2015年7月25日土曜日

若者の死亡率の地域差

 健康体の若者であっても,不幸にして命を落とす確率は,環境によって異なると思われます。最近は,厚労省「人口動態統計」の公表データがとても充実してきており,年齢層別の死亡者数を県別はもちろん,それよりも下った区市町村別に知ることができます。

 私はこの恩恵を利用して,大都市・東京都内23区の若者の死亡率を計算してみました。各区の20~30代の死亡者数を,該当年齢人口で除した値です。

 ただ,区別の若者の死亡者数は数が多くありません。年による変動も大きくなっています。そこで分子には,2009~2013年の5年分の死亡者数を充てることとします。分母のベース人口も5年分とらないといけませんが,こちらは,2013年1月1日の20~30代人口を5倍することとしましょう。人口のほうは,年による変動が大きくないので,このような便法でも差支えないでしょう。

 分子のソースは厚労省「人口動態統計」,分母は「東京都住民基本台帳」です。双方とも,外国人は含まない日本人の統計であることを申し添えます。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/81-1.html
http://www.toukei.metro.tokyo.jp/juukiy/jy-index.htm


 上表は,算出された若者の死亡率の一覧です。同じ大都市でも,若者の死亡確率は区によって異なり,10万人あたり37.2人から65.6人までのレインヂがあります。上位3位は,新宿区,台東区,そして足立区です。

 副都心の新宿区は,物騒な事件が相対的に多く,事故死や事件死が多いような気がしますが,他の高率区はちょっと事情が違うように思います。

 それぞれの区の事情を個々バラバラに考えるのは控え,23区の総体的な傾向を観察してみましょう。値が高いのはどういう特性の区か,という問題です。それには,マッピングが一番。上記の死亡率に依拠して,23の区を塗り分けてみました。


 大都市の若者の死亡率マップは,こんな模様になります。副都心の新宿区と豊島区を別にすると,濃い色は北東に固まっていますね。土地勘のある人なら,この図柄をみて,貧困要因との関連を疑う人が少なくないでしょう。

 現代は「格差」の時代ですが,収入格差,学力格差ならぬ「健康格差」という現象も指摘されています。老衰を除くと,わが国の死因の大半は生活習慣病(がん,心疾患,脳卒中)ですが,収入が低い層ほどこの病の疾患率が高いそうです。低収入層ほど,安価で高カロリーの食べ物を摂取する頻度が高いなど,食習慣をはじめとした各種の生活習慣が乱れがちであるためでしょう。

 はて,23区の若者死亡率は,各区の年収水準とどう相関しているのか。3月2日の記事で出した,平均世帯年収(2013年)との相関をとると,下図のようになります。


 ご覧の通り,年収が低い区ほど,若者の死亡率が高い傾向にあります。相関係数は-0.5846であり,1%水準で有意です。

 あくまで相関であり,「貧困→死亡」という因果の表現とは限りませんが,後者の説明ができないではありません。若者の死因のトップは自殺ですが,低収入や生活苦という状況は将来展望閉塞をももたらし,自らを殺めるのようなことにもつながるでしょう。その次は生活習慣病ですが,低収入層は生活の乱れが生じやすく,これらの病の罹患率も高くなることでしょう。

 ちなみに個人データでみると,学歴と健康意識(管理)は相関しており,低学歴層ほど喫煙や飲酒の頻度が高く,健診の受診率も低いことが知られます(厚労省「国民生活基礎調査」)。ここにて観察している地域データは,その集積の結果といえるかもしれません。

 上図の左上の区ではとりわけ,健康意識を高めるための啓発や,健診ないしは健康相談への参加を呼び掛ける実践が必要といえましょう。私は6月初旬に受けた30代健診で異常値が出てしまい,昨日,健康指導を受けてきたのですが,今の生活の乱れがはっきりと自覚できました。こういう機会って重要だな,と思った次第です。

 「健康第一」といいますが,健康とは生存の基礎で,何にもまして前段に位置するものです。それが,収入をはじめとした外的な条件と強く結び付いているとしたら,大変なことです。先に述べたように,現代は「格差」の時代ですが,健康格差の問題はその中でもとくに,重要な位置を占めていると考えています。

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