2015年7月27日月曜日

子どもの将来展望観の国際比較

 最近のわが国では,閉塞感が増してきています。世論調査で「これから生活が悪くなる」と考える国民の比率が年々増してきていることは,よく知られています。

 そうである以上,未来を生きる子どもの暮らし向きも,おそらくは芳しいものではないだろう,という悲観的な展望が蔓延しているのではないかと思われます。この点を可視化するデータを見つけましたので,今回はそれをご紹介しましょう。

 ピュー研究所という国際機関が,「Global Attitude Survey」という調査を定期的に実施しています。各国の18歳以上の国民に対し,さまざまな意識や価値観を問うものです。その中に,「子どもの将来の暮らし向きは,親世代に比してどうなっていると思うか」という設問があります。回答の選択肢は,「よくなる」,「悪くなる」,「同じようなもの」,「分からない」です。

 私は,この設問への回答を国別に集計してみました。2014年春調査のデータです。下記サイトにて,リモート集計ができます。「よくなる」と答えた国民の割合を出し,ランキングにすると下図のようになります。
http://www.pewglobal.org/question-search/


 どうでしょう。上位には,「まだまだこれから」という発展途上国が多く位置しています。ベトナムでは,対象者のほぼ全員が,子どもの将来の暮らし向きは親世代を超える,という良好な展望を抱いています。大国・中国は85%,お隣の韓国も52%と半分を超えます。

 一方,下位には先進国が多くみられます。わが国はたった14%であり,下から2番目です。発展を遂げてしまい,これから先は悪くなるだけ,という先進国の悲哀のようなものが感じられます。日本も1950年くらいの頃は,上記の設問に対し,ほぼ全ての国民が「よくなる」と答えていたのでしょうが,2014年現在ではこの有様です。

 日本の場合,これから少子高齢化がますます進行し,未来の現役層にかかる負担は大きくなると見込まれます。子どもの将来展望について悲観的に考える国民が多いのも,無理からぬことです。同じく下位に位置する,イタリアやギリシアといった社会も事情は同じでしょう。

 事実,上記の数値は,各国の高齢人口率(65歳以上人口率)と相関しています。


 高齢化が進んでいる社会ほど,子どもの将来展望がおもわしくない,という傾向がみられます。相関係数は-0.5870であり,1%水準で有意です。右下の社会では,未来の現役層の負担増が懸念されているようです。

 少子高齢化は,教育を外から規定する社会条件の一つです。こうした社会変動が教育に及ぼす影響を,多角的な角度から検討する必要があるでしょう。ここでの作業は,そのうちの一つです。