2015年9月7日月曜日

ケータイ・スマホ所有と友人関係意識

 いまや,ケータイやスマホが広く普及しています。中高や大学の授業でも,スマホを使った授業が試みられています。私は持っていませんが,いつ大学から「持て」と言われるか,ちょっとハラハラしています。

 2013年の内閣府『我が国と諸外国の若者の意識に関する調査』によると,中高生のケータイ・スマホ所持率は64.5%です。性別にみると,男子が59.2%,女子が71.1%で,女子のほうが高くなっています。

 ケータイ・スマホは,彼らにすれば,友達と交流する重要なツールです。これを持っているかどうかで,親しい友人の数も違っています。下図は,中高生のサンプルをケータイ・スマホ非所有群と所有群に分け,親しい友人の数の分布を比べたものです。


 ご覧のように,所有群のほうが友人数が多いようです。友人が11人以上の者の割合は,非所有群が21.4%であるのに対し,所有群は29.3%です。分布に有意差はありませんが,ケータイ・スマホを持っている生徒のほうが友人が多い,という傾向はいえるでしょう。

 しかし,友人の数が多ければいいというのではありません。量だけでなく,質の面にも目を向けてみましょう。上記の調査では,「友人や仲間のことが心配か」,「友人関係に満足か」と尋ねています。ケータイ・スマホの所有の有無によって,これらの問いへの回答がどう違うかをみてみます。

 クロス集計の結果は,下表のようです。下段の②のサンプルが少ないは,「該当者なし・分からない」という回答を除いているためです。


 ①をみると,友人のことが心配と感じている生徒は,非所有群よりも所有群で多くなっています。「心配」+「どちらかといえば心配」の比重は,前者が31.7%,後者が41.9%です。友人を気遣う者もいれば,友人とうまくやれるか,いじめられはしないかというビクビクしている生徒も含まれるでしょう。

 次に②ですが,友人関係に不満を抱いている生徒の割合は,非所有群よりも所有群で高くなっています。「どちらかとえいば不満」ないしは「不満」の比率は,前者が14.9%,後者が24.5%です。ケータイやスマホを持っている生徒のほうが,友人関係の満足度が低いと。χ二乗検定の結果,こちらは回答分布に有意差が認められます(p<0.05)。

 ケータイ・スマホを持っている生徒のほうが友人数は多いものの,友人関係への懸念や不満もまた多いようです。これらの機器を介した交友といえば,おそらくLINEなどでしょうが,すぐに返信しないといけない,話題についていかないといけない,といった「LINE疲れ」なる病が報告されています。ネットでの交友は,時間的に空間的にも無際限です。解放される暇がありません。なるほど,上記のデータも分かろうというものです。

 ちなみに,男子と女子では様相が違っています。サンプルを男女に分けて,上表と同じクロスをとてみました。下図は,友人のことが心配(心配+どちらかといえば心配)である者の率と,友人関係に不満(どちらかといえば不満+不満)を抱いている者の率をグラフにしたものです。


 ケータイ・スマホの有無による友人関係意識の差は,女子で格段に大きくなっています。男子ではほとんど差がありません。ということは,上表でみた傾向はもっぱら女子のそれを反映していることになります。

 女子に限ると,友人のことを憂える生徒の率は非所有群では32.6%ですが,所有群では50.4%と半分を超えます。友人関係への不満率は,順に15.9%,35.0%と,こちらも大きな差があります。言わずもがな,どちらも統計的な有意差とみなされます。

 女子のほうがケータイやスマホへののめり込みの度合いが高く,それを介した仲間とのつながりに気を遣っているであろうことは,想像に難くありません。「話題についていかないといけない,返信しないとハブられる・・・」。こういう思いから四六時中スマホとにらめっこしています。スマホが使えないので,飛行機に乗るのを嫌がる子までいるそうです。

 先ほど書いたように,ネットでの交友は恐ろしい面を持っています。パソコンでならまだしも,スマホのような常時携帯できる小型機器を介した交友となると,時間的にも空間的にも無際限です。画面の向こうの相手は,いつでもどこまでも追いかけてきます。現在,これに歯止めをかけようと,スマホの利用時間を制限する学校も出てきています。とくに女子生徒に対しては,入念な指導が必要であるといえましょう。

 上記の内閣府調査では,青少年の意識や行動をいろいろな側面から尋ねていますが,ケータイ・スマホの有無によって,どういう違いがみられるか。多様な観点を設定して,多角チャートを描いてみるのも面白いですね。情報化社会における社会化の歪みが明らかになるかもしれません。そろそろ後期の調査統計法の授業が始まりますが,学生さんにやらせてみたい課題です。

 今年度から4学期制になった関係上,1回あたりの授業時間は180分(3時間)。たっぷりと作業をしていただこうと思っています。