2012年12月27日木曜日

家族と夕食をとらない子ども

 血縁で結ばれた成員からなる家庭は,情緒的・情愛的な人間関係が支配的な第1次集団です。この集団には,子どもの社会化機能とともに,成員の情緒安定機能を果たすことが期待されています。

 学校や職場では緊張(strain)を強いられることが多くても,家庭に帰ってくればホッとします。お父さんは堅苦しいスーツを脱ぎ,ステテコ姿になって晩酌。子どもはといえば,何の遠慮もいらない親兄弟に,学校であった嫌なことを洗いざらいぶちまけ,心の安定を得る。家庭ってそういうところです。

 しかるに,現代の家庭の現実態は,それとは異なるようにも思えます。同じ屋根の下に暮らしながらも,各人が自室にこもり,ろくに会話しない。食事も一緒にとらない。父は会社,母は地域活動,子は学校・塾というように,成員はそれぞれ外部関係を持っていますが,今日ではその比重がことに高まり,家庭生活を圧迫しています。お父さんはいつも午前様,子は夜遅くまで塾通い・・・。こういうことはザラでしょう。

 このことは,家族と夕食をとらない子どもが少なくないことからも知られます。文科省の『全国学力・学習状況調査』では,対象の児童・生徒(小6,中3)に対し,「家の人と普段(月~金曜日),夕食を一緒に食べているか」と尋ねています。程度を4段階で自己評定してもらう形式です。
http://www.nier.go.jp/09chousakekkahoukoku/index.htm

 2009年度調査の結果にて,最も強い肯定の回答(「している」)の比重をみると,公立小学校6年生は70.9%です。ところが,公立中学校3年生になると,この比率は56.3%にまで減じます。およそ半分です。

 ちなみに,この比率は地域によってかなり違っています。公立中学校3年生について,47都道府県の同じ値を出し,地図化してみました。下図をご覧ください。最近覚えたMANDARAでつくってみました。
http://ktgis.net/mandara/


 5%刻みでに塗り分けています。最高は富山の68.7%,最低は奈良の46.3%です。ほう。この両端では,20ポイント以上もの差があります。同じ日本でも違うものですね。

 なお,このようなレンジもさることながら,地図の模様をみると,首都圏と近畿圏が真っ白に染まっているのが注目されます。大都市部では,子どもの塾通いが多いためでしょう。また,雇用労働化や遠距離通勤というような事情から,親の帰宅時間も遅い,ということも想起されます。

 上の指標は,家族密度,もっといえば,家庭が子どもの情緒安定機能をどれほど果たし得ているかを測る客観指標と読むこともできます。興味が持たれるのは,この値の高低によって,各県の子どもの育ちがどう異なるかです。

 私は,中学生の非行者出現率との相関をとってみました。主要刑法犯で警察に検挙・補導された中学生数を,各県の全中学生数で除した値です。分子は警察庁『犯罪統計書』,分母は文科省『学校基本調査』から得ました。2009年のデータです。

 上記地図に示された各県の夕食摂取率と,非行少年の出現率との相関をとると,下図のようになります。


 結果は負の相関です。家族と夕食を食べない生徒が多い県ほど,非行が多い傾向にあります。相関係数は-0.622であり,1%水準で有意です。

 これは,都市性の度合いを介した疑似相関だろう,といわれるかもしれませんが,都市化の指標(人口集中地区居住率)は,非行率とここまで強く関連していません。上図の相関関係は,因果関係的な部分も含んでいるのではないかと思います。

 なお,2011年の11月15日の記事でみたところによると,中学生のケータイ利用度と非行率の相関係数は+0.486でした。ほう。家族との夕食摂取率は,ケータイ利用度よりも強く非行と関連しています。

 家庭での情緒安定機能の弱化(欠落)が,子どもの育ちに与える影響は大きいようです。いじめや受験競争など,現代の学校では,各種の緊張・葛藤が渦巻いています。それを癒してくれる場がないことは,確かに子どもにとって痛手となるでしょう。

 余談ですが,昔は,父ないしは母がいないという家庭(当時でいう欠損家庭)から非行少年が出る確率が高かったのですが,今では,その度合いは弱まってきています。非行の「一般化」と呼ばれるものです。家庭の形態面だけでなく,そこでの生活の内実にも注意しなければなりますまい。

 このような状況を克服するには,会社,学校・塾というような,家庭の外の外部関係の比重を,意図的に小さくするようなことも必要ではないかと考えます。そのことが,家庭の情緒安定機能を回復せしめるための基本的な条件となるからです。

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