)は,何にも代え難いことは確かだと思います。

2016年5月1日日曜日

大学入学の地元志向

 今朝の朝日新聞に,「地方高校生に東京離れ 仕送り負担,地元志向強まる」と題する記事が載っています。
http://www.asahi.com/articles/ASJ4T7GGNJ4TUTIL099.html?iref=comtop_list_edu_n02

 仕送り等の経済的負担がキツイので,子どもに地元の大学に行ってほしいという親が増えていそうです。高校生自身も,地元の大学に行きたいという志向が強まっているとのこと。甲南大学の阿部准教授は,「東京で苦学するより,親の経済力に頼れる地元にいる魅力が大きいのだろう」と指摘していますが,なるほど,そういうこともあろうかと思います。

 地方はただでさえ所得水準が低く,大学の学費負担だけでも大変なのに,さらに家賃や生活費等も加わる「ダブル・パンチ」とあっては,たまりません。最近,学生のブラックバイトや奨学金借入による生活破綻が問題になっていますが,その多くは,地方から都市に出てきている「苦学生」なのではないか,と思ったりします。

 上記の記事には,地域移動の統計は出ていませんでしたが,大学入学の地元志向は本当に高まっているのか。『学校基本調査』のデータで吟味してみましょう。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/NewList.do?tid=000001011528

 私は,4年制大学入学者のうち,自分が出た高校と同じ県内の大学に入った者が何%かを計算してみました。この値は,大学入学の地元志向のメジャーとして使えるでしょう。

 バブル末期の1990年と2015年と数値を比べてみます。90年代以降の時代変化は「失われた20年(25年)」とよく形容されますが,経済状況が悪化する前の頃と,最近の状況を比較してみたいと思います。

 上記の文科省統計によると,1990年春の4年制大学入学者は48万6946人,2015年春は60万2476人となっています(浪人生含む,海外の学校等出身者は含まない)。大学進学率が高まっているので,大学入学者の絶対数は増えています。

 このうち,出身高校と同じ県内(地元)の大学に入った者はどれくらいか。図でみていただきましょう。入学者の数を,正方形の面積で表したグラフです。


 この四半世紀で,地元大学入学者率は35.9%から43.6%へと高まっています。激増というほどではありませんが,大学入学の地元志向は強まっているようです。

 しかし,私の郷里の鹿児島でみると,県内大学入学者比率は36.6%から32.8%へと減少しています。逆に新潟のように,地元入学者率が17.3%から36.2%へと倍増した県もあります。

 様相は地域によって多様です。そこで同じ値を都道府県別に計算し,1990年から2015年にかけての増加ポイントをとってみました。


 ほとんどの県で,地元大学入学率は増えていますが,減っている県もあります。南端の沖縄は,62.0%から51.9%へと,10ポイント以上減です。

 地元志向の高まりが最も顕著なのは,先ほど述べたように新潟。ほか,群馬,静岡,愛知,岡山,広島といった県で,地元率の増加が大きくなっています(赤字,15ポイント以上増)。

 地元に魅力的な大学ができた,学費の安い公立大学ができたなど,いろいろなリージョナル・ファクターがあるかと思いますが,若者の定住を促すヒントが込められているかもしれません。もっとも,冒頭の朝日記事でいわれているように,家庭の経済的苦境の要因が大きいとは思いますけど。
https://twitter.com/lalahearttwit/status/726655696985452546

 大学入学の地元志向の強まりが顕著な県の分布を,地図に落としておきます。色付きの県は,自県内大学入学者率が,この四半世紀で10ポイント以上高まった県です。


 北陸,東海,中国南部というように,地域性もちょっと見受けられます。ただ石川や福井は,北陸新幹線の開通によって,今後どうなることか。高速交通網の整備は,地方から都市へと人を吸い上げる機能を果たしてしまうのも事実です。

 大学入学時の地元志向が,少しばかり強まっていることを知りました。次なる関心は,大学卒業時の地元帰還(Uターン)志向の変化です。都会の大学で学んだ高度な知識やスキルを,地元の発展に活かしてくれるか。大事なのはこっちのほうですが,あいにく,当局の公表統計では大卒者の地域移動を明らかにすることはできません。文科省の『学校基本調査』で,大卒就職者の地域移動(就職先の県)の統計を出してもらえたらな,と思います。

 日本は地域間の不均衡発展が顕著な国ですが,大学進学時と就職時の2時点における,若者の流出が効いています。それぞれのステージにおける地域移動(mobility)の様を,データで明らかにし,対策を立てる必要があるのは,言うまでもないことです。