2010年12月31日金曜日

大学の退学率

 2009年春の,18歳人口ベースの4年制大学進学率は50.2%です(文科省『文部科学統計要覧・平成22年版』)。つまり,同年代の半分以上が大学に行っていることになります。約半世紀前の1960年では8.2%ですから,進学率が格段に伸びていることが知られます。

 今日,選びさえしなければ,誰もが大学に入れる「大学全入時代」になっているといわれます。こうなると,学生の中には,明確な目的を持たない者や,親に強制されて仕方なく入ったというような不本意進学者も少なからず含まれていることでしょう。そうした事情から,大学生活に不適応を起こして,卒業を待たずして中途退学する者も,結構いるのではないでしょうか。

 読売新聞教育取材班『大学の実力2011』中央公論新社(2010年)から,全国563大学の中途退学率を知ることができます。ここでいう中退率とは,2006年4月入学者のうち,2010年3月までの中退者・除籍者がどれほどいるかを表したのです。簡単にいえば,在学期間(4年間)の間に,どれほどの者が辞めたかを表す指標です。563大学の平均値は8.4%です。しかし,最も高い大学になると,退学率は32.8%にも及びます。入学者のうち3割の者が,卒業を待たずして去る,ということです。


 上図は,563大学の退学率の度数分布をとったものです。最も多いのは,退学率4~5%台の階級で,104大学(17.6%)がここに収まります。退学率が20%を超える,デンジャラス?大学は22校で,全体の3.7%に相当します。設置主体別にみると,国公立大学は,中退率が低い層に含まれています。中退率が10%を超える大学のほとんどは私立大学です。

 ここでみたのは,563大学のデータですが,2010年の全国の大学数は778校(文科省『学校基本調査』)ですから,母集団の72.4%がカバーされていることになります。読売新聞調査に回答しなかった大学には,退学率を公にしたくないという大学が多いでしょうから,母集団全体でみると,退学率の平均水準はもっと高くなり,分布もより上方に偏ったものになるかもしれません。

 中退の事由としては,不適応のほか,学費が払えないなどの経済的事由も少なくないことでしょう。私が勤務している大学でも,そのような話を耳にすることがあります。そうした個別事情を挙げればキリがないでしょうが,回を改めて,中退率が高い大学の外的特性を探る作業をしてみたいと思います。

 大みそかになりました。では,みなさま,どうかよいお年をお迎えくださいませ。

2010年12月30日木曜日

未婚化

 一昨日の「孤族化」の記事との関連で,今回は,「未婚化」についての統計を出してみたいと思います。いずれも,社会の私事化傾向の表れですが,未婚化は,少子高齢化の最大の原因として注目されているものです。

 なぜ未婚化が進行するかについては,女性の社会進出の増加であるとか,いろいろなことがいわれますけれども,ユニークな見解として,親元(自宅)で優雅な生活を謳歌する独身男女,いわゆるパラサイト・シングルの増殖が大きい,とするものがあります(山田昌弘教授)。

 親元にいれば,家賃など,生活の基礎経費は浮くのですから,給与のほとんどを自分の嗜好に費やせるわけです。そうした心地よい生活を捨ててまで離家して結婚するからには,相手は,それなりの経済力のある人でなければならないでしょう(とくに女性にとっては)。しかし,昨今の不況下では,そのような相手を見つけるのは至難の業です。たとえば女性にとって,親元でのパラサイト生活と同水準の生活を保障してくれる男性をゲットするのは,そうできることではありません。

 昔,たとえば高度経済成長期はどうであったかというと,親元での生活は,兄弟数が多い,ないしは世間体などの理由により,あまり心地よいものではなく,かつ,右上がりの経済成長のなか,結婚することで生活水準の上昇を大いに見込めたわけです。ですが,今日では,そうした好条件は完全になくなっています。そういうわけで,若者の親元志向がどんどん集積し,結果として,社会全体での未婚化が進行する,というわけです。

 こうした傾向が加速すれば,やがては,若者のみならず,中年層,高齢層にも未婚者が増えてくることでしょう。例の社会地図で,その様相をみてみましょう。計算するのは,未婚率です。2005年の総務省『国勢調査』によると,私と同年齢層(30代前半)の未婚者数は約232万人です。同年の当該年齢人口で除して,未婚率は47.1%と算出されます。およそ半分に迫る勢いです。


 上図は,男性の年齢層別の未婚率を俯瞰したものです。2010年以降は,国立社会保障・人口問題研究所の『日本の世帯数の将来推計(2008年3月推計)』に依拠しています。なお,凡例の最高区分は「60~70%」となっていますが,上限はなく,「60%以上」と読み替えてください。

