2015年4月26日日曜日

地方選挙の投票頻度の国際比較

 今日は,市議会議員選挙の投票日です。これにちなんで,選挙関連のデータを昨日から見ていたのですが,投票率の時系列推移や,年齢層別の投票率のデータなどは,よく報じられています。しかし,国際比較のデータはあまりないことに気づきました。

 わが国は政治的無関心が蔓延していて,投票率はあまり高くない,若者と高齢者の差も大きい。こんなことがよくいわれますが,世界的視野からみて,そういう性格づけが妥当であるといえるでしょうか。

 自国の状況を相対視するには,国際比較がいちばん。今回は,地方選挙の投票頻度の国際比較をしてみようと思います。

 用いるのは,「世界価値観調査」(2010~14年)のデータです。この調査では,「地方選挙が実施される時,どれくらいの頻度で投票するか?」と対象者に尋ねています。選択肢は,①いつも投票する,②たいてい投票する,③決して投票しない,の3つです。
http://www.worldvaluessurvey.org/WVSOnline.jsp

 私は,①の「いつも投票する」の回答比率に注目することとしました。まずは,わが国を含む目ぼしい国のデータをみていただきましょう。投票行動は年齢と関連が強いとみられるので,当該の比率の年齢曲線を描いてみました。無回答や無効回答を除いた,有効回答の中での比率であることを申し添えます。


 曲線が右上がりの社会が多くなっています。日本はその典型であり,加齢とともに率がきれいに上昇し,20代前半の若者と60歳以上の高齢者では,「いつも投票する」の割合が40ポイント以上も違っています。

 一方,ブラジルように「高原型」の社会もありますが,さすが,投票義務制を採用している国ですね。この南米の大国では,正当な理由がなく投票をしなかった場合,罰金刑が課されるのだそうです。
http://nikkan-spa.jp/3117

 比較の対象をもっと広げてみましょう。上記の調査から,56か国の地方選の投票頻度を知ることができますが,全ての社会について,上図のような曲線を描くことはできません。そこで,20代の若者と60歳以上の高齢者だけを切り取った比較をします。横軸に前者,縦軸に後者の「いつも投票する」率をとった座標上に,それぞれの社会を位置付けてみました。


 まず横軸でみると,日本の若者の「いつも投票」率は,国際標準よりもちょっと下あたりです。韓国やアメリカよりは高くなっています。高齢者は,中の上という位置です,

 ただ日本の場合,世代差が大きいことが特徴です。点斜線よりも上に位置するのは,高齢者が若者よりも40ポイント以上高い国ですが,その数は5つ。わが国は,まぎれもなくこの中に含まれています。

 ただでさえ人口の高齢化が進んでいるのに,投票率にこうした世代差があるものですから,わが国にあっては,投票所に足を運ぶ人間の組成は完全に逆ピラミッド型になっています。これでは,政治に高齢者の意向がもっぱら反映されることになります。最近,若者の投票率を何とか上げようという取り組みがされていますが,それは故なきことではないのです。
http://tmaita77.blogspot.jp/2014/12/blog-post_14.html

 短期間で激しい社会変動を経験した日本は,諸々の意識や価値観の世代差が大きい社会といえます。同性愛に対する寛容度一つとっても,若者だけでみるならば世界で5位であり,同性愛を合法化している国と遜色ない水準になっています。この層の意向を取り入れるならば,社会が変わる可能性は十分あるとみてよいでしょう。
http://tmaita77.blogspot.jp/2015/02/blog-post_15.html

 それだけに,この層の政治参画の促進が重要となってきます。「そんなこと不可能だ」と切って捨てる前に,ペルーやブラジルのように,「若者>高齢者」の社会(実斜線より下)だってあることに,われわれはもっと思いをはせるべきです。

 なお,ジェンダーによる差も見逃せません。重点的に働き掛けるべき層は若者なのですが,若者の中でみても,投票頻度には性差があります。20代男女の「いつも投票する」率を,上図と同じ形式のグラフにしてみました。


 若者の投票行動のジェンダー差ですが,実斜線を基準にすると,「男>女」の社会とその逆の社会がちょうど半々くらいあります。日本は「男>女」の差が大きい社会であり,その差が10ポイントを超えます(点斜線より下)。一方,ニュージーランドなどは,女子の投票率が男子よりもかなり高い社会です。

 政治的社会化のジェンダー差という現象にも,注意を払わないといけないようです。まあ,議員のほとんどが男性であるわが国では,「政治は男の世界」という観念を女子が持ってしまうこともあるでしょう。選挙権の付与年齢が18歳まで引き下げられることに伴い,次回の学習指導要領改訂では,社会科や公民科で政治教育の比重が増やされるそうですが,今述べたような「目に見える」アンバランスの是正をまず優先しなければなりますまい。

 以上,国際比較によって,わが国の地方選の投票構造を相対視してみました。データで明らかになったのは,世代差と性差の問題です。

 ひとまず,本日行われる議会議員選挙には行きましょう。私は,午後に行くつもりです。そうそう,日経デュアル誌にて,駒崎弘樹氏が選挙について「なるほど」と唸らされる原稿を書いておられますので,URLを載せておきます。「これは,ぜひ投票に行かんとな」と考えが変わるような内容ですよ。タイトルは「選挙演説「チッうるさいな」と思う人へ」です。
http://dual.nikkei.co.jp/article.aspx?id=5066

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