 1975年頃までは,加齢とともに未婚率がきれいに減少していくパターンでした。しかし,それ以降,離婚率の高率ゾーンが徐々に下へと垂れてきます。20年後の2030年では,50代の2~3割,60代や70代でも1割ないしは2割が未婚者という社会になることが予想されます。

 先の山田教授は,著書『パラサイト・シングルの時代』ちくま新書(1999年)において,親同居税を課して,若者の自立を促すべきであると主張されていますが,このような強硬手段をとらねばならないような時代がきているのかもしれません。もっとも,未婚化の原因が,もっぱらパラサイト・シングルの増殖にある,という仮定においてですが。

2010年12月29日水曜日

東大・京大に入るのは誰か②

 12月26日の記事の続きです。今度は,東大・京大合格者の出身地域の偏りについてみてみましょう。前回は,合格者の組成を,高卒者全体のそれと対比しましたが,ここでは違ったやり方をします。県別の合格者数を出し,それを当該県の高卒者数で除して,合格者出現率を算出してみようと思います。

 サンデー毎日の増刊号から分かる,2010年春の東大・京大合格者数は5,928人です。この年の春の高卒者数は,1,069,129人です(文科省『学校基本調査』)。よって,合格者出現率の全国値は,前者を後者で除して,5.5‰となります。‰(パーミル)とは,千人あたりという意味です。千人につき5.5人ということは,だいたい,180人に1人というところです。


 上の地図は,この値を県別に出し,2‰刻みで色分けしたものです。最大は奈良の27.5‰,最低は青森の0.6‰です。奈良では36人に1人であるのに対し,青森では1,666人に1人です。確率の違いが歴然としています。なお,高率地域は,近畿圏に固まっています。一方,北日本の諸県では,軒並み値が低くなっています。実態として,有力大学への進学機会には,相当の地域差があるとみてよいでしょう。

 どうして,そんなに東大・京大にこだわるのか。各県の生徒は,地元の大学に行けばいいだろう,といわれるかもしれません。それはごもっともです。しかし,東北国,九州国というように,自治の区分けが明確にされている場合は,それでよいのですが,実情はそうではありません。全国を統括する中央官僚を多く輩出しているのは,これらの有力大学でしょう。歴史的にみても,明治期では,中央官僚の養成を,東京帝大が一手に担っていた経緯があります。

 こうみると,上記のような地域格差はいかがなものかという気もします。一極集中,地域間の不均衡発展というような歪みの遠因は,もしかすると,こうした人材リクルートに関わる問題に求められるかもしれません。たとえば,郷土に愛着を持った官僚がいないなど。あくまで,私の勝手な推測ですが。

 多額の税金が投入される有力国立大学については,入学者の地域枠のような制度も,検討されてしかるべきかもしれません。すみません。地方出身者としてのコンプレックスがついつい出てしまいました。これでおしまいにします。

2010年12月28日火曜日

孤族化

 現在,朝日新聞にて,「孤族の国」という特集が組まれています。簡単にいえば,地縁,社縁はおろか,頼れる血縁者をも持たない,一人ぼっちの人間が増加する社会です。こうした傾向は,今後,生活保護者や無縁仏の増加など,多くの問題を引き起こすでしょう。社会の近代化に伴う私事化傾向は,ある意味,必然のものですが,最近のそれは,度が過ぎているように思えます。

 今回は,一般世帯に占める,単独世帯の比率でもって,社会の各層に広がりつつある,孤族化の傾向を可視的に表現してみようと思います。資料は,総務省の『国勢調査』です。2005年の同調査によると,一般世帯のうち,単独世帯はおよそ1,445万世帯です。一般世帯全体に占める比率は,29.5%となります。30年前の1975年の19.4%よりも,10ポイント以上の増です。

 変化の様相を,年齢層別にみてみましょう。上記の社会地図によると,若年者ほど単独世帯が多くなっています。現在,世帯主が20代の世帯では,半分以上が単独世帯です。しかし注目すべきは,単独世帯率20%台のゾーン(緑色)が,40代の部分にまで垂れてきており,一方,高齢層の部分にも浸食してきていることです。世帯の単独化(孤族化)が,上下から押し寄せています。2010年の『国勢調査』の結果を加味すると,どういう図になるでしょうか。

 以前,介護は家族が担ってきましたが,現在では,社会全体でそれを担おうという考え方に変化しています。それに象徴されるように,社会制度は,社会の変化に応じて修正されねばなりません。近代以降のわが国は,2度の大変化(明治維新,敗戦後の民主化)を経験しましたが,孤族化社会の到来というのも,それに劣らぬ大変化だと思います。今,わが国は,大きな転機を迎えている,といってよいでしょう。

2010年12月27日月曜日

人口中の女性比

 この世には,男性と女性という2つの性がありますが,その構成はどうなっているのでしょうか。何をいうか,だいたい半分くらいに決まっているだろう,といわれるかもしれません。

 しかし,一概にそうとは限りません。まあ,女性のほうが寿命が長いので,高齢層では,女性の比率が高い,ということは知られています。ところで,時代軸と年齢軸を交差させて,女性の比率を出してみると,面白いことが分かるのです。


 例の社会地図で表現すると,上のようになります。いかがでしょう。1945年の20代から30代では,女性の比率が高くなっているのですが,この事情はお分かりですね。当時,戦争で若年男性が動員されていたからです。以後,彼らの復員により,比率は下がりますが,戦死者が多かったせいか,この世代では,女性比が54%以上という状態が続くことになるのです。図を斜めに引き裂く,紫色のゾーンがそれです。

 終戦直後は,「男一人に女がトラック一杯」などとオーバーにいわれたものですが,こういう世代も存在するのですね。松本良夫先生が考案された,この社会地図は,綿密に描けば,世代の状況も俯瞰できる,という利点を持っています。

2010年12月26日日曜日

東大・京大に入るのは誰か①

 先の「中学受験」の最後で,有力大学合格者が私立校出身者に寡占される傾向にあるのは,公正の観点からしていかがなものか,という問題提起をしました。ここでは,関連する統計をお見せしたいと思います。

 サンデー毎日特別増刊号『完全版・高校の実力』(2010年6月12日)から,2010年春における,全国3,987高校の東大・京大合格者数を知ることができます(この書物のデータは,教育社会学の研究者もたびたび利用しているものであり,信憑性あるものといえます)。それを総計すると,5,928人となりました。この5,928人の出身高校ですが,本当に私立校が多いのでしょうか。


 上記の図によると,東大・京大合格者5,928人の48.9%が私立校出身者です。国立出身者を合わせると,54.7%,半分以上が公立校以外の出身者ということになります。文科省『学校基本調査』から分かる,同年春の高校卒業生全体では,国・私立生は30.4%しか占めていません。こうみると,母集団に比して,東大・京大合格者は,国・私立校出身者に偏しているといえます。

 なお,このような傾向は以前に比して強まっているようです。苅谷剛彦『大衆教育社会のゆくえ』中公新書(1995年)の63頁の資料によりますと,1975年では,東大合格者に占める私立校出身者の割合は26%です。また,東大合格者数ベスト20位の高校には,公立校も多く含まれていました。しかし,最近では上図の通りで,合格者数の上位校は,国・私立校に寡占されています。一時,こうした寡占傾向を人為的に抑制すべきだという提案がなされたほどですが,さもありなんという感じです。今後,どうなっていくのでしょうか。

 当然予想されることですが,地域間でもかなりの偏りがみられます。数字は,後ほど提示いたします。

2010年12月25日土曜日

給与の男女差

 以前,「専業主婦の消滅」と題する記事を書きましたが,このことは,女性の社会進出が進んでいることと表裏をなしていると思います。実際,女性の就業条件も以前と比べたら整備されてきているといえるでしょう。今回は,その度合いを一つの尺度で測ってみたいと思います。

 私が計算したのは,一般労働者の月給の男女差です。2009年の厚労省『賃金構造基本調査』によりますと,男性労働者の「決まって支給する現金給与」月額の平均値は,354.6千円だそうです。女性の平均額は243.2千円。前者を後者で除して,男性の月給は女性のおよそ1.46倍です。この値をどうみるかですが,以前よりは小さくなっているようです。今から30年前の1980年では,1.79倍でした。では,細かく年齢層別に,時代による変化を俯瞰してみましょう。


 倍率が高いブラックゾーンは,1980年代の中高年層の部分にあります。この時代のこの層では,給与の性差が2倍以上あったわけです。しかし,最近では,こうした極端な格差はどの層でもみられなくなっています。

 確か,女子差別撤廃条約をわが国が批准したのが1985年,1999年には男女共同参画社会基本法が制定され,施策の具体化のための基本計画も策定されています。給与の性差の改善は,こうした努力の賜物であるといえましょう。しかし,絶対水準でいうと,まだ十分とはいえないようです。何しろ,まだ1.46倍ですから。

 回を改めて,今度は学歴による差をみてみようと存じます。